追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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4話

「こ、こいつらなんでこんなに強いんだよ!」

 

「退却だ退却ー!」

 

 先生の指揮の元という事を差し引いてもそれ程の相手ではなかったようで、襲ってきた敵はヒフミも加えたアビドスの面々によってあっさりと撃退され逃げていった。

 

「皆さん、勝利の余韻に浸っているところ申し訳ないのですが」

 

「うう〜ん、あまり長くここに留まるのは不味そうだね〜」

 

 ワイワイガヤガヤとしているところに割って入るのは躊躇われたのか口を濁すアヤネの言葉にホシノ先輩が真っ先に反応し、とても気怠そうに答える。

 

「ユキト、貴方の仕事についてだけど……本当は誰か一人補佐につけるつもりでいたけど」

 

「わかってます、阿慈谷さんを守ってここを出るのを優先するんですよね?大丈夫です、いざとなれば日を改めてますし」

 

 シャーレに籍をおいているとはいえ、基本はアビドス所属ということもあり、そちらを優先するという旨はミレニアムにも了承してもらっている。ついでとして同行して貰う予定だったが、ブラックマーケットから出るのに例えヘイローを持つ子であっても戦い慣れていないヒフミを一人でリリースするわけにはいかないと判断したようだ。

 

「すみません、私の為に」

 

「いいのよ、気にすることはないわ。それにこの先輩は見ての通り意外に強いから」

 

「ふふふ、何だか急に逞しくなったようにも見えますしね☆」

 

「いや、そう持ち上げられると……でも気にしなくていいのは本当だから」

 

 申し訳無さそうな顔で頭を下げてくるヒフミに対し答えるセリカとノノミの言葉に何とも言えない表情を浮かべてしまう。そしてやはり、ホシノ先輩以外にも感づかれているような気配がちらほらあり胸が痛む。隠すことではないのだが、さりとて打ち明けるには荒唐無稽すぎるのではという思いが、いまだにあるからだ。

 

「ユキト、口酸っぱいようだけどくれぐれもいのちをだいじに、ね?貴方も大事な生徒の一人だから」

 

「勿論、とっとと仕事を終わらせて戻りますとも」

 

 心配してくれる先生にとんと胸を叩いて答えて見せる、多少見栄を張るぐらいでないと先生は心配してしまう。それも見透かされているかもしれないが。

 

☆☆☆

 

 

「このあたりにあったはずだが……」

 

 表の電気街──春葉原であってもないような違法な産物さえやりとりされる一角に俺は足を運んでいた。セミナーのユウカを通してミレニアムから受けた仕事のついでに、俺はもう一つの目的を果たす為に少し寄り道していた。ここで俺は、今は手元にないある武器との出会いを果たした。それがあるのか、ないのかどちらなのか、もしあるのであれば今後起こり得る脅威に対してもう一度立ち向かう為の切り札になりうるかも、しれない。

 

「やっぱり、あった……!エクスガッチャリバー、ここに」

 

 ジャンクショップの一角に傍目には石膏か何かで作られたように見える剣。これは、ただの強化デバイスとして以上に助けられた。だから、もし存在するならばと来てみたがどうやら運命の女神は俺を見放していなかったようだ。

 

「……これ、は……?」

 

『やあ、久し振り。いや、初めましてになるのか。千神ユキト』

 

『貴女は、百合園……セイア!?じゃ、ここは』  

 

『その反応、どうやら今回は私のことを覚えているようだね』

 

 柄を掴み手に取った瞬間、周りの光景が一変し真っ白な空間にポツリと置かれたベッド、そこに腰掛けていたのは百合園セイアだった。

 

「今回は、って」

 

「皆まで言わなくていい、それに今回はあまり時間がない。必要なことだけを伝える」

 

 百合園セイアが持つ神秘は、夢を通じて過去現在未来を観測し、介入することができるらしい、と以前聞いた。俺が聞いた頃には既に失われた後だったようだが。

 

「君以外にも、何かしらの形で異なる時間の記憶を持った生徒が何処かにいる筈だ。もっとも、必ずしも味方とは限らないが。ともかく、彼女らと協力して”あまねく奇跡の始発点”を目指すんだ」

 

「俺以外にも?いや、待てそれは一体」

 

「頼んだよ、ユキト」

 

 もっと詳しく、と聞こうとして視界が再び白く染まり光りに包まれた、最後に見えたセイアの顔は小さく微笑んでいたように見えた。

 

「あまねく奇跡の始発点、ね」

 

 景色は既にジャンク屋の一角に戻っており、どうやら白昼夢から抜け出したようだ。思わぬところで、思わぬ出会いをしたものだ。だが同時に大きな収穫を得た、これは今後の指針の一つになりそうだ。

 

その後と言えばヒフミを巻き込み覆面水着団を名乗り銀行強盗を結果的に成功させてしまうというとんでもないやらかしをしたアビドスの皆と合流した。この件は知っていたのだが、百合園セイアとの邂逅により時間を食ったこともあり介入する余地はなかった。

 

☆☆☆

 

 アビドスとシャーレを行ったり来たりしつつ、来たるべき時に備える鍛錬をする。そんな日々を過ごしている中、シャーレの生徒としての立場でもある程度の信頼を得るようになり、先生の名代として代わりに顔を出す事も増えた。今回、その中で頼まれたのが名目はどうあれ協力関係にある便利屋68の仕事を代わりに手伝ってほしい、ということだった。

