時計の針は午前10時を指し示していた。
「そろそろ図書館が開くところだな?じゃあ早速今日のお昼寝プレイスへ直行するぜ!」
私、〇〇は都会で働くバリバリのオフィスワーカーである。ちなみに男だし新卒で入社した感じだ。
何で受かったのかわからないが、私は最終面接で営業がしてみたいと言ったからだろうか?ソフトウェア開発会社の営業課に飛ばされて毎日歩き放題ってわけさ
言っておくが、ウチの課の雰囲気はまさにお役所体質でさ?この間なんか傘下のグループ会社さんに媚び売ろうと契約書類を勝手に作成してあげたら、頑固な植町課長に怒られちゃったほどなんだぜ?
お、話は程々にして図書館の駐車場から降りるとしましょうか!
元気よく肩を伸ばして私は営業用の軽自動車からキーをブチッと抜いた。
スタコラと足をカエルのようにバタつかせたが、それを見ているのは5メートルちょっと先にある真っ赤な自販機だけだから問題なし。
ゆっくり図書館の自動扉が開いた。図書館内はふわふわの紫色なソファーと木製ベンチが彫刻を囲むように配置されている。
「では早速お昼寝するとしましょう!それではおやすみなさい・・ぐぅ・・」
厳ついダンディな彫刻に見守られながら私はお昼寝を始めようとするが・・その時だった。
「こんなんじゃ駄目だ・・アリスのバカ!やっぱりアリスはまだ間違っちゃう・・」
か細い女の子の声がするがちょっと待ってくれ、今日って平日だぞ?
私は尻ポケットに仕込んでいたスマホをカチッとスライドさせて時刻を確かめる。
「10時15分・・今頃なら小学校で2時限目ぐらいの時間なのでは?」
ぼそっと片目をうっすら開けて〇〇は声の主がどの辺りにいるのかキョロキョロ探す。
見つけたわ、ちなみに少女でアタリだった。でも何でだ?
思わず首をかしげてしまう。図書館内にはこの子以外居ないし・・ご両親はどうしちゃったんだろう?
「ここで急に近づいたら怪しまれそうだし、知らない振りして観察を続けよう。」
・・少女は泣き出しそうな顔で日本語文法書を読んでいた。いや普通に涙出てるし・・グシャグシャじゃん。
「仕方ねぇな・・何で一人ぼっちで居るのかも分からないし、どうして勉強をしてるんだろうか?(しかも滅茶苦茶ムズそうな文法書じゃん・・)」
泣き出している少女にいたたまれなくなったので、私はダンディ彫刻に会釈しながらスタスタと少女へ歩くことにした。
「どうしたんだお嬢さん?何で泣いているんだ?あと飴ちゃんいる?」
「・・!!」
軽くコミュニケーションをジャブ感覚でしてみたんだけど金髪ロング少女は一瞬顔を見合わせた・・・かと思ったら急に右隣りに置いてあった渋いカバンから丸いアレを握り出した。
「ちょ・・待って待って!!勘違い!!不審者じゃないって!!」
説明しよう!丸いアレとは小学生に向けて悪い紳士が手を出してくることを防ぐために大音量を出すアレである。ようするに防犯ブザーである。
「う・・うるさい!!オジサン誰!?不審者でしょ?」
「は・・はぁ!?オジサンだぁ!?不審者なのは百歩譲るとして、何でオジサンなんだ・・」
私はガクッと膝を床に落として絶賛落ち込んだポーズを決め込んでしまう。
「と、とにかく待って!話を聞いてくれ!!俺、まだ何もやってねぇって!!頼む・・飴ちゃんあげるから許して・・」
大のおとなが土下座しながら結構高い飴ちゃんをポケットから渡すんだぜ?こんな光景を司書さんや周りに誰か居たら軽く首をくくれるぜ・・