追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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体調崩したりしてました、すみません
ぼちぼちまた投稿していきます


13話

思えば、妙な話であった。オートマタをはじめとした自律型のメカやパワーローダーのような有人の人型兵器があろうとも、それは全て常識の範疇にあるものである。

ヘイローや神秘といったオカルトの領域に踏み込めるものは、意外にも少ない。ある事が当然で、なおかつ既存の兵器でもゴリ押せるという側面もあるのだと思う。

中にはそう、確かにとてつもない耐久力や火力を備えた生徒もいるが、それとて無敵でないし殺すことだって出来る。

だから、人ならざる怪力をもっていたとしても、ちょっと変わった雰囲気だったとしても、ヘイローを頭上に浮かべ制服を着て歩いていたなら、それは何処にでもいる普通の生徒なのだろうと思い込んでしまっていた。

だからかもしれない。前世において魔王と呼ばれそうになったという生徒の犠牲に、その為に多くの生徒と先生が、心に大きな傷を負う羽目になった戦いがあったということを後から聞いたことを、忘れてしまっていたと。そして、それはキヴォトスを揺るがす大事件の一つであったことを。

 

「……リオ、君との再会がこんな形になるとは思ってなかった」

 

「私もよ、ユキト。でも貴方は、私のあの子への判断に反対しているのね」

 

 天童アリスを巡る騒動によりミレニアムがてんやわんやしている中、俺はリオと会っていた。そこにはモモイもミドリもユズも、そしてトキもおらず周囲にはリオ一人だけがいた。俺の知っているリオよりずっと顔色がよく、頬もそげてもなく、あの頃の死臭すら漂っていた面影はなかった。それなのに、リオはどこか異様に見える。

 

「君が失ったのは天童アリスだったんだろ?それなら何故。今の君は、まるであの子を」

 

「いいえ。これは、あの子を今度こそ喪わない為の決断よ」

 

 遮るようなリオの強い口調に驚く俺。嘆き、苦しみ、絶望し心が折れたままそれでも戦い続けていたリオのイメージが上書きされるのを感じた。

 

「ユキト、貴方は戦力強化の為になりふり構わずドライバーの解析の為にミレニアムに持ち込んだようだけど、それは合理的じゃないわね。私にとっては、棚からぼた餅ともいうべき状況だったけれど」

 

「リオ……何を言って?」

 

脈絡のないリオの言葉に戸惑い、違和感の正体にようやく気付いた。どす黒い悪意の塊のような何かがある事に。

 

「貴方のドライバーを渡してくれるかしら、ユキト?ちなみにこれは、お願いじゃないわ」

 

「穏やかじゃないな、リオ。まだ何も終わっていないんだぞ」

 

 いかなシャーレ所属の生徒というお題目があれど、アビドスの学籍をもつ俺がミレニアムの中で自由に行動出来ていたのはリオのお陰であるとトキに後から聞かされた。まさかその対価に寄越せ、と言っているわけではあるまいがあまりの物言いに諌めようと言葉を選んだが、リオの態度に変化はなかった。

 

「いいえ、だからこそなの。私は貴方にだって死んで欲しくない。これが完成すれば、そして貴方のガッチャードライバーの力を加えればヘイローを持たず、ましてや”先生”でもない男の子が、命を張ることなんてしなくてよくなるわ」

 

【ドレッドドライバー!】

 

「このドレッドドライバーとレプリケミーカードは、貴方がドライバーを持ち込まなければこの戦いに間に合わなかったでしょうね」

 

「なら、それは俺の責任だ。悪いけどリオ、俺はまだ何もできていない。だからまだ、止まるわけにはいかないんだ」

 

「そう、残念ね……」

 

【STEAMLINER!】 

 

「スチームライナーだと!?文字通りの、レプリカってことか」

 

「ええ。そして、こういうんだったわね。変身……」

 

【ドレッド・零式……!】

 

 ガッチャードのものとはまた違うシステムによる禍々しい音声が流れリオの体を包み、変化させた。黒く刺々しい邪悪さすら見える鎧に黄色い複眼、そしてガッチャードと似て非なるマフラーを靡かせた存在───仮面ライダードレッド・零式が誕生した。

 

「無抵抗の相手を攻撃するつもりはないわ、変身しなさい、ユキト」

 

「く……!リオ、俺達が戦う理由なんてないだろ!その力だって!君と俺でまた一緒に!」

 

 

【バレットバーン……!ドレイン!】

 

 俺にとっては使い慣れたケミーの模造品が消費され消え変わり2丁の拳銃へと姿を変え、リオの手に収まった。向けられた銃口から放たれたエネルギー弾を避けろうと後ろに跳躍すると巧妙に当たりそうで当たらない位置で弾けた。

