追憶の記憶〜デイブレイクアーカイブス(本編完結)   作:Leona

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7話

教室から出た俺を待っていたのは、ティーパーティーの生徒が数人。俺の両側を挟むように来たかと思えば、有無を言わさぬ態度でティーパーティーのホストが呼んでいますのでとドナドナされた。勿論、マーフィーも一緒に。

 

「ようこそ、ティーパーティーへ。千神ユキトさん」

 

 連れてこられたセーフハウスの中央にはテーブルがあり、そこには二人の女の子が座っていた。一人は桐藤ナギサ、かの百合園セイアや聖園ミカと並ぶトリニティのトップだ。そしてもう一人は……

 

「さっきは悪かった、いやトラップにかかったのは想定外だったが……」

 

「白洲アズサ?何故、君がここに」

 

 見慣れぬ組み合わせに戸惑いを感じる俺、彼女もここに呼ばれたのだろうか?

 

「それについてはこれから説明しますから、まずは座ってくださいな。長くなりますし」

 

「……では、失礼して」

 

 いつの間にやら俺を連れてきた生徒達はいなくなり、室内は三人と一匹だけになっていた。

 

「本題から言ってしまうと、私とアズサさんは貴方と同じように、異なる未来の記憶をもっています。いえ、最近になって思い出したといったほうがいいですね」 

 

「そのあたりは誤差だろうな、私など未だに現実味がないぞ」

 

 セイアの言っていた事がとうとう現実になったようだ。驚き反応に困っているとさらにナギサが続ける。

 

「もっと早い段階であれば、色々対策のしようもあったのですが。これから起こり得る事件の中で読めない人達がいましてね」

 

「ま、待ってください桐藤会長」

 

「……失礼、少し話を急ぎすぎました」

 

「ユキト、お前はベアトリーチェの一撃を受けて死にかけたのは覚えているか?」 

 

 アズサの言葉に息を呑む。かつての戦いを知っている程度には同じような記憶を持ち合わせていることに。そしてそれは、回避しなければならない結末の一つ。

 

☆☆☆

 

「偽りの神秘を纏っただけの子供にしては、よくやったと褒めてあげましょう。ですが、ここまです」

 

「っはぁ、ぁ……!ドライバー、が……」

 

 アリウススクワッドの離反、聖園ミカの介入、それをもってしてもベアトリーチェの凶行を止めきれず、秤アツコは命を落とした。儀式そのものは不完全な形で止められたが、この場で彼女を止められる可能性は低くなった。先生とシッテムの箱が無事なことが不幸中の幸いだろうか?しかし、俺の方は最悪でガッチャードライバーを破壊され、負傷しエクスガッチャリバーを杖代わりに立っているのがやっとだった。

 

 

「あ、あああ……姫が姫が姫が姫が!ベアトリーチェェェェェ!」

 

「リーダー、落ち着いて!どう見ても今のマダムは不味い!それに、姫は、もう」

 

「で、でもまだ、先生もあの男の子も誰も諦めていませんよ!?」

 

 アリウスの子達の悲鳴のようなやり取りが聞こえる、先生の指示の元立ち向かおうとする皆の声が小さくなっていくような気がする。意識が、遠のい、て……

 

『───きてください、起きてくださいユキト君!』

 

『あれ、俺、死んだ?』

 

 気づくと電車の座席に座っていた、目の前には澄んだ青空のような色の長髪と連邦生徒会の制服を来た女性がいた。だが、顔は見えない。声は、聞き覚えがあるのに思い出せない。

 

『いえ、貴方は生きています。私の力で少し時間を止めさせてもらいました』

 

『時間を止めたってそんな馬鹿な』

 

『今私ができる目一杯、貴方に託します。今は無理でも、いつか先生と共に辿り着けるよう、願っています』

 

 翳された手から光が湧き出て景色は再び現実へと戻る。空中には100枚のケミーカードが均等に並んでいて、エクスガッチャリバーに1本の光が突き刺し、それは形を変えた。

 

【ガッチャードライバー!】

 

【HOPPER1!】

 

【STEAMLINER!】

 

【スチームホッパー!!!】

 

 

「何が、何が起きている!?」

 

 ドライバーを腰に巻き、2枚のカードが流れるように装填されレバーが動いた。それまでとは違う、全身を焼き尽くすような熱が全身を包み込み姿をガッチャードへ変えた。

 否、この姿は……そう、今から俺は改める。

 

「俺は、ガッチャード───ガッチャードデイブレイク!炎の仮面ライダー!ベアトリーチェ!あんたの歪んだ思想、そして多くの生徒の命を弄んだ罪の因果!ここで断たせてもらう!」

 

「ほざけえええ!そんな虚仮威しの姿で何が出来る!?聖人たる先生も!ガッチャードも!私のこの力の前で諸共消す!」

 

 計画が瓦解し破れかぶれの攻撃も意味をなさないとわかり動揺し激高するベアトリーチェに、銃弾と砲弾が次々と突き刺さる。

 

「ユキト!私とシッテムの箱がカバーするから!いって!」

 

「先生……はい!道を開く!この一撃で!」

 

【スチームホッパー!フィーバー!】

 

