追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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12話

トリニティ・ゲヘナ・アリウスを巻き込んだ大事件となってしまったトラブルの後始末は、主にトリニティが中心となって行うことになった。

ゲヘナとしては巻き込まれた被害者という意識が強いという部分が、大きくあまり協力的にならなかったのだ。

それでもどうにかヒナとアコが尽力して決裂寸前というのは回避したようだ。先生も何でも屋的とは違う連邦捜査部本来の面目躍如を果たしていた。

俺は、ややこしい場にややこしく関わってしまった生徒として、取り調べを受けたり報告書を作成その他の手続きに追われ、結局トリニティに留まる時間が延びてしまった。

ナギサやアズサとこれからも連絡をとり、何かあれば支援もすると約束しあい解放されアビドスへ帰ったのはあの日から半月近く後になった。

 

☆☆☆

 

「せめておじさんには一言連絡欲しかったな〜先生経由で死にかけたって聞いた時は肝が潰れそうなぐらい心配したんだよ?」

 

「モモトークしたじゃないですか、後から」

 

 アビドス高等学校の校舎は対策委員会部室にて、ホシノ先輩から軽く説教を受けた。ホウレンソウはしっかりしてほしい&ちょっとした怪我で死ぬ程度の脆い体なのだから大事にしろなど暫くそれは続いた。

 

「ただいま戻りました。あら千神先輩、怪我はもう大丈夫なんですか?」

 

「やあ助かったよ、アヤネ。この通り五体満足で戻ってこれたよ」

 

 ぞろぞろと入ってくる対策委員会の皆。賞金首捕縛やらの日々の活動報告会を名目にした、つまるところの休憩時間だ。トリニティとゲヘナの中核がまるごと消えかねないような大事件があったが、当然ながら他学区は平和……平和というには治安が悪いがいつも通りの日常がここにはある。

 

「その様子ですと、もうホシノ先輩に絞られたようですから何もいいませんが、千神先輩も対策委員会の大切な仲間なんですから、体を大事にしてくださいね?」

 

顔を見て、これは怒っているとわかってしまった。普段は温厚かつ冷静だが、いざという時はきちんと怒るということが出来る将来有望な後輩だ。そんなアヤネの目が笑っていない、ホシノのそれは良くも悪くも可愛げのあるものだったがアヤネの場合は圧があるのだ。

 

「ん、ユキトは自分が弱い事をもう少し認識すべき」

 

「先生も前に出てるのに、俺に厳しすぎやしませんかね……?」

 

「それをいうなら、千神先輩は前に出るどころか、つんのめってるんですよ?」

 

 散々な言われようであるが、事実なので言い返せない。ともあれ、皆の無事な顔を見て話すと落ち着く。死にかけておいてなんだが、かつての世界で見知った人達が死んでいく光景を夢で時々見る身としてはそう意識してしまう。今のところ、明確に変えられたのはアリウススクワッドの子達が先生と和解し、新しい道を歩みだしたことか。十二分に大きい、あの子達の事を先生は気にしていたし。俺もモモトークのIDを交換して、連絡をとるようになった。挨拶程度だったが、何故かアツコはよく連絡をくれる。姫と呼んだらやらユキトは騎士だねと言われたり、サオリが、自分探しの為にアリウスから離れるかもしれないと気に病んでいるようだが……。

 

「それで、ユキト君。今度はゆっくりできそうですか?」

 

「そうしたいけど、そうもいかなそうなんだ、ノノミ」

 

 シャーレの仕事は多岐に渡る。先生が生徒の為にと、あらゆる事を引き受けるからという理由だけではない。それ以外にもアビドスの借金返済の為に色々と、主に連邦生徒会とミレニアムサイエンススクールからの依頼を回してもらっているのが原因だ。

さらにトリニティも加わりナギサが金銭面でのサポートをしてくれると約束してくれたし、正実のハスミもそれとなく、警備の仕事などを回してくれるようになった。そう、先生とはまた違った意味で俺でなければならない状況が急増している。今回は、ミレニアム内でユウカの仕事の手伝いをすることになっている。

 

「忙しないね〜先生もいなくて淋しいよ。ユキト君は若者とはいえ、もう少しのんびりしてもいいと思うんだけどね」

 

「自分で引き受けておいて何ですが、便利使いされてるなと思います、ええ」

 

 ケーキ───トリニティ区内で売られている土産として持たせられなければとても買えたものでない高級品───をつつきながらボヤくホシノの言葉に苦笑いする。

アビドスの中で猫探しから賞金首狩りまでをしているだけだった時とは違い、積極的に顔を売りに行っているからだ。先生のように信頼を得るのは難しいが、積み重ねによる信用なら多少得ることができた。代わりに命も狙われるようになった。キヴォトスにおいて、生身ではないにせよヘイローをもたない子供がしぶとく生き残っているという評価もあってか、はたまた俺の使うガッチャードを奪えば遊んで一生暮らせる報酬を得られるということで挑んできたり等など。

 

「千神先輩がいるとヘルメット団が向こうから寄ってきて、手間が省けますしドローンを飛ばす費用も削れていいんですが……やむを得ませんね」

 

 己の足で長距離を移動しても元が取れる脚力と、バテないスタミナを持つキヴォトス人であっても万能ではない。アヤネの、というか対策委員会の共通認識として、何かと便利なドローンは銃弾と同じかそれ以上に大事なのでケチらないようにしようとしている。

それでも借金返済という大きな枷がある以上、湯水のようにとはいかないが。

 

