覇権国家ニッポン召喚   作:(休止中)サン少佐

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砂丘の王國 ― クイラ事変
第一話『異変』Prologue


 惨憺たる大戦争(大東亜戦争)の末に東亜新秩序(パクス・ジャポニカ)を構築し、東側世界の神として君臨するに至った―――ある異界の大日本帝国は、1958年12月深夜―――…

 

 …―――列島一億国民と共に、天穿つ閃光の(うち)へ消え去ったのであった。

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 …

 

 

 

  …

 

 

 

   …

 

 

 

 

―――気象通報、低気圧は昨夜に通過、天候は南西より回復。

 

風126度17ノット、積雲1、視程15、海上高波。

 

本日は快晴なり、良い一日を。通信終了(アウト)―――。

 

 

   …

 

 

 

  …

 

 

 

 …

 

 

 

 永遠の蒼に一滴―――獅子の如き怪鳥が、その両翼を雄々しく振って天を駆ける。

その背には、「騎士」と形容出来る装いをした人間(ヒト)が跨って、手綱を用い怪鳥を操っていた。

 

 この異世界(セカイ)における知的種族は、その生命体を「飛竜(ワイバーン)」と称し、

それを最初の飛行手段としていたのだ―――。

 

 

 

 …

 

 

 

 …

 

 

 

 〝定期連絡、第六管区方面、異常なし。応答願います(オーバー)。〟

   〝第六管区異常なし、了解。通信終了(アウト)。〟

 

 

 ―――ん…?

 

 

 進路を暁の方へ向けていた竜騎兵は、ある時、左方の空に胡麻の粒ほどの飛翔体を見た。

恐らく飛竜(ワイバーン)だろう。未だかなりの距離があるが、こちらとの高低差は余り無い―――。

 

 ―――しかしながら、この空域を飛竜(ワイバーン)が飛翔しているのは些か妙であった。

此処は辺境、第三文明圏の果て、または文明圏外とも称されるロデニウス大陸の…更に果て。

航続距離な問題を考慮して、この空域を飛翔する飛竜(ワイバーン)は大抵…我がクワ・トイネ公国の所属である。しかし友軍騎が同じ空域を飛行中と言う情報は無い。

 

 彼は耳元の魔法通信機に手を伸ばした―――希望的観測(楽観バイアス)に影響されたか、同空域内における友軍騎の存在を訊ねたのだ。

それは〝敵騎であれば一大事である〟と言う、己の職務を果たさんとする言では無く、〝友軍騎であれば面倒事にならないだろう〟と、一種の怠惰心に近しい行動であった。

 

 

 

 

 ―――しかしその時既に、飛翔体は彼が思うより…遥かに接近していたのである。

いや、正しくは「遥かに速かった」であろうか。

 

 

 

 

 …

 

 

 

 

 

  …

 

 

 

 

 

   …

 

 

 〝―――司令部、こちら第六管区ッ!

 

我、所属不明騎と接触(コンタクト)応答せよ(オーバー)!〟

 

 ―――なに?もう一度!

 

 ……恐らく、軍の通信員と思しき者が、相手の興奮した口調に思わず声を上げる。

その様子は他の通信員にも奇怪と見えたらしく、気が付けば、辺りには人だかりが現れていた。

 

 〝クソッタレの所属不明騎はクソッタレな音を出しながら、クソッタレな高度を上げて南西へ向かった!マイハークの方角だ!それもクソッタレな速度でクソッタレな高空に!

 

 とても我では追いつけん―――あのクソッタレが本当に生物なのかも分からない!〟

 

〝落ち着いて!騎の特徴は?〟

 

〝えらくデカい白亜の竜だ!

背に人は乗っておらんから、暴走した野生の古竜やもしれん!〟

 

 そして…哨戒騎からの報告を受けた司令部は、遂にある決断に至る。

 

〝…第六騎竜隊!全騎発進!

