追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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6話

「すまないね、わざわざ来てもらって」

 

「いえ、このぐらいは。それでウタハ先輩、今日は?」

 

 モモトークで呼び出された俺は、ミレニアムのエンジニア部に足を運んでいた。白石ウタハ先輩をはじめとしたエンジニア部にユウカを通してアルバイトをさせてもらっている。

 

「うん、君に頼まれていた件の経過報告と新しい武器のテスターを頼みたくてね」

 

「助かります、って今度は何です?」

 

 買い出しを含めたいくつかの使いっ走りのような仕事が主だが、それ以外に彼女の趣味を兼ねたものもある。というか、エンジニア部の所属する生徒は皆そうだが、かなり個性的なものばかり作る。

 やりたいとは分かるんだが、どうしてみたいなものもある。とはいえ間違いなく天才と呼ぶに相応しい人達なのだが、まあそういうものであるのかもしれない。

 

「まず、君の案件から話すとしよう。率直に言うとこれを作った人間は天才だね」

 

「ウタハ先輩をもってしてもですが?」

 

「ああ。だがロマンを感じる。それに幸い君という協力的な被験者がいるからね。引き続きガッチャードの為の新武器開発は行っていくよ」

 

 ミレニアムサイエンススクールは、キヴォトスの中でも優秀な頭脳が集まる研究機関としての側面を持つ。その中でもエンジニア部はハード面での開発に強い。そしてその部長である白石ウタハに、対価としてガッチャードの事やケミーについての研究をしてもいいと言ったところ二つ返事で了承してもらえた。前世においての敗因は俺の実力不足もあるが、ガッチャードとしての火力も足りていない部分があったと思っている。

 それでも、対価に差し出すには不味かろうかと悩んだ。これがなければただのヘイローのない無力な男子生徒となってしまう。そもそも先生のようなカリスマはないし、等と悩みは尽きないが結果的にはいい方向に傾いたので良しとする。

 

「さて、正直に言うと今回に限っては新造品ではないんだ」

 

「随分デカい、ですねこの子」

 

 この種のものとしては大きい、おおよそ大型犬サイズのロボ犬が走ってきて目の前で止まった。よく見ると背中に砲台らしきものが収納されているのが見えた。

 

「汎用型ペットロボ、といったところかな。DIYから護身用のライフルまで、なんでもござれさ。動かす為のバッテリーとそれを収める本体の大型化でコストが高すぎて没になったんだが」

 

「はあ。それを、何故俺に?」

 

「これは元を正せばこれは宇宙での採掘作業を想定したものだった。もうひとつの宇宙船開発プロジェクトも駄目になったはずだったが、思わぬ形でテストする機会を得てね」

 

 生身の君を守らせるにはぴったりだろう?と内容は濁していたが、ウタハ先輩の言葉に一つ思い出したことがあった。俺は直接関わることはなかったが、ゲーム部の生徒で一人湧いたように現れた女の子がいてその子を巡り一悶着あった。そして、あまりいい結末にならずミレニアム全体に波及するものであったらしいと後からリオから聞いた。そしてその子の遺品としてエンジニア部の開発した武器があったと。

 

「やってくれるね?君が引き受けてくれないとこの子は破棄する羽目になるが」

 

「そりゃやりますよ、そういう契約ですし」

 

 心なしかペットロボ君?も嬉しそうにしているように見える。会話から読み取って反応しているだけだとは思うが、それにしても賢いものだ。

 

「あ、そうだ。この子の名前がまだないんだ。ユキト、つけてみるかい?」

 

「名前……では、マーフィーと」

 

 俺の言葉にペットロボ改めてマーフィーと名付けた彼に初期登録をしているウタハ先輩を何となく眺めていたが作業はすぐに終わり、頼んだよとマーフィーと共に送り出された。何か引っかかるものがあるが、そう悪意を持った行動をするわけもあるまい。折角だし、ユウカの顔でも見に行こうかと俺は寄り道する事に決めマーフィーと共にそのばを去った。

 

「……ふう、これでよかったのかい、ヒマリ」

 

『ええ、バッチリですよウタハ。あのペットロボットにつけたセンサー、ちゃんと働きますよね?』

 

 無造作に置いていたスマートフォンをスピーカーに切り替え、別の依頼主に声を掛ける。その正体は明星ヒマリだ。

 

「勿論、だがこんな事をしなくても直接頼めば彼は協力してくれたと思うが?ただの身体検査だろう」 

 

『確かに、超天才清楚系病弱美少女ハッカーたる私の魅力を持ってすればイチコロでしょう。ですがなるべく自然なデータが取れたほうがいいので。それに……』

 

「それに?」

 

『あのリオが執着する男の子の秘密を丸裸に出来たら、とても面白いと思いません?』

 

「君達、本当は仲がいいんじゃないか?」

 

 あまりにあんまりな言葉に笑ってしまうが同意する。彼女と調月リオの関係が複雑なのは端から見ていてもわかる。人間的な部分以外の実力やらは認め合っていて協力体制をとることもあるというのに、どうしてこうなのか。

 

『そんなことはありません。私とリオがだなんて』

 

「やれやれ、まあいいさ。別のデータが必要ならこちらでも送ろう」

 

 頼みましたよ、という声ともに通話が切れる。先生とはまた違った経緯でキヴォトスに現れた青年、千神ユキト。キヴォトスに来る以前の記憶はなく、倒れているところを保護されアビドス高等学校の生徒となり、後にシャーレにも籍を置くこととなった。

 私のところに来たのはユウカを通して自分が持つ装備の解析をしてほしいと来た時だった。本来であればバラバラにして細かく調べるところなんだが、それは断られてしまった。シャーレの権限ではなくあくまで個人的なお願い、といいつつ連邦生徒会からの推薦状まで持ってきていた。こちらに関しては先生の仕業のようだが、よくやるものだ。

