「模擬戦……ですか?」
俺はアンジュ、そしてシンとアルトと共に司令室に呼ばれていた。
「そうだ。アセムが持ち帰ってきたあの『ブリュンヒルデ』は、他のパラメイルとドッキングすることによって、力を発揮するらしいな」
「は、はい。ジュリオさんは確かにそんな感じで言ってました」
「ならば機体の確認のために、テストと戦力確認も含めて1対2の変則マッチの模擬戦で確認しようというわけだ」
ジルさんは煙管を吹かしながらそう言った。
「いやそれは構わないですけど、なんで1対2なんですか?」
「そりゃ性能テストとはいえ、機体は2体分なんだ。だったら相手もきっかり2体分じゃなきゃ話にならないだろ?」
「けど、だったら俺じゃなくてキラさんにすれば良かったじゃないですか。俺よりも技量は上なんですし」
シンも不満そうに言ってる。アルトも口にはしてないけど表情は少し強張ってる。
「ヤマトのストライクフリーダム?は
その言葉に不満はあるものの納得したような表情を浮かべるシンは渋々頷く。
「そういうわけだ、四人はすぐに準備を「悪いが俺は断らせてもらう」……早乙女、貴様聞いていたのか」
ジルの言葉に、アルトは憮然とした表情で口を挟む。
「模擬戦だろうがなんだろうが、俺は人に銃を向けることは絶対にしない。俺の機体は、空を舞うためのものだ」
「ここでは私が司令官だ、貴様一個人の感情で動いてしまえば規律もなにもないだろ」
「ならはっきり言う、俺は軍人じゃなくて傭兵だ。任務は俺らが納得した上で、尚且つそれに見合う対価が無いと動かない」
「だが貴様が所属していた組織はここの世界のではあるまい。ならばいくら貴様が手練れの傭兵だろうと意味はなかろう」
「だったら俺は、俺個人が所有してる情報を一切開示しないし、ここからすぐにでも立ち去らせてもらう」
アルトはジルに一歩も引かずに食い下がる。バジュラの生息していた世界に住んでいたアルトの持つ情報、それを盾にされては何もできないだろう。俺はそう思ったが、
「ふん、あんなバケモノの相手などドラゴンと同じだ。バケモノなら殺し方は幾らでもある」
ジルはそう言い切った。するとアルトの表情はみるみる赤くなっていく。
「アンタはバジュラの何も分かっていない!!アイツらとは分かり合うことが」
「分かり合ったところでどうなる。私達ノーマに明日は無い、常に今しか存在しないんだよ」
「そうかよ、だったら俺たちにも考えがある!!いくぞ、アセム、シン!!」
「お、おい!!」
「ま、待てってアルト!!」
俺達はまるで踏み抜くように歩いていくアルトを追うように司令室から出ていった。
アンジュside
「……まったく、転移者というのは面倒なものだ」
「ふん、アンタの自業自得でしょ」
私は凭れかかって煙管を吸うあの女を睨みながらそう言った。
「ほう、皇女様はあの男たちの肩を持つというのかい?」
「当然よ、私を変えてくれたのはアセムだし、今しか見てないアンタの言葉よりは信用に足るわね」
「だがここでは司令官である私の言うことこそが絶対だ、それは守ってもらわなければ困る」
彼女はクドいように言ってくる。
「司令官だ司令官だって、上からしか見てないとそのうち足下を掬われるわよ」
私は呆れ半分忠告半分でそういうとアセム達を追おうと振り返る。
「どこへ行く、話はまだ終わっていないぞ」
「アセムを追うのよ。それに私もアンタのやり方は気に入らないからね。独断行動させてもらうわ」
「ふん、好きにすればいい。第一中隊としての行動はちゃんとすればの話だがな」
「…………」
私は最後の言葉をあえて無視して立ち去った。
「……明日、か」
あの女が最後に言った言葉の意味を理解する日は、意外に早く来ることになるのは、まだ知らない。
アセムside
「おい、アルト!!いい加減に機嫌治せって」
まるで今にでも爆発しそうな勢いに、シンはどうどうと落ち着かせようとする。
「けどよ、バジュラにだって感情があるってのに、あの司令官は……」
「でも、それは仕方ないんじゃないですか?」
「!!アセム!!お前まで」
アルトは怒りの矛先をこちらに向けてきて、まるで噛みつかんというふうだ。
「い、いや、俺は客観論で言っただけで」
「客観論だと?」
「この世界は、俺やシンのようにMSを使って人間同士で争ってる訳でもなく、アルトの世界みたいに、人間同士が手を取り合って種族関係なしに平和を築いてる世界じゃないんですよ」
俺の言葉に漸くアルトの表情はもとに戻る。
「言ってしまえば、この世界は安寧してるんです。平和を保つためにマナとノーマで区別する、ノーマは蔑まれて、それでも生き残るためにマナの言う通りにドラゴンを殺す、それが当たり前の世界になってます」
「だから見た目がドラゴンと似たようなバケモノだから、ノーマはバジュラも殺さないと生きていけない……そう言いたいのか?」
その問いかけに俺はコクりと頷く。俺達の世界のMSを使った戦闘では遺体なんて残らない、残っても体の一部しか無いなんてざらにある。
が、この世界は別だ。ノーマがやっているのは、言ってしまえば狩りと同じ、生きるためにドラゴンを殺し、そのドラゴンに捕食されて命尽きる。謂わば食物連鎖の延長線上なのだろう。
「アルト、俺達は言っちまえばただのお客さまなんだよ。この世界の住人でもなければ、この世界を産み出した神様でもない」
「アセム……お前」
「けどさ、俺たちだからこそできることだってあるだろ?」
俺はそう言って自らのAGEデバイスを取り出す。
「俺は目の前にいる人達を必ず救ってみせる、その為だったら、必要悪にだってなってやるさ」
「…………それはダメだ」
今まで聞いていたシンが呆れるように言ってきた。
「アセム、俺は二度も大切な人を戦争で亡くしてるんだ」
「シン……!!」
「そのせいで俺は力を欲したよ、アイツを倒せる力が、皆を守るための力が欲しいってな。けど、力だけじゃ何も守れなかった、寧ろ喪ったものの方が多かった」
シンは拳を握り、震えて俯く。
「俺は教えられたんだ、力だけでも、思いだけでもダメなんだって、けど一人じゃ両方を持つことはできない。だからこそ仲間で足りない部分は補えば良いんだって」
その瞳は、まるで大切な人を思い出すような色をしていた。
「だからアセム、アルト、俺たちで独立した部隊を作ろうぜ!!」
「ど、独立部隊!?」
「あぁ、第一中隊みたいに誰かがリーダーになってさ、
「む、無茶苦茶言うなよ……」
アルトはまるで呆れるようにそう言ったが、その顔は待ってましたと言わんばかりに笑顔だった。
「ともかく、一回キラさんやゼハート達と話をするべきだな、善は急げだ!!」
「お、おい!!シン!!」
シンが駆け出すと同時に俺たちも走り出す。
今ココに、