これで2人が出会った話に触れたので次から突然と話が動き出しても問題ないですね。はい!
学園都市の第七区のとあるファミレスで2人の女子中学生、佐天涙子と初春飾利が、朝に親睦を深めると約束をしたカズマを待っていた。
例の人物がまだ不在なこともあり、初春は目の前にいる佐天へととある質問をした。
「佐天さんはカズマさんにどんな風に助けてもらったんですか?」
「ふふふっ……知りたいかね? あたしとカズマさんがどのようにして出会ったのかを!!」
「それはもちろんですっ! 不良のカズマさんへやけに親しげな理由が引っかかってるので!」
初春はカズマへと自然に毒を吐くが、朝の上条当麻とのやり取り、スキルアウトとよく衝突している件。しかも、彼の友人である上条当麻が屈指の問題児と不良であると述べたのだから、それらを考慮すれば好印象を持つ方が難しく当然の反応である。
佐天が誰とでも仲良くコミニケーションをとるのを得意であるのを初春はもちろん知っているが、それでもあの青年へ親しげに話すところについては心臓に悪い。
「んふふっ! それなら語りましょう!
初春の期待の眼差しに応えるために佐天は数日前の、あの日の出会いを思い出すかのように語り始める。
———あの日あたしを助けてくれた、
◇◇◇
時刻は午後十三時三十分。佐天涙子は私服姿で第七区のとある公園でベンチへと腰をかけていた。
平日のこの時間帯は柵川中学でお昼休みの真っ只中だが今日は休日。クラスメイトと遊ぶ約束をした佐天は、その待ち合わせ場所の公園で友人を待っていた。
「遅刻かー! そんなに掛からないらしいけど……んー暇だなぁ」
公園で待っていたがつい先ほど友人から遅刻するという連絡が入って、佐天は只今暇を持て余していた。携帯を弄る気分でもなく、
公園を見渡しても人通りは多くても知り合いの姿は見当たらず、彼女は暇だなぁと退屈に襲われ、雲ひとつのない空を眺めぶらぶらと足を揺らす。
「——そこのきみぃ退屈そうにしてるじゃんか?」
「……えっと、あたしのこと、ですか……?」
つまらなさそうにしていた佐天へと、ラフな格好をした人相の悪い男が声をかけてきた。その男の
佐天は顔を顔張らせて勘違いではないかと自分の事を指差せば、男は胡散臭そうな笑顔を貼り付けて頷く。
「そうだよ。君のこと。さっきから暇そうにしてたからさぁ」
「あ、あはは……気のせいじゃないですかね?」
「そうかなぁ? 数十分ぐらいずっと居るじゃんか」
佐天は愛想笑いで誤魔化していたが、男の言葉に返事を返した時点で間違っていた。己に気があるのかと勘違いをしたのか彼女の隣に腰掛ける。
(……うっ、お酒臭い……)
隣に座ってきた男からはアルコールの匂いが漂っており佐天は顔を顰めた。男の顔は赤く大量のアルコール飲料を摂取しているのを窺える。
「これから用事があるので……!」
「ちょっとぐらい話し相手になってくれてもいいじゃんかー」
「ちょ……」
突然と隣に座ってきた男から逃げるように彼女はベンチから立ちあがろうとするが、それを阻止するかのように男が腕を掴んだ。
中学生の佐天が成人した男の手を振り払う筋力は持ち合わせていない。それ以前に佐天涙子は
体から電撃を放てるわけではなく、紙や金属を操れる念動力を持っていない。なんの特別な力も持っていない、ただの平凡な女子中学生。
腕を掴まれた時点で、この状況を1人で打開する術を佐天涙子という人間は持ち合わせていない。
「は、離してください……っ!」
「どう? オレたちとこれから遊びに行かない?」
「オレ、たち……?」
「そう。オレたちと」
薄気味悪く笑う酒に酔った男の言葉を佐天は呆然としながら繰り返した。慌てて周りを見渡せば、遠くから聞こえるぐらいに騒いでいる数人の男が此処を目指しながら近づいてきていた。
(ど、どうしよう……っ!?)