 

「貴方、いつかの先生の側にいた……!」

 

「ご無沙汰しています、陸八魔社長」

 

 社屋のあるビルに赴いた俺は、なんともいえない微妙な雰囲気で出迎えられた。ハードボイルドを装うアルは言わずもがなだで、面白そうにしているのはこの中では浅葱ムツキぐらいなものだ。

 

「……社長、先生がいっていた例の代理ってこの子じゃない?」

 

「そのようね、コホン!よく来たわね、そちらは私の事を知っているようだけど」

 

「俺は千神ユキト。先生ほど頼りにならないかもしれないが、仕事はきっちりさせてもらうよ」

 

「いいわ。曲がりなりにも先生がよこした人だもの、期待させて貰うわよ?」

 

 わずかな沈黙の後、カヨコに促されて咳払いしたアルは胸を張ってこちらを向き直した。飽きないくらいいつも百面相をする大変面白い人なんだが、それを見せまいとするあたりに可愛げというか魅力を感じる。便利屋の皆が彼女の側にいるのはそういったところもあるのだろう。

 

「そりゃあ勿論……と、どうも」

 

 差し出されてた手を見て一瞬驚いたが、友好の証として握手ぐらいはしておこうといったところか。

 

「こ、こちらが仕事の概要です」

 

 握手をしてから暫くして、応接間で向かい合う形で座りハルカが持ってきた書類を受け取り目を通す。

 

「オークションの警備、ね。便利屋っていうだけあって何でもするんだな」

 

「そう、うちも名前が売れてきてね。こうして表立った仕事も来るようになってきたのよ」

 

「ところであんた、ヘイローがないようだけど先生と同じ普通の人間よね?」

 

 本来ならば先生が同行するような内容だからどんなものかと身構えていた手前、真っ当そうに見える依頼を受けている事に安堵した。そんな俺の内心を知ってか知らずか、アルの隣で表情は分かりにくいながらも心配しているカヨコが疑問をぶつけてきた。

 

「ああ、生身ではね。銃も扱わないではないが、本当に緊急時用の護身術程度かな」

 

「ふぅん、それで本当に大丈夫なの〜?あのオレンジのパワードスーツ……ガッチャードだっけ、あれがユキトにとっての拳銃なわけだね」

 

 横からさらにじゃれるようにこちらを見上げてくるムツキの言葉にも答える、先生の計らいで俺にも拳銃一丁が支給されている、一通り使えるようにみっちりと訓練させられた前世とは違いこちらで使うような状況にならないといいのだが。

 

☆☆☆

 

 数日の準備期間を経て、俺達はオークション会場へと足を運んだ。一般的な警備員とは違う名目で来ているとはいえそれを知っているのは依頼人を含めた一部の面々だけだ。故にそれらしく着飾っているの、だが。

 

「貴方、スーツが似合わないのね」

 

「くふふ、なんだか私より子供っぽく見えるよ?」

 

 スーツに着られている、という表現が正しいだろうか?便利屋の皆は慣れているのか見合う雰囲気を出しているが、俺はどうにも違和感バリバリなようだ。

 

「まあ、いいよ。ヴァルキューレにだってそういう制服の似合わない生徒はいるから。それよりネクタイ、ちゃんと締めて。みっともないよ?」

 

 上手い返しが浮かばず口籠り苦笑している俺の側にカヨコがきて身なりを整えてくれた。あまりにも自然な手つきに何も言えずにされるがままで、気恥しさもなかった。

 

「鬼方……先輩は着慣れてます?」

 

「カヨコでいいよ。まあ、昔色々あったの」

 

 学年が一つ上、というだけにしてはどこか違うものを感じさせるカヨコの事が気になり、思わず口にしてしまう。そういえば、あの舟を巡る戦いの時も、他校の生徒と伝手があるようだったし俺の知らない一面は多そうだ。

 

「ユキト」

 

「は、はい?」

 

「うちの課長は高いのだから、ナンパするなら覚悟しなさいよ?」

 

 何を思ったのか改まって、真面目な顔をしてとんでもない爆弾を投下してきたアルの言葉に耳を疑った。いつものドヤ顔ではなく、真面目な顔なのが余計にたちが悪い。

 

「何を言い出すのかと思ったら……ユキトも真に受けないで」

 

 嗜めるカヨコの表情にも動揺が見える。俺ですらわかるのだから、便利屋の皆などもっとだろう。

 

「ふふふ、さあて皆行くわよ!」

 

 微妙になってしまった空気を打ち破る為なのか、それとも緊張をほぐす為のジョークのつもりだったのか定かではないが社長としての声に、頭を振り思考を切り替えた。

 

☆☆☆

 

 オークション自体は順調に進行していった、そうオークションそのものは。品を巡ってヘルメット団らしき傭兵が警備をすり抜けて爆破テロを仕掛けてきたこと、それを鎮圧するために俺達が乗り出した事、そこまではよかったのだ。

 

「……貴方が、この騒動を起こしたの?」

 

「なんで、こんなところに」

 

 キヴォトスにもいくつか治安維持組織があり、小さな事件から大きなものまである。あるのだが、何もなければ乗り出してこないような大物が現れた。

 

「空崎、ヒナ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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