クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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第十三話 厄災の侵略者(?)

 俺達は機体を飛ばすと、すぐに違和感のようなものを感じた。

「(なんか……機体の制御が楽だ)」

「(気のせいか、機体がいつもより速く感じます)」

 二人の違和感、それは機体の運動性能に他ならなかった。操縦桿の動きがいつもより楽になり、フットペダルの踏み込みも軽く感じる。

「……まさか!?」

 俺はキラさんの実力に目を疑うことになった。あの人は俺やアンジュの戦闘を考察してプログラムをそれぞれに最適化されていたのだ。しかも俺は当人と戦闘したからまだしも、アンジュに至っては殆ど視認していないはずだ。

「……とにかく、今は最優先事項を!!」

 そう言ってアンジュは完全に修復を終えていない機体にトップギアを掛けて駆け抜けるが、二人との戦闘のせいでスラスターが万全ではないため、始めて駆った時よりスピードが出なくなっている。

「無茶をするなアンジュ!!」

「私に命令するな!!」

 アンジュは俺の制止を降りきって飛び出す。すでにドラゴン達とはランデブー寸前まで接近していて、アンジュは殲滅形態に機体を移行させる。そして武装のなかで唯一無事な実体剣を右手に持った。

「はぁぁぁ!!」

 そしてアンジュはドラゴンの胴体を切り裂き続け、機体にドラゴンの血液が付着する。

「アンジュ!!くそ」

 俺はアンジュの心配をしつつ、目の前にいる今回の目的……黄色い虫のような生物と対峙する。虫というよりは船の錨を動物化した姿で、中には色が赤くそれこそカブトムシのようなフォルムのものまでいる。

「少なくとも1体は生け捕りにしなくちゃいけない……できるな、『AGE-2』」

 俺は左肩の小型のウィングと右肩の大型ウィングを抜くと、それぞれをタガーブレードのように持ち手を変形させ二刀流の構えを執る。奴らもこちらに気付いたようで臨戦態勢を執っていた。

「うおぉぉ!!」

 俺はフットペダルを勢いよく踏みつけ、背中のスラスターを勢いよく吹かした。そして黄色い生物を大型のウィングブレードで切り裂き、小型のウィングダガーをブーメランのように飛ばし、取り付けられたワイヤーを左手で掴みさらにダガーを振り回す。ターゲットはそれを受けては爆発、または真っ二つに切り裂かれて地に落ちる。

 対してターゲットの方もただやられるのではなく、空中を自在に飛び回り体当たりを仕掛けてくるが、俺はそれを避けつつブーメランを鞭のように扱って叩き潰す。するとターゲットはなにを思ったのか大量に周囲を囲んできた。

「なんだ!?」

『アセム!!』

 いきなり回線が開くと、そこには銀髪の青年と赤い髪の少女が映っていた。

「二人とも、いったいどうして……」

『そんなことよりも速くアンジュを連れて撤退しろ!!』

「はぁ!?」

 俺は呆れた表情で返事をしてしまう。が、ゼハートの顔は真剣そのものだ。

「どういうことだ?」

『お前らが斬り倒したそのターゲットのそれぞれ1体がこちらに落ちた。そして調べてみたら大変なことが判明した』

『もしかしたら命に関わるかも~』

 ヴィヴィアンの目もかなり険しくなっている。

『ターゲット……これより《インセクト》と呼ぶが、奴等の体、特に後部には特殊な穴のようなものが共通して付いていた』

「穴……」

『そして赤い方には尾のような部分には砲身のような物質があった』

「砲身……まさか!?」

 俺は驚愕した。もし考えている事が事実なら、今の俺の状況は大変どころかかなり悪い。既に《インセクト》に囲まれ、赤く大きい砲は砲身と呼んでいた部分からは光のような物が漏れている。

『いいかアセム!!そいつらは……』

 ゼハートのその言葉と時を同じくし、《インセクト》の体から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《大量のミサイルとレーザー》が降り注いだ。それは他のミサイルとぶつかって誘爆し、爆炎が俺の機体を飲み込み、光の熱線が機体各部を掠めた。

