それでは今年一発目、張り切って参ります!!
シンとヴィヴィアンの空中デートから数十分後、島の浜辺に一機の大型飛行艇が着陸した。飛行艇の翼部には『アルゼナル』の模様が描かれ、中から第一中隊の副隊長、サリアとエルシャが乗っていた。
「あれ?なんでサリアがここに?」
「なんでじゃないわよ。アセム達が機体を修理するって話を持ち出すから私達が運びに来たのよ。一応うちの中隊に所属してるって名義だし」
「じゃあなんでエルシャ?普通だったらゾーラさんが来る場面じゃないのか?」
「隊長なら今頃、始末書に埋もれてるわよ。流石に今回の修理は書類ものだしね。来る前に見たら隊長の私室の一坪分はあったかしら」
「へぇ……なんか意外だな」
「まぁ隊長は見た目は誰かれ構わず女の子を襲っちゃうレズだけど、ほんとは仲間思いで責任感が強いから、言われた仕事は他の隊員……サリアちゃんを除いて押し付けるってことはしないわ」
「ふーん……で、機体の事なんどけど」
「ええ、用意してあるわよ。これから『グレイブ』二機を下ろすから手伝ってちょうだい」
アセムはそう言われコンテナを覗くと、そこにはミランダが使っているようなノーカスタマイズタイプの『グレイブ』が二機が人形で乗せられていた。
「それとアセム、フリットさんから渡しておけって言われたんだけど」
「父さんから?」
サリアが取り出したのは『AGEデバイス』の形になったカバーだった。そしてそれの後ろには何やらコードのような金属がついていた。
「これは?」
「なんでも、『戦闘するのにシステムへ学習させられないのは困る』とかなんとか言ってたわよ」
「……つまり、これは他の機体でもデバイスに戦闘データを溜め込ませられるようにする、いわばオプションってことか」
アセムはこんな無駄な努力を
「はっきり言うとそうなるわね。それの使い方も教えるから、とにかく手伝いなさい」
「……分かった」
そう口には出すものの、できれば使うことのないようにと願っている自分がどこかに居た。
「……とりあえず二人の機体は搬入したけど、ヴィヴィアンが見つけたそれは?」
到着から三十分、パラメイルの基本操作とアセムのオプションを教えているうちにエルシャ達が機体を詰め込んでた時の事だ。
「多分MSなんですけど、頭部パーツが無くて……」
「その前になんでMSがここにあるのよ。転移してきたのは『二人』でしょ。なんで機体が『三つ』あるのよ」
サリアの言うこともごもっともで、パイロットが居ないMSが転移するなど聞いたことも考えたこともない。そもそもこの世界の人間からしたら転移してくること事態おかしいと言える。
「わからないけど、もしかしたら《インセクト》と一緒に転移してきたとかじゃないか?」
「あらあらアセム君、どうしてそう思ったの?」
エルシャはまるで熟年した母親のような温かい目で見ながら問いかける。
「《インセクト》はドラゴンみたいに『別の空間』から現れたんです。しかもあいつらが来たときにほんの少しだけ、空気があり得ないほうに滞留したのがゼハートのデータに残ってます」
「空気の滞留……確かMSは宇宙で活用される事が多いのよね?」
「ええ。もしあの《インセクト》が宇宙から来たなら……」
「アセム達もそれに便乗、転移すれば、もしかしたら自分達の世界に戻れるってことね」
サリアはアセムの言おうとした事を先読みして口にした。だが、実際問題はそんなにうまくいくものではない。
そもそも《インセクト》事態がこの世界のどこで生息し、また本来はどうやって転移するのか、それを知らないことにはまず何も始まらない。そして、
「でも問題は機体が転移しても壊れないか、ね」
そう、いくらアセムやゼハート、さらに言えばキラやシンの機体が宇宙空間から大気圏を無事に突破できる技術があったとしても、空間の転移空間の事象を突破できるとは限らない。それこそ転移空間で機体がいきなり形を保てなくなってドンという事だってあり得る。そうなれば最悪タイムトラベルなんて事すら起きることだって考えられる。
「まぁ、俺だってそんなにすぐに片付くとは思ってませんよ」
「そうね。じゃあ今のアセム君がやることは分かってるかしら?」
「……《ミスルギ皇国》へ行くことですよね」
「う~ん、確かにそれもあるけどちょっと違うかな?」
「え?」
エルシャはそう言うと何故かサリアの肩を軽く叩いた。
「アセム君のやることは、サリアちゃんを満足させる事よ~」
「え、エルシャ!!??」
サリアは驚いて声を荒らげ、そしてエルシャは肩を掴んで後ろを向くとサリアにしか聞こえない大きさで呟いた。
(お膳立てはしといたから、しっかりやるのよ)ボソッ
(な、何がお膳立てよ!?全然聞いてないわよ、そんなこと!?)
