【3/27 電子書籍一巻発売】魔術師は死んでいた。 作:彩白 莱灯
―――――……
目隠し小僧とじじいを見送って数日。
今日は療養院にいる最後の日。
水葬をするには移動が数日かかるので、小僧は休みの間には帰ってくるだろうとのこと。
弟子や他の奴らは引き続き療養院で活動している。
じじいのように寝たきりだった奴らはみるみる弱っていき、息をしなくなる。
幸いにして状態が安定している奴らも、数日間飲み食いしなかった影響が大きく、体は弱っていると弟子は言っていた。
『不老』という特性を体に取り込んでも、そう簡単に都合よくはいかないもののようだ。
明日で療養院の寝泊まりは終わり。
寝泊まりしている間は灰色の空間での振り返りはしていなかった。
もちろん慣れない環境ということや、魔法の練習をする時間をないだろうということ、早々問題は起こらないだろうということを加味して行わないことにしていたのだが。
まさか起こってしまったわけだが。
「あいつらの狙い、なんだと思う?」
「なんでしょう……。ホローテを目的に来たということはわかりますが。あと、あの貴族も」
「そうだな」
アイツらは弟子を召喚した研究をまだ続けている。
弟子を召喚して私様を復活、つまりははんでからの措置を見つけた。
今回は『不老』ということだから、そもそも死なないとか、全盛期の力のままでいることが目的とか、そんなところだと考える。
「ナオさんが言っていた、寄付してくれた貴族というのは、地下に来ていた人でしょうか」
「そう考えるのが自然だろう。一つの貴族の活動に他の貴族が金銭援助とか、仲が良くない限りは滅多にあるもんじゃないだろう。何か狙いがあってこそだろうな」
これは想像でしかないが、貴族はホローテの情報を何かから得ていたのだろう。
前後関係は不明だが、不死や不老の研究をしている城の研究員に話をした。
そして、実験台として療養院の奴らを使うために母数を増やさせた。
金銭援助の理由はそういうことだろう。
「研究は、今はどこまで進んでるんでしょうかね」
「さあな。どういう道程を辿っているかもわからん。それでは考えるだけ無駄だ。それよりも、魔力の流れ。覚えとけよ」
「ああ、ナオさんの時の」
正座の奴は空間の宙を見る。
ここは意識の中だから魔力は漂っていない。
しかし外界には空気同様に魔力が漂っている。
その魔力の流れを読み取ることで、魔力欠乏から早く脱するように工夫することができる。
風の魔力を持っているものは空気の流れとか敏感にわかるからな。
「あのやり方を覚えておけば、いざとなったら他の奴も助けてやれる。特にあの双子は危うそうだしな」
「ありがとうございます。これなら、私もいざという時は何とかなりますね」
私も、ねえ。
「お前は魔力欠乏症にはならないと思うぞ」
「え……魔力が多いからですか?」
「そうじゃない。いや、それもあるんだが、いくら
「それは……嬉しいですけど、そんなものなんですか?」
「いや。私様の体だからだ。そうなっちまった」
今に限るのだが、最近の弟子自身の変化と、≪嘘つきな鏡≫を使っている影響で表情が読みやすくなった。
何を言っているんだコイツ、みたいな顔をするんじゃない。
「以前、「髪を切るな」と言ったのを覚えているか?」
「はい。最初の頃ですね」
「私様がその体で生きていた時、実験をしてな。私様自身に空気中にある大量の魔力を流していたんだ」
「はあ……」
「その影響で魔力の吸収が常人の何十倍も速い。体の中に留まりきれない量が流れ込んでくるから、髪にため込んでいるんだ」
「え、髪?」
「そうだ。一本一本に人一生分程度の魔力は余裕に入っているだろう。毛先から少量ずつ抜け出てはいるだろうがな。それを一気に短く切ってみろ。切った毛に溜まっていた魔力が一気に放出されて空気の濃度が減るか、魔力が体内で留まりきれなくて魔力
実際は切ったことないからわからんが。
安全のための脅しとしては許してもらおう。
子どもが悪戯しないように脅すようなもんだ。
弟子ノタメ。
有用だったのか、身を震えさせ、両手で自身を抱きしめている。
恐怖の表情は……出ないか。
表情の出やすさにも差があるようだな。
「ま。というわけで、しっかり覚えておくように」
「はい……」
「じゃあ、今日はもういいか。明日は仕事してから帰るんだろ。解散ー」
強引にも取られるだろうが、特に話すこともないのでこれでいい。
弟子が寝ないことには体の疲労は蓄積されていくばかりだし。
他の奴らには悟られていないようだが、いつもよりも悲哀が表面に出ているように見える。
じじいが死んだこと、弟子も結構応えているのだろう。
弟子よりも一層傷ついている奴がいるし、仕事もあるし、悲しんでなんかいられないってか。
そういう時は寝るに限る。
寝て、一回気持ちをリセットさせるんだな。
―――――……
やるだけのことをやって、私とクザ先生は療養院を後にした。
ライラさんとセンさんはもう少し残っていくらしい。
ナオさんが返ってくるまではいるのだという。
結局この日も夕方まで仕事をしていたので、量に帰ってきたのはもう完全に日が暮れていた頃。
部屋に戻って、受付で受け取った郵便物を確認する。
私に手紙を書く人がいるのかと驚きながら、宛名を見る。
そして、息を飲んだ。
『仮面舞踏会の案内 カト・ゼ・フローレンタム』