ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ 作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン
「ねえ、アズミ」
初めてのGBNから二週間ぐらい経ったある日、私はいつもの階段下に来るようになったアズミへと呼びかけていた。
「んぅ? どぉしたの、キョーカ?」
「えっと……多分なんだけどさ、私、アルティメスを上手く使えてない」
この二週間、ダイバーギアを買ってガンダムベースに通い詰めて、ひたすらミッションというミッションを受けていたけど、なんというか私は、違和感みたいなものを覚えている。
アルティメスの武器とかも一通り理解して使ってはいるんだけど、妙にしっくりこないというか、NPDが弱すぎるから今のところなんとかなっているというか。
このままの戦い方じゃ早いうちに頭打ちになる、というのが、率直な感想だ。
「うーん……そうだねぇ、隣で見てる分には問題ないって思うけどぉ、キョーカがそう感じるなら、多分それは正しいんだと思うよぉ」
「否定しないんだ、私の方が歴浅いのに」
「ガンプラとの相性はぁ、使ってる本人にしかわからないからね〜」
あは、といつも通りにイタズラっぽくアズミは笑う。
そこでGBN歴の浅いにわかが生意気にもガンプラの使い心地について語ってるぞー、って火にくべられなくてよかった。
ガノタってなんかそういう繊細なことで怒るイメージが強すぎるから。
「課題を洗い出すならぁ、そろそろ対人戦行ってみるぅ?」
「対人」
「良くも悪くもNPDより中身の詰まった動きをするからぁ、自分の傾向とか弱点とかはわかりやすいよぉ?」
対人戦はこの前の初心者狩りとのエンカウントを除けば初めてだ。
正直にいうなら、怖い気持ちもある。
でも、ここで怖気付いて先に進まなかったら、きっと私は一生止まったままだ。
「……わかった。アズミ、今日の放課後、その」
「空けておくよぉ、あはっ」
「あ、ありがと……」
人とのコミュニケーションを取るのが久しぶりすぎて、挙動不審になってしまっている。
油断すると、アズミの柔らかな笑顔に包み込まれて帰ってこられなくなりそうで、それが怖いのもあって、距離感がわからない。
そうだよ、距離感。アズミには友達がいっぱいいるのに、ただ秘密を知ってしまっただけっていう私になんでこんなに近くで接してくれるんだろう。
人の心って、わからないな。
昔はわかってた……ようで実は全然わかってなかったのかもしれない。
サッカーだけが私の支えで、エースストライカーの称号だけが私を取り巻く世界を支えていたから。
◇
「なるほど。それで相談にきたってことかしら」
放課後、ガンダムベースに立ち寄った私たちは即座にGBNへとログインして、セントラル・ロビーで今日も初心者へのナビゲートを買って出ているマギーさんとコンタクトを取っていた。
「はい、対人戦するのになんか手っ取り早い方法ないかなって」
通りかかったダイバーに片っ端からフリーバトルを挑んでいく薩摩スタイルも検討したけど、いくらなんでもそれは無茶がすぎるというのとで、アズミにやんわりと却下された。
「対人戦がしたいだけなら方法は色々あるけれど……そうねぇ、アズミちゃんがBランク、ラスちゃんがDランクとなると、一緒に組んでの戦いは結構難しいわね」
「そうそう〜、ランダムマッチとかは高いランクに合わせる仕様だからねぇ」
アズミのBランクがどこまですごいのかはよくわからないけど、Dと比べれば結構高いところにあるのは確かだ。
それに合わせたマッチングとなると、自分の弱点がどうこう以前にボコボコにされてなにもわからずじまいだろう。
そうなると、マギーさんの言う通り、私とアズミが組んで戦うのは諦めた方がいいんだろうか。
「ハードコアディメンション・ヴァルガ」
うーん、と一様に私たちが首を捻っていると、とことこと駆け寄ってきたリラちゃんがそんな言葉を口ずさんだ。
「あら、リラちゃん。ヴァルガなんてよく知っているわね」
「噂は聞いていますから。そこならランク制限を気にせずバトルできるんじゃないですか?」
ふふん、と得意げに薄い胸を反らしながらリラちゃんが語る。
その様子を微笑ましく見守っていた私とアズミだったけど、マギーさんはなにやら神妙な顔をしていた。
まさかリラちゃん、なにか、マギーさんの地雷でも踏んだんだろうか。
「ダメよ、リラちゃん。あそこはリンチにリスキル、フレンドリーファイア、なんでもありのノーマナーな場所なの。確かにバトルはできるかもしれないけど、まともな戦いにはならないわ」
いつになく真剣な表情で、マギーさんはリラちゃんにそう諭した。
ネトゲのありとあらゆる御法度が真顔で闊歩しているような地獄がこのGBNの中にはどうやら存在しているらしい。
なんでそんな場所作ったんだか。
「そ、そうですか……なら、デュエル・ディメンションはどうでしょう」
「デュエル・ディメンション?」
おうむ返しな私の問いに、リラちゃんは再び得意げなドヤ顔で答えを口に出す。
「最近できたばっかりのディメンションです、ランク制限とかなしに『クランバトル』や『決闘』、『ガンダムファイト』が楽しめるんですよ!」
「付け加えるなら、特殊ルールだけれどランクに縛られない戦いができる場所、ってところね」
リラちゃんとマギーさんの話を聞く限り、悪いところじゃなさそうだった。
特殊ルールという縛りはあるにしても、ランク制限とか関係なくアズミと組んで戦えるなら、願ったり叶ったりだ。
クランバトルと決闘とガンダムファイトのなにが違うのかはよくわからないけど、そのディメンションに行けば、説明ぐらいあるだろうし。
「そうだねぇ〜、クランバトルならちょうど二対二の戦いだしぃ、アズミたちにぴったりかも。あはっ」
「二対二……ならちょうどいいね、デュエル・ディメンションだっけ? じゃあ行こっ、アズミ!」
「ちょっと待ってください、このわたしを置いて行く気ですか?」
アズミに呼びかけて、デュエル・ディメンションへのゲートを通ろうとしたときだった。
当然の権利のように、リラちゃんがそんなことを問いかけてくる。
置いていくもなにも、リラちゃんガンプラ持ってないし。
「この前初心者狩りを倒せたのはわたしのおかげと言っても過言じゃないはずですよ? なら、わたしを連れていくことにメリットはありますよね?」
「……言われてみればそうかもしれないけど」
ジトっとした目でドヤ顔をしているリラちゃんを一瞥する。
確かにそうかもしれないけど、自分からそれ言ったら色々と台無しじゃない?
まあでも、いっか。事実は事実だし。
「……わかった。それじゃリラちゃんも一緒に行こ」
「わかればいいんです、わかれば。えっへん」
「そうだねぇ、リラちゃんは偉いねぇ。あはぁ〜」
「もっと褒めてください。えっへん」
アズミはリラちゃんの頭を撫で回しながら、にっこりと微笑んだ。
甘やかしてるとろくなことにならなさそうだけど、本人たちが満足げだし、それでいいのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えながら、私はデュエル・ディメンションへと転移するゲートの前に立つのだった。
Tips:
【デュエル・ディメンション】
新サーバー「アリアドネ」の増設によって新たに立ち上げられたディメンション。ダイバーランクに囚われない特殊ルールでのガンプラバトルを主な目的としており、バトル形式は今のところ「ガンダムファイト」、「決闘」、「クランバトル」の三種類が主流となっている。中でもクランバトルは人気を博しており、固定相方と組んでのMAV戦や、クイック募集での即興チームを野良で結成してのMAV戦が可能となっている。