ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ   作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン

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Ep.04 はじめてのミッション

「このミッションはねぇ、実質チュートリアルみたいなものだからぁ……そんなに身構えなくていいよぉ?」

 

 通信ウィンドウに映ったアズミが苦笑混じりにそんな言葉をかけてきたけど、こっちは初めてのガンダムどころか初めてのゲームなんだから、緊張するなって方が難しい。

 白とピンクでペイントされ、デコシールがアクセントとしてあしらわれているアズミのガンプラ──Gサイフォスとかいうらしい──が、少し先行する形で隊列を組んで、私のアルティメスはその後ろをついていっている。

 ゲームの中とはいえ、自分が動かしてるもので空を飛ぶなんて経験したことがないから、いつ落ちないかとヒヤヒヤものだ。

 

「でも、落っこちたら痛いんじゃないの?」

「あはぁ〜、そんな心配しなくていいよぉ。GBNは思考補助システムが積まれてるから、ある程度はレバガチャでもなんとかなるしぃ」

「レバガチャ」

 

 要するに、頭で考えている動きをある程度まではオートで反映してくれる……っていう理解でいいんだろうか。

 

「だから、力抜いて? もっと自由に飛び回ってみようよぉ」

 

 アズミが口にした「自由」という言葉に、私の指先がぴくりと跳ねる。

 そうだ。この世界なら、GBNなら私の右足は失われていない。

 それどころか、この操縦桿を動かすことで、空だって飛ぶことができるんだ。

 

「……うん。やってみる!」

 

 アズミに唆された通りに私は操縦桿を握りしめて、アルティメスを空高く飛び立たせる。

 青空を切り裂くように飛んだ機体が、眼下の景色をコマ送りしていく。

 フィードバックされるGの感触が、何者にも邪魔されることなく空を飛ぶガンダムと一体化したような錯覚が、私の心を幸せで満たす。

 

「……っ、ぁ……」

 

 自由だった。

 思わず、泣いてしまうぐらいには。

 私が諦めていたものが、もう手に入らないと思っていたものが、この世界には確かに存在している。そんな事実が、どうしようもなく嬉しくて。

 

「どう〜? とってもゴキゲンみたいだけどぉ」

「うん……楽しい。ここは、自由だね」

「そうそう、ガンプラとGBNは自由だからねぇ〜あはっ」

 

 よくわからないけど、そういうものらしい。

 そんな自由を担保してくれる世界があるという事実に、私は雪が降ったときの犬の如く喜んで空を駆け回る。

 正直、これだけで満足だった。ミッションの説明によると、なんか敵を倒さなきゃいけないみたいだけど。

 

「……ん?」

「どうしたの〜?」

「……いや、私の見間違いじゃなければ、そこ。人がいる」

 

 森林地帯の開けた空間にぽつりと見えたものをズームして拡大すると、それは確かに人の形をしているように見えた。

 GBNって、ガンプラに乗らなくてもログインできるんだっけ?

 いや、ログインできるにしたってこんなにだだっ広い仮想空間を生身で歩くなんて真似は……私ならしそうだなぁ、嬉しくて。

 

「本当だねぇ、でもぉ、なんでこんなとこに〜?」

「よくわかんないけど、戦闘エリア? が近いみたいだし……」

「そうだね〜、じゃあアズミたちで保護しちゃおっかぁ」

「オッケー」

 

 私はアルティメスを急降下させて、その人影が近づこうとしている青い半休状のホログラフィック──戦闘エリアのギリギリ手前で駐機する。

 そして、アルティメスから降りて見えたものは、やっぱり人としか言いようがないものだった。

 ふわふわとウェーブがかかっている長い金髪に、白いワンピースの上からフード付きの白いケープを羽織っている、平均より大分身長が低い私よりも小柄な女の子。

 

「あの……ここ、すぐ後ろが戦闘エリアだから、危ないですよ」

 

 その子は私の言葉にきょとんと小首を傾げると、なにかを考え込むように空を見上げる。

 

「でも、あなたは行くんですよね?」

 

 飴玉の鈴を鳴らしたような声音で、女の子は問いかけてくる。

 

「そりゃあ……ガンダム? ガンプラ? に乗ってるから……」

「なるほど。じゃあわたしも乗せてもらっていいですか?」

「は?」

「だってガンプラがないとこの先に行けないんですよね? なら、乗せてってください」

 

 なんというか、図太い子だ。

 返答に困って、上空に待機しているアズミを見上げたけど、アドバイスが返ってくることはなかった。

 なんてこった。あのギャル、さてはこの状況を楽しんでるな?