後少しで見知らぬ男たちに囲まれてしまうことに頭が真っ白になる。
助けを求めるように周囲を見ても、通行人は厄介ごとに巻き込まれるのを避けるように目を背けて去っていく。大声を出して助けを求めようにも恐怖で詰まらせてうまく声が出せない。携帯を取り出し、
「じゃあ、一緒に遊びに行こうかぁ」
抵抗しようとも体は思うように動かない。そんな佐天を一緒に遊ぶ了承を得たと勘違いをした男がベンチから立ち上がり佐天の腕を引く。
「だれ、か……っ」
このベンチから動いたらこの男の仲間の元へと連れて行かれる。そうなったら逃げることはできない。
それは嫌だと、佐天は恐怖で竦んでいた心を奮い立たせた。助けを求めるには震えて小さすぎる声。自分の腕を掴んでいる男も耳には届かないほどに。
誰かの耳に入るにはあまりにも小さすぎる声。これは無理だと、誰も助けに来ないと、聞こえてないと佐天自身諦めた瞬間——
「——随分と楽しそうじゃねえか。オレも混ぜてくれよ……なぁ?」
「……えっ?」
2人の間に入るように1人の男が割り込んできた。
その男は学生なのか制服に片手には学生鞄を持っており、鋭い眼光で獰猛な顔を浮かべ、佐天の腕を掴んでいた男の腕を掴んでいた。
何が起きたのか状況が飲み込めない佐天は茫然として、突然と現れた男に目が留まる。
「はな……いででで……っ!」
謎の男に腕を掴まれた酔った男は声を荒げようとするが、掴まれた腕が握り潰されかねないと錯覚してしまいそうに力強く握られて、その痛みに耐えきれず佐天の腕を離した。
酔った男が彼女を解放すれば、制服姿の男は心底つまらなさそうな顔をしてその手を離し、佐天を守るかのように立ち塞がる。
「……人がこれからそこの可愛い子と遊ぶってのによぉ。邪魔してんじゃねえぞ?」
「あん?聞こえなかったのか?オレも混ぜろってよ」
「——うるせぇよ!」
酔った男は目の前に現れた男へと大きく勢いよく拳を振るうが、それを待ち望んでいたかのように彼は口角を上げて掌で受け止める。
「アンタのような血の気の多い奴は好きだね。シンプルで分かりやすい」
「……あん?」
「こう言ってんだよ。アンタはオレに喧嘩を売った……そしてオレはその喧嘩を買ったってなぁ!」
制服の男は怪訝な顔を浮かべる。酔っ払った頭で制服姿の男の言葉を理解するのに数秒の時間が掛かった。
酔っ払いがその言葉の意味を理解するよりも前に、彼は警戒心の欠片もなく、隙だらけの酔った男の腹部へと右腕で握った拳を力強く叩き込んだ。腹部に鋭い拳が打ち込まれた男は腹を押さえて倒れ込む。
「えっ……えっ……っ?」
目の前の光景に佐天はただただ混乱していた。酔っ払った男に絡まれて無理矢理連れて行かれようとして、そして次は助けに来た人が酔った男へと躊躇いもなく暴力を振るったのだから。
状況が好転したというよりも、状況は悪化して、むしろ騒ぎが大きくなってきているんじゃないかと不安に駆られていた。
「——おい。そこのアンタ」
「は、はい……っ」
「どっか隠れてくれるのが楽なんだが……それが無理ならオレの後ろから出るんじゃねぇ。目と耳も塞いでろ。全部終わったら声かけるからよ」
制服姿の男背を向けたまま、さっきまでの好戦的な声は嘘だったかのように消え、どうしようと狼狽えている佐天へ気遣うように声を掛ける。
佐天の目の前に広がる大きな背中。口は悪いがその言葉はこの場で誰よりも力強くて、優しくて、初対面のはずなのにさっきまでの不安は消えていき安心感を抱く。
「わ、わかりました……っ!」
佐天はその場で膝を曲げて蹲って、言われた通りに両耳を塞いで瞼を閉じる。
そして制服の男——カズマの前に地面へと沈んでいる仲間である数人の男が苛立った顔で佇んでいた。
「……こっちは5人。1人で勝てると思ってるわけ?」
「5人だろうと、10人だろうと、100人だろうとアンタらには負ける気がしないね…っ!下らねえ御託はいらねえからサッサっと始めようじゃねえの!心が躍る喧嘩をよぉ!!」
カズマはギラギラとした目つきで不敵に笑いながら吠えた。右腕を前へと突き出して、それが癖なのか人差し指から拳を握っていく。
それが合図かのように男たちはカズマへと襲いかかるが、カズマはこの喧嘩を楽しんでいるかのように笑みを浮かべ迎え撃った———
(あの人大丈夫かな……?)