 まあ、ガッチャードに使われている未知技術の解析は進んでいる。面倒なことは多いが予算獲得の為に利用させて貰うとしよう。

 

☆☆☆

 

「先生、暫くこっちには顔出せないんだって?」

 

「ええ、ティーパーティーから正式にシャーレへ依頼があったそうで……ってユキト先輩は聞いてないんですか?」

 

 暫く宜しく、とシャーレの机とモモトークにそれぞれ伝言をしてきた先生の言葉を聞き皆にも伝わっているだろうかとアビドスへ顔を出す。幸いアヤネがいたので尋ねると期待していた答えが返ってきた。

 

「詳しくはね。ただ場所が場所だから陣中見舞いってことでちょっと様子を見に行くつもりだよ」

 

「ここやゲヘナならまだしも、トリニティなら大丈夫では?」

 

「う〜ん、まあ何もなければいいのさ」

 

 トリニティは特に育ちのいいお嬢様が多いが一方で、クソデカマンモス学校であるが故に黒い部分もある。さておき、それを統括するのがティーパーティーであるし、その下にシスターフッドや正義実現委員会等がある。

 

「千神先輩の勘は当たりますからね、でしたらお気をつけて」

 

 色々と、そう色々と嫌な予感がするのだ。それに、アリウススクワッドの子達を縛るベアトリーチェの事もある。悪いことが重なったにせよ、その時の戦いでガッチャードライバーを破壊されたという事実は揺るがない。真正面から四人とベアトリーチェを相手すればただでは済まない。今の俺ならボロ負けしないだろうが油断は慢心に繋がる。

 

「っと、一報入れとかないと……」

 

 幸いにしてトリニティの比較的話が通じる人と───正義実現委員会の羽川ハスミさんに連絡をとった。幸い直ぐに返事がきた為、お菓子を買い込んで本部のある場所へと向かった。そこまでいくのに少々手間がかかったがそこは話を通してあった為か迎えに直接来てくれたおかげで余計なトラブルにはならなかった。

 

「さて、先生の事だったわね。実は後輩も先生のところにいっているの、よかったら様子を見に行ってくれるかしら」

 

「後輩ってことは、正実の子なんですか?」

 

 知ってはいるが、勿論そうとは言えない為とぼけてみせる。委員会の皆でどうぞ、と食べたがっていたお菓子の箱を渡して間もなく切り出したハスミさん。嬉しそうにしているが、同時に含みを持たせたようなニュアンスなのは事情が事情だからだろう。

 

「ええ、いい子なのだけど難しいところがあって。いえ、これは余計なことだったわ。いるのは補習授業部、場所は今地図を描くわ」

 

 一緒にいってあげたいが色々と立て込んでいてと謝罪するハスミさんに大丈夫ですと答える。実のところ最悪状況を確認して、出直す覚悟もしていたのですんなりいったことに驚いている自分もいる。

ろくに相手出来なくて、と言いつつ構ってくれるハスミさんを拘束しては申し訳ないと紙を受け取り本部を出た。キヴォトスに来てまだ短いが、それでもここトリニティも独特の雰囲気があると意識してしまう。育ちの良さ見せる生徒達と、その彼女達から向けられる異質な何かを見るような視線。後者はどこへ行っても向けられるものなので慣れたものだが、ガチのお嬢様に遭遇する事は稀なのでそんな人種ばかりというのは今までにない緊張感がある。それから逃れたくて足早に教室を目指し、ようやく教室のある廊下まで辿り着くと、そこにはある意味で見慣れない教師としての先生の姿と椅子に座る四人の生徒が窓を通して見えた。

 

「あれ、ユキト?」

 

「あ、先生……すみません、邪魔するつもりはなかったんです、が!?」

 

 挨拶をして去る、といいかけて何か足に引っかかったのがわかった。やばい、と思ったが気づいた時には遅く足くくり罠のような物で挟まれたかと思えば、ワイヤーが引っ張られるようなキリキリとした音とともにロープで宙吊りにされてしまった。

 

「何だ、お前」

 

 

 真っ先に飛び出してきたのは、小柄で特徴的な白髪と、訓練された動きで銃口を突きつけてくる女の子───白洲アズサであった。

 

「アズサ、待って。その子も生徒だから」

 

 ヘイローを持っておらず、そもそもトリニティに明らかに部外者とわかる背格好と服装をした俺に向け、問答無用で引き金を引こうとしていたアズサを間一髪で先生が止めてくれた。危うく2度目の死を迎えるところだった……。

 

「わざわざ、心配して来てくれたの?」

 

 ブービートラップから救い出され、先生以外からはなんだコイツという目を向けられながら事情を説明すると、軋んでいた空気が少し和らいだ。もっとも、敵意を向けていないのはヒフミくらいなもので、コハルとアズサは大して変わらず。ハナコは───浦和ハナコは、かなり変わった人だと聞いていたが俺がまともに接触したのは箱舟を巡る戦いの時で、そこではそこまで奇抜ではないように見受けられたが……どうも、今の様子を見るに一言では言い表せない何かかがあるのだけは理解できた。

 

「ごめんね、ユキト。私はまだ離れられないんだ」

 

「いえ、元気な姿を見られればそれで」

 

 補習授業部という部活の目的からすると、すぐに解決できそうで出来ないのはわかった。かなり入り組んだ事情の中のほんの一つではあるが、さりとて無理矢理にでも引っ張っていく権限もないのでやはりとんぼ返りか、と思っていたのだが……。半端に顔を突っ込むとどういう目に合うか、身を思って思い知らされる羽目になるとはこの時は予想もしていないのであった。

 

 

 

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