 

「まあ、別に構わないけど……あなたは?」

「わたしはリラです。場所を探してるんです」

「なるほど」

 

 どうやらこのだだっ広いGBNで特定の場所を探し回っているのが、リラという女の子らしい。

 いや、それなら余計にガンプラに乗った方が早い気がしたけど……プレイスタイル? っていうのは人それぞれみたいだし。

 私は渋々といった感じのジトっとした目でリラちゃんを一瞥すると、アルティメスのコックピットに同伴させた。

 

「これから私たち、戦闘するけど」

「構いません、わたしは場所を探してるだけですから」

「なんていうか……リラちゃん、図太いってよく言われない?」

「そうでしょうか? よくわからないですけど、よろしくお願いしますね。えっと」

「……ラス」

「はい。よろしくお願いしますね、ラス」

 

 初手から呼び捨てとはまた随分距離感が近いな。

 まあ、でもネット上の名前なんて、そんなものか。

 私は溜息をつき、コックピットにリラちゃんを乗せたまま、アルティメスを立ち上がらせてアズミのところに合流する。

 

「それじゃあバトルに入るけど、準備はいい〜?」

「わたしはいつでも構いません」

「なんでリラちゃんが答えてるの……私も大丈夫だよ、アズミ」

「おっけおっけー、それじゃ、行くよぉ〜」

 

 先陣を切ったアズミに続いて、私もまた戦闘エリアの中にダイブする。

 瞬間、機体のセンサーだかレーダーだか知らないけど、そんな感じのなにかが警告を鳴らす。

 モニターに映る機影を確認すると、マシンガンとラウンドシールドを装備したガンプラが三機。

 

 事前説明が確かなら、リーオーNPDっていうんだっけ。

 

「ほとんど棒立ちと変わらないから、気楽に戦ってねぇ〜」

「えっ、私が三機!?」

「だってぇ、アズミが戦ったらヌルゲーで終わっちゃうしぃ」

 

 初めての戦いで三対一を強要してくるなんて、このギャルもどうやらリラちゃんに負けず劣らずなんというか神経が太いらしい。

 相手はチュートリアルエネミーとはいえ、数で負けている状況で闇雲に突っ込んでいくのは無謀だと、サッカーの経験がそう告げている。

 そうすると、まず取るべき手段は。

 

 先行していたリーオーNPDがマシンガンを放つのに合わせる形で私はアルティメスを跳躍させて、敵の背後を取る。

 

「なんか武器とかないの!?」

「ロングレンジキャノンとか、ツインドッズキャノンとか、いっぱいあるよぉ〜?」

「あーもう、じゃあそれで!」

 

 ロングレンジキャノンと英語で書かれているスロットの武装を選択して、引き金を引く。

 すると、アルティメスの両肩に装備されてるごっつい砲台から物凄い威力のビームが飛び出してきて、マシンガンを撃っていたリーオーNPDを塵に変えた。

 よくわかんないけど、多分これ必殺技とかの類じゃない? 気軽にぶっ放していいものじゃないよね?

 

「なにぼーっとしてるんですか、ラス! 次が来ますよ!」

「わかってる! えっと、武器、武器……! なんかちょうどいいの……!」

 

 ツインドッズキャノンとやらが多分無難な武器だったんだろうけど、ガンダム初心者の私が正式名称で呼ばれたってどこにあるのか、どんな武器なのかなんてわからない。

 

「……ビームサーベルです!」

「リラちゃん?」

「ビームサーベルを使えって、ガンプラが言ってます!」

 

 えっ、ガンプラって喋るの?

 怖……と一瞬思ったけど、こっちはそろそろ二対一で挟み撃ちにされそうだから四の五の言ってる場合じゃないか!

 私は武装スロットをビームサーベルに合わせて選択、腰のホルダーから抜き放ったそれで、背後を取ろうとしていたリーオーNPDのコックピットを突き刺す。

 

「急速離脱ッ……!」

 

 爆発の余波に巻き込まれないようにそのまま機体を急上昇、正面からビームサーベルを振りかぶってきたリーオーNPDの一撃も回避しつつ、上を取る。

 

「これでぇええぇッ!」

 

 そして、そのままの勢いで急降下して、逆手に構えたビームサーベルを、残った一機の頭部から胴体を串刺しにするように突き刺した。

 

【Mission Complete!】

 

 無機質な電子音声が、私たち、というか私の勝利を告げる。

 どうやらチュートリアルは危なげなく、ってわけじゃないけど、どうやら無事に終わってくれたらしい。

 そんな具合にほっと一息ついていた、刹那。

 

「危ないですよ、ラス! アズミ!」

「えっ!?」

「きゃっ……!」

 

 彼方から飛来してきた閃光が、反応の遅れたアズミのGサイフォス、その右半身を貫く。

 どうやら、ミッションは終わったけど戦いは終わっていないらしい。

 ビームサーベルを握りしめたまま、私はぎり、と歯を食いしばった。




メインヒロインちゃん登場
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