クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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書いてたら、なぜか本文だけで五千字を越えてるという事件が……というわけで、今回はちょっと長いです。


第七話 迷える皇女の翼 後編

 時は少し遡り、俺はアルゼナルにアンジュが駆る『パラメイル』に護衛されて戻ってきた。

「アセム!!」

 父さんは調整を終えた『ガンダムAGE-1』から離れ、やって来たMS、『ガンダムAGE-2 ダブルバレット』の方へ寄ってくる。

「何があった!?お前が被弾するなど、普通の敵ならありえないが?」

「ドラゴンの1体がアンジュの機体を狙ったんだ。俺は側にいたから安全とかを考えて庇ったんだ」

 俺の言う通り、『AGE-2』はドラゴンの攻撃による爆発などで中破してはいるが、コックピットなどの影響は殆どない。

「それならいい。ならそのアンジュを連れてこい。ジル司令官が話があるそうだ」

 父さんがそう言うと、いつ来たのかその呼び出した本人が格納庫へやって来る。アンジュは少し顔を引きつらせてはいたが、司令官がアンジュの襟ごと首根っこを掴んで猫のように運び出していった。

「ジルさんって一体何者なんだ……?」

「少くともノーマであり、『Xラウンダー』の適正を持った女性としか言いようがない」

「へぇ……って、父さんいきなり『Xラウンダー』の思考会話能力使ったの?」

 俺は軍時代やゼハートから聞いた『Xラウンダー』のみの特殊能力のなかで、適正がすぐに分かるそれについて聞いてみた。ちなみに俺は殆どゼハートの思考会話を聞き取ることはできない。

「いきなりのことで気分を少し悪くしていたがな。とりあえずアセム、お前はこれからどうする?」

「決まってるよ。『ノーマル』に換装すればすぐ出撃できるから、それで行くつもりだ。ゼハート達のところへ戻らないと……」

「なら『AGE-1』を使え。スピードこそ、お前の機体に及ばないが換装の時間を考えれば、こちらの方が断然いい」

「でもアンジュは……」

「私も行きます」

 話が聞こえてたのか、アンジュは俺の後ろ立っていた。

「ただ……少し来てください」

「へ?」

「行きたい場所があります。時間はとらせませんから」

 そう言って俺はアンジュに手を引かれてどこかへ連れていかれた。

「あれ?なんかデジャブな気が……」

「そんなわけないでしょ」

 その後アンジュが『お持ち帰り』や『抜け駆け』など呼ばれるようになるのは、また別の話。って、やっぱりなんか前にもこんな事あったな。

 

 

 

「ここは……墓地か?」

「ええ……」

 連れてこられたのは、出撃前に俺ら二人が居た墓地だった。最初に居たときは空が茜色に染まっていたが、今は少し夕闇に包まれ始めている。

「私は……貴方に言われるまで、自分がどうしてここに居るのかということしか考えていませんでした」

「そりゃ……10年以上も人間として生活してきたら、誰でもそうなるさ」

 実際、俺も今ここに居ることがどうしてだと考えなかったかと聞かれると、はいとは答えられない。

「私は人間……その考えは変えるつもりはありません。ですが……」

 そう言ってアンジュはどこから取り出したのか、軍の白兵戦などで使う大ぶりのダガーナイフを取り出した。そして何を思ったのか手に持った得物で自らの髪を切り落とした。

「アンジュ……君は」

「もう過去は振り返りません。今を生きる為に、私は泥水を掬い、地に這いつくばってでも戦い抜いていきます」

 その目には今の意思を表すみたいに強い眼差しを浮かべていた。そして切った髪の一部をゴムのような物で結ぶと、それを俺に差し出してきた。

「貴方は私の覚悟を見ていてください。たとえ元の世界に戻ってしまっても、絶対に……」

「分かったよ。でも、なんで俺なんだ?ゼハートだって……」

「私にも分かりません。ですが貴方が……アセムが良かったんです」

「ソ、ソウデスカ……」

 俺はアンジュの感覚が一瞬分からなくなった。

「兎に角、用件はそれだけです。ですが……捨てようなんて思わないでください」

 アンジュはいい笑顔で俺の事を見ながら言ってきたが、その目はけっして笑ってはいなかった。俺はそれに硬直してしまい、そしてアンジュは固まったままの俺を引きずって格納庫へ引っ張っていった。

 

 

 

