ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ 作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン
「ヒャッハー! 見たことがねえ顔がいると思ったら新入りだぜェー!」
「ヒャッハー! こいつぁいいぜー!」
デュエル・ディメンションに降り立った私たちを出迎えたのは、肩パッド付きの革ジャンにモヒカンヘアーという、いかにも世紀末な格好をした二人組だった。
なんだろう、来る場所間違えたかな。
ごしごしと目を擦ってじっと見つめてみても、その天をつくモヒカンが変わることはない。
もしかして私、貴重なカモとして美味しくいただかれる運命だったりするんだろうか。
思わず身構えてしまう。
リラちゃんにいたっては、完全にびくびく震えながらアズミの後ろに隠れていた。
「ヒャッハー! よく来たなぁ、新入り! ここは主に特殊ルールのバトルを扱う専用のディメンションだぜェー!」
「見たところ三人組だが……そっちのちっこい姉ちゃんと色々でっかい姉ちゃんの二人がマヴと見たぜェー! だったら『クランバトル』ルールがオススメだぜェー!」
マヴってなに、とか突っ込みたいことは色々あるけど、世紀末な口調と外見にもかかわらず、モヒカン二人組はこのディメンションについての説明を丁寧にしてくれていた。
悪い人たちじゃないんだろうけど、どうしよう。
正直ギャップで風邪引きそう。
「クランバトル……?」
「制限時間五分の中で、二対二で相手チームのガンプラの頭部を破壊した方が勝ちってエキサイティングなルールさァ! ヒャア!」
「ルールは一見複雑そうに見えて簡単だぜェー! ちょうど今中継やってるから見ておくと参考になるかもしれねえなァー!」
ヒャッハー、と雄叫びを上げて、モヒカン二人組はライブモニターを指差す。
そこに映っていたのは、二機のザクと、軍用機のようなロービジカラーに塗装されている、確かウィンダムとかいうらしい量産機が、コロニーの外壁を舞台に追いかけっこをしている姿だった。
見た感じ、ザクの方が不利を背負っているのか、それともウィンダムの方が手慣れているのかはわからないけど、二機のガンプラによる連携の前に追い込まれているのはザク側だ。
『クソッ、なんでクランバトルに軍用機が出てくるんだよ! クソッタレ!』
『「GHC」はやりやがったってことだ!』
二機のザクは背中合わせになりながらマシンガンでウィンダムを迎撃するけど、ビームカービンの一撃で分断されて、もう一機の奇襲で片方が頭を貫かれる。
『あ、相棒ー! ぐわああああ!』
『よ、よくも俺のマヴを──ぐわああああ!』
僚機の撃墜に気を取られた一瞬の隙を突く形で、ビームカービンの二発目が残ったザクの頭を撃ち抜いた。
【Battle Ended!】
【Winner:チーム「ツヴァイグランツ」】
システムのダイアログに表示されたその文字列が告げたのは、ウィンダム側の勝利だ。
GHCってなんかどこかで聞いたような気がするけど、どこで聞いたんだっけ。
まあいいか、思い出せないし。
「と、まあルールは見ての通り複雑そうだが簡単だぜェー! 早速やってくかァー!?」
「どうしよう、アズミ」
「アズミはぁ、楽しそうな方がすーきっ♡」
「……そうだね、楽しまなきゃ損だもん。私たち、やります」
ぐっ、と胸の前で拳を固めて、私はモヒカン二人組にそう宣言する。
「言っておくが、やるからには本気だからなァ」
「座学は優しく実技は厳しくが俺らのモットーよォ」
さっきまでの人がよさそうな感じが一転、鋭利に研ぎ澄まされた刃のような声音で、モヒカン二人組はばきばきと指を鳴らしながらそう宣言する。
上等だ。
これぐらいの方が、きっと戦い甲斐がある。
震えを誤魔化すように自分へそう言い聞かせて、私たちは戦場へと向かった。
◇
『さあ始まった! 今宵のクランバトルは大盛況! 次のマッチはかたや「初心者の壁」ともいわれる名物ナビゲーター、セコッテとカラッカのチーム「グレートウォール」対、今回が初めてのデビュー戦、ラスとアズミのチーム「ヤタガラス」だ!』
実況の言葉に、ライブモニターの向こう側が沸き立つ。
制限時間五分の中で、相手のガンプラ二機の頭部を破壊した方が勝ち。五分経過で双方のうち一機でも頭部が残っていたら引き分け。
シンプルなようで奥が深いルールだ。私は操縦桿をぎり、と握り締めて、歯を食いしばる。
「ラスぅ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよぉ〜」
「わかってる、でも……」
「あはぁ〜、それじゃあチーム『ヤタガラス』の初陣と行こっかぁ」
コロニーのエアロックが開放されると同時に、私たちは漆黒の宇宙空間へと飛び出していく。
「落ち着いてくださいね、ラス。MAV戦は最初に相手を見つけた方が有利を取るんです。逆に言えば、見つけられないことが前提条件です」
「よくわかんないけど、闇雲に動き回るなってことでいいんだよね、リラちゃん?」
「そういうことです、まずは落ち着いて周囲を──」
『ヒャッハー! 物陰に隠れたって無駄だぜェー!』