(そう言うけどこの一週間、サリアちゃんの目がまるで死んだ魚のそれだったのよ。見てる回りからしたら痛々しいことこの上ないし)
(うっ……)
実際エルシャの言ってる事はあながち間違ってもいない。というのも任務初日から三日目まではなんともなかった。が、それを過ぎるとジルから話しかけられても、ゾーラから胸のことで弄られてもどこかぼぅっとしており、食事の時などカレーなのにソースや醤油、マヨネーズをこれでもかと掛けて平然と食べてしまう事だってあった(他のノーマのメンバーはそれを一口食べた直後、医務室と食堂が死屍累々と化したのは記憶に新しい)。端から見てて精神疾患でも掛かったのかと思う連中は後を絶たなかった。
恋は盲目なんて良く言うが、サリアに関しては盲目どころか何も見えてすらいなかったようだ。この時の事を後にヒルダは『初恋してる初々な少女』とすら言っている。
(アンジュちゃんはこっちで抑えとくから、貴女はアセム君精分を補給しときなさい。でないと死体処理するこっちがやっていけないわよ)
エルシャは死体処理と言ったが、実際あの『カレー事件』の被害者達は口から泡を吹いたり、失神して女の子としては見せてはいけない痴態になってたのも数多く居る。その中を処理するのエルシャ達第一中隊やジル、フリットとエマ監察官が頑張っても丸二日近く掛かった。因みに被害者達は今もなおベットで安静にしているが、その時の記憶を完全に無くしていたのは不幸中の幸いだ。
(で、でもこんな至って普通な格好でどう楽しめって言うのよ……。そ、そういうのは早めに言っとくべきよ)
(私もジル司令官も何度も言ったじゃない。『そんな服装で大丈夫なのか』、って)
(だって……こんな風になるなんて思ってなかったし……)
(サリアちゃん……奥手すぎるのも罪なのよ。ここは攻めなきゃ損よ)
「ええと……二人ともどうしたんだ?」
「なんでもないわ。とりあえずサリアちゃんをよろしくね~」
「ちょ!!エルシャ!?」
そう言ってエルシャはさっさとどこかへと退散してしまった。サリアとアセムはその場に固まってしまうが、
「……とりあえず、反対側に行かないか?」
「……そうね。それなら何も無さそうだし」
こうして誰の陰謀か分からないが、二人のプチデートが幕を落とされた。
~アンジュ&タスクside~
「ねぇアンジュ……」
「……」
アンジュとタスクは森の中を彷徨っていた。というのも、タスクはゼハートとの会話の後に島の居住スペースに向かったのだが、そこでアンジュを発見し声をかけようとしたのだ。が、そこで木根に躓いてしまったのだ。そしてアンジュはタスクの変な叫び声を聞いて振り向くと、声の主が目の前に倒れこんできた。そこまでならまだアンジュも許せる。が、そうではなかった。
「アンジュ……もう許してくれよ」
「黙りなさい。この馬鹿、変態、スケベ、強姦魔」
「……」(´д`|||)
酷い言われようだが、実際のところタスクが悪い。何故ならタスクは倒れた後にアンジュの股間に顔を当て、さらに腕はアンジュの胸を揉むという変質者と言われても頷ける事をしたのだ。そしてアンジュは常に携帯している拳銃をホルスターから抜いて射ちまくった。そこからはタスクの生死を賭けたリアル鬼ごっこになり、気づいたときにはここはどこ?という風になっていたのだった。
「全く……なんでこんな《変態》と一緒にいなくちゃいけないのかしら」
「すいません……」
タスクは男としてあるまじき平謝りに徹していた。まぁそれだけの事をしたのだから仕方がないといえばそれまでだ。
「ほら、あなたなら元の場所の道も分かるでしょ。さっさと案内しなさいよ。この強姦魔」
「せ、せめて名前で呼んでくれよ……」
「なんで私が胸さわられた相手の名前を言わなきゃならないの?この変態」
「はい……ホントにすいません……」
アセムとサリアが二人っきりでデートしてたとき、こちらもこちらでデート(?)の真っ最中であった。が、雰囲気的には全然そう見えないのは気のせいではなかった。