追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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すっかり遅くなってしまいました、更新止まっている間にお気に入り登録してくれた方もいまして励みになりました。デカマラのPVやらハイランダーのイベントやらも始まってたりしてそっちも見ながら頑張ります


15話

 

 

資料によると要塞都市エリドゥは、元々は過去に廃墟となったものをリオが秘密裏に買い取り作り上げたものだ。設計以外の組み立てが必要な物は無人機だけでなく、場合によっては日雇いの人員を大量に使い捨てるなど金に物を言わせて驚異的な速度で完成させた。ただ、その金の出処はミレニアムから不正に引き出し───事実上ミレニアム全体の財政状態を把握しているユウカにさえ隠し通したのか、或いは何かしらの手段で誤魔化したのかは不明───たようだが。

 

「君がこっちへ来たのか、トキ。意外だな」

 

「リオ様から厳命されていますので、ユキト様を安全に確実に連れてくるようにと」

 

 俺の知っている状況とは既に大きくズレているにせよ、リオが天童アリス確保と殺害による事態の収拾を図る意図は変わらないのではと思っていた。故に、今こうして立ち塞がるトキは俺に願いを託しつつも敬愛するリオの味方であり続ける為の行動をとったのだろうと。

 

「……何かあったんだな?」

 

「はい、事態は急を要します。リオ様と何があったかは聞いていますし。此方から頼んでおいて失礼かとは思いますが、今はどうか」

 

「いいよ、元々リオと好き好んで敵対するつもりなんてない。それより道すがらでいいから聞かせてくれ」

 

 武装を解除し足でバイクの横を飛ぶように走って進むつもりだったトキを説き伏せ後ろに乗せ、走り出した。ぎゅっとしがみつき押しつけられる膨らみを感じて体が強張ったが、平静を装い走り出して暫くするとトキは口を開いた。

 

「リオ様が作ったドレッドドライバー、あれは厳密に言えばリオ様の作品ではないんです」

 

「何?確かにリオのデザインにしては妙に禍々しいし可愛げのないと思ったけど。そで?」

 

 当初、侵入者である俺を撃退する為に向かってきていた警備ロボはトキという管理者側の権限によって停止させられていた。

 

「黄金卿という男が接触してきたんです、レプリケミーの製造技術と共に」

 

「また、あいつか……!いや、すまん。続きを頼むよ」

 

「あのドライバー自体に何があるのかはまだわかっていません。ただ……」

 

 トキにしてはかなりあやふやで選ぶ言葉にも困るような仕草に、これはまたとんでもない事態なのだなと感じとった。そもそもリオの性格からして、何も無いのなら回りくどい頼り方はしない。俺を突き放すように話すことはないとばかりガッチャードライバー諸々を奪おうとしたのも、俺と同じようにその先にある結末を中途半端に知ってしまったことと、そしてミレニアムでも上位に属する頭脳から導き出したのだろう、一人で決着をつけると。俺よりもずっと迷いながら苦しみながら、故に視界も狭くなっているのかもしれない。進むしかないと、引き返せないと。

 

「リオ様がこの都市に施したシステムのいくつかはあの男から齎されたものです。その影響か分かりませんが、今このエリドゥは天童アリスの制御下にあります」

 

「これだけは聞かせてくれ、トキ。リオも先生もゲーム部の皆も無事なんだな?」

 

 よくないと思っていた中でもかなり不味い想定が帰ってきて運転中でなければひっくり返りそうなところを、理性で抑え込む。

 

「はい、ですが状況はよくありません。早い段階で逃がされた私はまだしも、リオ様が……」

 

「すまん、トキ。俺がもう少し強くてせめてリオを引き留められて居ればよかったんだが」

 

「いえ……ユキト様!あれを!」

 

 見えてきた景色の先にはリオと、ロボット数体──アバンギャルド君何号だろうか?───を引き連れたリオと目の前には天童アリスが数を諸共しない不可思議な力で寄せ付けないでいた。

 

「来てしまいましたか、ガッチャード」

 

「天童、アリス……じゃないな。君は誰だ?」

 

 顔つき背格好はそのものだが、何かかが違う。何よりいつもの満面な笑みもなく仮に思いつめたような感情を抱えたとしてもここまでで大人びたものにはならないだろう、そう感じた。

 

「驚きました。まあ、いくら鈍いお前でもこの状況であれば流石にわかりますか。私は”Key”、王女の体を一時的に借り、王女を助ける為に宿る存在です」

 

「ユキト、彼女は無事よ。ただ、今は眠っているようなの」

 

「……リオ」

 

 ドライバーこそつけているが、変身が解けたのか生身で体の所々が傷ついたふらついているリオに駆け寄り庇うように前に立った。

 

「Key、今君は王女と言ったがどういうことだ?」

 

「答える義務はありません。千神ユキト、お前は先生達のように王女を救おうなどとおこがましい考えを持ちますか?」

 

