第一話 飛ばされて、無人島
「……うっ」
アセムが気付いたとき、視界に眩しいほどの光が映る。どうやら機体ごとどこかへ飛ばされたようで、コックピットのモニターにはゼハートの『ゼイドラ』、フリットの『AGE-1 2DB+』が地面に鎮座していた。
『気がついたか、アセム?』
「ゼハート……」
回線からゼハートの顔が映る。彼もどうやら目覚めていたらしい。アセムはコックピットを開けて外に出ると、回りには島と海、そして空以外に何も見えなかった。さらに少し開けた道を進むとそこはもはや断崖絶壁だった。
「……ゼハート」
「どうした?」
「ここって無人島だと思ったのは俺だけか?」
「奇遇だな、俺も今そう思ったところだ」
フリットはコックピットから出て青年二人の近くに立つと、コックピットに置いてある双眼鏡を使ってみる。が、辺りには漁船処か流木すら流れている気配は無い。
「さて……どうしたものか」
「とりあえず食料を確保しましょう。少なくとも水は確保したい」
「後はこの島の探索をしないとですね。もしかしたらこの世界の事が分かるかもしれないし……」
「ということは探索と食料確保に二人、ここでMSの管理に一人か……」
三人は仕方なくじゃんけんをすると、アセムとフリットが探索を、ゼハートが見張りをすることとなった。そして彼らは無線通信機を二つ機体から持ち出すと、片方をフリット達、片方をゼハートが持つ。
「ゼハート君だったか?今は非常時でこうしてるだけだ。何か怪しい行動をしたら……」
「私もそこまでバカではない。とりあえず見張りと共に夜営の準備をしておく。何かあれば……」
「これを使って連絡してくれ。通信できることは確認してある」
そう言って二人は島の中に入っていった。
~アスノ家グループ(視点アセム)~
「うむ……どうやら果物の類いは豊富なようだな」
父さんの開口早々の言葉はまるで研究者のような口ぶりだった。というのも森に入ってすぐにマンゴーやドラゴンフルーツ、グァバなどの果実が実っており、南国とでも言いたくなるような物が至るところでなっている。
「でも父さん、食べれるかどうかは別問題なんじゃ……」
「いや、これは食べれるな。断言できる」
「どうしてです?」
「見ろ」
そう言って指さしたのはマンゴーらしき物が実っている気だった。よく観察してみると、実をハサミで切り採ったような痕がある。
「これはどう見ても動物が食した後では無い。更に言えば実が全て採られてる訳じゃない。つまり住んで人が居るか、もしくは人がここまで来て収穫してるかの二つしかない。よってこれは食べれる」
「よくそこまで見てるね、父さん」
「そうでもしなければ連邦の司令官には成れんさ。兎に角、今のうちに最低限だけ取っておけ」
父さんはヘルメットに紐を通した即席の籠に果物を少量摘み取ると、俺らはさらに奥へ進んで行った。
~ゼハート視点~
アセム達が探索に行ってる頃、私は見張りを続けつつテントを設営していた。ヴェイガンで夜営の訓練の時以来の作業で(正確には高校時代もこんなことをやったが)体力を使いつつ見張りをしていた為、かなり精神的に疲れた。
「……あれをやってみるか」
私は落ちていた長い木の枝を拾うと、コックピットに内蔵してある細いワイヤーを取りだし、近くに居た兎を餌にして釣りを始めた。
「設営は既に終わっている。見張りと娯楽を同時にできると言ったらこれしかあるまい」
と、私は変に分かったように釣りを始める。他の者に言わせれば兎の肉で魚が釣れるかと思うだろうが、そこは火星の住人、釣りの知識など皆無である。勿論釣れる訳が無いはずなのだが……
「……かかった!!」
見事に魚を釣り上げた。それからは入れ食いになったかのように入れては釣れ、入れては釣れと、夕食分を優に越した量を釣り上げた。のだが……、
「なぜ鮫が釣れたんだ?」
私でさえ驚いてしまう魚(?)さえ釣れてしまった。というのも釣れた物がアジにヒラメ、タイにサメ、更には宇宙クジラをも釣り上げた。最後のはもう化石だろと突っ込みたくなる。さらにどうしたわけかワニまで釣れてしまった。
「さすがにこれは釣りでは無いな」
私は釣り上げたサメとワニを太いワイヤーで吊るし、断崖絶壁の岩肌にアンカーのような物を付けたそれを括り付ける。
「とりあえず、これをどう言えば良いんだ?」
途方に暮れる私だった。
~アスノ家グループ(視点 フリット)~
私達は果樹があった所から先に進むと、そこには遺跡のように成り果てた集落を見つけた。
「父さん、これって」
「恐らく、戦争や紛争の跡地になってしまったようだな」
家屋は所々が穴を開け、一部壁が壊れた物もある。ここで一夜を明かしても良いだろうが、それでは何かあった時MSからは遠すぎる。
私は壊れた壁越しに中を見ると、そこには白骨化した遺体が横たわっているだけで、生気はまるでしなかった。するとアセムが何かに気づく。
「父さん、あれって地図じゃないかな?」
アセムが示す場所には、古された物だが確かに地図らしき物が二枚ほど落ちていた。
「これは……世界地図とこの島の地図か?」
拾ってみると、そこにはアルファベット表記で『world map』と『island map』と書かれている。世界地図は所々が燃えていたが、ある大国の名前が高々と記されていた。
「『ミスルギ皇国』……」
その国と私達が関わっていく事になるとは、この時の私達には想像ができなかった。
~???~
「ねえサーリヤ~ホントにここら辺なの?」
「確かな筈よ。可怪しいわね?確かに次元の歪みが開いたはずなんだけど……」
「でも~ホントにドラゴンが居るんですか?“ブリック級”どころか“スクリーナー級”すら見当たらないけど?」
「でも……あれ?」
「どうしたんですか?」
「あそこの島……なんかいるような……」
フリット達の島の上空付近に、複数の少女達がその島を見つめていた。
はい、まだ『アルゼナル』メンバーは出ません。期待させといてすいません。
ここで補足的なものです。
<無線機及び双眼鏡について
これについては軍や自衛隊の戦闘機に実際に積まれてるらしいので、それを参考にしました。
<ワイヤーとアンカー
これはサバイバル用品を参照にしました。アンカーはカメラマンの人が崖で寝るときに使うものをモチーフにしてあります。
間違っている部分があればコメントください。感想も期待してます。