ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ   作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン

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Ep.08 その名はジェントルメン

「ヒャッハー! やるじゃねぇか! おめでとう新入り……いや、『ヤタガラス』!」

 

 戦いを終えてバトル・ディメンションのロビーに帰還した私たちを出迎えてくれたのは、満面の笑みを浮かべてクラッカーを鳴らすセコッテさんとカラッカさんだった。

 厳つい外見と紳士的な態度の間で相変わらず風邪を引きそうになるけど、褒められるのは素直に嬉しい。

 初心者狩りの件はノーカンにするとして、アズミと、リラちゃんとの初陣をちゃんと勝利で飾れたのも嬉しいところだ。

 

「ありがとうございます、セコッテさん、カラッカさん」

「ヒャッハー! 気にするんじゃねェー! 俺たちは俺たちという壁を乗り越えて羽ばたいていく初心者を見るのが一番の楽しみなんだからよォー!」

「初めてのMAV戦にしちゃあいいセンスしてたぜェー! それに、『ヤタガラス』ってのもイカした名前じゃあねえか!」

「あ、あはは……即興でつけた名前ですけど」

 

 チーム名の登録が必要なのは原作再現要素らしくて、戦いに行く前は知らなかったものだからどうしたものか迷ったけど、アズミとリラちゃんが快諾してくれたことで決まった名前だ。

 それに、「ヤタガラス」という単語やモチーフに、私は──思い入れ、とでもいうんだろうか。

 とにかく、そういうものがあるから。

 

「そうだねぇ〜、ラスぅ、なんで『ヤタガラス』なのぉ?」

「わたしも少し気になります。教えてください、ラス」

「え、えっと……秘密! とにかく勝ってよかったよね!」

 

 ただ、それを口にするのは気恥ずかしくて、私は慌てながら誤魔化して、顔を赤くする。

 

「相棒、こいつぁ相当見込みがあるんじゃあねェか?」

「ヒャッハー! そう思って既に『あの人』には連絡済みだぜェ!」

「あの人ぉ?」

 

 なにやら不穏な単語を嗅ぎ取ったアズミが、ひそひそと内緒話をしていたセコッテさんとカラッカさんへとおうむ返しに問いかける。

 

「おッ、聞こえてたかァー! そう身構えることはねェぜ!」

「あの人……キースさんはこの『デュエル・ディメンション』の案内人みたいなもんだからなァー!」

「あはぁ〜、なるほどねぇ」

「その人が怪しくない保証はどこかにあるんですか?」

 

 面白そうだからいいか、とそれ以上の追及を諦めたアズミに代わる形で、リラちゃんが二人へ更に問いを重ねる。

 

「会ってみりゃァ一発でわかるってもんよォ!」

「人は見かけによらねェからなァー!」

 

 説得力の塊みたいなセリフだ。

 ジトっとした目で私はセコッテさんとカラッカさんを見ていたけど、確かに彼らの言う通りだ。

 このデュエル・ディメンションは治安が悪そうな外見の人ばっかりいるけど、荒れた様子は特にない。

 

 そのキースさんって人もきっといい人なのだろう、多分。

 

「よう、待たせちまったな、兄弟! どうやら活きのいい新入りが来たって話じゃあねぇか」

「押忍! キースさん、あいつらがチーム『ヤタガラス』ですぜェー!」

「特に見込みがあるのは素組みのアルティメスで俺らに肉薄してみせた、ラスってちっこい子ですぜェ、ヒャッハー!」

「ククク……なるほど、確かにいい面構えをしてやがる……!」

 

 二人組と話しているバンダナを巻きつけた金髪グラサンに無精髭といういかにも怪しい人な外見をしている人が、多分そのキースさんなのだろう。

 完全に悪役が打ち合わせをしてるようにしか見えないけど、多分いい人……いい人? なんだと思う。というか思いたい。

 うー、と小さく唸りながらジト目で見つめる私の視線に気づいたのか、振り返ったキースさんが口元ににっ、と笑みを浮かべて近づいてくる。

 

「そう緊張するなよ、この『デュエル・ディメンション』で戦う者同士、俺たちは既にマヴだ、そうだろ?」

「そうなんですか……」

「そういうこった。ククク……おっと、自己紹介が遅れたな。俺ぁキース。キース・ジェントルメンだ……ここで初心者のナビゲーターをやらせてもらってる」

 

 キースさんは、証拠を見せるようにウィンドウを開いてプロフィールカードを提示してくる。

 確かに後ろ暗い戦歴とかは全くない。

 完全に悪い人にしか見えないけど、いい人だと見て間違いはなさそうだった。

 

「それでぇ、そのキースさんがアズミたちになんの用〜?」

「ああ、話は単純だ。見たとこ、アズミちゃん……お前さんはともかく、ラスちゃんはアセンに悩んでいそうだったからな」

「……アセン?」

 

 また知らない単語が出てきた。

 

「ククク……簡単に言えばガンプラのカスタマイズよ、俺と一戦やってもらえりゃあ、戦い方のクセから見たアドバイスを送れるが……どうだい?」

 

 キースさんはグラサンをくいっと指で持ち上げながら、私たちにそう問いかけてくる。

 アセンに迷っている、かどうかはともかく、私がアルティメスを上手く使いこなせてない気がするのは確かなことだ。

 それなら、申し出を受けるのも悪くないと思うけど、どうなんだろう。

 

「で、どう? アズミ。リラちゃん」

「それはラスが決めることですよ」

「そうだねぇ〜、でもぉ、得るものはあると思うよぉ?」

「そうだね、二人ともありがとう。それじゃあキースさん、一戦お願いできますか?」

 

 私の申し出に、キースさんは相変わらず悪役みたいな笑みを浮かべながら親指を立てる。

 

「もちろん俺は問題ねぇ……だが一つだけ問題がある」

「あるのかないのかどっちなんですか……」

「そう結論を焦るなよ、まあ……簡単に言えば俺のマヴが今日は風邪引いて寝込んじまってるってことだ。必然、俺とラスちゃん、君のタイマンになるけどそれでもいいか? って話さ」

 

 タイマン。

 アズミのサポートが受けられない、正真正銘の一対一での戦い。

 不安が急に心の中で膨らんでいくのを感じる。

 

 やれるんだろうか。

 私が、明らかに格上のキースさんを相手に。

 ごくり、と生唾を飲み込んで、私は緊張に身を震わせた。

 

「……やります」

「ほう?」

「やらせてください。私は……もっと、自由になりたいんです」

 

 だとしても、さっきと同じだ。

 怖気付いていたら、永遠に前に進めない。

 この世界には私が前に進むための足があるのなら、もっと自由に楽しむことができるのなら、苦労なんて笑ってやり過ごす他に選択肢はないんだから。

 

「へっ、いい笑顔じゃねえか……俺は少々荒っぽいが、構わねえな!」

「はい、構いません!」

「ルールは『決闘』! 制限時間なし、相手のブレードアンテナを折った方が勝利だ!」

 

 バン、と戦うための特殊ルールを宣言して、キースさんは受付へと踵を返す。

 ──決闘。

 緊張と、クランバトルとは違うまた新しい戦いの予感に、私の胸の中はどうしようもなくざわめき、ときめいていた。




一体どこのジェントルメンなんだ……
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