「まぁとりあえず、テロリスト撃退及び怪物どもの防衛お疲れさん!!」
黒の騎士団ミスルギ皇国支部、あの突発的戦闘から一夜が経ち、俺、ゼハート、キラさん、シン、デシルさんはロイさん私室兼指令室に寄っていた。部屋にはシナノとカザマ、そして元テロリストのエインさんも同席している。
少し困惑気味の俺達に対して、ロイさんは紅茶を飲みながら優雅にしてる。本当にそう思っているのか疑問に思う。
「お疲れさん……って、ミスルギ皇国の復興とかはどうするんですか?それに俺達の買い物したやつとか」
俺は少し呆れながら思っていることを口にする。
あの戦闘の後、テロリスト(抜けたエインさん達四人を除いて)はその場にいた全員全てが黒の騎士団によって逮捕された。本来なら行った国である『ミスルギ皇国』の警察組織が行うべきなのだが、逮捕された人間の中にはその『ミスルギ皇国』の組織の人間も複数人おり、裏工作される可能性があったため急遽黒の騎士団が行う事になったらしい。
街の方はテロリストの被害もあるが、突然現れたドラゴン達の方が被害が大きかった。建物などもそうだが、一番はやはり人的被害だ。テロリストの方はどうやら『バッフェ』に搭載された特殊レーダーで無人の建物や正規軍の『無人型バッフェ』との戦闘だけだったため、怪我人こそ出たものの死者は一人たりとて居なかった。これだけ見るとシナノやエインさんも「あの腰抜けも色々と狂ってたけど、それなりに人らしかった」と苦笑しながら言っているほどだ。
だがドラゴンによる被害はかなりのものがあった。建物被害だけではなく死傷者も多数いた。逮捕したテロリスト達にも怪我人などを救助させるのを手伝わさせなければいけないほどに、街の被害は重かった。はっきり言って一つの都市が滅亡したと言っても過言ではないほどだ。
余談だが俺達が買った荷物はあの後すぐに撤収したが為にそのままで、いわゆる『溝に棄てた』状態だ。
「『ミスルギ皇国』の復興に関しては俺達黒の騎士団の管轄外だからな、応援要請出されればやるが基本的にはノータッチだ」
「ノータッチって……人がたくさん亡くなってるんですよ!?」
俺は堪らず大声をあげた。エインさんも声には出してないが目がかなりキツくなっている。
「それを俺に言うのはお門違いだっての。俺達は一応軍人なんだ、確かに『ミスルギ皇国』の経済状態や避難民の救出とかは現場に居た俺達が一番分かっている。だが助けたくても黒の騎士団は『ローゼンブルム王国』の独立都市『日本』の、つまり一種の国家軍なんだ。慈善事業団体でも国連組織でもないんだ、動きたくても勝手には動けないんだよ」
「それは……」
「それに俺達の方にも余裕はないんだ。今回の戦闘で黒の騎士団のKMF隊のなかにも逝っちまったのが何人も居るんだよ。脱出装置のなかで遺体が残ってる奴はまだ良い方だが、中にはそれごと爆破されて遺体が残ってねぇのも居るんだ。ただでさえ絶対数の少ない俺達にできるのは、食料支援が関の山だよ。もちろん許可が降りればの話だけどな……」
ロイさんは真剣な表情でそう呟いた。分かってはいたがやはり自分達の立場を考えてもそうするしかないのだ。
「兎に角、俺達にできるのはここまでだ。お前らは『アルゼナル』に戻るんだからそれなりの準備をしとけ」
「ですが準備をと言われましても……」
ゼハートが歯切れ悪くそう呟く。俺達自身の荷物は機体と身に纏っていた服だけなのだ。先ほどの通り荷物を失った以上、用意もへったれもなかった。
「俺の部下の連中にロッカーの方を探索させて、荷物はできるだけ回収しといた。それでも受け取って整理でもすれば良いさ」
「いや何気にアンタかなりのムチャ言ってますよ!?」
「というよりあの混乱の中で良く見つけましたね」
ロイが何の気なしに言った言葉にシンは突っ込み、キラさんは苦笑しながらロイに言った。
『ミスルギ皇国』は今、かなりの国民が明けの御柱の前の広場でテントを張って生活している。当初はマナに頼りきった生活している国民達はテントの張り方すら知らず、完成した他人のテントを奪おうとした輩も少なくないらしい。
そんな状況のなかで買い物をできる訳がなく、事件前に支払い済みとはいえあんな大荷物を運べば嫌でも目立つ。後にその時ミスルギ皇国の監視をしていたタスクの話によれば、服だからこそ良かったものの食料品が、それこそ米一粒砂糖一欠片でもかなりの人間が暴動のように取り合ったそうだ。
「まぁそこは蛇の道は蛇ってな、色々と裏工作したんだよ」
「司令官が言うと賄賂とか脱税とかに聞こえちゃうよ、ロイ」
「何ならアンタがつい最近、必要経費とかいって同人誌やらフィギュアとかを無断で着服してたよね~?」
