クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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第二十二話 ミスルギ皇国潜入―光と闇―

「……なんだこれ」

 俺、アセム・アスノは男八人でミスルギ皇国へと潜入……もとい入国していた。警備などの諸々は省くとして、現在、俺ら転移組5人は揃って開いた口が塞がらなくなっている。

 というのも、まるで魔法のように物体が宙を浮き、何もない空間から映像を飛び出たせていたりと、ロボットや機械だらけの頭には刺激が強すぎた。

「やっぱり、何度来ても慣れないな~ミスルギ皇国は」

「ロイ、少しは自重して行動してくれないかな、只でさえ目立つ外見なのに騒いだら尚更だよ」

「ひでぇなぁ、おい」

 日常なのか、騎士団の二人は見慣れたように言葉を交わしている。

「えっと……ここが?」

「そ、目的地のミスルギ皇国だ。一応お前らは黒の騎士団名義でここに入れてるけど、迂闊にマナの人間に触れるなよ、ノーマと勘違いされて面倒を起こすのは勘弁だからよ」

「わかってますよ。でも、何て言うか違和感を感じて……」

「アセムの言う通りだ、機械に囲まれて生きてきた私たちにとってマナという魔法をここまで自然に使いこなしているのを見ると……」

 ゼハートのその言葉にキラとシン、弱々しくだがデシルさんも頷く。

「でも仕方ないかもね、この世界にとって僕たちは異端者……存在してはいけない存在なんだから」

「それにここに永住する訳じゃないんだし、海外の文化に触れると思えばいいんですよ」

 キラとシンはそう言うと、早速街中へと歩き始める。

「ロイ、この人数で一緒に行動してたら怪しまれるから、四人ずつに別けて行動しよう」

「そうだな、んじゃお前はあの二人とタスクを頼むぜ。俺はこいつらと一緒に行くからさ」

 なぜか勝手に班決めされ、俺とゼハート、デシルさんはロイさんと共に行動することになった。とりあえず辺りを見物するため、指令官殿を先頭に市街地を練り歩く。

 こちらの世界で言う平日だというのに、人だかりは多く、店にはかなりのお客さん達が出入りを繰り返している。

「凄いですね……まるで科学と魔法が一体化してるみたいだ」

「いい反応だなアセム、ミスルギ皇国はこの世界の中で最大規模の大きさを持つ国だ。人口は元より流通、文化、それぞれがここで新しく生まれるとさえ言われてるほどだ」

「そして、ノーマが生まれやすい国でもある……ですか?」

「……言いたくないが、そうだゼハート。実際、ノーマの約七割近い人間がミスルギ皇国及びその周辺がほとんどだ。最近行ったアンジュリーゼ元皇女殿下を始めヒルデガルト、クリスタ、ミランダなどなど、君達が見知ってる顔も多い」

 ロイのその言葉で俺とゼハートの頭に赤髪のツンデレ少女と水色の髪の気弱な少女が目に浮かんだ。

「って、どうしてロイさんが第一中隊の人間の本を?」

「一応、アルゼナルはローゼンブルム王国の所属部隊扱いだからな。カザマの直属の上司からデータは貰ってるんだよ」

「カザマの上司?どんな人間なんだ?」

 ゼハートのその言葉にロイはう~ん、と首を捻る。

「簡単に言うなら、『仮面の戦略兵器』かな?」

「?なんだそれは?」

 今まで話に混ざってこなかったデシルさんはいつの間に買ったのか、少し大きめの林檎をかじりついている。

「……甘い」

「いや、林檎なんだから甘いでしょ」

「前に食ったのはもっと渋かった。今まで食った記憶がないのに……」

「兄さんは林檎が好きだったから、多分奥底にその記憶が残ってるのもしれないな」

 そうゼハートは懐かしく感じているのか、どこか遠い目でデシルさんを見つめている。

「で、その仮面のなんとかってなんですか?」

「カザマとシナノの直属の上司にして黒の騎士団の頭領、圧倒的不利を一瞬にして有利に変えたうえに敵の策さえ看破して自分の有利な風に展開する。ついた二つ名が『仮面の戦略兵器』、『奇跡の男』ってわけ」

「それは戦略の基礎では?」

 ゼハートのそれを、ロイの言葉は俺やゼハート、記憶がないデシルさんさえも驚愕させた。

 

「ならお前は飛行できる最新鋭機複数から囲まれていて、なおかつ自分の機体は飛行不可の骨董品クラスの量産機、しかも援軍も何もない荒野で相手を無傷で全機を撤退、もしくは撃破するなんて事をできるか?できないだろ?」

 

「……確かに無理ですが、それは言い過ぎでは?」

 ゼハートは震える声で聞き返す。仮にもヴェイガンの地球攻略前線指令官をやってのけたゼハートにしてみたら、ガンダムAGE-1(フリット・アスノ)Gバウンサー(ウルフ隊長)などの歴戦のエースに ガフラン(旧型MS)で対抗して勝てと言ってるようなものだ。

