クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

21 / 49
第十五話 謎のMSと空のデート(?)

『そうか、つまりターゲット……もとい《インセクト》はドラゴンのような魔法染みた攻撃ではなく、近代的なミサイル等を体内で精製する生物というわけか』

 ゼハートはジルへの作戦報告をしていた。先ほどの戦いでは万が一(まずあり得ないが)味方が全滅した時に報告できるように戦闘にでなかったおかげで基地との通信が唯一可能だった。

『とりあえずの状況は確認した。で、そちらの転移者はどうするつもりだ?』

「二人に話したところ、ひとまずは私達と共にミスルギ皇国へ向かいます。が、機体の損傷が激しいので、予定とは異なりアンジュとヴィヴィアンの二人にはここで可能なら私達の機体と各々の機体をそちらで回収してもらいたいのですが」

 実際のところ、今回はキラやシンのおかげで撤退させたからいいものの、次襲われたら今度こそ無事では済まないかもしれない。

『それはいいが、移動手段はどうする。その転移者二人の機体に乗せてもらうのか?』

「いえ、タスクという青年がミスルギ皇国の近くまで行くようなのでそれに同乗させてもらうつもりです」

『……了解した。だが万が一戦闘に巻き込まれてはいけないからな。予備の『グレイブ』2機を積んでいくからそれに乗っていけ。約三時間後に到着させる』

「わかりました。では後程」

 ゼハートがそう言うと、ジルはすぐさま回線を切った。

「……《インセクト》、奴らは何者なのだ」

「ミスルギ皇国へ行けば何か分かるんじゃないかな」

 ゼハートは後から声がいきなり聞こえすぐにそちらへ振り向く。そこには気配を消して、木にもたれ掛かっていたタスクがいた。

「聞いていたのか?」

「途中からだけどね」

 タスクは妙に意味深な顔でこちらを見ている。まるで―

「まるで俺の事を監察しているようだな」

「監察?観察じゃなくてか?」

 タスクはおかしげに呟く。が、ゼハートの顔は真剣そのものだった。

「どちらにしても意味は変わらない。お前は何者だ」

「何者って、至って普通の人間だよ」

「ならなぜ『マナ』を使わない。『普通』なら出会って最初にこの世界の『普通』である『マナ』を使って俺らを拘束するなりできたはずだ。なのにお前はそれをしなかった」

「……」

「さらに言えば、お前はキラ達とMSとパラメイルを修理している時にも『マナ』を使わなかった。それを使えば工具を取りやすい位置で置いておく事もできた。なのにそれをしなかった」

「だから?それだけで僕が『普通じゃない』って確定するわけじゃない」

「あぁそうだな。お前はまず『ノーマ』じゃない。『ノーマ』は女性にしか発現しない。だからこそ、男でありながら『マナ』を使わず、それ以上にパラメイルを修理できる腕を持つ俺やアセムと同じぐらいの青年だ。正直言って『こちらの世界』であっても普通な訳がない」

 さらに言えば、とゼハートは一旦そこで言葉を区切った。

「アンジュの話だと、この世界の『普通の人間』は目の前の人間が『ノーマ』だと分かった瞬間に手のひらを返したように冷酷になる。なのにお前はそうじゃなかった」

「別に誰も彼もがノーマ否定者じゃないさ。今のローゼンブルム王国の諸島都市、旧国領『日本』じゃ『ノーマ』も『マナ』も関係なしで過ごしてるしな」

「その分の格差はあるはずだ。女性しか居ないから兵役は無いだろうが、一番妥当なのは徴税なりの負担だろうが」

「そこまでお見通しか……」

「伊達に『向こう側』で指揮官はしていない。とにかく話してもらうぞ」

 ゼハートがそう言うと、今までのタスクの表情が一辺、闇に満ちたような表情へと変貌した。

「く!!」

 そして長身の青年は『能力』ではなく直感的に、それも生物的な本能でその場から一歩退いてしまった。

「悪いけど、これについては今は話せない。けど、時期が来れば必ず教える」

「……本当だろうな」

「うん」

「……了解した」

 ゼハートが渋々頷くと、タスクの表情がいつものそれに戻った。

「じゃあ僕も準備するから」

 タスクはゼハートの顔を見つめ、さっさと行ってしまった。

 

 

 

「う~ん?なんだろう、これ?」

 ヴィヴィアンは飛行艇が来るまでの空き時間、島内を散策していた。本当は一人で行くつもりだったのだが、

「パラメイル……はサイズ的に違うし、MSか?」

 シンも同行していた。シン曰く、『一人で行動してはぐれたら元も子もない』と言っていたが、内心では彼女の奔放さがどこか、彼が昔守れなかった少女に酷似していたのだろう。