「姉さん!!なんでその事を知ってんだよ!?てか着服してねぇし!!全部俺の給料で自腹切ったつうの!!」
ロイさんはまるで悪戯がバレて必死に言い訳する子供のようにシナノに食い下がる。
「兎に角!!これからの事をとりあえず考えやがれ!!俺はこれから姉さんと色々と話し合うから!!」
そういうとロイさんは無理やり部屋から追い出し、俺達は仕方なくその場を離れるのだった。
キラ・シンside
「とりあえず荷物の整理はこれで……」
シン・アスカは宛がわれた自分の部屋で買った荷物を整理していた。隣では同じ部屋のキラ・ヤマトも同じ作業をしている。
「ちょっと良いかい、シン」
「キラさん、どうしたんですか急に」
「これからの行動についてだよ」
キラはいつもの朗らかな表情ではなく、いつになく真剣なものになっている。
「これから僕たちはアセムやゼハート達と一緒に『アルゼナル』っていう軍事拠点に行く訳だけど、僕らが絶対にやっちゃいけないこと……分かるよね?」
「NJCや俺達の世界の技術の漏洩……ですよね」
シンは確認するように聞くと、キラは頷いた。
彼らの世界の技術は、この世界の一歩も二歩も先を行っているものが多い。ビーム技術はもとより、『デスティニー』に搭載された『ミラージュコロイドシステム』や『ストライクフリーダム』に搭載された『ドラグーンシステム』など、どう考えても革新的な技術がこれでもかとある。
機体の整備などである程度は仕方ないとしても、『NJC』……『ニュートロンジャマーキャンセラー』や先に上げた二つのシステムのデータを奪われ、それを流用されてしまったら何も言えなくなってしまう。
「それに、この世界の軍事技術はまだ僕らの世界の『ジン』や良くて『シグー』クラス……だけどそんな世界に僕らの世界の技術が転用されたら、それこそ革命が起きちゃう。『マナの力』がある分僕たちの機体を上回ってしまう可能性だってあるんだ」
「だからこそ、可能な限りデータを奪わせないって事ですよね」
「そう。ゴメンね、急にこんなこと言っちゃって」
「いえ、そんなことは。……そういえばキラさんはどう思います、この世界?」
シンは聞きたくとも言えなかった本音を口にする。
「どうしてそんなことを聞くんだい?」
「昨日の戦闘の後……機体から沢山の人達を見ました。でも、みんな自分中心で他人の事を気にもかけないような行動ばっかりで……なんか……」
「――『連合』や『ロゴス』と同じみたいだった」
「……えぇ。アイツらみたいな連中のせいで俺は家族を目の前で失いました。ザフトに入ってからも、守りたいと思った女の子を奴らは無理やり改造して……殺されて……」
シンは首に描けていたネックレスを取り出す。それは彼があのとき守れなかった少女から貰った貝殻に紐を通しただけのシンプルなものだったが、彼にとっては亡くなった妹の形見である携帯と同じくらい大切なものだった。
「……ゴメン、嫌な事を思い出させちゃって」
「いえ、別にキラさんが謝る事じゃないです。寧ろ今はああしなかったら彼女は……ステラはもっと悲しみに溺れて……死ぬまで戦わされたと思います。誰が敵とか関係なく」
「――僕は『三隻同盟』時代、最終決戦である人からこんなことを言われたよ。他者より早く、他者より先へ、他者より上へ、そしてその人の願望の究極が僕だって」
それは彼が『フリーダム』に乗っていた時、『ラウル・クルーゼ』が言った言葉だった。
「ある意味この世界は彼が言った通りかもしれない。マナという力で自分を誇示して、ノーマだから切り捨てる……そんなことをしていたらそのうち僕らの世界の二の舞になってしまう……そう思う」
「キラさん……」
「だから僕は戦うよ……ドラゴンだけじゃない、ノーマとマナを隔てる壁を取り払う為に、この世界にいる間は」
「――分かりました」
その後二人は何も言わず、荷物の整理を続けるのだった。
ゼハート・デシルside
「でゼハート、俺はこれからその『アルゼナル』とかいう所に行くんだよな?」
「ええ」
「で其所には、『本当のデシル・ガレット』をかなり憎んでいるフリット・アスノが居ると?」
「ええ」
その言葉を聞いた瞬間、デシルは項垂れるように頭を抱えた。
「やべぇじゃん、それ絶対にやべぇじゃん!!もしそんなところにノコノコ行ったらアイツ絶対に素手でMS用のライフル持って射ってくるって!!」
「自業自得です。そもそも『昔の兄さん』が彼に対して余計なことをするからそんなことになるんです。そもそもどうやってt単位の武器を素手で持てるわけが」
「いややるな!!アイツなら筋力とか物理法則とか無視して俺を殺しにかかる!!これに対して億賭けてもいい位だよ」
「そこまでですか……」
ゼハートは断言する兄の言葉に記憶から情報を引き出す。そして導きだした答えは、