 俺からしても、前にウルフ隊長が作らせた練習マシーンで、旧タイプのジェノアス設定で父さんとゼハートを相手にしろと言われたら絶対に無理だしやってられない。

「それをやってのけるから、黒の騎士団と日本って国は存在していられるんだ。言い過ぎかもしれないが、アイツは世界さえ変えちまう力を持ってるぜ」

  そういうロイさんの顔は冗談抜きで笑顔だった。

 その頃日本の司令室では、一人の少年が盛大にくしゃみをし、飲んでいた紅茶(オレンジ・ピール)を吹き出して翠色の髪の少女の顔にそれをぶちまけていたのは、また別の話だ。

 

 

「……んで、とりあえずは買い物は終えた訳だが」

 数十分後、俺らは『暁の御柱』が見える喫茶店で軽食を取っていた。

「一応荷物はこっちの方からそっちの基地に送るとして、問題は……」

「この荷物の多さだよな……」

 というのも俺らが持ってきたお金の額に対してミスルギ皇国の物価はあり得ないほどに低かった。人口が多いから損して何とやらという見方もできるが、兎に角安かった。

 そのおかげか、俺とゼハート、ついでにデシルさんの服などを数種類買い揃えても、未だに三~四万ほど余っているのだ。

 ただここまで買い揃えたお陰として、機体に詰め込める量を遥かに超しているのだ。実際、MSのキラ達ならいざ知らず、現在俺達が乗ってきたのはパラメイル……通称『ノーマの棺桶』なため、荷物が入る訳も道理もない。

 運んでくれるに関しても、ここから日本軍基地までは車でも三~四十分は掛かるうえに、量も軍のジープに納まるのか?というほどの量がある。

「まぁジープの後ろの席の奴が持てば……お前ら伏せろ!!」

 ロイさんはいきなりテーブルを蹴り倒すといきなり爆発と銃弾が鳴り響いた。

 俺らもテーブルに隠れて状況を確認すると、そこには黒く塗られたMSの上半身ほどのサイズはあるであろう機体がそこにはいた。

「ちぃ!!こんなときにテロリストかよ!!」

「テロリスト!?それってもしかしてアンジュと関係するんじゃ」

「その通りだよ、アイツらはいわゆる『アンジュリーゼ信仰派』ってやつで、今のミスルギ皇国の皇帝ジュリオ氏を快く思わない連中だ!!あの『バッフェ』はミスルギ皇国の自衛用機体なんだが、そいつの生産工場もテロリストに奪われてるらしい」

「そんな……」

 俺はもう一度浮かんでいる機体に目を向ける。まるで人工衛星のような姿をしたそれは、両肩に等身大のシールドと、ガトリング砲のような両腕、自衛用とはいうがどう見ても殲滅用の機体にしか見えなかった。

 そのときロイにマナの映像通信が起動する。どうやら相手はカザマのようだ。

「カザマ、そっちの状況は!?」

『テロリストのバッフェが五体彷徨いてる。今すぐ基地に向かうのは無理そうだ……』

「なら基地のシナノに連絡しろ、俺らのKMFを起動準備させてこっちに来いってな」

『それなんだけど、今ロイ達って暁の御柱の近くにいるよね?』

「ん?それがどうした?」

『問題のジュリオ氏から救援要請が来てるんだ。可能ならば転移者も連れてこいって』

「はぁ!?」

 ロイさんは驚いてるが、それは聞いていた俺たちも同じだった。

「どういうことだ!?転移者の事はS級特秘事項だろ!?どうして」

『わからないけど!!兎に角向かってくれ!!僕たちは何とかして基地に戻るから!!』

「お、おう!!なるべく早くしろよ!!」

 司令官はそういって回線を切った。

「……どうやら、簡単には戻れなさそうだな」

「ですね」

 俺たちはため息をつくと、仕方なく目の前の暁の御柱の方へ向かった。

 

 

 

ジュリオside

「テロリストどもが……あと少しだというのに!!」

 私は御柱内にある格納庫に居た。手にはマナで創られたキーボードと、目の前には深紅の機体が直立している。

「私の時間は残り少ないんだ……なんとしてもこれだけは……!!」

 すると近くに妹のシルヴィアとメイドのモモカが側に寄ってくる。

「お兄様……」

「すまないシルヴィア、私はこうしなければアンジュリーゼを救えなかったんだ……」

「でも……」

「分かっているさ、私は妹を救うために両親を手に掛けた……それは償わなければいけない罪だ。この機体を……彼女達の力にすることで……」

 その時、テロリストの攻撃の余波が格納庫内を揺らし、私たちはおおいによろけた。

「モモカ!!ミスルギ皇国皇帝として命令する!!なんとしてもシルヴィアをアンジュの元に送り届けろ!!」

「でも……ジュリオ様は!!」

「私は彼女に会っても殺されるだけだ。だからこれを彼女に渡してくれ」

 そう言って渡したのは、一つの手紙だった。

「頼んだぞ、筆頭メイド!!」

「……わかりました」

 モモカはそう言うと、シルヴィアの車イスを押して格納庫から出ていった。

「これでいい……これで良かったんだ……」

 そして私は深紅の機体にもう一度目を向ける。

「頼んだぞ……『エピオン』、妹にお前の加護を……」

 その時、再び格納庫の扉が開く、そこには呼んでいた彼らが、そこには居た。

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