 ドライバーに手をかけ力を込め飛翔する、姿が一瞬力を借りているケミー達が合わさった形態───バッタと機関車の特徴を備えたもの───になった後、再び人型に再練成され一気にベアトリーチェめがけキックを放った。ベアトリーチェから放たれた強引に切り開き、キックを直撃させると壁まで吹き飛ぶベアトリーチェを目の前に着地しながら叫んだ。

 

「私の一撃を押しのけて!?ガアアアア!?」

 

「今だ!錠前ぇ!撃てええええ!!!」

 

「……っ!!!」

 

 

 思いを込めた銃弾が何発も撃たれ、やがてベアトリーチェは意識を失った。

 もし、ここでベアトリーチェを仕留められていればまだ救いがあったのではなかろうか?だが、そんなことはなく他のゲマトリアのメンバーにベアトリーチェは回収されたし、二度と生きた奴と戦うこともなかった。アリウススクワッドの子達は、アツコの埋葬をした後姿を消した。サオリだけは執念深く探そうとしていたようだが、キヴォトスが荒廃しても尚再開することはなかった。

 

☆☆☆

 

「すまない、嫌なことを思い出させてしまったな」

 

「いや、君は……アズサは」

 

「私達は、いくつか情報を共有したんだ。だが、それでも補習授業部は必要だと考えた」

 

思い返し嫌な思いに胸を痛めていたのが顔に出てしまっていたのか、アズサに謝罪された。だが、その後に続いた言葉に首を傾げた。

 

「それは、クーデターを起こす生徒を炙り出す為に?それなら聖園ミカを説得すれば……」

 

「それも考えました、ですがミカさんは何か別の考えがあるようで。そちらは私が何とかしますが、ユキト君。貴方はそれとなく探ってほしいです。根回しはしておきますので」

 

 事件を軟着陸させるのではなく未然に防ぎたい、しかしミカの動き以外にも読めない点が多く、また先生の命に関わるかもしれないとナギサはとても苦しそうに口にした。

 

「私は浦和ハナコの動きを見ておく、聡い奴だから私では読み切れないかもしれないが」

 

「そんなにか、俺は」

 

 俺の反応に二人はなんとも言えない微妙そうな表情で濁した。やはり、一筋縄ではいかないタイプなのだろうか?

 さておき、俺はナギサの命を受ける形で証言を聞いて回ることとなった。主に正義実現委員会やシスターフッド、救護騎士団にも顔を出し、図書室で少し休み途中自警団のスズミに閃光弾のお裾分けを貰ったりとあったが、そもそもが1日で見回るような距離ではとてもなく中断した。ナギサも別に逐一報告する必要はないと言っていたしいいと思うことにした。

 

「あの、大丈夫ですか?」

 

「……君はさっき歌住先輩の側にいた、シスターフッドの子?」

 

 ベンチでグッタリと後ろまで視線を巡らせていると、目の前にこちらを心配そうに声をかけてきたシスターフッドの生徒らしい女の子と目が合った。

 

「はい、伊落マリーといいます。サクラコ様が気にしていましたので……」

 

 お隣宜しいですか?と断りをいれて間もなく座ったマリーに視線を合わせるべく姿勢を直す。どこから取り出したのか水筒を開け差し出されたお茶を飲んでいると話し始めた。

 

「私も詳しくは聞いていなくて、あくまでメッセンジャーに過ぎないのですが……」

 

「それは、俺が聞いてもいい話?」

 

「はい、これは千神先輩にということだったので。”シスターフッドの過去の歴史を調べて見て欲しい”と」

 

 マリーの言葉に眉をひそめ、記憶を辿る。きな臭い事情を抱えていて、それもまたトリニティ各校の関係を複雑にさせる一因だったと思ったが。

 

「あの、これで伝わりましたか?」

 

「ああ、勿論。歌住先輩……サクラコ様にはよくお礼を言っておいてくれ、勿論改めて足を運ばせてもらうけど」

 

 不安そうにしているマリーに努めて笑顔で応えた。セイアの言葉ではないが、味方は一人でも多いほうがいいし情報も立派な武器だ。

 

「よかったです、では私はこれで。神のご加護が先輩にもあらんことを」

 

☆☆☆

 

「やはり、あいつも私と同じように?」

 

アリウス自治区の一角でベアトリーチェから受けた指示に、錠前サオリは空を仰いだ。その瞳には憎しみしか宿らなかった。

ミサキ、ヒヨリ、アツコ、アズサ。今とかつての仲間は、まだ生きているが自分の記憶の中では散り散りのバラバラになり死んだのを見た。自身もまたベアトリーチェへの復讐が叶うことなく力尽きた、はずだった。

 だが、気づけばまた辛く悪夢のような、しかし暖かい日々に戻ってきた。今度は命を奪えるかもしれない、だが、その為には。

 

「殺す!殺す殺す殺す!千神ユキト!お前を殺せば、少なくとも姫も皆も先生も!」

 

 携えた愛銃を握り、力を込めギリギリとそのまま歪みヒビが入るところをすんでところで止める。戻ったあの日に誓ったのだ、せめて自分と家族たるスクワッドの皆だけは生き残ると、例えそれが間違っていたとしても押し通すと。

 

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