追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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なんとか月末に間に合った、ワイルドハント系の情報が一気に来たりアリアス編があったりと大きな動きがあることに喜びつつ、更新します。課金は……センタイリングとリョウテガソード買うんで悩み中。


20話

SRT特殊学園はその名目上、キヴォトスのあらゆる自治区への介入および捜査権が連邦生徒会長の名の下に与えられる最高学部であった。本来であれば今のシャーレの先生が行なっているような仕事も彼女達がする筈だったが連邦生徒会長不在により宙ぶらりんとなってしまい、その殆どはヴァルキューレ等への異動及び吸収が決まっているらしい。らしいというのは、まだ書類上はSRT預かりの生徒が大半だからだ。

 

「千神、ここにいたか」

 

「七度先輩?」

 

RABBIT小隊への対応は先生とヴァルキューレに一任し暫く様子を見るという命令に変更され、あまりのことに閉口し文句の一つでも言ってやろうとしたが先生だけでなくFOX小隊にまで止められた。そんなことが今までなかったわけではないが、カヤへの不信感がそうさせたのだろうか?

 

「ああ、お前は特に不満そうにしていたからな、様子を見に来た」

 

「それは、すみません。頭冷やしたんで、今はもう大丈夫です」

 

「それが大丈夫という人間がする顔ではないぞ、私はお前の事をまだ信用した訳では無いが隊員の状態を把握するのも仕事だからな」

 

それなりの装備とそれなりの人数を抱えたSRTは、それぞれが拠点を与えられる。セーフハウス───表向きはオフィスビルだが───の一室を唯一の男性と言うことで暫定的に寝床として与えられた俺は手持無沙汰でいた。

 

アビドスやシャーレにいる時は、人手不足で何でもかんでもやらねばならない事が多かったが、流石にそこは規模も体制も整ったSRTのほうが上だった。今は見る影もないようだが、俺から見ればそれは大した違いでないように感じた。

 

「お前は、不知火防衛室長についてどう思う」

 

「……残念ながら信用はできても、信頼はできません。何か腹に一物あるように感じました」

 

不知火カヤという人間の人となりを直接会って確かめた。そして今の評価を端的にまとめればそうなる。ただ、逆行前にカヤが起こしたあれこれについてこちらに来てまで責めるつもりはない。まだやらかしていないという点を考慮しても、既にこの時点でキナ臭い。

 

逆行前を足したとしてもキヴォトスで目覚めてから1年程度だろう。そんな俺でも数度話した程度で感じ入るものがあったのだ、目の前のユキノとて知っていそうなものであるが。

 

「正直だな、お前は。そんな様でよくやってこれたものだ」

 

「何です。自分から聞いておいて」

 

「冗談だ、だが実際のところお前は騙されやすそうに見えてな」

 

「あって間もない七度先輩にまで言われるとと思ってもなかったです、そんなに危なっかしいですかね俺は」

 

世話を焼いてくれたユウカもアビドスの皆も、便利屋の皆も、そして逆行後に関わるようになった生徒達に加えて先生でさえも。それなりに冷静に理性的にやってきたつもりだが、どこか危うさがあるらしいと。

 

「こらこら、あまり後輩君を虐めたら駄目だよユキノ?」

 

「ニコさん、すみません。騒がしかったですか?オトギ先輩とクルミ先輩も」

 

「別にいいよ、隊長と目的は同じようなものだから」

 

「それで、そいつにもう真実は伝えられたわけ?」

 

気配を消して控えていたであろうニコ達が入室してきて、穏やかな空気が流れかけたがクルミの言葉に途端に皆の表情が曇った。

 

「千神、お前は私達が本来連邦生徒会から追われている逃亡犯なのは知っていたな?」

 

「……ええ、それとなくは。防衛室長に首輪をつけられているのも含めてろくなことではないだろうと」

 

連邦生徒会を襲撃したのがSRTであるらしいとは先生を通して既に知っていた。ただそのあたりが妙にはっきりしすぎている、プロの犯行にしては雑だとも。

 

「なら、突き出そうとは思わなかったのか。お前はシャーレに籍を置いているんだろう?」

 

「まあ、不知火防衛室長と一緒にいた時点でキナ臭いとは思っていましたのでそれとなく調べさせてもらいました。ただ」

 

「ただ?」

 

俺としてはというか、俺の権限ではヴァルキューレの持つ捜査資料を取り寄せることはできない。それが出来そうな先生も真正面から生徒扱いした子達を疑う事を、簡単にはしない。故に遠回しな足で直接回ってそれとなく話を聞いて回った。

 

それすらも門前払いが大半であったが、中には面識のある生徒もいて彼女達がそんな事をするとはというものもあった。バッサリと切ってくれるような側の意見も聞いておきたかったのだが……。

