クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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第十四話 自由の剣

「……」

 アンジュは戦いが終わった後の海を眺めていた。《インセクト》や《ドラゴン》の死体で海は濁り、浜辺にはかなり損傷したヴィルキスなどの機体が立っている。

「ここに居たんだね」

「……キラ・ヤマト」

 側に来た茶髪の青年に声をかけられ、アンジュは視線だけをそちらに傾ける。どうやらキラも海を眺めに来たようだ。二人の間には無言の空気が漂ってしまう。

 そしてキラは何を思ったのか顔を上にあげ、空に映る星を見はじめた。

「……星、キレイだね」

「星なんか、アナタ達が居た宇宙コロニーの方がよく見えるでしょ」

「でも、実際のコロニーじゃ星は映像の方が多いんだ。こういう風に映るのはあまりないし」

 そんな他愛ない会話をすると、二人はまた無言になってしまった。

「……ねぇ、なんであの時私を助けたの」

 アンジュは流石にこの雰囲気に耐えかねて思っていたことを聞いてみる。

「なんでって?」

「私はアナタの事を認めないと言った。なのにアナタは……」

 それは、数時間前の戦闘まで遡る。アンジュがアセムの言うことを聞かずに独断専行し、ドラゴンを狩っていた時だった。

 

 

 

 私は<スクーナー》級のドラゴンを切り裂き、近づく敵にバレットを撃ち込み続けていた。数十の規模で出現したドラゴンは半数以上が肉塊へと変化し、大型や中型が居なかった為かかなりあっさりとしている。

「死になさい!!この化け物が!!」

 私はそう叫び、また新たなドラゴンを両断した。するとドラゴン達が一斉に方向転換し、急激に撤退していった。

「なにが……」

 突然の出来事に動揺すると、モニターへ機体ロストの表示が出現した。アセムの『AGE-2』だった。

「うそ……アセム!!」

 そこで我を忘れてロストした戦域へ飛ぼうとしたが、そこでターゲット……もとい《インセクト》に囲まれてしまった。

「邪魔ぁ!!」

 私はアセムの仇とばかりに奴等に攻撃を仕掛けるが、いかんせん射撃武器が今使えないせいで、剣の間合いには入らず避けられてしまう。

「ちょこまかと!!」

 私はイライラしながらターゲットを追うが、背後からの爆発が襲った。《インセクト》の『精製武装』のミサイルだ。

「くっ!!まだ!!」

 私はすぐに攻撃した敵に狙いを定めようとするが、その一瞬で他の《インセクト》達が機体の死角からレーザーやミサイルなどの攻撃を仕掛けてくる。一発一発の命中精度は低いものの、やはり機体を囲むだけの量の敵から射ってくるそれは、誘爆したミサイルの爆炎や爆風、さらにはレーザーの熱線や誘爆しなかったミサイルの弾頭が機体を消滅させるかのごとく浴びせられる。

「きゃあぁぁ!!」

 衝撃のせいか、機体の各部は激しく損傷し、人型形態のまま海中へ墜落を始める。

「く!!まだまだ!!」

 私は水面ギリギリで機体を変形させ、戦闘機形態に移行してなんとか着水を逃れる。が、やはりフレームや間接に負荷が掛かっているようで、いつもよりスピードが出ないでいる。

 さらに《インセクト》達は執拗に機体を狙い、先程のようなミサイルやレーザーが、大量に襲ってくる。流石にこれ以上当たれば機体どころか自分の身が危ない。私はそう思って機体を小刻みに旋回して攻撃を避けるが、攻撃が外れたミサイルが海中で波しぶきをあげ機体をそれが襲う。

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 それにより機体のバランスが崩れてしまい、機体が海面に水切りのようにぶつかり、私は身を守る為に『デストロイヤー形態』に変形させるが、島の崖に激突してしまう。

「まだ……まだ……」

 強がりは言ってたが、あの時の機体はボロボロで推力も殆どない。さらにはアセム達が居たポイントから遥か数㎞も離れている。

 そして回りには《インセクト》の大群が集まり、じわりじわりと寄ってくる。機体を動かそうとするが、やはり激突の影響で既に動かない。

「動け!!動きなさい!!」

 私は操縦桿を懸命に動かすが全然反応せず、《インセクト》の大群はもう目の前まで迫っている。やがて自分でもわかるくらいパニックに陥ってしまう。

「い、嫌……私は……まだ……死にたく……」

 完全に怯えきり、《インセクト》が攻撃しようとしたその時、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一筋の光が私の目の前を横切った。

「――え?」

 私は訳が分からなかった。目の前に居たはずの《インセクト》のうち数体が爆発し、残った敵も今の光の方向へ振り向いている。そしてその方角に居たのは、2つの銃を1つに連結させた蒼翼に白い姿をした『ヴィルキス』に似た『ガンダム』だった。

「『フリーダム』……キラ・ヤマト?」

 

