ガンダムビルドダイバーズ オルタナティブガールズ   作:GQuuuuuuXに脳を焼かれたマン

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Ep.09 逃げれば一つ、進めば二つ

『あはぁ〜、ラスぅ、決闘のルール……というか、前口上は覚えたよねぇ?』

 

 オブザーバーとしてギャラリーモードで観戦しているアズミが、コンテナの中の私にそう問いかけてくる。

 

「えっと……勝敗はモビルスーツの性能でのみ決まらず、勝敗は操縦者の腕のみで決まらず」

『そうそう〜ただ、結果のみが真実って感じぃ』

 

 どうやら事前にこの口上を唱えた上で戦うのが、「決闘」の決まりごとらしかった。

 ガンダムって戦争ばっかりやってるイメージだったけど、なんかこんな風に正々堂々戦ったりもするんだなあ、と感心する。

 伊達に何十年もシリーズが続いてないわけだ。

 

「油断しないでくださいよ、ラス」

「うん、わかってる。リラちゃん」

「結果のみが真実、というのは、どんなに卑怯な手を使おうが構わないということでもありますから」

「えぇ……」

 

 さっきまで感じてたリスペクト精神を返してほしい。

 でも、アルティメスに同乗しているリラちゃんが言った通り、勝ち負けが全てを決めるのが「決闘」の流儀なら、そこにルールを問わないというのはある意味理に適っている。

 盤外戦術やラフプレーまで解禁したサッカーなんて想像もしたくないけど、多分理屈的にはそういうことだろうから。

 

 人は勝利という栄光の前にはどこまでも愚かになれるのは、今までの歴史が証明しているように。

 少しだけモヤっとした気持ちを抱えていると、コンテナがレールに沿って射出される音が聞こえた。

 これから、キースさんとの決闘が始まる。

 

 ガンプラバトルの腕前でも、ガンプラの完成度でも、私ははっきり言ってやる前から負けている。

 それでも、やりたいと思った。なんなら、勝ちたいとさえ思っている。

 震える心と奮い立つ心の背反する二つが胸の中で同居している、妙な感覚を抱えながら、私はコンテナの蓋が開くのを待つ。

 

 もしも勝敗がガンプラの出来で決まらないなら。

 もしも勝敗がガンプラバトルの腕で決まらないなら。

 その口上が真実であるのなら、私にもチャンスはあるし、結果を残してみせられるということに他ならないのだから。

 

 刹那、がしゃぁん、と音を立てて、コンテナが開いた。

 

「えっと……行きます!」

 

 そして私は、スロットルを全開にして、アルティメスと共に、戦場となった月面へと飛び出していく。

 

『よう、ラスちゃん。いい面構えしてるじゃあねぇか』

 

 通信ウィンドウに割り込んできたキースさんがにやり、と口角を上げてそう呟く。

 

「ガンプラバトルは初心者ですけど、戦いには慣れてるつもりですから」

『そいつぁいい……それじゃあ始めるぜ! 勝敗は、モビルスーツの性能でのみ決まらず!』

「操縦者の腕のみで決まらず!」

『ただ、結果のみが真実!』

 

 私たちの宣言と同時にシステムが認証を済ませて、【Fix release!】の通知がコンソール上に浮かび上がった。

 キースさんの顔は見えているけど、どんなガンプラを使うのかはわからない。

 それなら、遠距離から探りを入れるのが一番丸い選択肢だろうか。

 

 いや、でも最初に位置を割り出されれば、それだけで不利になるのはさっきのMAV戦で経験済みだ。

 それなら、慎重に行くべき?

 それとも、果敢に攻めるべき?

 

 迷いが、操縦桿を握る手を鈍らせる。

 そして、そんな隙ができることをわかっていたかのように、アルティメスのレーダーが捉えた警告がけたたましく鳴り響いた。

 

「なに!? どこから!?」

「落ち着いてください、ラス! ミサイルです!」

「だったら、振り切る!」

 

 私は手にしていたツインドッズキャノンで直撃コースのミサイルだけを撃墜して、機体を弾が飛んできた方向にひたすら直進させる。

 初手の攻撃から相手のタイプを推測するなら、多分ロングレンジからの攻撃を得意にしている、カラッカさんと同じタイプだろう。

 なら、懐に潜り込めば勝機はある。

 

『懐に潜り込めば勝てる……そう思ってるんだろ?』

「なっ……!?」

『悪いが、ラスちゃんの戦い方はセコッテとカラッカのやつらから学習済みだ!』

 