 

「先輩達がそうしたという決定打になり得るものはなかったので、自分は信用してみようかと」

 

「何、それ?あんたそんな不確かな考えだったわけ?銃弾一発で死ぬような弱い体しててさ」

「シャーレの一員として、まずは生徒を信じてみることにしてるんですよ。少なくとも先生はそうですから」

 

クルミの表情が、呆気にとられそれが呆れにそして苦笑へと変わっていく。まあこのスタンスはぶっ飛んでいるだろう、俺とて逆行を経てさらにシャーレの一員となって先生と過ごす時間が増えてようやくだ。

 

「……コホン、お前もひどく先生に染まっているのはわかった。その上で話しておきたい。今だけは盗聴の心配がないようにしてある」

 

オトギが後ろで盗聴防止の機器のセッティングをしてるのを横目で見る。それならばもう少しマシな場所があったのでは、とも考えたが敵のホームだということを考慮するとそのようなものになるのかもしれない。

 

「ごめんね、ユキト君。でもこれは私達が生き残る為でもあるから」

 

「さて。私達の首元につけてあるこのチョーカーがあるだろう、これは爆弾なんだ。私達は即死しなかったとしても、周囲に大きな被害をもたらすだろう」

 

「まさか、そんな……GPSまでついてるんですか?それは」

 

ニコの謝罪を経て口を開くユキノ。わざわざこれを俺に伝えるのはどういう意図だ?外せないらしい、というのは何となくわかった。文字通り、生殺与奪の権を握られた状態だからこそ俺を通して先生に助けを求めようとしているとも考えられる。

 

 

「事実だ、それにどうもそれ以外にもヘイローをもった生徒に対する特殊な洗脳すら可能な装置が組み込まれているようだ。そこで、いざもし何かあった時にはお前に後を託したい」

 

 

「な、何を言い出すんですか!大体、俺にそんなことを託していいんですか!?」

 

 

あまりのことに立ち上がり声を上げてしまう俺。いざとなれば無理やりにでも外す手段を考えるつもりでいた、俺一人では無理でも例えばミレニアムの力を借りるだけでも選択肢が増える可能性だってある。そうじゃなかったとしても、まだ時間があると考えるべきだ、それなのに。

 

「まあ、落ち着け千神。別に私達とて、敗北を前提としているわけじゃないんだ。お前には先生と違ってヘイローこそないが、私達に対抗できる力があるだろう?それならば、万が一の時に託せるだろうとな」

 

「ユキト君、万が一の時はお願いね。先生もどんな人か直接確かめておくけど、君には先に伝えたかったんだ」

 

ユキノとニコからのそれぞれ詰め寄るように”お願い”されその場は頷くしかなかった。もう少し話していたかったが、先生からの連絡があり一度離れざるを得なかったからだ。

 

☆☆☆

 

「RABBIT小隊が全員が捕まったって本当ですか!?先生」

 

「うん、そうなるかな。でもあくまで任意だよ、調査したら解放してもらえるようカヤにお願いするつもり」

 

先生からのモモトークで向かった先はヴァルキューレ・公安局の取調室。通された先で透視窓の前で俺は先生からあらましを聞いていた。一度は公安局による鎮圧に失敗したが人手不足で駆り出された生活安全局と公安局の局長を率いた先生の元で戦闘になり勝利した。結果的にまずは彼女達の言い分を直接聞いて場合によっては説得しようという先生の案が受け入れられたということだ。

「ユキト、わざわざ抜けてこさせてごめんね。そっちは大丈夫?」

 

「いえかえって手間が省けました、どうも意図的に足止めされていた節があったもので」

 

公安局に対応させるのはいい、先生が向かうのもいい。だが潜伏している場所が分かっていて何故だ?姿を見られるのが不味いのだとしてもやりようはあるはず、やはりカヤは何か他に一物抱えているのか……?

 

「そう。リンのお願いとはいえ無理をしたら駄目だよ?いざとなれば逃げて戻ってきていいから」

 

「はは、そういうわけにはいきませんよ。”いのちをだいじに”ってスタンスには賛成しますけどね」

 

「先生、こちらで一通り終わりました。先生も、もし聴取をご希望なら……む、貴様は誰だ?」

 

「お疲れ様、カンナ。こっちはユキト、シャーレで私の手伝いをしてもらっている子だよ」

 

「そうか、きさ……貴方が。尾刃カンナだ。眉唾物だと思っていたが本当に男子生徒などいたのだな」

 

取調室から出てきた女性の姿に会話を中断し、身なりを整えていると先生は相変わらずの人のいい笑みで親しそうに話しかけた。この恐れ知らずなコミュニケーション能力は見習いたいところだ。