所属不明騎をマイハークに近付けさせるな!〟

 

 

 

   …

 

 

 

  …

 

 

 

 …

 

 

 

 幸運にも、第六飛竜隊は当該騎へ正対する事に成功した。

眼下には大陸有数の肥沃地帯―――クワ・トイネ北部平原が広がる……。

 

   〝司令部、こちら第六飛竜隊。

目標を視認した、これより要撃する―――。

 

  ―――指揮官騎より全騎へ!火炎弾発射用意ッ!!〟

 

 阻止線を構築する12騎の飛竜(ワイバーン)は、眼前を飛翔する所属不明騎に対し、その禍々しき口を開けた。

高威力火炎弾による一斉射撃―――その弾幕でもって、敵を焼き尽くさんとするものであった。

 

 一報の所属不明騎は、轟々たる唸り声を上げながら、未だエジェイへ向けて飛翔中である。彼の騎の速度からして、この機を逃せば次は無い。

 

 〝…奇怪な奴め……だが我ら蒼の竜騎兵…ッ!

高威力火炎弾を前にして…堕ちぬ者など―――無いッ!

 

〝放てッ!〟

 

 

 

 

 

 

 しかし―――乾坤一擲の思いで放たれた火炎弾は、()の騎が()()()()()()()()()事で、永遠の蒼へと消えてしまった。

 

〝―――我、目標を見失った。〟

 

所属不明騎は高空へと逃れ、二度とその姿を見なかったのである。

 

…クソ…化け物め―――。

 

竜騎兵は先程の騎が逃れた青黒い高空を見て、そう呟いた。

 

 

 

 

 

 …

 

 

 

  …

 

 

 

   …

 

 

 

 所属不明騎によるクワ・トイネ公国領空侵犯事件から数日。

華麗なる宮殿の来賓室において、文明圏外と仇名されるクワ・トイネ公国において似付かわしくない―――小綺麗な服を纏った人物が、同国の外務責任者たる外務卿と対談していた。

 

 〝()の新興国の出現に関して……詳細を伺いたい。

―――我々の情報筋によれば、皇国は大混乱であると…。〟

 

 その者は、クワ・トイネ公国近隣に位置する列強国にて―――同地域における主導国たるパーパルディア皇国駐クワ・トイネ公国兼クイラ王国大使である。

 

大使は来賓室のソファに深く座し、一度溜息を着いたあと、

 

 〝第三文明圏の平和維持に関して、憂慮せざるを得ない事態に至った、とでも申し上げましょうか―――。〟

 

と言って、皇国が置かれた状況について、語り始めた……。

 

 

 曰く―――中央暦1639年の暁、パーパルディア皇国の港湾都市デュロに国籍不明の船団が入港した。

船団の所属は大日本帝国を名乗る新興国と思しき国家であったが、その船団を構成する船舶が―――異型(・・)であったが故に、皇国上層部が混乱に陥ったと言うのである。

 

 パーパルディア皇国は大日本帝国との修好条約を締結するに至るも、突如として現れたる異型の船団に驚倒し、その条約において「大日本帝国がパーパルディア皇国と対等である」と認めてしまったと言うのだ。

 

 それを聞いた外務卿は、〝その大日本帝国が、まさか皇国に害をなせる程の国家では無いだろう〟と返すと、大使は〝勿論であります。少なくとも…新興国である大日本帝国が、皇国に相当する程の影響力(プレゼンス)を将来持ち得るなど有り得ない〟と言って、外務卿の言を肯定した……。

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 ―――西暦1959年(中央暦1639年)、異世界転移と呼称出来る非科学的事態に陥った大日本帝国は、旧世界における盟邦や海外領土の喪失により、一部物資*1の深刻な物価上昇に悩まされた。

 

 ……それ故、大日本帝国は……この未曾有の資源危機を迅速に解決すべく、周辺地域の調査を行っていたのである。

 

 

 

 …

 

 

 

 クワ・トイネ南部地域の壮麗なる山々を抜けた先―――燦々たる日差しに照らされて、黄金色に煌めく砂丘が連なる地では、風吹きすさぶ砂漠地帯に入り乱れる諸部族において単一の王を頂く「砂丘の王國」が形成されていた―――。

 

その王国の名は、クイラ。

 

 石油・天然ガス・リンなど―――豊富な鉱物資源が埋没さるクイラ王国は、クワ・トイネ公国の友邦にて、ある列強国(・・・・・)の生命線たる国家であった。

 

第一章、砂丘の王國。

 

 

 

 

*1
(特に燃料や鉱物資源、嗜好品、医薬品などで著しい。)




不定期更新です……もう毎日投稿なんて事はしませんので……
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