 キースさんが叫ぶと同時に、アルティメスは上空に熱源反応を探知する。

 誘い込まれていた。

 それを悟るよりも早く、上空から降下してくるミサイルの弾頭が私がいる周辺ごと焼き尽くそうと無数に分かれる。

 

「クラスター爆撃!? このっ……!」

『そうだ、そして次にラスちゃん、君はロングレンジキャノンで多弾頭ミサイルを迎撃しようとする!』

「……っ!?」

 

 私の考えは、完全に読まれていた。

 

「ラス!」

「正面からも熱源!? そんな……っ!」

『これが俺のコレクションの一つ、フルアーマーアレックスプランB! 通称「フルメタルアレックス」が誇る鉄壁の引き撃ち戦術! アルティメスの機動力でこいつを突破するのは困難だよなァ!』

 

 正面から迫っている大型のミサイルが直撃すれば、なんの改造もしていないアルティメスは恐らく粉々に砕け散ってしまうことだろう。

 クラスター爆撃に焼かれるか、大型ミサイルで宇宙の塵になるか。

 嫌すぎる二択だ。だけど、逃れようはない。

 

「……っ……!」

『ラスちゃんが覚えている違和感の正体はそれだ、自分の戦い方とアセンが合ってないからなァ! ガンプラが本来得意なレンジや戦い方を知らず、無理に自分の流儀に合わせて武装を使おうとして、武装に振り回されてるってことよ!』

 

 そういうことか。

 アルティメスが本当は得意な戦いを知らないから、ただ今までは相手がNPDだったり、アズミのサポートがあるからやってこれたことを、自分の戦い方と勘違いしていたから。

 だから、負ける。必然の結果として。

 

 ──でも、それでいいの?

 

 ふと、どこかから声が聞こえてきたような気がした。

 負けという結果に逃げて、機体の特性に合わせる形で自分の戦い方を矯正するというのも、きっと賢くて悪くない選択肢なのだろう。

 でも、私は。本当の、私は。

 

「……ちたい……」

『ん?』

「……勝ちたいッ!!!! 私は!!!!」

 

 ──だからお前がついてこい、ガンダム!

 

 私はロングレンジキャノンを正面の大型ミサイルに向けてぶっ放して、クラスター爆撃の直撃を甘んじて受け入れる。

 クラスター爆撃の弱点は、一点にかかる破壊力そのものは小さいことだ。

 そして、アンテナさえ折れなければ負けじゃないなら、機体にどれだけガタがこようと勝機はある。

 

 ボロボロになりながらも、私は歯を食いしばってスラスターを全開にする。

 クラスター爆撃を全身に浴びたアルティメスは予想通りにボロボロだったけど、奇跡的にブレードアンテナは折れていなかった。

 幸運の女神様の横っ面を叩くことには成功したようだ。

 

「負ける、もんかァァァァ!!!!」

『ッ! だが、闇雲に突っ込んでくるんじゃあ、結局フルメタルアレックスの餌食だぜ!』

「そこだッ!!!!」

『こいつ……ッ!?』

 

 二連装のビームライフルからプラズマが閃く瞬間、私は銃口から弾道を予測して事前に回避運動を入力しておく。

 そして、ドリフト軌道で崩れた機体の体勢を立て直すこともせず、そのまま勢いに任せてスライディングで背後を取って。

 ──あとは。

 

「ぶち抜けぇぇぇぇ!!!!」

『まさか、ガンプラを自分に合わせるスタイルをここまで貫くとはな……へっ、やるじゃねえか……』

 

 無事だった左手が突き出したビームサーベルが、唯一装甲に覆われていないフルメタルアレックスの頭部に生えているV字のブレードアンテナをへし折った。

 

【Battle Ended!】

 

 システムのダイアログが、私の勝利を告げる。

 所詮は運と偶然に助けられただけの、まぐれ勝ちかもしれない。

 だけど、前口上に従うのなら。

 

『──ただ、結果のみが真実』

 

 気づけば、私とキースさんは、全く同じことを呟いていた。




昨日は寝込んでいて投稿できずすみませんでした……

Tips:

【キース・ジェントルメン】
デュエル・ディメンションを根城にして活動する悪人ヅラの初心者ナビゲーター。ダイバーランクはSと、GBNでもかなり高い方に入るが、素組みからプチ改造、ガチ改造まで相手のレベルに合わせたガンプラを使い分け、主にバトルを通じた体験をベースに、アドバイスを求める初心者や中級者に最適なアセンブルを提案するなど、山賊じみたその見た目からは想像もできないほど健全なGBNの布教活動を行っている。本人曰く「どんなコンテンツも初心者が入らないと廃れていく……初心者は大切にして沼に沈めねぇとなぁ!」とのこと。
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