デブリに身を隠して初動をやり過ごそうとしていたところを見透かしたのだろう。
モヒカン二人組──セコッテさんとカラッカさんの操る高機動型ザクの改造機が放った攻撃がデブリを破壊する。
Gサイフォスがドッズバスターで応戦しているけど、セコッテさんの高機動型ザクはひらりひらりと蝶のように舞って、アズミの攻撃を回避していた。
「セオリーが初手から崩されてる……!」
「どうしてわたしたちが隠れてることがわかって……!」
『ヒャッハー! 悪いがこのステージは俺たちの庭だぜェ! 初心者がなに考えてるかなんて手玉に取るようにわかるのよォ!』
『座学は優しく実技は厳しく! 「ヤタガラス」! 俺たち「ルーキーキラー」を乗り越えてみせなァー!』
カラッカさんの高機動型ザクが装備しているミサイルポッドとビームマシンガンが展開する弾幕砲火を掻い潜りながら、私は歯を食いしばる。
NPDと戦っているときとは全然違う。
本物の闘志が、殺意が、策略が乗った攻撃は、場当たり的に繰り返されるそれとは全く違った形で、アルティメスを追い詰めていた。
「ラス、チェンジできるぅ?」
「アズミ?」
「ラスのアルティメスならぁ、多分セコッテくんに追いつけるはずぅ。その間、アズミは火力担当のカラッカくんを抑えておくからぁ」
擬似タイマンで勝ってきてねぇ、と、とんでもない作戦をアズミは無茶振りしてくる。
──でも。
「……わかった」
「ラス!?」
「このまま私がカラッカさんの相手をしてたってタイムアップかジリ貧で負けるかのどっちか。だったら……勝ち目のある方に賭ける!」
私はアズミの直感を信じてスラスターを全開にし、多少のダメージを負いながらもカラッカさんの弾幕砲火を潜り抜ける。
ロングレンジキャノンはおかげで完全に使い物にならなくなったけど、元からぶっ放す予定はなかった代物だ。
損傷したロングレンジキャノンをパージすることで身軽になりつつ、両手に持ったツインドッズキャノンで、セコッテさんのザクに牽制をかけていく。
『ヒャア! やるじゃねぇか、ルーキー!』
「アルティメスの使い方、なんとなくわかってきた……!」
『だが素組みの機体に負けたとあっちゃ、このザク・ドーガの名折れよ! 悪いが首は取らせてもらうぜェ、ガンダム!』
ザク・ドーガというらしいセコッテさんの機体が、バックパックからビームサーベルを引き抜いて懐に肉薄してくる。
私は振り抜かれた斬撃を紙一重で受け流して、体勢を立て直しつつ今度は逆に斬りかかった。
だけど、その一撃は虚しく空を切る。
『へっ……筋があるじゃねえか! ヒャッハー!』
「……アズミ!」
「了解だよぉ!」
その空振りを合図にして、機体をわずかに上昇させたセコッテさんが操るザク・ドーガの頭が、ドッズバスターによって撃ち抜かれた。
『なっ、まさか、最初からこれを想定して──!?』
『相棒! くっ、俺のマヴをやってくれたなぁ!』
腕のガントレットからビームサーベルを引き抜いたカラッカさんのザクが、せめてアズミだけでも道連れにしようと相打ち覚悟で突っ込んでいく。
「させないッ!」
「勝てる、ってガンプラが言ってます! 行ってください、ラス!」
リラちゃんの激励を受けて、私は歯を食いしばりながら急速反転、ビームサーベルを突き出したまま、カラッカさんのザクを目掛けて突撃する。
『くっ……砲撃担当の俺が接近戦をやらされた時点で負けてたってか、すまねえ、相棒ォー!』
そして、ビームサーベルの刃は決して目標を逃すことなく、カラッカさんのザクを、その頭部を刺し貫いていた。
【Battle Ended!】
【Winner:チーム「ヤタガラス」!】
機械音声が勝利を告げると同時に、私はお腹の底に溜まっていた緊張を吐き出すように溜息をつく。
綱渡りだった。一歩間違えば、負けていた。
でも。
「勝ったのは、私たちだ」
その事実を確かめるように手のひらをぐーぱーと結んでは開いて、私はそっと目を伏せた。
初心者は大切にして沼に沈めねぇとなぁ……!
Tips:
【セコッテ】
デュエル・ディメンションで活動しているダイバー。見た目はヴァルガでヒャッハーしているモヒカンと同じで、言動もヒャッハーしているが、初心者には優しいというギャップがあるモヒカン。
同じモヒカンアバターのカラッカとクランを組み、クランバトルをしている。初心者には優しいがクランバトルはまた別の話であり、バトルの厳しさを叩き込むことから初心者の壁、ルーキーキラー、などと呼ばれている。
使用するのは高機動型ザクⅡの両腕をギラ・ドーガにし、バックパックをガンダム試作1号機FBにしたザク•ドーガ。
【カラッカ】
デュエル・ディメンションで活動しているダイバー。見た目はヴァルガでヒャッハーしているモヒカンと同じで、言動もヒャッハーしている。相方のセコッテと同じく初心者には優しく、その見た目とのギャップで風邪を引くタイプのモヒカン。
初心者には優しいが、クランバトルの厳しさはきっちり叩き込むため、セコッテと共に初心者の壁、ルーキーキラーと呼ばれている。
使用するのは高機動型ザクⅡの両腕とバックパックをスタークジェガンに変更し、ロケットバズーカとビームマシンガンで敵を詰めていくスタークザク。