それは、アンジュリーゼ様がまだミスルギ皇国皇女であった時、シルヴィアが幼かった頃の事でした。
私が親衛隊に入る前なのでその時の事は聞きづてに知っただけですが、その日、アンジュリーゼ様は家族で高原の方へ乗馬をしておられたそうです。
ですが事故は起きてしまいました。その時、アンジュリーゼ様とシルヴィア様は同じ馬に乗っておられ、シルヴィア様はアンジュリーゼ様の背にしがみついて居られでした。ですが温厚であった馬はあろうことかアンジュリーゼ様達二人を乗せて走ってる際に突然暴れだし、お二人を振り落としたのです。
アンジュリーゼ様は幸いにも軽傷で済んだものの、シルヴィア様は両脚に怪我を負ってしまったのです。
それがきっかけで、シルヴィア様は立つことすらままならず、車イスでの生活を余儀なくされました。
それからです、アンジュリーゼ様がある程度、妹のシルヴィア様を中心に動くようになったのは。恐らくアンジュリーゼ様自身、シルヴィア様への愛情からだと思われますが、それ以前にあの方は自分のせいでシルヴィア様を怪我をさせてしまったという責任感故にです。
親衛隊の隊長に任命された日、アンジュリーゼ様は私にある願いを言われました。
「もし私とシルヴィアが危険に晒されたら、迷わずに私に構わずシルヴィアを絶対に護りなさい」
アンジュリーゼ様はそうすることが自分の罪の証であり、シルヴィア様に対する唯一の贖罪だとそう考えているのです。
ヒルダside
「これが、アンジュリーゼ様がシルヴィア様を思う理由です」
私はあのエインってやつの話を聞いてどこかモヤモヤしたものを感じた。だがそれはイタ姫に対しての怒りではなく、なんとなくだが、イタ姫に既視感を感じたからだ。
「あのイタ姫がその妹とやらに執着してる理由は分かった。だがそれとこれとは話が違うんじゃねぇか」
「ええ。客観的に見ればヒルダさんの言う通りです。ですが、それがアンジュリーゼ様だけならばですが」
「はぁ?まさかそのシルヴィアっつう妹もか?」
奴は無言で頭を落とす。その態度に私はなんというか、呆れて物も言えない感覚だった。
「アンジュリーゼ様が自分のせいでシルヴィア様を歩けなくさせたという罪の意識があるように、シルヴィア様は、自分のせいでアンジュリーゼに迷惑をかけているという自責の念があるのです。」
「ふーん、つまりは何か?お互いにシスコンだったのがその事故がきっかけでさらにパワーアップしちまった、と?」
「……シスコンなのかは兎も角として、まぁそう言うことになります」
エインの野郎は苦笑ぎみにそう言った。
「…………たく、世話を焼かせやがって」
私自身どういう事かわからないが、何故か先ほど入ってきたドアへと足を運ぶ。
「どこに行く」
「イタ姫様を探しに行くんだよ。あのバカは最後まで話聞いてないからよ」
それを聞くと周りから驚いたような視線を当てられる。特にサリア、クリス、ロザリーからのはかなり強烈だった。
「なんだよ、揃いも揃って」
私はジト目をアイツらに向ける。
「いや……まさかお前がお姫様を探しに行くって言うから」
「明日ゼッテェドラゴンの雨降るって絶対」
「賭け運最悪なロザリーの言う通りだよ、いつものヒルダらしくない」
「あのヒルダが……隊長とは違う意味で危ないヒルダが……」
「あらあら……熱でもあるんじゃ無いかしら」
「ヒルダらっしくなーい!!」
上からゾーラ、ロザリー、クリス、サリア、エルシャ、ヴィヴィアンの順で口々に言われる。そこまで驚くかよ。
「……ヒルダ、今日は休んだ方が身のためだ」
「司令まで言うんですか!!」
まさか司令にまで言われるとは思わなかった。
「お前ら、いったいアタシの事をどう解釈してやがる」
「可愛い玩具」←ゾーラ
「問題児二大筆頭」←サリア
「姉御」←ロザリー
「右に同じく」←クリス
「少し手の掛かる妹?」←エルシャ
「色々面白い」←ヴィヴィアン
「テメェら表出ろ!!特にサリア、問題児はここ最近のテメェだけには言われたくねぇよ!!この貧乳初々副隊長!!」
「な!!誰が貧乳よこの淫乱牝乳問題児!!」
「んだと!!」
「やめんか貴様ら!!」
今の今まで沈黙を続けていた技術顧問がついに口火をきった。
「聞いておればグチグチと言いおって!!問題を起こす前にきちんと仕事をせんか!!」
「「サ、サー!!イエス、サー!!」」
「と、父さん……」
