クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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ミスルギ皇国潜入―魔王と夜叉―

「さて……どいつから片付けようか?」

 私はとりあえず敵の数を確認する。シンやカザマ達が大分削ってたようで『バッフェ』の数は減っているが、それでも四〇近い数が囲んでいた。

「まぁ全員処刑確定なんだけど……面倒だから出し惜しみは無しだ!!」

 そう独りごちて私は両肩に収納されたスラッシュハーケンを四つ、敵に向かって射出した。囲んでいる関係上それぞれが別の機体に着弾し、そして

「くらいな!!」

 手元のスイッチを押した。すると刺さったハーケンから紅い光が『バッフェ』を襲い、四機全てを爆発、四散させた。

「相変わらずご機嫌な威力だ、この『輻射波動装置付き』は」

 輻射波動、それはこの『紅蓮』と呼ばれる機体の代名詞ともいって過言ではない代物だ。特殊なマイクロ振動波を形成し敵をその振動及び高熱で機体ごと爆破させる装置であり、日本領の基地の防御装置としても使われる。

 元々は紅蓮の右腕部の専用アームでしか使えないうえに一定放出しかできなかった代物だが、今やその専用アームは両腕へと装備され、日本製のKMFのほぼ全てに防御装置として装備されている。

 そして今回、輻射波動機構の発展とも言えるそれは、KMF第二世代の頃から標準装備されたスラッシュハーケンにそれを組み合わせた実験装備『S . R . H(スラッシュ・レディエイション・ハーケン)』 、その威力は両腕の輻射波動には劣るものの敵を破壊するには充分な威力を誇る。

「自分で言うのも難だけど、カザマが悪魔とか魔王とかいうのも仕方ない、か」

 私は使用済みのハーケンを元に戻し、腰から二本のナイフを抜く。輻射波動は強力な分一回のエネルギー消費がとてつもなく酷いため、基本的には決められる時以外には使わない。

 それでもスピードはカザマの『ランスロット・エクセシオン』と同等、もしくはそれ以上な訳で、囲んでいる相手を小型ナイフで切り裂いていく。

「まったく、雑魚ばかりで飽き飽きするね」

『なら、俺が相手をしてやるよ!!』

「何だ!?」

 通信回線に割り込まれたかと思うと、背後から熱源反応が現れる。確認すると『バッフェ』に本来搭載されていないミサイル、それも回避不能の直撃コースだった。

「ちぃ!!」

 仕方なく振り向いて輻射波動を展開、ミサイルを間一髪でガードするが爆発の余波で機体のバランスを崩す。

「今の攻撃……相手は!?」

 体勢を取り直しつつ敵機の反応を確認する。すると先程のミサイルの直線上にその敵は居た。だが、

「パラメイル……」

 その敵の機体フォルムは確かにパラメイルだったが、その姿は異常だった。血塗られたような深紅に両肩にはバッフェのシールドを取り付け、両手には実弾ライフルを一丁ずつ持ち、さらに盾の内側にはそれぞれ一本ずつ大太刀を納めている。

