【3/27 電子書籍一巻発売】魔術師は死んでいた。   作:彩白 莱灯

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死者蘇生と転生魔法
【魔術師と研究者】第1話


 ―――――…… レルギオ

 

 

 

 

 

 ベローズの持つ魔石に呼応して魔法陣も同じ色に発光した。

 鳥かごが光る。

 同じ色だ。

 魔力を吸われている。

 

 

「魔力は多いほうが良い。お連れの分の魔力ももらうよ」

 

 

 この魔法陣は私様の魂を召喚するためのもの。

 読み取った感じ、これが発動されれば、私様の魂は魔法陣の上にいる弟子の元に召喚されるだろう。

 さて。もともとある弟子の魂はどうなるのか。

 それも含め、いろいろと確認する必要があるなあ。

 ……と、その前に。

 鳥かごが光だして、魔力が吸われ始めているのを感じる。

 吸われていく方向に、掌を向ける。

 天井の方。

 

 

「いくら私様の膨大な魔力でも、テメーにくれてやる魔力は持ち合わせてねぇなあ」

 

 

 言って、魔法に変換せず、魔力をそのまま放ち続ける。

 たった数秒だった。

 一回に吸い上げられる魔力量は決まっていたのだろう。

 突然の大量の魔力に対処できず、鳥かごは魔力を吸う場所から形を崩していき、天井部分は吹き曝し状態となった。

 普通の人間だったらなあ。こんなことはできないだろう。

 私様たちはそもそも魔力が多いから少し吸われたところでどうってことはなかった。

 一言で言うと。

 相手が悪かったのだ。

 

 

「な、んだ?」

「スグ……みなさんっ」

 

 

 呆気にとられるベローズは置いておいて、出入り自由な鳥かごから移動する。

 発動されたままの魔法陣。

 鳥かごはともかく、ベローズの背後にいる異形たちから魔力を吸いあげているからだろう。

 そのせいなのか、弟子も体を捻るだけで動こうとしない。

 

 

「お前なにしてんの?」

「あ、あの。足がくっついちゃってるみたいで……」

「くっつく……ああ、そ」

 

 

 召喚場所を拘束してんか。

 魔法陣の手前まで来て、観察。

 以前来た時と内容は変わっていなさそうだ。

 大量の魔力を使うからだろう、発動にはまだかかりそうだ。

 

 

「ふん」

 

 

 足を一歩、踏み入れる。

 風の属性の特性で、魔力の流れを知覚。

 方向を私様にする。

 闇の属性の特性で、流れてきた魔力を吸収する。

 流れてきた魔力の勢いで、私様のローブは揺らぎ、フードは外れる。

 

 

「な、ん……!?」

「おおおおぉ! あ、あのお方はもしや……ああ! なんということか!」

 

 

 高みの見物をしていた二人は驚愕と興奮を隠そうとせず。

 体を前のめりに。

 目を見開いて。

 口を大きく開けて。

 私様の姿を凝視する。

 さすがの多さか。

 それともいじられたからなのか。

 魔力は川のように延々と流れてくる。

 キリがなさそうだ。

 話はしたい。

 だが、時間に余裕があるわけでもない。

 

 

「……黙らせるか」

 

 

  ≪水面(みなも)の華は末枯(うらが)れず≫

 

 

 室内全体を氷で覆う。

 花を模した氷の装飾が立体的に、床にも、壁にも、天井にも形成される。

 人は避けたが、魔力を配給する異形の者たちは氷漬けにした。

 

 

「なにをっ!?」

 

 

 見るからに。

 いや、声だけでも焦っているのがバレバレなベローズ。

 周囲や後ろの異形たちに気を取られ、手元は隙だらけだ。

 氷漬けにしたところで魔力の配給は止まらない。

 たかが氷だ。しかし、一瞬、ベローズの注意が逸らせた。

 それだけで十分だ。

 

 

「シク」

「! くっ、返せ!!」

 

 

 声をかける前に、シクが飛んで、石を奪う。

 発動者から離れた石は光るのをやめた。

 シクは聞く耳を持たず、私様の元にふわりと着地する。

 そして差し出した手に奪った特大の石を乗せ、自分は背後にずれた。

 

 

「おっも」

「き、きさま……! それを返せ……!」

「ベローズ殿! あのお方に対してその口の利き方はやめていただこう!」

「うるさい! あいつが……あいつがここにいるわけがない! あいつは死んでいるんだ! あいつはニセモノに違いない!」

 

 

 おいおい。

 仲間割れかよ。

 私様を認めたくないのはわかる。

 今まさに復活させようとした存在がすでにいるんだからな。

 だが、お前が「あいつは死んでいるんだ」っていうの、なんか滑稽だぞ?

 

 

「この石は……なるほど。魔力の吸収して特定の場所に配給すると。中継器か。弟子はどうだ?」

「はい。動けます」

「よし」

 

 

 中央付近にいた弟子が、魔法陣の境目まで歩いてくる。

 足取りは悪くない。

 特段、異変はなさそうだ。

 こんな石、捨ててもいいんだがな。

 これだけでかいと捨てるのももったいないな。

 ≪虚無≫行き。

 

 

「さて。これで面倒くさい装置は一先ず発動できないな」

「きっさまあああああ!!!!」

「うっせーな」

 

 

 激高。

 この言葉がよく似合う。

 顔を真っ赤にし、瞼を見開き、目は血走り、唾が飛ぶのも構わず一人叫び声をあげる。

 なんか面白くなったので、両手を広げて低い位置から高らかと宣言してやろう。

 

 

「何をそんなに怒っているんだ? お前の望みは私様の復活だろう? 復活してやったんだ。喜べよ。私様が最高位魔術師、スグサ・ロッド様だ」

 

 