「ここでクイズで~す!!こんなMSは存在するんでしょうか?」

「あると思うけど、多分俺らの世界のやつじゃないな。これも転移してきたのか?」

 そして二人が見つめていたのは、黄色い翼を持ちフリーダムよりも少し大きいライフル1つを装備した、トリコロールカラーのMSだった。その機体には頭部がなく、コックピットにはパイロットが居た形跡が見当たらない。

「MSなら転移するしかなよね~、パイロットも居るかな?」

「いや、多分それはない。居たなら足跡がある筈だしな」

 シンはそう言うと、タスクから借りていた無線機を取り出した。そして回線をキラに繋いだ。

『どうしたのシン、何かあったの?』

「未確認の無人MSを発見しました。俺らじゃ運べないんで『フリーダム』使って取りにきてくれませんか?」

『分かった。じゃあすぐに行くから、少し待っててね』

 そう言うとキラさんは回線を切った。

「そういうことだから、少し待って……」

 シンがヴィヴィアンの方を向くと、彼女は謎のMSのコックピットに入ろうとしていた。

「ヴィヴィアン!!何してんだよ!!」

「操縦した方が早いじゃん♪来るのを待つより」

「無茶だろ!?どんな機体か分かってないのに使うなんて」

 そんな口論をしてるうちにヴィヴィアンがコックピットに入り込んでしまった。シンも慌ててその中へ入る。機体が膝立ち姿勢のため、登るだけでかなり疲れた。

「お疲れにゃ~シン」

「ヴィヴィアン……ゼェ……良いから……ゼェ……降りるぞ!!」

「残念、既に機体が動いちゃいました」

 ヴィヴィアンのいう通り、機体のスイッチがいつの間にか入ってしまい、顔無しのMSは膝立ちから直立した。

「どうする♪シン」

「……しょうがない、俺が運転するよ」

「了解にゃん」

 ヴィヴィアンはそう言って席を譲り、シンはシートへ座った。そしてヴィヴィアンはというと、大胆にもシンの脚の上に座る。シンは1度心臓がドキッと高鳴ったが、それを顔に出さないようにする。

(ここで顔に出したらダメだ。平常心平常心と……)

(シンってなんか温かいにゃ~……って顔が緩みそう!!)

 思ってることはどっちもどっちだった。が、機体を動かすと、そんなこと言ってる場合じゃなかった。機体を空に浮かすと、物凄いGが二人の体を襲った。

「うそ!!」

「デスティニーのよりは遅いけど、それでもインパルス並だな。こいつは」

 そしてヴィヴィアンが何を思ったのか、辺りのスイッチを確認し始めた。

「何してんだ?」

「この機体、変形するんじゃないかにゃ~?」

「……まぁできるだろうけど、シールドが無いからそれは無理じゃないか?」

 シンもヴィヴィアンも機体見ただけで、この機体が変形すると気付いた。が、装備や機体の損傷から見てそれはできないと思ったのだ。

「あ、キラの機体発見~」

「無線……っていうかこっちの回線を使えば」

 そうすると、機体のスイッチを押して回線を開く。フリーダムの回線は本人から教えてもらっているために、シンは迷わないでそれを開く。

『シン、それにヴィヴィアン!?』

「キラさん、これから合流します」

『……別にいいけど、二人はそれで良いの?』

「「は?」」

 シンと同じくヴィヴィアンも素っ頓狂な声をあげてしまった。良く良く二人の体勢を見てれば、幾ら天然マイペースなキラでも気付く。というよりも気付かない方がおかしい。

『どうやら僕はお邪魔みたいだから、二人でゆっくり戻ったら?』

「!!!!別に良いです!からかわないでください!!」

「え?私はこのままで良いけどにゃ~」

「う……」

 ヴィヴィアンのストレートな言い方に、シンは戸惑ってしまう。それを見ていたキラは苦笑を浮かべている。

『ヴィヴィアンがそう言ってるみたいだから、そうした方が良いよ』

「……はい、そうします」

『じゃあまた後でね』

 そう言ってキラの『フリーダム』はさっさとどこかへ行ってしまった。残された二人はそれから他愛もない話をしながら、残された休憩時間を満喫(?)していた。

 

 

 

 その頃、アンジュがタスクのラッキースケベの餌食になり、拳銃を射ちまくっていたのは、笑い話の種になるだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。