「遅いぞアセム!!早くコックピットに乗り込め!!」

 戻ってきて早々に父さんの怒号が俺の耳に飛んできた。そりゃ10分近くほっつき歩いてたら誰だってそういうだろう。

 俺はそう思いつつ口に出さないで言われた通り乗り込む。元々『AGEシスエム』を外したフラットタイプだからデバイスを填め込まなくても大丈夫になっている。そしてモニターが起動するとアンジュの機体もやって来た。が、そこに違和感を感じてしまう。

「父さん、アンジュの機体ってさっきのと違うの?」

『ム、あれはジル司令官がアンジュにと渡した機体だ。旧型らしいが性能は他の機体より高いポテンシャルを持つ。名前は、《ヴィルキス》だそうだ』

「『ヴィルキス』……」

 そう呼ばれたアンジュの機体は旧型らしく装甲の塗装が錆びてたり、どうみても高性能という印象を持てないような代物だった。

『アセム、その機体は変形しないうえにパラメイルの翼を流用して飛べるようにしているだけだ。サイズの差もあるから気を付けろ』

「分かったよ、父さん」

『アセム機、カタパルトハッチに移動完了。システム、オールグリーン。発進どうぞ』

「アセム・アスノ、『ガンダムAGE-1F ガレスト』出ます!!」

 スラスターを起動し、俺は一気に空を駆け抜けた。MSの独特のエンジン音と少し違うが、それでもどこか頼りがいがある何かが俺の感覚を刺激した。そして後ろからふらつきながらもアンジュの『ヴィルキス』も飛んできた。

「アンジュ、その機体のMaxスピードは?」

『見た感じではおそらく音速は越えてます』

「……戦闘機にしては意外ですね」

 今俺の駆る『AGE-1F ガレスト』の特殊状態や『ガンダムAGE-2』のストライダー形態、ゼハートの『ゼイドラ』も音速は越えるが、それはMSとしての推力だけで、サイズが戦闘機並のパラメイルで出せるとはかなりの技術力があるようだ。。

『指令部からの通信です。ゾーラ隊の他メンバー8人はエネルギー残量の問題で一時撤退、残るゼハートを援護せよ……だそうです』

「くそ、アンジュは先に行け!!俺もすぐに追う!!」

『ですが、機体が暴れて……加速できません!!』

 アンジュの言うことも分からない訳でもない。高性能とはいえ旧型だ。エンジンや駆動系がおかしくなってる可能性だってある。

「加速できなくてもスピードは出るはずだ!!エネルギーを翼の推進部に集中させれば何とかなる!!」

『や、やってみます』

 アンジュはパラメイルの内部画面やスイッチを弄くる。そして何をしたのかヴィルキスの翼部ユニットのスラスターから先程以上のスピードを出し始めた。

「アンジュの方は大丈夫みたいだな……俺も『これ』を試すか」

 俺は『AGEデバイス』を取り出すと、無くなったはずのデバイス挿入口を見つめる。俺はそこにデバイスを突っ込んだ。するとコックピットのレーダー画面が切り替わり、見慣れたデバイスマークが浮かび上がる。

 そしてそのマークの中央には英語表記で『Age Full Drive System ON/OFF』と書かれていた。俺は迷わず『ON』を押した。するとパラメイルの機械的な翼部ユニットが展開し、天使の翼のようなユニットへと変貌した。さらにここから視認できないが頭部のアイカメラもパラメイル同様に赤く染まる。

「行くぞ!!」

 俺ら二人は一気に駆け抜けた。この『AGE完全駆動機構』はAGEシステムの情報を機体にリンクさせ、機動性と反応速度を強化するシステムだ。ただし最初の1度は『AGEデバイス』をコンソールに入れなければならないが、それ以降は無しで発動できる優れものだ。システム発動時間は30分程度しか保たないが、発動時の最高時速はマッハ1.5まではねあがる。

 俺とアンジュは出せる最大の速度でドラゴンがいるところへ駆け抜ける。途中でゾーラ達とすれ違ったが、そんなことを気にしてる余裕はなかった。

「アンジュ!!そろそろこっちのレーダーにゼハートが映るから、ドラゴンをできるだけゼハートから引き剥がすんだ」

『分かりました……あれは!!』

 アンジュは突然驚きの声をあげる。何事かと視線の先を確認すると、少し遠いがそこには2体のドラゴンに捕まったゼハートがいた。

「ゼハート!!」

 俺は驚いて回線を繋ごうとするが、そこで一瞬躊躇した。状況からしてもうエネルギーの残量が厳しいゼハートの機体はおそらく回線などに使うエネルギーを全てカットしてる可能性がある。だとすれば回線を開いてもゼハートに聞こえる格率はかなり低い。

