「でゼハート、これはどういう状況なんだ?」
俺、アセム・アスノは驚きを通り越して呆れていた。というのも原因はゼハートが釣り上げた魚についてだ。
「どんな餌を使ったらサメだのワニだの、更に言えば化石まで釣れるの?」
もうそれは魚というより海の獣だろと突っ込みたくなった。最後のは化石がどうやって餌を食べたのかを逆に聞きたいくらいだ。
「餌は……」
ゼハートはちらっと地面に落ちていた毛皮を見る。それは白い綿毛のような見た目で、さらに特徴的な耳が落ちていた。
「……確かにそれなら釣れるのも当然か」
「あぁ」
俺はゼハートの天災的才能に重たい頭を項垂れた。そして父さんはというと、MSを森の中へ運んでいた。というのもこの場は上空から見晴らしが良すぎて、一応軍事機密の兵器を見られるわけにはいかないと判断しての事だった。
「アセムの機体は空中移動ができるが……」
「あれ?ゼハートのもできるんだろ?」
「出来るとは思うが、大気圏内では空気の摩擦で機体が熔ける可能性がな……」
ゼハートは考え始めるように唸りだした。まぁ確かに変形して戦闘機のようになる『AGE-2』より、人形に近い『ゼイドラ』が空気に接する面が大きいから、本来の性能を生かせないのだろう。
「まぁそれよりは……フリットさんだな」
「父さんのは……空中飛べないもんな」
幾らダブルバレットの装備を搭載してるとはいえ、元々飛べない『AGE-1』を大気圏内で飛ばすのは無理だ。
「……ゼハート、俺ら大変なことになってるんだよな」
「そうだな」
「でもさ、いつかヴェイガンと地球、どっちの人間も分かりあえる日が来るって、俺はそう想うんだ」
「アセム……」
「そりゃ父さんのようにヴェイガンを恨む人間も居るけど、それでもいつかは……」
「……まったく、お前はいつまで経っても甘ちゃんだな」
ゼハートは笑いながら俺を切り捨てる。だが、その言葉には今まであった独善的な物ではなかった。
「エデンとなる地球、私達はただ故郷の土を踏みたいと思うだけだったのだろう」
「けど、何かがきっかけで戦うしかなくなった」
「イゼルカント様の話によれば、昔火星に残された地球連邦の通信コードがあったらしい。それで一時は会談を要求して話し合いを行おうとした」
「……」
「だがそれは……政治家や軍の上層部が我が身大事と思って尽く潰えた。一度や二度ではない。数十とだしたが、断られ、最後は回線を遮断された」
「それって……!!」
「捨てられたのさ。私達は身勝手な政治家や軍の上層部によって」
俺はその言葉に対して何も言えなかった。どんな言葉をかけたら良いのか、それが分かるようなら苦労はしてない。
「だが、過去がなければ今はない。こうしてお前と出会うこともなかっただろう」
「そう……だな」
「……感傷に浸ってるところ悪いが二人とも、火を起こすのを手伝ってくれないか?」
父さんの声が聞こえて後ろを振り向くと、そこには木の枝を大量に運んでいた父の姿があった。しかしまだ『AGE-2』が運ばれていなかった。
「今やるよ!!でもどうやって火を起こすの?」
「ビームサーベルの出力を最低にすれば火種ぐらいは起こせる」
「それって結局はMS頼りですよね?」
「だからまだ運んでいない『AGE-2』のビームサーベルを使う」
「「……」」
俺はこの時、父さんとゼハートととは一緒に無人島へは行きたくないと思った。それは隣にいたゼハートも似たような事を思っていた。
火を起こして暫くすると、もう既に夕陽が海に沈み始め、辺りは暗くなってきた。夜は特にやることがなかったため、三人は火を囲んで食事を取りつつ今日得た情報を確認する事とした。
「まずこの場所は多分無人島であり、なおかつ辺りには離れ小島の類いはなかった」
フリットは地図を出してそう説明する。島の地図にもそういったものは書かれていない。
「でもここ数年前あたりには人は居たみたいなんだ。昼間の探索で居住区みたいなところはあったし」
「しかし、既に住人は死んでいて白骨化も進んでいたな」
「死体はどんな風になってたんですか?」