「アセム!!貴様はヒルダと一緒にさっさとあの小娘を引っ張ってこい!!」
「フリット、少しは落ち着けや。そんな怒鳴ってばっかだと体が保たねぇぞ?」
「貴様に言われる筋合いではないわ!!この馬鹿もんが!!」
どこからどう見ても完全に収集がつかなくなっていて、私は心の中で思いつつも、この場からアセムと二人で立ち去るのだった。
アセムside
「「……」」
司令室から出たものの、俺たちはアンジュがどこにいるのか分からず、とりあえずジャスミンモールへと来ていた。困ったときの秘密兵器、ジャスミンという訳だ。
「アンジュかい?あの娘なら多分墓地の方へ行ったね」
「墓地だ?なんであんなところに?」
「アタシにとってはヒルダがアンジュを気にかける方がなんでだって聞きたいくらいだがね。アンジュは二回目の出撃以来、暇を見つけてはココの墓参りに行ってるんだよ。一昨日も夜にココに送るためのプリンと花束を買っていったっけな」
「ふーん……」
ヒルダは微妙な面持ちでジャスミンを見る。
「すいません、いきなり押し掛けて……」
「別に構わないよアセム、アンタも今はアルゼナルの一員だからね。最も武器関連は安くしてはやらないけど」
「ハハハ……」
苦笑いを浮かべつつも、俺たちは教えられた通り墓地へと向かう。
「でもホントに意外だな。ヒルダがアンジュを気にかけるなんて」
「……多分、イタ姫と私の境遇が似てるからだろうな」
「え?」
俺は思わず足を止めてヒルダに聞き返す。
「私も幼い頃はノーマじゃなくて人間として生活しててな、本名もヒルデガルト・シュリーフォークっつうちゃんとしたのがあるんだ。でも8歳のころにノーマだってバレて、ママから引き離されて、私はアルゼナルに来た」
「それって……」
「笑っちまうよな。私とあのイタ姫はどっちも人間として生活してて、バレて移送されて、大切な人間から引き離されて、挙げ句に揃いも揃って問題児だ。ここまで似てたら今までのアイツへの行動が、同族嫌悪だって分かっちまった」
「…………」
「実際アイツは長女なのかもしれねぇけどさ、アタシにとっては無理にカッコつけて悩みを抱えこんじまう、戦闘での無謀な事も、実際はそんな悩みねぇように振る舞う為の演技に見えちまう」
けどな、とヒルダは続ける。
「アイツはそんなこと自覚してねぇし、自覚できる程に心が強くねぇ。木の枝みたいに折れやすいし、自分のプライドのせいで他人から添え木すらしてくれない。傷つきやすくて脆いんだよ」
「それは、ヒルダもそうだったからか?」
「そうだ。そしてアセムもだろ?」
ヒルダの言葉は的確だった。
「……確かにその通りだよ。俺は自分の安いプライドのせいで、俺を支えてくれた隊長を目の前で死なせた。俺が殺したも同然だ……」
「けど変われた、そうだろ?」
「……あぁ」
俺はあの時の事を思い出す。そしてあの時のあの言葉のお陰で俺は今立ち直れた。
「……アンジュを救いたい、アンジュが抱えてる闇ごと」
「そうだな。ならシャトルが着く残り20分で助けてやるとするか」
そう言って俺とヒルダは再び廊下を歩き出す。彼女を救うために……。
ミ「教えて、機体紹介~!!」
エ「ミ、ミランダちゃん?なんか酔ってない?凄いアルコール臭がするんだけど?」
ミ「酔ってませんよ~確かにこの作品の本編じゃ酔いどれてますけどね~」
エ「(完全に酔ってるわね)……まぁ良いけど。今回の機体は『アーキバス』よ!!」
ミ「部隊長や副隊長に与えられる機体ですよね?確か『グレイブ』と『ハウザー』の良いとこ取りしてさらに強化した機体って聞きましたけど」
エ「(いつの間に元に戻ってるし……)そうね。最高加速は『グレイブ』よりも早いし、『ハウザー』のように装備さえすれば大型キャノン砲も射てる。他にも通信制御や変形速度も他の2つに比べたら格段に速いのよ」
ミ「良いなー……私も早く乗りたいです」
エ「ミランダちゃんの場合は、そのうちアーキバスよりも高性能な機体に乗るから、乗ると感覚ずれて落とされちゃうかもね?」
ミ「落ちる!!いやー!!銃弾が!!剣が迫る!!怖い!!怖いよ!!機体がダルマに、水が……水が入ってくる!!」
エ「お、落ち着いてミランダちゃん!!大丈夫よ、ここはあとがきの本編と無関係なんだから」(汗)
その後、ミランダが正気を取り戻すのに二時間かかったとかかからなかったとか。