「くそ!!」

 ゼハートの元へ急ぐためにスラスターを吹かそうとするが、そこでタイムリミットが来てしまった。システムはまだ未完成らしく、切れると一時的に活動不能に陥ってしまう欠点があるらしい。

「こんなときに!!」

 俺は急いでシステムを復旧させた。その時、1体のドラゴンがゼハートの機体に鉤爪を振りかざした。

「!!動け!!動いてくれ!!」

 俺は必死に操縦桿を動かすが、機体はピクリともしない。そしてドラゴンの爪はゼハートの機体へ降り下ろされていく。

(また失うのか……ウルフ隊長みたいに……)

 俺が絶望しそうになった、そのとき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やらせるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 突然隣にいたアンジュの機体が淡い緑色の輝きを放った。俺が気付くと既に『ヴィルキス』の姿は隣に無かった。

 そしてふと上を見上げると、そこには白いボディに黒いフレーム、蒼い翼を四枚持った天使のような機体が飛んでいた。

「……アンジュ……なのか」

 その機体の変貌に驚いたが、何よりあんな光を放つ機体など聞いたこともない。

「……それよりも!!」

 俺はその気持ちをどこかへ起き去り、戦場を見渡す。ゼハートの機体は破壊される事はなかったが、未だにドラゴンが2体張り付いたままになっている。

「動くな!!ゼハート!!」

 俺は音声回線が繋がってると信じてゼハートに伝える。そして機体に取り付けられた『ドッズバレットライフル』を2丁とも抜いてドラゴンを撃ち抜く。幸いゼハートの回線も繋がってた為、ドラゴンだけを撃ち落とした。

「ギリギリ間に合ったな」

『お前本当にアセムか?』

「ああ。機体は父さんのだけど」

『フリットさんの?ということは……』

「これが父さんの新機体、《AGE-1F ガレスト》だ。今回はテスト飛行と操縦性の確認のために俺が乗ってるけど」

『なるほど……それにまだ友軍が居るようだな』

 ゼハートもヴィルキスに気がついたようで『ゼイドラ』の頭部を上に向ける。

「とりあえずゼハートは戻った方がいい。このままじゃ浮かんでるので精一杯だろ?」

『……なら最後に置き土産は残させてもらうか』

 そう言うとゼハートは近くにいた“フリッグ”級の方向に機体を回転させ、胸部ビーム砲を射ちだした。直線上や『ゼイドラ』の目の前にいた小型ドラゴン達はビームの矢に体を打ち抜かれ、中型の“フリッグ”級は直撃と共に体を焼失させてしまった。

『……後は頼んだぞ、アセム』

「あぁ、任せられた」

 ゼハートはそう言って戦線を離脱し始めた。

「アンジュ!!」

『なんですか、アセム』

 アンジュはドラゴンを撃ち抜きながら回線を開く。

「俺らだけで一気に潰すぞ、やれるな?」

『当然です!!』

 そう言ってアンジュはライフルを構え直すと、身近の小型ドラゴンを狙って射ち始める。俺もウィングに搭載された2本の大剣を抜いてそれに接近する。

 前衛を俺がやり、アンジュが支援する。何も言ってないのにまるで長年組んだ相棒のような連携だった。そして何時の間にか“スクーナー”級の敵は全て消え去り、残るは大型と中型の2体だけだった。

「アンジュ、お前は大型をやるんだ」

『!!ですが、まだ私には……』

「こいつらがあの墓標に眠った少女の仇なんだろ?だったら自分でけじめをつけた方がいい」

『確かに彼女を殺したのは、これと同じ“ガレオン”級ですが』

「それに、こいつを倒せないようじゃこれから先も戦い抜けない。それでも良いのか?」

『……分かりました』

 アンジュは悩むようにそう答えた。そしてアンジュは俺の後ろから飛行形体で抜き去ると、そのまま先端に搭載された実弾銃で“ガレオン”級の怪物を狙い始めた。

 俺はそれを確認すると、剣を両方翼へと納め両腰にマウントされたライフル2丁を取り出す。そして弾丸をビームではなく実弾の方へシフトさせた。

「実弾使うのは初めてだけど……上手くいってくれよ!!」

 俺は中型のドラゴンの翼へトリガーを定めて射ち放った。弾丸は狙い通りに当たると思いきや魔方陣のような障壁に当たるだけで、本体に直撃はしなかった。

「障壁!?だったら!!」

 俺は左手のライフルをしまって剣を抜くと、銃を射ちながら一気に突撃する。ドラゴンは障壁を張るも銃弾によって破壊され、ドラゴンは攻撃をできずに怯んでいる。そこへ俺は剣をドラゴンの腹部に突き刺した。