「殆どが仰向け、もしくは壁に凭れ掛かっていた。さらに服には銃痕があったことから見て、戦争や紛争の類いによる物だろう。しかも一方的にだ」
ゼハートとアセムは少し悲しそうな顔をする。実際には状況を話したフリットもだ。
「戦争で、互いが撃ち合って死ぬならまだ納得できるが……」
「これは最早、虐殺と言う他ない。しかも一方的な」
元司令官だった二人はやるせないように呟く。アセムは事態の深刻さに言葉も出なかった。
「でも……なんでこんなことが」
「そこまでは分からない」
フリットはアセムの問いに混ぜっ返すように答える。
「だが『ミスルギ皇国』に行けば何か分かるかもしれんな」
「『ミスルギ皇国』?」
ゼハートは聞いたことのない国の名を聞いて首を傾げる。アセムは昼間手に入れた地図にそう書かれた物があった事を話した。
「なるほど……でしたら、我々はいち早くその国に向かうべきですね」
「でもパスとかどうするんだよ?一応ここは異世界みたいだし、軍のパスが効くとは思えないけど……」
「それは……」
そう、彼らはこの世界の住人ではない。よって身分証明書などの類いがあるわけもない。つまりは……
「蛇の道は蛇、密入国するしかあるまいな……」
フリットは意を決して言い放つ。連邦司令官のやることではないが、彼にはもう形振り構っていられる状況では無かった。
アセムとゼハートが反論しようとしたその時、近くで爆発音が鳴り響いた。
「なんだ!?」
「かなり近いぞ!!どうする!!」
「アセム、お前は『AGE-2』に乗って状況を確認、ゼハート君もだ!!私のは空中移動できないから、『Xラウンダー』の共鳴効果でここから狙撃する」
「『Xラウンダー』って……その前にビームが届くの?」
「『ドッズライフル』は見かけ倒しではない!!各自作戦を開始する!!」
そう言って彼らは森にある自らの愛機に乗り込むと、二人は一気に爆発音の鳴った方へ飛び立った。
「なんなのですか……あれは……」
ノーマであり元皇女、アンジュリーゼ・斑鳩・ミスルギは今起きた状況が理解できないでいた。
何も無かった空間から、いきなり雷のような光が機体を貫き、すぐ側にいたノーマの体を貫いた。私の事を慕っていた彼女の顔はまだ幼く、無邪気な笑みを浮かべ、そして散っていった。
そして上空から攻撃の正体であるドラゴンを見て、アンジュの心は完全に崩壊しかけていた。
「アンジュ!!戻りなさい!!アンジュ!!」
副隊長であるサリアの声で我に返ると、自分の目的の為に再び『パラメイル』を進ませた。
「私は、ミスルギ皇国に帰るのです!!」
ミスルギ皇国、それはアンジュ自身の故郷であり、自分の生まれ育った国。こんなところに居るわけにはいかないのだ。
アンジュがパラメイル『グレイブ』を進ませる。たとえ燃料が戦闘一回分しかなくとも、進めるだけ進めればいい。そう思っていた。
「私は……どうすればいいの!!」
突然後ろから先程のノーマ、ココという名の少女の友人であったミランダという彼女が自分の迷いを私にぶつけてくる。
「……それは……自分で探す他ありません……」
正直に言えば時間の無駄だと思いながらも、彼女にそう答える。が、次の瞬間、一体のドラゴンがミランダの機体へと攻撃を仕掛けようとした。
「!!」
アンジュは叫ぼうとしたその時、
一筋の光の奔流がミランダを襲おうとしたドラゴンを貫いた。
「「「「「「「「!!!???」」」」」」」」
「え?助かった……?」
アンジュ達が見つめる方向に、白い四翼を持った機体が銃を持って狙っていた。
『こちらアセム・アスノ!!そちらを支援します!!』
一人の青年が、彼女達の運命を変えることとなるのは、まだ誰も知らない。が、既に時の歯車は有り得ない方向へと回転を始めていた。
よ、ようやくアンジュ達を出せた!!なんかグダグダ感は拭えない感じですけど、そこは大目に見てください。
ココちゃんは本編未登場のまま退場してしまいました。いや、こればっかりは本当にどうにもならんかったんです。アンジュ的にもこうしないといけなかったのです。
次回もなるべく早く更新して行きます。よろしくお願いします。