【3/27 電子書籍一巻発売】魔術師は死んでいた。   作:彩白 莱灯

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第11話

「それじゃ。次は私様からだ」

 

 

 スグサがヒスイ(ニセモノ)と入れ替わり、イオラに近づいて行く。

 スグサ分んお間隔をあけて壁沿いに立ったヒスイ(ニセモノ)も、そのまま聞いているつもりの様。

 手を伸ばせば届く位置まで寄り、見上げてくる目とスグサの目を合わせ、腕を組みながら話し出す。

 

 

「まず、お前についての情報がいくつかある。が、聞く覚悟ができるまで話さない」

「……ナゼ?」

「内容が内容だからな。自覚ぐらいあるだろ。あってその落ち着き様は、よくもあるし悪くもあるが」

 

 

 ()が集めた研究資料に目を通したのだろう。

 スグサはイオラがどういう実験をしたのかおおよそ把握したみたい。

 どんな内容だったかなんて、そもそもこの男の存在が物語っている。

 詳細を知れば、やっぱ碌な内容ではなかったと思うのかもしれない。

 知ったところで何ができる、っていうところではあるけど、聞く体制がないと辛いものがある、という配慮だと思う。

 

 

「聞きたくなったら声をかけろ。だが、これだけは言っておく」

「ナンダ?」

 

 

「お前は、一回じゃ死ねない」

 

 

 ……ほんの、少しだけ。

 揺れ動いた魂と瞼。

 魂を複数持つキャストの特性のせいかおかげか、普通の人間のように一回じゃ死ねない。

 ……大前提として、もう人間じゃなかったわね。

 今イオラには、五十以上もの魂が宿っている。

 それを知るのはここにいる本人以外。

 

 

「ジャア、何回ナンダ?」

「それに答える前に、逆に聞く。お前は死ぬほどの状況に、何回なら向き合える?」

 

 

 

 無言。

 肯定ではなく、考えているが故の無言。

 見上げていた目線を下げ、眼球が上下左右に動く。

 それはつまり考えているということだろうが、考えて出る答えなのか疑問。

 結局、数分の間答えられず、スグサが口を開く。

 

 

「お前についての情報はまとめておく。知りたくなったら聞きに来い。……焦んなよ」

 

 

 組んでいた手を解き、ひらひらと振って、扉の方に向かって行く。

 退出するのだろう。

 スグサが出ていくなら()も行く。

 ……ヒスイ(ニセモノ)も、来るみたいね。

 

 

「失礼します」

 

 

 最後尾のヒスイ(ニセモノ)が扉を閉めた。

 どこに向かうのか。黙ってついて行けば、もともとの食堂。

 室内では部屋いっぱいに≪玩具箱(おもちゃばこ)≫が展開されている。

 外から中の様子はわからないが、これが出ているということは、中では何かが動き回っているのかもしれない。

 

 

「入るぞ」

 

 

 そう言って、≪玩具箱(おもちゃばこ)≫に触れ、にゅるりと体を通す。

 後に続いて入れば、その他大勢が大集合。

 スグサと手合わせしてた医術師と、赤い髪の男が中心に。

 双方の向かいに学生二人。

 第二王子は……壁際に立ってる。

 中央付近にいる四人はこちらに気付いていないようだが、第二王子はこちらに向けて手を上げている。

 

 

「スグサ殿」

「どーも。進捗はどうですか」

「まあ二人とも学生なので、と言ったところでしょうか。シオンはまだ周りを見て対応できそうですが、ライラのほうは……威力は十分ですが、コントロールはまだまだですね」

 

 

 連れて行っても大丈夫なのか疑問な評価ね。

 けれど、スグサはその評価を聞いて、にやりと笑う。

 その顔すき。

 

 

「では、いつぞやのプレゼントを授けましょう」

「プレゼント?」

「はーい。全員しゅうごー」

 

 

 中央にいる人間にも声をかけ、わらわらと集まってくる。

 スグサを中心に群れて、()は一歩引いて眺める。

 

 

「私様からのプレゼントだ。有難く使えよ」

 

 

 そうして一人一人に渡される、石。

 魔石は多様な色を放っていて、「これはお前」と誰に何を渡すか決まっているよう。

 一人一つか二つずつもらって、三者三様に眺める。

 

 

「魔石? 何が入ってるんですかー?」

「お前らに足りないものを補う、もしくは助長するものだ。一人一人教えてやる。順番な」

 

 

 女子学生の質問が広がって、これからまたスグサは忙しくなるみたい。

 ()のことは後回し。

 悲しいけれど、仕方がない。

 だってスグサは人間なんだもの。

 この研究についても、思うところがあるのだものね。

 ふと、ヒスイ(ニセモノ)が目に入る。

 唯一スグサから石を渡されていなかった。だからちょっと蚊帳の外なのか。

 ()と同じように、人の群れを一歩引いたところから見ている。

 

 

「ヒスイ。ちょっといいか」

「はい?」

 

 

 第二王子が声をかけている。

 貰った石だろうか、赤い石を手にしている。

 

 

「スグサ殿が、ヒスイに教われと」

「え、私ですか」

「ああ。「弟子も使える魔法が入ってるから」と」

「無茶ぶり……スグサさんらしい」

 

 

 ……スグサの顔で、そんなふうに笑わないで。

 嫉妬のようなどろどろとした葛藤が全身を這う。

 なんでスグサは、()を見てくれないの?

 こんなに、こんなにも、スグサのことが好きなのに。

 

 

「シク」

「っ、スグサ?」

 

 

 手招き。

 優しい目つきと手取りで招かれる。

 いい香りのする花に吸い寄せられるように、フラフラと進んでしまう。

 気持ちだけは急いて、体はのろのろ。

 やっとの思いで辿り着いたスグサの隣。

 ()の好きな香りがする。

 

 

「共闘に付き合ってくれよ」

「共闘?」

「ああ。こいつらの相手。戦いの手順確認だ」

 

 

 またこの人らの関連か。

 とちょっと残念。

 でも、いいの。

 選んでくれたなら。

 

 

「シクなら私様のことよくわかってるだろ? やりやすいんだよな」

「!」

 

 

 『よくわかってる』ということをわかってくれているのが、嬉しい。

 そうよ。()はスグサのことはよくわかってる。

 ()よりもわかってる人なんて、スグサ自身を抜いてもいないって断言できるわ。

 例え貴方がいなくたって、()は貴方のことが知覚できる(わかる)んだから。

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