 

「ふっ……!はっ!ユキト!どうして変身しないの!?」 

 

「君と戦いたくない!だが、リオ!君がどうしても間違った方向へ進もうというなら!」

 

【ガッチャードライバー!】

 

【ガッチャーイグナイター!ターボオン!】

 

【HOPPER1!イグナイト!】

 

【STEAMLINER!イグナイト!】

 

「変身!」  

 

【ファイヤー!スチームホッパー!アッチー!】

 

 俺が変身する素振りを見せると途端に攻撃する手を止めて待つリオ。本当にベルトを奪いたいだけなら、と思わないでもないがそこはリオの中の合理性というやつなんだろう。

 

「リオ!」

 

【ガッチャージガン!】

 

 直接当てて来ようとしてくるリオに反撃するが、巧妙によけられ2丁で数倍の火力が帰ってくる。致命打にならないが受け続ければただでは済まないぐらいの威力はある。

 

「私相手だからともし本気を出すつもりがないなら、それは慢心ね。……死ぬわよ?」

 

【アッパレブシドー!ドレイン……!】

 

「っ!」

 

 刀にも似た武器が生成されリオの手に収まる。こちらが反応するよりも早く距離を詰められ、咄嗟に構え直したガッチャージガンを弾き飛ばされそのまま胸の辺りを大きく斬られ、俺もまた仰け反った。

 

「そんなことはない、俺は……俺、は!」

 

【ガッチャートルネード!ケミーセット!】

 

【トルネードアロー!】

 

 武器を呼び出しカマンティスを装填し弓矢の如く射出し、牽制ではなく当てるつもりで向ったそれも刀身───ブラッディABで無効化された。これ程までに届かないのか、という焦りと思うように力が湧き上がらなさを感じる。

 

「零式はあくまでデータ収集の為のプロトタイプ、肩慣らしのつもりだったけれど……貴方相手にこれで充分だなんて、期待しすぎたかしら」

 

「何を言って……!?」   

 

【ブラッドレイン……!】

 

 がっかりしたと言わんばかりにため息をつくリオ。ドライバーに備え付けられたレバーを真反対へ倒すように引く動作はこちらのフィーバーを彷彿とさせる。手に持った剣に溶岩のようなドロリとしたエネルギーを纏わせると地面を蹴り一気に距離を詰めて振りかぶってきたのがスローモーションで見えた。

 

「あっ……!ああああ!」

 

【ケミーセット!ケミースラッシュ!】

 

 呆然とする意識を置き去りに体は動いていた、俺もまたアッパレブシドーのケミーカードを装填しドレッドの一撃に向けて振り放つ。しかしそれでも一時しのぎにしかならず、僅かに停止しただけであっさりと放った一撃は砕かれた。そしてその一撃は俺の胸部にあたり、爆発した。

 

「……あっけないものね、でもいいわ。ドライバーが無事で、貴方も生きているのなら及第点よ」

 

 変身が解け地面に倒れ込む。相殺こそ出来なかったもののそれでも軽減する程度ではあったらしく、意識はあり身体へのダメージもそれほど大きくないようだ。だが、今の俺にとって身体よりも心のほうがはるかにヤバいようだ。

 

あの黒い衣服を身に纏ったシロコと戦った時も、心の何処かにそういった見知った仲間が何故こんな事をという思いがあった。まして目の前の相手は、逆行前は心を通わせていたし依存しているところもあった。だが、そんな思いも今のこの状況では。

 

「駄目だよ、会長。ここで彼と彼のドライバーをこれ以上害されるのは困るな」

 

 コロン、カラカラカラ……とこの場に不釣り合いな缶のような形状の物が転がってきて、まもなく周囲に白い煙をまき散らし視界を塞いだ。何事かと思うと声の主は俺を抱き抱え、跳躍し一気に距離を取った。

 

「…エイミ、ヒマリに伝えて。邪魔をするなら貴女でも容赦しないと」

 

「りょーかい、素直に聞いてくれる人じゃないと思うけどね」

 

 能力的にいえば不明瞭な視界の中であってもこちらを見つけ出せそうだが、リオは何故かこちらを負うことをせず。俺を抱き何処から取り出したのか、俺の顔にガスマスクを押し付けてきた女の子───和泉元エイミに伝言らしきものを伝えた。

 

エイミが俺を単独で助ける理由はなさそうで、ましてやこのタイミングで都合良く来たということは監視していたのだろう。ヴェリタスから特異現象捜査部へ出向し、部長を務める明星ヒマリが。

