図書館で幼女に通報されかけた
Q.
シーン・・・と静かな図書館で土下座をなお維持し続けている大人は誰でしょう?
A.それは私〇〇しかいないだろう。ちなみに男だ。
「このまま土下座を冷たい木の板でし続けると膝が故障しちゃうんです・・どうかお嬢さん、許して下さい!」
私は肩を震わせながら視線を床に落として言った。眼の前には幼女の渋めな革靴がちょこんと映っているが、紳士的な私はそれ以上頭をあげるべきではない。
「・・ふーん?オジサンは膝が弱点なんだ?もう少しこのまま土下座させちゃおっかな~?」
耳にかかった髪を手で払いながら残酷な宣言をするお嬢さん。貴方儚げな見た目と違って良い性格しているね?
館内は未だ静寂を保っており周りに大人が居たら私が助けを呼びたいぐらいだ。まぁ、それをされたら私が詰むのだが・・あと私はオジサンではなくてお兄さんだ。
もう通報されてもいいと私〇〇は決心しました!だって1人で泣いているんだよ?誤解されてもいいから助けてやらないとお昼寝出来ないじゃん。
「お嬢さんぐらいの年頃なら今の時間は学校に行ってるはずだよ?どうして一人で日本語の専門書を読んでるんだ?」
ちょっと単刀直入過ぎたかもしれない。でもこれくらいで言ったってこの子なら何か返してくれるだろうと私は少女の発言を待った。
数秒経ってからだろうか?口の中を少しモゴモゴさせながらお嬢さんは言葉を探して口を開ける。
「アリスは・・駄目な子なの。」
たった一言しか発言してくれなかったが、ここから発言を紐解いていくか。
「何が駄目なんだ?あと飴ちゃんは図書館で食べちゃ駄目だからな?これは小学校でも
学んだと思うけどな」
「・・学校は今行っていない。だってアリスが居たら迷惑だから」
待て待て!!やってしまった・・また〇〇は地雷を踏んじゃいました!?
アリスは私から視線を外して更にトボトボと呟く。
「パパの仕事で日本にやってきてからかな?こっちに来てからお友達は居ないし、誰もアリスとお話してくれない。」
涙こそ乾いてきたが彼女の目は何かに怯えた小動物のようにも見えた。
「にしても日本語の専門書を読むことはないんじゃないか?会話がしたいんだったら今どきスマホがあるだろ?それを使ってネット通話したら良いと思うんだけどな」
「オジサンは何を言ってるの?アリスのスマホはキッズスマホだから出来ないことのほうが多いんだよ?」
彼女はジト目でゴミを見るように私へ鋭い矢を刺してきた。ぐぬぬ、言いおるわい。
「しょうがねぇお嬢さんだな。じゃあこっちから助ける事ができないじゃないか?私はただ単にお昼寝がしたいだけなんだ。カウンセリングなり学習支援室なり行ってきなさいよ」
若干投げやりに言ってしまったが仕方がないであろう。だってこれ以上構っていたらお嬢さんの時間も私の時間も無駄になりそうなんだから。
「それじゃあバイバイお嬢さん?私はお昼寝したいからゆっくり読書でもしてくれたまえ」
「ちょ・・ちょっと待ちなさいよ!そこはアリスのことを助けるべきでしょ?」
えぇ・・なんだか面倒くさいお嬢さんだなぁ。でも飴ちゃんをその場で食べていないし礼儀や常識が有りそうな気はするし仕方ないけど助けておこう。
「よし分かった。私〇〇がお嬢さんをお助けしましょう。ところでお嬢さん?日本語の文法書を読んでいたってことは日本語でお気持ちを伝えることが苦手かな?」
「正直なところあんまり得意じゃない。でもアリスは日本語がうまくなってみんなと仲良くなりたいの」
アリスは金髪を左側頭部に束ねながら私の目をじっと見て答えてきた。よーしいいぞ?根性がある子は大好きだ
「じゃあお嬢さん?そんな文法書の世界に閉じこもっていないでさ、この〇〇と一緒に遊びに行きません?」
我ながらなんというお粗末さだろうか?私のセリフってこの見た目ではなかったら性犯罪者のオニイサンってところじゃないかしら?
私は直立不動になってポケットからスマホを取り出した。そしてスマホを親指でスワイプして滑らせて近くの大型ショッピングモールにピンを立てて青い目のお嬢さんに向かって口を開ける。
「ではお嬢さん?私の車でエスコートしましょう。ちなみに営業用なのはナイショだ」
「え・・オジサンって働いているの?嘘でしょ??こんな時間に大人がいたら危ない人ってパパが言ってた」
「いやいや、待っておくれ?ほらここ!ちゃんと名刺持ってるでしょ?ソフトウェア開発会社の営業課に入っていることが分かるはず。私は良い大人だから嘘なんてついてないんだよ~」
自分で言ってもなんだけどコレは本当だ。私〇〇はクソ真面目であまり嘘ついていないことだけは周囲の評判でお墨付きなのだから。
「・・納得はしないけどオジサンしか今のところ頼れるところがないからイイわ。じゃあエスコートしてもらおうかしら?」
アリスは青い目をパチリと瞬きして私に向かって左手を差し出した。 え・・?何で左手なんすか?
「お嬢さん?何で左手を差し出しているんでしょうか?私〇〇はあまり意図が使えめないんですが・・」
「貴方こそ意図が掴めてないんじゃないの?私の顔と名前を知らないのは流石にショックだけど・・」
少女はげんなりした顔でゴミを見るように私を見つめてきた。 えぇ・・誰なんです?本気でわからないのですが
「あといい加減貴方の名前を教えてもらってないわね?名刺をさっき見せてもらったけど名前を指で隠していたし・・お兄さん?お名前を聞いてもいいかしら?」
「やっとオジサンからお兄さんにランクアップですかね・・。良いですよ?私の名前は〇〇と申します。以後お見知りおきを」
執事のように腕を胸辺りで私は曲げてお辞儀したが少女は満足げな表情である。
「ふふっ変なお兄さん?私はアリス・ロックウェルって言います。言っておくけど変な気を起こしたら通報するからね?」
よし、とりあえず自己紹介をお互い出来たわけだし早速図書館から出ることにしましょうかね?私はアリスの差し出した手を優しく包んで手を引く。
館内は無人だったけどどうしたのかしら・・?まあ適当に遊んでお昼寝することにしましょう。
外に出ると冬の冷たい冷気がふわーっとほっぺたを掠めて行く。やっぱり外は寒いんだな~
アリスを見ると飴ちゃんをきちんと舐め始めているようだったし、まずはショッピングモールで何をしようか考えることにするか