 

「こちらこそ、尾刃局長。お邪魔しています。ところで……彼女達の事ですが」

 

「本来であれば取り調べも短時間で済ませるわけにはいかないのだが、今回はテロ行為をやめる代わりに一時的に先生の監視を条件に解放する、そうですね先生?」

 

「うん、カンナも手間をかけて申し訳ないけど私は彼女達の言葉と意思を信じたいから」

 

先生はどんな生徒に対しても基本的に味方であろうとする。無闇に助けるのではなく寄り添い話を聞き、生徒にとっての正しいと現実の落とし所を探せるようにしたりもする。だからこそ生徒からの信頼は絶大だし、信用も得ている。一方でその能力を危険視したりそもそも大人というものや先生の善性そのものを疑い嫌われたりする。命の危機だって一度や二度では済まない。だというのに……

 

「私は反対です、と重ねて言っておきます。防衛室長の判断次第でしょうが……無闇に事件を長期化させるのは危険です」

 

「ありがとうね、カンナ。頭に入れておくよ」

 

「……私は公僕としての職務を果たしているだけです」

 

去っていくカンナとすれ違うようにカヤが現れた。いかにことがこととはいえ防衛室長自らが取り調べをするなんて、 それだけ大事といえばそうだが何やら意図を感じる。もっともこれは俺がカヤへ抱く悪印象からくるものかもしれないが。

 

「あら、こちらに来ていたんですね千神君」

 

「ええ、先生から連絡を受けまして。これで場合によっては俺の役目は終わりですかね?」

 

半ば嫌味のようだが構うまい、そもそもこの程度では何も感じないだろうが。

 

「まさか、ふふふ。シャーレとの協力関係は維持しておきたいのでこれに限らず期待しています」

 

「ユキト、君の方はどうだった?」

 

私自身で聴取したいのでと入っていくカヤを見送り振り返りこちらを見る先生の表情はいつもの人のいい笑みから少し崩れ悲しそうだ。

 

「いい同僚、いえ先輩達と仕事をしていますよ。ただ都合よく足止めされているようです……先生もどうか気をつけて、またカイザーのような連中に狙われないとも限らないですから」

 

「私は大丈夫、ユキトこそもう死にかけるような無茶はしないで。これは約束してほしいな」

 

これ以上は長居しても口を開きかけたが、不意に抱きしめられ頭を撫でられた。あまりの事に体が硬直して動けない。今更のことではあるが先生の胸は大きい。俺の知る限りではハスミやノノミ、リオ辺りに匹敵する大きさだ。ホシノはよく抱きついてとても羨ましいと内心思ったことさえあった。だが冷静になると先生の鼓動が速いのを感じる、少なくない先生も心の内側は乱れているのだろう。

 

「すんません、先生。あの、離してもらえると助かるんですが」

 

「そう?ユキトはこういうことをすると喜んで落ち着いてくれるって……」

 

何処でそんなデマをなどと訂正しようとし吹き込んだであろう人間は限られていてその中には気恥ずかしいところを見た、あるいはそういう状況を作った本人かもしれないと考えあえて黙り込んだ。最終的に先生は離してくれたが、暫く変な気持ちのままで頭を冷やしてから戻ることにした。

 

 

☆☆☆

 

FOX4(オトギ)状況は?』

 

『ターゲットは建物を出るみたい、ドローンを下げていいよ』

 

『全くいいご身分よね、火急だなんだと言っておいて先生との逢い引きなんて』

 

『まあまあFOX3(クルミ)、あれぐらいはコミュニケーションの範囲だと思うのよ?』

 

FOX2(ニコ)3(クルミ)、無駄話はそこまでだ。ドローンと機材を回収し撤収作業に入れ。4(オトギ)もいいな?”オペレーション・ピーピングトム”はこれで完了だ』

 

ユキト達を近くのビルから覗くオトギ、そして更に離れたところからドローンを操作するクルミとそれを護衛するニコ、遠くの指揮車でドローンから送られる映像を元に指示を出すユキノ。彼女達は危険を冒してでも、表向きは敵地へと乗り込む形になった彼を心配して、あるいはスパイの可能性も考慮してということだが、実のところをいえばRABBIT小隊へ向ける感情とはまた違う方向で後輩を心配していたのだ。

 

そんな相手が自分たちの上司と鉢合わせるだけならまだしもシャーレの先生と何やら親しい以上の雰囲気を漂わせていることに、皆モヤモヤとした感情を抱えながら帰還した。この後にユキトが根掘り葉掘り尋問まがいのことをされるのだが、それはまた別の話である。

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