前々から佐天さん&スクライドを摂取したいと悶えていた結果、生まれた作品になります。つまり見切り発車ですねぇ!
筆休みなのでちまちま投稿していければなーと!
スクライド方面はカズマさんしか出ませんので……っ
「……あのねぇ。オレが付き纏われる理由ないんだけど?」
「いいじゃないですかー!それに助けられたお礼もまだ返していないんです」
「だからぁ!喧嘩を売られた!それを買った!!それだけだって何度も説明しただろうがっ!?」
ある人通りの多い街頭でとある若い2人の男女が微笑ましい掛け合いを繰り広げていた。
制服を着ている黒髪ロングで活発な中学生に対して、冴えない風貌して猫背な高校生が鬱陶しそうに顔を顰める。
「第一にあの後
「その
「……知るかっ!オレはガキに付き纏われる理由はねえわけ!」
「ガキじゃなくて佐天涙子って名前があるんですぅ!」
中学生の少女——佐天涙子はむぅーとむくれた顔で怒っていますとアピールをするが、それを相手せずへいへいと適当に男は聞き流しながら心の中で悪態を吐く。
(女に付き纏われるのはアイツの十八番だろうが……)
自分が登校している高校のクラスメイトであり友人(?)の毎日不幸だと嘆いているツンツン頭を思い出す。
例えば付き纏われているのが数日前の不良たちなら獰猛な顔で迎え撃つのだが……隣にいる相手は中学生の女の子。そんな相手にどう対応すればいいのか彼は分からず、かれこれ頭をずっと悩ませており頭を抱えたい気分なのだ。
「お前友達にもこんなウザ絡みしてるわけ……?」
「親友に煩くて騒がしいのが取り柄だって言われました!」
「…………いや、なんか悪りぃ」
佐天涙子は嬉しそうに笑っているが、彼女の親友の褒め言葉にしては鋭すぎる毒舌に彼はつい謝罪してしまう。
「……で?助けたお礼ってなにがあるわけよ?」
隣の彼女は全く気にしていないが、妙に居心地の悪さを感じてしまった彼は気怠げに頭を掻きながら折れることを選んだ。
理由はどうであれ歳下から、しかも中学生の女の子から施しなんて堪えるものがあるが、今後付き纏われるよりもマシかと納得する。
突然と主張が変わった男に、佐天は数回瞬きをすると目を逸らしながらあははと力なく笑いながら答える。
「お礼と言っても自動販売機でお好きな飲み物を奢るぐらいですけど……」
「オレとしてはそっちの方が気が楽だね」
中学生に飲食店と提案されていれば、黙って立ち去るのを本気で考えていたところだ。第一に高校生が年下の、しかも中学生相手に飲食店を奢られる絵面は最低だ。他人からどう思われようとも男は気にもかけないし、甲斐性なしのロクデナシと自覚はあるものの、不名誉なレッテルだけは避けたかった。
特に女子中学生に奢られたとあの馬鹿3人組に知られれば、それこそ時間がある限りネチネチと弄ってくるのが目に浮かぶ。
「それでなんですけどー……」
「なんだよ?近くの自動販売機でいいじゃねえか。なんか他にあんのかよ?」
「名前を教えてもらってないなと。恩人さんの名前をいつまでも呼ばないのは中々に不便でして……」
「名乗る必要あるか?」
「ありますよー!それにあたしが知りたいんです!」
どうせこれで終わる関係だ、と冷たく突き放すのは簡単だったが佐天涙子の何やら期待した笑顔に気圧され声を詰まらせる。
大きなため息を吐いてぶっきらぼうに彼は名乗った——-
「——カズマだ。それ以上でもそれ以下でもねえよ」
「カズマ……カズマさんですねっ!」
恩人の名前を知れた佐天は嬉しそうに頬を緩め、その名を胸に刻み込むように繰り返して呟く。
喜ぶ佐天を尻目になにが嬉しいのやらとカズマは訝しむが、騒がれるよりはマシかと納得して空いている片手で頭を掻く。
「これからよろしくお願いしますね、カズマさん!」
「……まるでこれからも話しかけるみたいに言ってくれるじゃん?」
「はい!お互いの名前も知ったので私たちはお友達じゃないですかっ!」
「はぁぁぁぁぁぁ……もう好きにしろ……」
カズマは両手を上げて降参と意思表示をして、佐天に抵抗するのを諦める。相手は女の子で女子中学生。力づくで遠ざけるのは簡単だが自分よりも弱い相手に手を挙げるのは彼のポリシーに反するので、自分よりも口が達者な彼女に口で勝てないのだから諦めるしかなかった。
「一番高いやつ選んでも文句は言うなよ」
「それはもちろん!」
「たくっ……調子狂う奴だな。……あー、なんだっけ名前?」
「自己紹介して数十分も経ってないのに忘れられたの始めてですよ……」
「人の名前覚えるのは苦手なんだから仕方ねえだろ。次はきちんと覚えておくから……な?」
「嘘ついたら針千本ですからね?あたしは佐天涙子、です!絶対に忘れないでくださいよー?」
「佐天涙子……オッケー、胸に刻んだ。もう忘れたりしねえよ」
お転婆っ子の名前をカズマは胸に刻み込む。名前をつい忘れてしまっても口の中に針を千本入れられることはないだろうが、約束した以上は守らなければ男が廃るというもの。
口は悪いが忘れないと誓いを立てたカズマに佐天は満面な笑みを浮かべて嬉しそうにはいっ!と返事を返した。
「ついでに連絡先とかも交換しませんか?」
「ほれ。欲しいのなら自分で入力しろ」
「提案したのは私ですけど……その、無防備すぎませんか?」
「見られても減るもんはねえからな」
あまりにも大雑把な性格をしているカズマにこれには佐天も苦笑いを浮かべる。
先に断りを入れて軽く連絡先を見れば言葉通りに最低限しかなく、両親の名前、彼の担任の月詠先生と、そして謎に馬鹿1、馬鹿2、馬鹿3、と妙に好奇心が駆られる数件だけだった。
「この馬鹿1、馬鹿2、馬鹿3って連絡先がすっごく気になるんですけど……どんな人たちです?」
「文字通りの意味だっての。この状況で一番会いたくない奴らだから連絡かけるんじゃねえぞ」
「非常に気になるんですけど……これを、こうして、はいっ!」
彼女としてはその馬鹿と括られている人に連絡を掛けたいが、カズマが心底嫌そうな顔を見て断念をする。
自分の携帯を取り出し、佐天は慣れた手つきでカズマの携帯へ自分の連絡先を入力して、カズマへと携帯を返す。
「それじゃあ行きましょうー!いざ自動販売機へ!」
「へいへい……サッサっと行くぞ佐天」
「あー!名前呼んでくれたんですねー!」
「うっるせぇ!?苗字呼んだくらいではしゃぐな!?」
大袈裟にはしゃぐ佐天に、カズマは静かにしろと口を荒げるが彼女は怖がる様子は全くなかった。
カズマは調子の狂うやつだと小さくため息を吐きながら、隣の佐天涙子が満足するまで付き合うことにした。
——馬鹿と少女の奇妙な出会い。この出会いがとある物語が加速していく。