「あ、だからといって安いだけだとか、替えの聞かない試作品のテスターなんて仕事を持ってこられても困りますからね?」

 

 マーフィーの事もあるしあわよくば融通してもらえないか、という考えも見透かされてしまい釘を刺されてしまった。ただ高性能なだけでなく、趣味に走ったあれこれをしたがる人達がいるのも確かだが。

 

「せめて夕食ぐらいは一緒に行きましょうよ、ね?店長も会いたがってましたし」

 

 セリカのおねだりに断る理由は特になく、皆も同意見のようで満場一致で屋台に向かった。久しぶりということで大将におまけしてもらって色々とトッピングをつけてもらったまではよかったんだが、何故か委員会全員の分を奢る羽目になってしまったというオチがついた。 

 

☆☆☆

 

「聞いたわよ、大怪我したんですって?」

 

 ミレニアムへと向かい顔を合わせたユウカにもやはり同じような反応をされた。最近は多少気を許してくれたのか、口調も柔らかくなった。心配ないと言ったが道中暫くはその話が続いた。

 

「そう、それでね。実はうちの部活のことにで少し手を貸して欲しいの」

 

「俺、戦闘要員でハッキングだのクラッキングだのは専門外だけど?」

 

「違うわよ、ユキト君にお願いしたいのはこれ」

 

 差し出されたタブレットに映るのは何人かの顔写真。指でスライドしていくと、見覚えがある気がしてきた。そうだ、この子達は。

 

「ゲーム部にね、新しい部員が入ってきたの。色々あって、廃部の危機を救った勇者……もとい救世主、なのだけど」

 

 珍しく濁すような口ぶりにおや、と思わず訝しむ。ゲーム部の子達とユウカは仲が良かったはず、ただ一人の部員がきっかけで散り散りになったのが前の世界だったが。

 

「身元調査ぐらいならもうしてそうだし、まさか警護だったり?その子はそんなに特別な才能を持っているのか?」

 

「概ね、その通りよ。あの子が、アリスに関しては……あら?」

 

「お話中失礼します、ユウカ。ユキト様をお借りしても?」

 

「あら、トキ?表に出てくるなんて珍しいわね。いいわ、私の方は急ぎじゃないから終わったら連絡をちょうだいね」

 

 割って入るように突如湧いて出てきたのは飛鳥馬トキだった。メイド服姿はいかな個性豊かなキヴォトスであっても目立つ、その中でも際立った容姿をしていれば尚更だ。

 

「感謝します、ユウカ。さて、ここでは人目がありますので、場所を移します。こちらへどうぞ」

 

  言われるままについていくと、使われていない会議室へ通された。座るよう促されあれよあれよとという間にお茶やらお菓子やらを出してきて、少しの間をおいて口を開いた。

 

「ご無沙汰しております、ユキト様」

 

「まさか、君も……」

 

 驚く俺を見てドッキリ大成功と言わんばかりにピースピースと口でいいながらVサインをするトキ。

 

「はい、ユキト様。本来もう少し早く接触する予定でしたが、リオ様から止められていましたので」

 

「つまり、リオ達も?」

 

 かつての前世で、リオの元で戦っていたことがあった。大事な人を失い憔悴しきっていたリオは当時、自らも前に出て文字通り死ぬ気で戦っていた。そこに遭遇して、というか偶々背中を預ける形になり、何というか、爛れた関係になった。依存しながらも精神の安定してきたリオの側に暫くいてほしいと懇願してきたのが、C&Cのメンバーであるトキだった。

 

「いえ、リオ様だけです。ただリオ様は私よりもずっと鮮明に覚えている様子で。それと……」 

 

「それと?」

 

「はい。思いつめた様子で、とても心配なんです。どうかお願いします」

 

 トキにしては珍しく口篭り、数秒だが沈黙してから頭を下げた。再び顔を上げ視線が合うと、蒼い瞳は僅かながら潤んでいた。ちなみにシリアスだったのはこれまででその後は誤魔化すかのように、何時もよりさらにふざけて振る舞っていた。

 

☆☆☆

 

「天童アリス、ね。例のゲーム部の新入部員だろう?この子がどうかしたのか」

 

 トキと別れユウカに連絡すると再び待ち合わせ、ミレニアムの敷地内にあるありふれたカフェの一角で突き出されたファイル、そこには一人の女生徒の写真と経歴が書かれていた。

 

「あの子、狙われているみたいなの。ただのゲームが好きなだけの不思議ちゃんなだけの筈なのに」

 

 ゲーム部員である才羽モモイからの相談というか、何気ない会話からそのような状況があるらしいと察したが、先生もいる為あまり表立って自分は介入しづらいという。微妙な時期であるため贔屓ととられてはと気にしつつも、普通ではない気配を感じ取ったのだとか。

天童アリスという女の子について、俺が知ることは少ない。ただ、そういう生徒がいてその子は何か大きな事件の渦中にいて、そして命を落としたのだと。リオは自分のせいだとずっと後悔していたが、何があったのかは最後まで聞けなかった。ただ、今の時点ではこうして早瀬もゲーム部の子達も気遣う程度にはいい子なのだということはわかる。

 

「わかった、引き受ける。ミレニアムに滞在するから宿を紹介して貰えないか?」

 

「助かるわ、ありがとう。後でモモトークしておくからその辺は心配しないでいいわ」

 

 少し硬かった表情が安堵したのか柔らぎ笑顔に変わるユウカ。カフェは因みに折半だった、奢るといったらそれはダメというユウカに根負けして領収書もきっちりと受け取らされた。

 

 

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