 

 

~キラ視点~

「危なかった……」

 僕はモニターでアンジュの機体が無事なのを確認する。といってもここからアンジュが居る地点までは約2、3㎞も離れているため実際はモニターでも殆ど確認できていない。が、それでも《SEED》の力を持つもの同士のためかおぼろげだが無事だと直感する。

 そしてアンジュの確認を済ませると、ゼハートが《インセクト》と呼んだ敵に視線を向ける。そして1つに連結させたライフルを2つの銃に戻した。

「もう……誰も傷つけさせない」

 そう僕は呟くと、自分の中の《SEED》が弾けた。その瞬間、頭の中が一気に冴え始め機体のコンソールが浮き上がった。そして約数㎞先に居る敵を『フルバーストモード』でロックオンした。

「当たれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 遥か数㎞先の敵は一瞬のうちに光の光線に射ち貫かれ、小型の物は一瞬で爆散した。そして僕は機体を動かし僅か数秒で《インセクト》の群れの中に突っ込んだ。

 《インセクト》の方も一瞬怯んだように見えたが、すぐに体勢を建て直すと、アンジュやアセムのように集団で囲んできた。が、それでも僕は《SEED》のおかげかあまり慌てることはなかった。

「重力下だからドラグーンシステムは使えないけど、やり方はある!!」

 そう言うと、翼を目一杯に展開した。そして『フルバーストモード』を発動させると、翼の突起羽から緑色のビームを打ち出した。

 元々『ドラグーンシステム』は僕たちの世界でムウさんが使ってた『メビウス・ゼロ』のようなオールレンジ攻撃を前提に作られたシステムだ。だが、それとは違いこの『ドラグーン』は後者の『メビウス・ゼロ』とは違い有線ではなく無線、つまりそのシステムに対応した武器自体がパイロットの意思に従って攻撃する仕組みだ。だが、このシステムにはかなりの『空間認識能力』が必要で、これが使えるのは才能がある人間や一部のコーディネーター、もしくはそれ専用に特化させた『強化人間』ぐらいだ。さらに『ドラグーン』は宇宙空間などの無重力空間で以外に使用できないというデメリットがある。

 だが、今回はそんなデメリットなんて関係がなかった。なぜなら『ドラグーン』専用の突起銃を『無線で飛ばさずに使用した』からだ。もちろん射程範囲が狭いという欠点はあるにしろ、後方や側面の敵には効果適面なのだ。特にこの戦法はシンがザフトの『FAITH』時代に一緒だった『プロヴィデンス』の後継機である『レジェンド』のパイロットもよく使用していた。それでも『レジェンド』のように機体前側に砲身を向けられないが、フリーダムの火力と『SEED』の反射なら関係ない。

 それに漏れず、後方の敵は翼からの熱線に射ち貫かれ、また前方の敵は2つの銃を巧みに扱ってビームの光で貫く。圧倒的な数だった《インセクト》も、たった数分後には約数十体程度しか残らない状況へとなっている。

「これで……」

 僕は敵が少なくなって隙ができたのか、再び『マルチロックオンシステム』を発動しようとした時だった。《インセクト》の1体が後側の死角から突撃してきた。アラートは鳴るものの、『マルチロックオン』を使ってるために反応が少し遅れる。

「くそ!!」

 僕が振り向いた瞬間には既にゼロ距離と言えるほど肉薄していた。そして敵が機体にぶつかる瞬間、赤いビームの奔流が目の前に居た敵を凪ぎ払い、消滅させた。

『危ないですよ!!キラさん!!』

 回線で注意してきたのはシンだった。先ほどのビームはどうやら『デスティニー』の長距離ビーム砲のようだった。

「ありがとう、シン」

『俺はアスランみたいになんでもできるってわけじゃないんですからね。それにキラさんに何かあったらアスランとラクス様にドヤされるのは俺なんですから』

「分かってるよ」

 そんな呑気(シンは本気だけど)な会話をしてるうちに《インセクト》の大群は撤退し始めた。そしていつの間にか、空には満面の月が僕らを照らしていた。

 

 

 

 ~アンジュ視点~

「ねぇ、どうして助けたの」

 私はあの戦いで死ぬかもしれない恐怖でいっぱいだった。それを自分自身が罵倒した相手が助けた。その理由が知りたかった。

「僕は、誰も殺さないって決めたんだ。だからどんなに憎くても相手から嫌われようとも、僕は誰も殺さないし、殺させない」

「そんなの詭弁よ。傷つくのが怖かったら誰も戦いなんてしないわ。戦う以上、相手は自分の命をかけてるのよ」

「そうかもしれない。けど、力だけじゃ何も変わらないんだ」

 キラはそう言うと森のなかにある機体の方へ向かっていった。

「……力のほかに何が必要なのよ」

 私の言葉は誰もいない夜の海にポツンとこだました。

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