「グァァァ!!」

「そこだぁ!!」

 雄叫びをあげるドラゴンを余所に、俺は剣を腹部から抜き去り、傷口に銃を突きつけた。そこへトリガーを引き弾丸がばら蒔かれる。ドラゴンは再び雄叫びをあげ、そして事切れるように空から海へと落ちた。ドラゴンは徐々に沈み始める

「パラメイルみたいに凍らせられればいいんだけどな……」

 俺は完全に沈むのを確認すると、アンジュの方へ機体を走らせた。

 

 

 ~アンジュ視点~

 私はアセムに大型ドラゴンを倒せと言われ、しかたなく機体を『デストロイヤー』形態に移行し、やつに銃口を向ける。

「さすがに1対1は……」

 アセムにそう回線を繋ごうとしたその時、“ガレオン”級ドラゴンがこちらに向かって飛んできた。私は慌てて機体を『フライヤー』形態に戻して距離を取ると、ドラゴンは雷のような物を射ってきた。

「デカイ癖に早い!!」

 私は避けながら呟く。速度重視の機体で、なおかつ移動速度重視の『フライヤー』形態に追随してこれるほどのスピードをあんな巨体でできるのかは疑問だが、それ以上に距離を取りづらく変形する余裕さえなかった。

「……直線がダメなら!!」

 私は機体を一気に上昇しそのままドラゴンの後ろへと機体を動かす。案の定ドラゴンはスピードがあっても小回りは利かないようで、ゆったりとした感じで体を回転させてる。そこへ機体を人形にして剣を抜く。

「ハァ!!」

 私は剣を翼に突き刺そうとする。しかし、そうは問屋が卸さない。突然ドラゴンが尻尾を機体に叩きつけた。

「くぅ!!」

 『ヴィルキス』は吹っ飛ばされ、私は体を後部にぶつける。痛む体を起こして機体を立て直そうとするが、そこでドラゴンが機体を掴んだ。

「この!!」

 私は操縦桿を動かしてドラゴンから逃げようとするが、怪物の腕力がそれを許さない。それどころかなお一層力をあげてくる。

「いや……私は……死にたく……」

 ドラゴンはその顎を開き、パラメイルごと私を飲み込もうとする。

「私は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死にたくない!!」

 突然指輪が輝きだし、私の中で何かが弾けた。そして私の思考がクリアになるのを感た。ドラゴンは突然の光に掴んでいた手を突然放し、何が起こったのか分からないでいる。

「ハァァ!!!!」

 私は機体を立て直すと、剣を翼から取り出してドラゴンの頭に投擲する。投げたそれは竜の顎を貫き、頭部へと貫通した。

「グォアァァ!!」

 ドラゴンは悲鳴をあげてもがき始める。私は銃をしまって『凍結バレット』を展開し、一気に駆け抜ける。右手で剣を抜き、展開したそれを首元へ押し当てた。ドラゴンはまた悲鳴の雄叫びをあげながら、海上へ沈み、辺り一帯が氷と化した。

「ハァ……ハァ……」

 倒したという感覚が脳裏によぎるが、そこで私の意識は途切れ始めた。

 

 

 

 ~???~

「……!!今の感覚は……」

「この世界にも居るみたいだね……『SEED』を持った人が……」

 二人の青年は、森の中からある方向を見つめていた。そこは、アンジュがドラゴンを倒した方向と一緒だった。

「……急いだ方がいいかもしれないね」

「……はい」




はい、ということで次回に続きます……と言いたいのですが、前回話した通りしばらく時間が空きます。本当にすいません。

※3日 機体のスピードを修正しました。完全に勉強不足でした。
※10日 機体のスピードをまた修正しました。設定と違うのはオリジナルの設定とさせてもらいました。
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