 その姿はまさしく夜叉……血を求めてさすらう鬼のようだった。

『へぇ、流石はローゼンブルムの中にある自治国だけはある』

「男か……なんでアンタがそのパラメイルに乗っている。それは本来『ノーマの棺桶』だ、普通の人間が乗る代物じゃない」

『だからこそだよ』

 男はさも当然のように切り返す。

『俺達は元々、皇女アンジュリーゼの親衛隊だった。あの人に助けてもらった事や、逆に助けたことなどもあった。だが!!』

「彼女がノーマだと知れてしまった」

『……あぁ、俺達も嘘だと思った。だがあの方は連れていかれ、私達親衛隊はノーマの手先だと言われ王宮警護隊を追放、行き着いた先は志を同じくするレジスタンスだった』

 男はモニター越しに悲しみの表情を浮かべた。

『そこからは君も知ってるだろう。アンジュリーゼ様を連れ戻すようにするテロ活動、このパラメイル《アーキバス》もその過程で手に入れた』

「アンタラら……」

『もう戻れないんだ……だから俺達は進む以外に道はない……それしか!!』

 男は機体の武装を刀へと変更すると、一気に詰めよって斬りかかる。私はナイフでガードするが、いかんせんパワーが違い吹き飛ばされる。

『それに、《深紅の魔王》に睨まれた敵は助からないという噂は聞いている。ならせめてこの命散らすなら、皇女殿下に全てを捧げる!!この機体《鬼灯》と共に!!』

「……そうかい」

 されだけ呟いて、私はナイフを上段に構える。

『……なんのつもりだ』

「こんな騎士道精神の相手に、ストレスだのなんだので相手するには分が悪い……だから正真正銘、本気の剣術で相手をさせてもらうよ」

 するとナイフはどこに隠していたのかと聞きたくなるくらいの、一本の長剣へと変貌した。

『……なるほど、つまりここで死に行く俺と《鬼灯》の為に、態々《黒の騎士団:ナイトオブセブン》の本気を出すということか……』

「あんまり《深紅の魔王》とか《ナイトオブセブン》とかで呼ぶのは止めてくれないかな。私には《紅月シナノ》って名前があるんだ」

『良いだろう……、元アンジュリーゼ皇女親衛隊長エイン・志那都・バザット、紅月シナノどのとの決闘を申し込ませてもらう!!』

 そう言って奴は刀二本を上段に構えて突っ込んでくる。対する私も剣を下段にして迎え撃つ。互いの剣が有効射程(アグロレンジ)に入ると、それぞれの得物が交錯した。そこからは高速で行われる互いの剣閃がぶつかりあい、『紅蓮』と『鬼灯』が火花を散らす。その早さは残像すら生み出しそうなものだ。

(こいつ……双剣術だけみたら流石は元親衛隊だけはある。本気のカザマといい勝負どころか、多分六割は勝つね、これは)

 実際、他者から見れば互角に見えるこの戦いだが、押されているのは私の方だ。手数の差というのもあるけど、何よりこの剣術、おそらく『ミスルギ皇国』の王宮剣術か何かをベースにされている。そのせいで機体の動きにはムラが一切無く、隙が殆どできない。さらには空中という三次元戦闘において二刀流などの双剣術はある意味優位と言える。

『やはり貴女も、『神速の白』と手合わせしてるだけあって中々にしぶとい』

「皮肉なら間に合ってんだよ。この鬼夜叉」

 鍔迫り合いの最中の会話で少しイラっとする。確かに『神速の白』……カザマとは今までに何度も模擬戦をしているし、そのお蔭かこの双剣術にめ何とか対応できてる。だが面と向かってその事を言われると感に障る。

 私は鍔迫り合いを無理矢理外して脚に展開した『ランドスピナー』で奴の左手の大太刀を弾き飛ばす。が、まるでそれを狙ったかのように『鬼灯』の鉄拳が頭部を襲い、少し飛ばされた。

「く!!」

 落ち行く機体の体勢を立て直し奴を確認すると、『鬼灯』は落とされた大太刀の代わりにライフルを装備している。

『流石は《深紅の魔王》の二つ名は伊達ではないか……』

「そういうアンタこそ、親衛隊の騎士様が鉄拳格闘とはね」

『なぁに、俺は剣術も銃もそれなりにできるが、『拳術』は特に得意でね。昔、ジュライ皇帝殿下にお誉め戴いたこともある』

「だがパラメイルの運用はそこまで得意じゃ無いようだね。剣術とかの動きには隙は殆ど無いけど、移動の時の動きが素直すぎる」

 肉体での動きをパラメイルでやるのはかなり感覚が違う。まだ『皇女の失落事件』から数ヵ月程度しか経ってない状況でこれだけ機体を動かせているだけでかなりの腕だ。

『だが長期戦をやるほどのエネルギー残量は無いからな、一気に決めさせてもらう!!』

 奴は駆け抜けてくる。が、そこで異変は起こった。突如として数十のミサイルと実弾が雨のように私と奴に向かって降ってくる。

「な!!」

『くそ!!』

 私は輻射波動を、奴はライフルでミサイルを迎撃して弾幕を避ける。

『どういうことだ……キサマら!!』

 エインは怒声を響かせ空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこには、圧倒的な数の『バッフェ』数百機が埋め尽くしていた。

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