 天童アリスの背格好で、顔で、声で吐き出される言葉に顔を顰める。一度は俺を退けたリオが敗北したという事実は、十二分に警戒し踏み出すのを躊躇するものだ。だが、ヒマリから預かってきた装備もある、託された思いもある。何より、俺は負けても死ぬわけにはいかないのだ。

 

「俺が天童アリスを助けに来たのは事実だが、こっちの調月リオを回収しにきたんだ。だから、ことと次第によっては話を聞いてもいい」

 

「傲慢、ですね。そのような考えがあの男や無名の司祭達への隙に繋がるんです。そのような有様だから、先生もお前も……」

 

「無名の司祭?」

 

「……余計なことを話しすぎました。今度は逃がしませんよ、千神ユキト、調月リオ」

 

 妙な焦りと違和感を感じさせる言葉に記憶の彼方にある何かがまたずきりと痛んだが、振り払う。先生達は生きているようだが、無事かはわからない。エリドゥ突入にあたり装備の譲渡だけでなく、ミレニアム内の生徒達に声をかけ全面的にバックアップしてくれるというヒマリ。どこまで信じていいのか、そしてそれは間に合うのか?という疑問はこの状況において焦りを産むものだが。

 

「だめ、これは私の責任で……くぅ……!」

 

「リオ、動いちゃ駄目だ。トキ、リオを頼むよ」

 

「はい……申し訳ありませんユキト様、ご武運を」

 

 リオを抱えて下がっていくトキを目で追うだけで興味も無さそうにしているKey、そしてその周りにいるロボット達も命令なのか動かない。

 

「……いってくる」

 

「本当に……本当に気に入りません、何故お前のような男が!」

 

【ターボオン!ファイヤー!】

 

【スチームホッパー!アッチー!】

 

 イグナイター付きのドライバーにケミーカードを装填し変身し、既に攻撃を始めていたKeyとその一団に対峙した。

 

「無駄です!お前の能力は既に計測済み!ましてや、調月リオにすら勝てない程度で王女を救おうなどと!」

 

「そいつは、どうだろう、な!」

 

 キヴォトスでもそう見ることのない大口径の機関砲を構えたロボット達が放つ砲撃を回避しつつ破壊する。エリドゥ内の生産能力を使って数を揃えたのだろう、何処にこれだけの数が隠れていたのだろうかと言いたくなる。カイザーだってこんな数の暴力はそうやってこない、それに加えてKey自身もだ。天童アリスが言うところの光の剣・スーパーノヴァ───という名付けられたレールガンではなく、コルトパイソン357と思しきリボルバーを片手に構えている。アリスの身体であるからなのか、あるいは彼女自身がもつ神秘なのか、飛んでくる銃弾の威力はとても受け流せるようなものではなかった。

 

「……早速借りますよ、ヒマリ部長!」

 

「逃げるつもりですか!?」

 

 大きく後ろに飛びバイクの前で着地し飛び乗る様は、這々の体で今にも退却しそうにも見えるだろう。本来はリオもしくは今後想定されるゲマトリアやら相手の為のものだが、そのうちの一つは今試して損はあるまい。大事に持っていてもこの場を凌げなければ何の意味もない。

 

「あれは、何かまずい……!全機、あれを何としても破壊しなさい!」

 

 バイクにつけられた無線からの信号を受けて、甲虫のような形をした支援メカ・インセクトガッチャーアーマーが飛んできた。バカでかいというだけでなく、第六感的や脅威を感じたのかKeyは銃口をアーマーへ向けたのでそれを俺が盾となり受け止めた。

 

「合体完了!ガッチャージガンの装填口は……ここか!」

 

【セット!】

 

  頭上で分離しバイクの左右を覆い正面に長筒ともいうような砲身がついた。これがアームドモード、まだ搭載されていない機能も多いとのことだがそれは今は仕方はなしとしよう。

 

「そんなみた虚仮威しで!」

 

「それは、みてのお楽しみだ!頼むぞ、皆!」

 

【カマンティス!バレットバーン!】

 

 2枚のカードをスラッシュさせる動作はいつもと変わらずだが、ガッチャージガンを装填した先には砲身があり、バイクにもケミーたちの力が溜まっていくのがわかる。前進し再び銃口をこちらに向けてくるロボット軍団を強引に突破するべく、同時に試し撃ちを兼ねて引き金を引いた。

 

【ガッチャージインパクトバスター!】

 

「なっ……一撃で!?」

 

 多数対の戦いを強いられた前世において広範囲に満遍なく放つような技がないというのも、課題の一つだった。今発動したそれはその鬱屈とした気持ちを吹き飛ばすようなものだった。炎をまとった刃と弾丸が四方八方にビームと同時にロボット達を燃やしバラバラに切り裂き爆散していった。驚くも次の手を打とうとするKeyと一気に距離を詰めるべく、俺もまた次のケミーカードを選び装填する。

 

【ゴルドダッシュ!スチームライナー!】

 