「うわぁぁ!!」

 俺はたまらず悲鳴をあげ、機体はバランスを失って海へと落ちた。落ちたところから波しぶきが起こり、モニターには再起不能の表示が示された。

「くそ……そういうことかよ!!」

 ゼハートが最後に言おうとした言葉、それは恐らく

『いいかアセム!!そいつらは、ミサイルやレーザーを自身の体で産み出せるんだ!!』

 というものだろう。実際俺は生物が体内で武器を造るなんて有り得ないという思いから今の事に気付かなかった。

 思えば奴等を『実体剣』で切り裂いて爆発する時点で変なはずだ。ドラゴンをビームや実弾銃で討ったりしたなら爆発するのも分かるが、ビームが発生しない『実体剣』で爆発するはずがないのだ。爆発するとしたら、それは体内に《核》などの物質を精製しているか、もしくは兵器を内蔵してるの二つだろう。

 前者なら、倒した時点で核爆発による熱線と放射線で俺らもろとも死ぬ危険性があるが、仮にそうだとしたら爆発しない時があるというのは有り得ない。そう考えると、後者なら兵器を内蔵……もとい精製してる部分を斬らなければ爆発しないし、仮にそこを斬っても爆発はMSが爆発する時と同じぐらいだ。

 なんとか頭のなかで考えがまとまった所へ最悪のメッセージがモニターに点灯した。

「パワーユニットと駆動系に異常!?スラスターも機能しない!?」

 どうやら先程の攻撃のダメージで、只でさえ修理が不完全な機体の各所がダメになってしまったようだ。流石にこれでは何もできない。できるのは頭部に追加装備されたバルカン砲が生きてるだけで飛ぶことはおろか、機体の腕を動かすことすら不可能だった。

『大丈夫か!!アセム』

「なんとか……けど機体が」

『ちぃ……すぐにヴィヴィアンを向かわせる。お前はデバイスを持って機体を一時的に放棄して脱出しろ』

「機体を放棄って……そんなことしたら機体が海に沈むぞ!!」

『大丈夫だ。沈んだとしてもそこはまだ浅瀬の部類だ。ダガーをアンカー代わりに島に刺せば回収できる』

「無茶苦茶だろそれ!!」

『四の五の言ってる場合か!!』

 流石に司令官をやってただけあってゼハートの状況判断は間違ってはいないが、やはり機体を……しかもワンオフの機体を放置するのは抵抗がある。

 そんな事を口論してると、《インセクト》の大群がいつの間にか上空を囲んでいた。奴等は既に臨戦態勢で武装を構えているを

「……ダメだ」

 半ば呆然として見ていると、いきなり《インセクト》の体が爆発した。モニターで確認すると、すぐ側にはトマホークを投擲したらしいヴィヴィアンの『レイザー』が飛行していた。

「済まないヴィヴィアン!!」

『別にいいよ~。報酬が増えるから♪』

「……多分修理代で殆ど吹き飛ぶぞ?」

『……ナニモキコエナイナァ?』

「何でかたことなんだよ!?しかも疑問系!?」

 ヴィヴィアンは現実逃避しながらもコックピットから出て左手を差し出した。すると機体である『レイザー』の左手もこちらに差し出され、俺は中から出ると急いで飛び移った。そしてヴィヴィアンのいるコックピットに乗り移る。

「さ、流石に狭いな」

 元々、人が入るのでさえギリギリに作られてる為か、小柄なヴィヴィアンと一緒でもかなり窮屈に感じる。

「大丈夫アセム?」

「なんとかだけど……」

「じゃあ、しっかり掴まっててよ!!」

 そう宣言すると、ヴィヴィアンは人型の『デストロイヤー形態』で一気に加速しはじめた。それもMSのような直線的な加速ではなく、戦闘機のようなマニューバを使いながら《インセクト》へ攻撃するアクロバティックなものでだ。『AGE-2』も『ストライダー形態』という戦闘機のような姿に変形するが、『パラメイル』や旧型の戦闘機のような機動をする事はなかったためかなり体へ負荷が掛かる。

 さらに言えば俺はヴィヴィアンと違い機体にしがみつく他ないため、縦と横のGが体を襲ってくるため少し酔いはじめてきた。

「くっらえ~!!」

(勘弁してくれ~!!)

 それから三十分、俺は戦闘が終わり興奮状態のヴィヴィアンがもとに戻るまで意識を手放した。そして何故か島でシンとアンジュに冷やかな眼で見られたのは、また別の話。




はい、次回は今回の話のアンジュ視点をお送りしたいと思っています。
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