「兄さん……」
「なんだ?」
「短い間でしたがご苦労様でした」
「死ぬこと決定!!」
A☆KI☆RA☆ME☆RU事だった。これを聞いたデシルはどうすればとキャラ崩壊も関係なく慌てふためいている。
「」
それを見たゼハートはどういうわけか笑みを浮かべている。
「何が可笑しいんだよ?」
「いえ、何となく兄さんが昔に戻ったような気がして」
ゼハートが言ったことは事実だ。昔のデシルはゼハートの為に無理やりふざける事も多く、それゆえにこんなことになることも珍しくはなかったからだ。
「ま、それは『エピオン』のおかげなのかもな」
「だとすればある意味喜ばしいことです。家族を失うのはあれっきりで充分です」
「……そうかよ」
デシルはぶっきらぼうに顔を背けるが、ゼハートにはそれが照れ隠しだということはすぐに分かった。なぜなら、
「……嬉しいと耳が変な風に動く癖も相変わらずですね」
「なんでそんなことまで覚えてんだよ……」
「唯一の血の繋がった家族のことなので」
ゼハートは澄まし顔でそう言い、デシルは苦笑を浮かべる。その何気ない雰囲気すら、二人とも懐かしいものに感じた。
「ゼハート、俺は今度こそお前を守るぜ、どんなことが合ってもな」
「いえ、今度は私が兄さんを守ります」
互いに信頼しているのか、二人ともそれだけ言うと互いに笑みを浮かべるのだった。
「…………ところでゼハート、フリットの件だが」
「頑張ってください」
「即答かよ!!」
アセムside
「……」
アセムは何を思ったのか、KMFやパラメイルが置かれた格納庫に立っていた。
(あの時のジュリオさん……なんか凄いぼろぼろだったな)
それは『ブリュンヒルデ』とゼハートの『グレイブ』と合体したときの事だった。あのとき、時間にしては出撃してから数十分程度しか経っていなかった。今思えばあり得ないほどぼろぼろで、まるで何かに襲われた後のようだった。
(『ブリュンヒルデ』……ジュリオさんはお前に何を思って、俺に渡したんだろうな)
「お、アセムだったっけ?」
その時、後ろから特徴的な赤髪の青年……エイン・志那都・バザットがそこに居た。
「エインさん……」
「どうしたんだこんなところで」
「いえ……自分の荷物の整理が終わったんで機体でも眺めてようかと」
「そうか……まぁ俺も同行するから、お前とは話をしたいと思ってた」
「え?」
アセムは呆然と振り替える。
「同行するって……『アルゼナル』にですか?」
「そうだ。俺は『アルゼナル』に向かう。私の業を償うには、アンジュリーゼ殿下の側で彼女を守ることだと考えてな」
ことなげに言うエインに対してアセムは唖然とした。
「で、でも向かうって言ったって、どうやって」
「なぁに、俺の『鬼灯』は元々パラメイルの『アーキバス』を独自に改造した代物だからな。可変機能はオミットしたがその分スラスター周りをかなり強化してある。お前らと同じ速度くらい出せる」
「接収されてないんですか!?」
アセムの言うことも尤もで、元々彼らの機体はテロ活動の一環で手にいれた鹵獲品だ。接収されても文句の言えないため、されてないのは驚いて当然だ。
「いや、セレン達の『疾風』も俺の『鬼灯』も昨日の夜に黒の騎士団所属扱いになってる。だから俺が機体を持ってても心配ない訳さ」
「いやそうかもしれませんけど、どうしてまた……」
「じゃあ聞くが、お前はどうして機体に乗るんだ?」
「え?」
「それと同じだよ。理由なんかないんだよ、俺はアンジュリーゼ様を守る為に『鬼灯』に乗る。それだけさ」
そう言ってエインは格納庫から去っていった。アセムはそれを見届けると、目の前に横たわる『ブリュンヒルデ』に手を触れた。
「『ブリュンヒルデ』……俺は……」
サリ「教えて、期待機体紹介」
アン「珍しいわね。普通なら幽霊女(クリス)と単細胞バカ(ロザリー)の番なのに」
サリ「あの二人ならいまエルシャとプロレスやってるわよ」
アン「プロレス?なんでまた……いえ、なんか思い出しちゃいけない気が……」
サリ(そういえばアンジュは……『詳しくは〈サリアとアセム 後編〉を参照』)
アン「と、兎に角機体の紹介ね!!今回の機体は『グレイブ』よ!!」
サリ「この機体は『アルゼナル』の新米メイルライダーに与えられる機体ね。可も不可もないから『ノーメイク』っても言われる機体よ」
アン「原作だと私やミランダ、ココが改造無しの『ノーメイク』、ヒルダや単細胞バカがそれをカスタムした機体に乗ってるわね」
サリ「そうね。でもアンジュ、あなた原作だとノーメイクでゾーラ隊長を殺してるんだから、あんまりあなたにこの機体を担当して欲しくないんだけどね」
アン「そんなこと知らないわよ!!それ言うなら作者に言いなさいよ」