 

 俺自身はリオを通して顔を合わせたことがあるぐらいでそれ程の親交はなかった。今のこの逆行後の世界でも、ミレニアムに何度か顔を出しさらに長期間滞在していても見かけることさえなかった。 

 

「本当に追ってこないんだ……ユキト、飛ばすからしっかり捕まってくれる?」

 

「えっ?あ、ああわかった」

 

 きょろりと逃げてきた方を見つめた後、あまりにも何でもないことのように言うので戸惑ってしまう。異性に抱き着く云々もあるが、露出度やそのスタイルの良さを密着していたことで否応なしに意識してしまったからだ。とはいえ身の安全の為にはやむなしと出来る限り、余計な意図を出さないよう体に手を回ししがみついた。それを確認すると、それまでも素早かったがさらに加速して特異現象調査部の拠点の一つまで一気に向かっていった。

 

☆☆☆

 

「……実物を見るの初めてですが、貴方が千神ユキト君?」

 

「そういう貴女は明星ヒマリ先輩、ですか。お噂はヴェリタスの皆からかねがね」

 

「確かに私は超天才清楚系病弱美少女ハッカーと名高いですが……貴方は逆に随分と変わった男の子だと聞きましたよ?」

 

 車椅子を押して現れた明星ヒマリは体にハンデこそあるが、ハッカーとしての能力はミレニアムの中でも最上位───黒崎コユキのようなある種の爆弾を除けば───の頭脳と実力を持つ彼女はキヴォトス内で部名に見合うなにかを追っているらしい、そこもリオはあまり語らなかった。

 

だが、ミレニアムが校風としてそういったオカルトや不可思議な物を科学的なアプローチで解明しようとしていることは、逆行して改めて色々見るようになって察する事が出来た。

 

「で、明星先輩はどうしてこちらの……」

 

「和泉元エイミ」

 

「コホン、それでわざわざ和泉元さんに俺を回収させた理由はなんです?」 

 

 一瞬フルネームを失念したとも言えない俺の様子に横から口を挟むエイミ。

 

「あら。友人と他校の生徒とはいえ後輩が無用な仲違いが原因で、死にかけていたのを助けるのはいけないことですか?」

 

「明星先輩とリオがどのような確執を抱えているかは知りませんが、やはり先生にもマーフィーのデータが流れていたんですね。あまりにもタイミングが良すぎますよ」

 

 心にもないことをアルカイックスマイルで口にするヒマリを見てむかっ腹を立てる一方で、俺側に置くことで運用している犬型ロボットのマーフィーは、ヘイローを持たない俺にとっての第二第三の目となり耳となり、時には豆粒みたいなものだか銃火器だって使用する。しかし、そんな頼もしい仲間であると同時にもうひとつ役目をがある。

 

 それが俺も同意の元で行なっているバイタルデータの収集だ。ガッチャードを構成するガッチャードライバーの解析よりも、運用している俺の状態から得られるもののほうが今は確実そうだというウタハの言葉もあったが。得も知れぬものだが、名前以外は定かでなくゲマトリアが関わっている疑惑すらあるという特級呪物だが、安全に運用する為だけでなくより高い性能を引き出す為にと。

 

「リオ、ですか。こんな純朴そうな子を本当にどこで引っ掛けたのやら……おほん、今は良いでしょう。確かに私の意思で貴方のデータをこちらにも回してもらっています。ですが今回捉えたのはエイミの功績です」

 

「ユキト、あの場は私がいなかったらどうしようもなかったよ。リオ会長の使っていたパワードスーツ……ドレッドとやらの力かな」

 

「とことん俺は覗かれていますね、貴女といい」

 

 目立ちすぎたというのは多分にあるし、そういう事もありえるだろうとは頭の片隅で考えていた。だがこうしてやられるとたまったものではない。

 

「ワンマンアーミーを気取るには中途半端過ぎるんです、貴方は。その癖、自分からその根幹を晒しにいくんですから自業自得ですよ」

 

 その後も暫く解放されずくどくどと続いたが、纏めるとどうやら心配してくれているらしい。

 

「ふう、話し過ぎたら疲れました。エイミ、私は少し寝ますから、彼の相手をしててください」

 

「え、部長。私はちょっと……」

  

 満足したのか有無を言わせずエイミに俺を押し付けて奥に戻っていったヒマリ。暫くして二人の間に気まずい沈黙が流れた後、お茶でも飲む?とエイミが切り出したことで会話が再開し、ヒマリが起きるまでの間だけでもとまったりすることになったのである。

 

 

 

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