クロスアンジュ 転移した戦士   作:ドロイデン

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第三章 狂い出す歯車
再会


「もうすぐ到着……か」

 俺達移動組を乗せた大型輸送へリは既に肉眼で『アルゼナル』を視認できるところまで来ていた。

 なぜ大型輸送ヘリなのかというと、簡単に言ってしまえば人数とエネルギーの問題だった。黒の騎士団の駐屯地にはMSはもとよりパラメイルの補給は置いてないらしく、今回の移動するメンバー全員が到着するまでのエネルギーが足りない為にこうなったのだ。

 その為、急遽黒の騎士団側がこれを手配してくれて、MSなどの機体を詰め込んで今に至るという訳だ。

「なんともはや……ミスルギ皇国の面した海域にこんな要塞が本当に存在しているとはな……」

「あれ?エインさんはここの事知ってるんじゃ」

 隣に座るエインさんに聞いてみると、彼はかぶりを降った。

「確かに俺は『ミスルギ皇国』の元アンジュリーゼ殿下の親衛隊隊長だったから、この軍事拠点についての事はジュライ国王から聞いたことはあった。だがまさか『ローゼンブルム』と『ミスルギ皇国』との領海の間にあるとは思いも知らなかったよ」

「それには同意」

 エインの肩に寄り添うように座るセレンさんもそう言っている。因みにここには九重さんと一ノ瀬さんは居ない。なんでも二人は自分達のMSに転用できる素材を『アルゼナル』に送るため、ロイさんの薦めで『日本』にある黒の騎士団本部へと向かっているらしい。

「『ドラゴン』の事や『アルゼナル』について知ってても、基本的にノーマに対して不干渉だから。それに」

「それに?」

「『ノーマは人ではない』、これがこの世界の鉄則。私達みたいに酔狂な人間はそうそう居ないし、居たとしても『アイツら』みたいな狂信者みたいなのばかりだから」

 そう言うとセレンさんは手に持ったアザラシ(?)のぬいぐるみを抱き締めて眠り始めた。エインさんはエインさんでそんな彼女を見て微笑んでいる。

「…………ところで、何やってるんですかデシルさん?」

「…………」ガクガクブルブル

 俺は目の前にいる、ゼハートの隣に座ってガタガタ震えている、デシル・ガレットを介抱しているのを見て声をかけてしまった。。どうしたのかと少し考えてみると

「あ」

 俺は思い出した。この人は父さんが『コウモリ退治戦役』の際に、親しかった少女を無理やりにMSに乗らせ、あまつさえ目の前で殺したということを、そしてそれがヴェイガンの殲滅に繋がっているということを。

「って流石にビビりすぎなんじゃ?」

「…………お前は昔のフリットの事を知らないからそんなとこを言えるんだ。アイツは俺の機体を宇宙でダルマにして放り捨てたんだ……殺すならまだしも放り捨てたんだよ……」

 その話は昔、ゼハートから聞いたことがあった。確かそれは父さんが『コウモリ退治戦役』の時だったはずだ。

「でもそれって自業自得ですよね?」

「あの時のは確かにそうだ。だがよ、俺がコールドスリープに入る前の数年間、アイツは何度も何度も俺の機体を……機体を…………」ガクガクブルブル

 どうやらとてつもないトラウマがあるようなのか、歯をガチガチ鳴らして震えている。

「だがまだMSでの戦闘なら分かる!!アイツは俺がコロニーや地球に出掛けるとストーカーみたいに鉢合わせるし、会わなくても毒やら傭兵雇わせて狙撃をされるんだぞ!!しかも毒は即死級、弾丸はMSの装甲を貫通できるやつでだぞ」

((一体何をやってるんだ父さん(フリットさん)!!))