「Key!天童アリスの体から出るんだ!これ以上悪用しないというならまだ引き返せる!リオ達ミレニアムだけじゃない、先生に口添えしたっていい!」

 

 2枚のビーグルケミー───主に乗り物の姿や力を持つ───カードを装填した力で車体を強化すると硬化し突撃モードに変形した。これで勝てるなどと思ってはいないが、体勢を立て直す時間を簡単に与えない、そういう意味も兼ねた説得である。

 

「ふ、ふふふ……何処までも馬鹿にして!」

 

「馬鹿になんてしてない。だが、その体は天童アリスのものだろう!君にいつまでも間借りさせたままにさせるつもりはない!」

 

 Keyの激怒した声に反応し向かってくるいくつかの機体を跳ね飛ばし、ガッチャードと連結しエネルギーを受け強化された装甲は銃弾をもろともせず全て無力化した。しかし

Key自身にはまるで届いていない、巧妙に直撃を避けられ、迎撃される。

 

「どこまでもふざけた男です。ですが、方舟を作る時間稼ぎには十分だったと言えるでしょう、これで……!?」

 

『ユキト君、無事!?生きてる!?』

 

「早瀬か!」

 

 ただリオや俺を返り討ちにしようというだけではなかったらしい、何か企んでいたらしくエリドゥ全体から異様な気配が、いやエリドゥの外の何処かからあってはならないものが生まれようとしているのを感じた。だが、それは直前になって消えた。同時にバイクにつけられた無線に通信が入り、空中の投影された姿はユウカとノアだった。この件はゲーム部とシャーレの手に余る規模であるのは理解していた。思えばウタハ先輩達も動いているのだ、ミレニアムの中枢にいる二人がその能力を活かした戦いをするのは突然だろう。

 

『そっちの事は聞いてるわ、バックアップは任せてアリス達を助けてあげて!』

 

『先生達は今、アリスちゃんの精神世界に入っているようです。そちらに会長がいらっしゃる筈ですが……聞いていませんでした?』

 

 今度こそと前のめりになりかけユウカの後に聞こえてきたノアの声に思わず動きを止めてしまった。仮面で顔を隠していなければかなり酷い表情を晒していていると思う。 

 

「後はこちらで引き継ぎます、ユキト君はこちらで」

 

「ヒマリ部長、来てたんですか」

 

 気づけばそこにはヒマリがいた。いや、入れ替わるように来たように見えただけで既にこちらにいたようだ。普段なら側に控えているエイミは不在で、一人で車椅子でこちらに移動してくると隣で止まった。

 

「ええ、少し準備に時間がかかってしまいました。一時的にですがKeyの動きも止めました。ですが肝心の先生達が少々苦戦しているようですから、ユキト君も精神世界にダイヴしてきてください」

 

「ここまできたらやりますよ、ええ。リオやトキに申し訳ないですし」

 

 あまりにもいいように使われているような扱いだが、ここも一つ大きなチャンスだろう。天童アリスを救うだけで多くの被害を未然に防ぐことが出来るのだ。それにどちらにせよ、精神世界にダイヴしているらしい先生達一行を手助けしてアリスをと戻さなければ大きな揺り戻しとして、かえって悪い自体になってしまっては元も子もない。

 

「……そこで、他の女の子の名前を出すのが貴方の悪いところですよ?まぁいいです、目を閉じてじっとしていてください。それから、向こうでは何があるかわかりませんからくれぐれも油断しないように」

 

 何やら頬を膨らませ不機嫌そうにブツブツと呟いた後顔を上げていつもの笑顔に戻るヒマリ。変身を一度解くべきかともドライバーに手をかけたが、それは制止されて素直に目を閉じた。そして、目を開けると、景色は一変していた。

 

「こんな所にまで来るなんて、本当にお前は……」

 

「ユキト、君も来てくれたんだね」

 

 殺風景な空間の先には先生とゲーム部員達とそして天童アリスとKeyが対峙していた。本来であれば精神空間の主たるアリスを救い出し、すぐにでも脱出すべきなのだが事態はやはり簡単ではなさそうだ。

 

「すみません、Key、ユキト。アリスは……アリスは!魔王ではなく勇者として、皆とこれからも一緒にいたいんです!」

 

「王女……そう、ですか貴女は違う道を選ぶことが出来たんですね」

 

 俺に決意の顔を向けた後、アリスの意思を受け出現したかのようなレールガン(光の剣・スーパーノヴァ)を引き抜くと皆の応援をうけ、その引き金を引いた。

 

 筈であった。光に包まれ肉体の主導権はアリスへと戻され先生を含めた異物は排出されなければならなかった。だが、現実に戻ることなくKeyがいたであろうその場所には金を主体とした体にスーツを着ていて、顔と認識出来る部分に黒いモノクルをつけた男──黄金卿が立っていた。

 

 

「残念だが……もう少し、私のケミストリーの為に付き合ってもらおう」 

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