 ふはははは。と笑ってみた。

 笑っているのは私様だけだった。

 一人は愕然と、一人は大粒の涙を流し始める。

 

 

「おお……おおぉ!! この日をどんなに待ちわびたことか……! 我らが主! 教祖スグサ・ロッド様!!! 我が身と我が心、全てを以て忠誠を表明いたします!!!」

「いらねえ。消えろ」

 

 

 両膝をつき、両手を組んで涙と鼻水を垂らしてくる奴。

 見るからに気持ち悪いので、≪玩具箱≫によって退場賜った。

 

 

「私様が今、用があるのはお前だ。ベローズ。研究者らしく質疑応答でもしようじゃないか」

「ふん……偽物が何を偉そうに……」

「偽物だと思うか? お前も研究者なんだろ? 証明して見せろ」

 

 

 顔を歪ませて、押し黙る。

 そりゃそうだ。

 

 

「お前自身が死者蘇生の実験を行っているのに、「なぜ死んだ奴がここにいる」かなんて言えねぇよなぁ?」

 

 

 あはは。

 あはははは。

 わざとらしく大きく笑ってやれば、舞台と観客程度に離れた距離でも聞こえてきそうなほどに歯ぎしりしている、ように見える。

 まあ、いいや。

 あんまりすぐイジメすぎても可哀想だ。

 お楽しみはここからだぞ。

 

 腰を下ろす。

 もちろん、床ではなく空中に。

 浮いたように見えて実は風の膜で姿勢を整えているだけ。

 一見、浮いたまま座れているような状態だが、ちゃんとタネがある。

 研究者はそのタネを作り、実際に実るまで世話をする役割を持つ。

 つまり、種の性質をよく知っていないといけない。

 

 

「まあ座れよ。ああ、時間がもったいないからその場でいいぞ。わざわざ下りるのは時間の無駄だろう」

 

 

 いつも通り。

 しかし敢えて、上から目線でモノを言ってやる。

 私様の足元にも及ばない程度の魔術の研究者に上にいることを許してやったんだ。

 言葉ぐらいはいいだろう。

 終始。

 私様に向ける表情は親の仇でも見るような。

 しかしそんな顔でも、私様の言ったことには従うようだ。

 後ろの有象無象に椅子を持ってこさせ、わざとらしく大きく足を振って、組む。

 

 

「ふん。大した会話もできなかろう。それこそ時間の無駄という物」

「そうかそうか。じゃあ無駄になるかどうかの証明といこうじゃないか。私様の質問には即座に、素早く、的確に答えるように」

「本来ならば機密事項を教えることなど出来んのだからな。その後を覚悟して聞くがいい」

 

 

 御託は並べ終わったか?

 

 

「問一。この研究命題は」

「治癒魔法を発明するにはたくさんの病気の症例と被検体、設備、人員などが必要となる。それは現実的ではなく、いざやろうとも人一人が継続していくことは不可能に近い。ならばみな共通に起こりうる『死』という概念に対した魔法を発明することを考えた。どんな死に方をしようとも、死んでしまえばやることは同じである。それはつまり生き返る。『転生魔法』一つで事足りるということだ。我々は『死』による事象を研究し、病気のない体に転生することを目標とした」

 

 

「問二。研究課程」

「第一の研究。生者と死者の違いの特定。魂の存在を確定した。

 第二の研究。生者から失われた魂を召喚する。不特定多数の検体からランダムで召喚されたため、召喚する者を特定する必要があった。

 第三の研究。より精度よく、『所持する魔力が限りなく少ない』魂を召喚する。召喚した魂に反抗されることを可能性を考慮し、洗脳の魔法を使用。結果、魂を選択することに成功した。世界を超えたことは想定外だった。また、この世界には魔力を持たない存在というのはいない可能性がある。

 第四の研究。この世界に浮遊する魂に限定し、特定の魂を召喚する。ここまですでに成功している。あとは、召喚した魂をどのように扱うかだ」

「情報不足だばーか。一つ一つの研究に何をどうしたかを説明せよ。まず第一の研究」

 

「……≪透視≫の魔法で生者の体を確認後、死者にする。それを繰り返し変化を観察したところ、死した瞬間に魔力量が大きく変化するという共通点があった。そのため、死者にする瞬間に≪星々は夜の(とばり)を貫いて≫を使用し、消えた魔力の痕跡を確認。結果、魂の存在を明らかにした」

 

 

「ふむ。二つ目の研究」

「魂という存在が明らかになったものの、それは物理的に同行できるものではないと検証。しかし魔力を宿しているのだから、魔力を扱う我らならば何かできるはずだと考えた。そして、魂を操るという特徴がある『バラファイ』や『キャスト』を使用。そのままでは扱い切れないどころか、意思疎通すら行えないため、人間に移植することとした。結果、移植された被検体は魂を認識し、操作することが可能になった。しかし魂ごとの区別はつかないため、今後の課題となった」

「……移植された人間は?」

「保管されている。ダメになった分は廃棄したがな」

 

 

「……次。第三の研究」

「魂ごとの個体認識が必要だ。これが難しかった。なぜなら普通の我らには魂自体が見えていないし、見えている奴らでも同じようにしか見えないのだから。しかし違いはある。そいつらの魔力だ。だから同じ魔力を宿す死体を媒介とすれば、そのものの魂が引き寄せられてくると考えた。しかし強いものを迂闊に召喚し、研究自体が亡くなってしまっては我々の努力は無に帰してしまう。だからこそ、魔力を持つ存在は召喚対象から抜かした。その代わり、魔力は持たないながらも体と相性のいい……いや、死者と似通った、魔力を持たない存在を対象に召喚したのだ」

「それが弟子だな」

「『一番』から『六番』までの存在が、それまでの実験の成功例となっている」

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