 俺とゼハートは思わずそう思った。それと同時に父さんの執念深さとおそらく『Xラウンダー』の無駄遣いに呆れる。そんなことがあればあんなに怯えるのも当然だろう。

「もうやだ……俺、ずっと『エピオン』のコックピットに居る……基地についても中からでない……」

「体壊しますからやめてください、兄さん!!」

 完全に記憶が戻る前のネガティブ状態に戻っており、それを戻すゼハートは大慌てで俺は苦笑を浮かべるのだった。

 

 

 

「二人ともよく帰ってきた……」

 父さんのその言葉に俺とゼハートは敬礼をし、父さんはそれに返礼する。そして右手を腰に掛けると、

「さて、私の目の前に居る粗大ごみをさっさと処分しなければ……だな」

 ホルスターから拳銃を抜いた。それも安全装置を解除してだ。そしてそれをゼハートの後ろに隠れるように存在するデシルさんに向ける。

「やっぱりこうなるのかよ…………」

 当のデシルさんは諦めたのか、戦闘の時と違ってかなりテンションが低い。

「ここで会ったが百年目だ、ユリンとウルフの仇、今ここで晴らすべきか……」

「父さん止めてくれよ!!だいたいあの人は……」

「どけアセム!!他のヴェイガンならまだ情状酌量の余地は、こいつだけは……デシル・ガレットだけは例えどんなことがあっても万死に値する!!」

「確かにあの人はウルフ隊長の仇だし、父さんの気持ちは分からないわけはないけど!!今ここで殺してもウルフ隊長達が生き返る訳じゃないでしょ!!」

「フリットさん、兄さんのしたことは確かにあなた達に怨まれても仕方ないですが、だからといってここで殺しても何の意味もありませんよ」

「…………二人とも、俺の味方はしてくれないんだな」

 俺もゼハートめ無理矢理にでも止めようとするが、父さんは制止を振り切ってデシルさんの額に銃口を突きつける。

「なぜ貴様は生きている。ユリンを殺し、ウルフを殺し、それなのになぜ貴様はノウノウと生きているのだ!!」

「……」

「答えろデシル!!貴様はなぜ!?」

「……俺だってなんで今ここで生きてるのかは分からねぇよ。実際俺だってあの時、そこのアセムに切り捨てられて死んでるはずだった」

 デシルさんは語るようにそう言った。

「だが俺は生きてた。気付いた時に記憶は無かったが、俺は昔の事を思い出せた。俺が何のために戦って、何のために力を欲したかのをな……」

「」

「俺はお前と戦った時の俺とは違う。俺はゼハートを……大切な弟を守るために戦う。その為なら」

 するとデシルは地に膝をつけ、頭を下げる。いわゆる土下座だった。流石に予想外だったのか父さんも驚いている。

「頼む、許してくれとは言わない。許せないなら煮るなり焼くなり好きにすれば良い。だが今はゼハートを……大切な弟を守るために戦わせてくれ……」

「…………」

 父さんは未だに銃口を下ろさない。いや、下ろせないのだ。自分の大切なものを奪った相手を許せといわれて、俺が父さんの立場でも同じ状況だっただろう。

 そしてその状況が数秒続いた。すると

「…………もしお前が再び私の大切な人達を奪おうとすることになれば、私は躊躇わずに撃ち殺す」

「…………それで良い。だがお前がゼハートを射つような真似をすれば、俺も躊躇わねぇぞ」

 二人はそういうと父さんは拳銃をしまい、デシルさんは立ち上がって服についた汚れを弾いた。と、その時

「「アァァァァァァァァァァァァァァァァァセェェェェェェェェェェェェェェェムゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!」」

 かなりの怒声と足音が俺に向かって飛んでくる。思わずそちらを見ると、そこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 爆走する二体の夜叉がいた。

 

 

「ア、アンジュ!?それにサリアまで!?いったいどうしグフェ!?」

「よくも私をこんなに長くも待たせたわね!!」

「ア、アンジュ……締まる……首が……締まる……」

「はぁ……久しぶりね……このアセムの匂い…………」

「サリア……お前……そんな腐った奴……だったか……」

 俺はどうしてこうなったか、二人にこんなことをされる理由があったか思い出そうとするが、アンジュの腕の圧力が増して、今まで挙げていた右腕がブランと下がる。

 

 そこからの記憶は存在しない。だが一つだけ覚えたのは、『女の子を怒らせると後で怖い』ということだけだった。




アセムが重症の為、今回も機体紹介はありません。申し訳ありません。
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