両耳と目を閉じてその場に座り込んでいるが一向に声がかかる気配がないことに僅かに焦りを感じていた。
冷静に考えれば酔っ払いの男には仲間が近づいてきたのを思い出して、制服の青年1人では数的不利。数の暴力に負けて、現在一方的に痛ぶられている可能性だってあるのだ。
目を開けようかと、今なら近くの人に助けを求めようかと、ぐるぐると思い悩んでいたら佐天の肩に誰かの手が触れた。
突然なことに驚いて肩を震えわせながらも、彼女はおそるおそる瞼開けると目と鼻の先にカズマの顔があった。
「あ、えっと……」
「悪いな。ちょいと時間がかかっちまった」
「……あ、あの人たちは?」
「おう。もう居ねえから安心していいぜ。あの様子じゃ酒の勢いでアンタに絡んだんだろうさ。また狙われるようなことはないだろうよ」
「……は、はい」
カズマは先に立ち上がり、周りを警戒するように一瞥した後に佐天に手を差し伸べ彼女はその手をおそろおそる手を取った。
「その様子だと……大した怪我はなさそうだな」
「は、はい!その——」
「———
遠くからでもはっきりと聞こえる声量で男は
カズマが佐天へと絡んでいると勘違いをしたのか、そこを動くなと声を上げながら走りながら近づいてくる。それを苦虫を潰したかのような声でカズマは顔を顰めた。
「うげっ……
「あ、あの!!」
「アンタ!あとは任せたっ!適当に誤魔化しておいてくれ!じゃあな!」
手を前に合わせて
「……行っちゃった。お礼言えなかったなぁ……」
名前すらも名乗らずに、何事もなかったように遠のいていく背中を佐天は名残惜しそうに見送る。
(……また会えるかな。ううん、探そっか。お礼を言わなくちゃ!)
顔はしっかりと覚えてる。学生服を着ていたし、時間を考えればきっと学校の帰りでここ付近に住んでいる人だろうと推測を立てていく。
怖い人だったけど不器用で優しかった
「——君!大丈夫かい!?」
見つけ出して助けてくれたお礼と、そして自己紹介をするのだ。
あたしは佐天涙子です。貴方の名前を教えてくださいと———
◇◇◇
「こうやってあたしとカズマさんは出会ったんだよ。だからあたしにとってカズマさんは
「
「うん!……初春に伝えちゃうの恥ずかしいなぁ!」
初春に彼との出会いを語り合えた佐天は照れ隠しに笑ってはいるが、恥ずかしさで頬を薄らと赤く染めていた。
親友はカズマをヒーローと言い、初春もその出会い方を、まるで物語のようで、女の子の危機に颯爽と現れるヒーローのようだ。……ヒーローと名乗るにはとびきり悪い顔をしているが。
(……それに佐天さんがカズマさんを話してる顔を見ちゃうと、あの人のことを信頼しても大丈夫なのかなって信じてしまいそうになっちゃいます)
カズマとの出会いを語っていた佐天は心の底から嬉しそうに、頬を緩めっぱなしで話していた。親友のそんな顔を目の前で見せられた初春は
「カズマさんまだかなー。聞きたいことや、話したいこといっぱいあるんだよね。連絡そろそろ掛けて大丈夫かなぁ?」
学生鞄から携帯を取り出してカズマの連絡先を眺める。時刻は十六時を表示しておりそろそろ終鈴が鳴っていてもおかしくはない。
「いいんじゃないんですか?朝別れる時に連絡を入れると伝えてはいるので掛けましょう!」
「そうだねー!それじゃあ掛けちゃおっか!」
彼へと連絡をするか悩んでいた佐天の背中を初春が押す。親友からの頼もしい言葉に悩みは吹っ切れて連絡を掛けることを決意する。
そわそわと落ち着かない様子の佐天を初春は微笑ましく見守りながらメニューへと手を伸ばすのだった。