【完結】わたしのかんがえたかっこいいるいずさま   作:Leni

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135.最後の決闘

 世界の命運を決める決闘。錆びた武器が乱雑に転がったこの場は、それを行なうのに相応しくないという話になった。

 そこで教皇は『世界扉(ワールド・ドア)』の魔法を閉じて、ジュリオを引き連れて洞窟から出ていった。

 一方、才人達はエルフの戦士達に囲まれながら、教皇の後を追った。

 

 やがて、ジュリオの風竜が留まっていた開けた岩地に移動した一同。

 才人はルイズを背後に、デルフリンガーを抜き放つ。そして、少し離れた場所に立つ教皇ヴィットーリオと、エルフの統領テュリュークの二人と向かい合った。

 

 すると、エルフの一団から一人のエルフが前に出てきて、開始の合図を受け持つと宣言した。

 ビダーシャルだ。だが、特に審判の役割はしないという。

 

「これは決闘であり、殺し合いではない。勝敗は、己達で決めるのだな」

 

 そう言って、ビダーシャルは向かい合う四人に確認を取った。

 

「準備はよろしいか」

 

 その声に、各々が自由に返事をする。それにうなずいたビダーシャルは、手を天にかざした。

 空には太陽がさんさんと輝いており、向かい合う四人の顔をハッキリと照らした。

 

 いずれも、真剣な顔を崩さないでいる。ここにきて教皇も、いつも浮かべている薄い笑みを止め、真っ直ぐとルイズ達に目を向けている。

 そして、ビダーシャルが勢いよく手をその場で振り下ろした。

 

「始めッ!」

 

 それと同時、教皇が小声でルーンを唱え始める。

 その声は、残念ながら才人には聞き取れない。

 どんな『虚無』が飛び出してくるか分からぬまま、才人は前衛を務めるエルフの統領テュリュークへと突っ込んだ。

 

『ガンダールヴ』の驚異的な身体能力でもって、テュリュークの目にも留まらぬ速さで迫った才人。

 そして、あやまって殺してしまわぬよう、デルフリンガーで峰打ちを狙う。

 しかし。

 

 テュリュークに振るったデルフリンガーが、途中で反発する壁にぶつかったかのように、跳ね返った。

 

「んなっ!?」

 

 まさかの事態に、驚愕する才人。

 そして、そんな才人に、テュリュークは精霊の力を操って風のハンマーを叩き込んだ。

 

 風の直撃を受けて、吹き飛ばされる才人。

 デルフリンガーを握ったまま地面を転がる才人。だが、彼はすぐさま立ち上がった。追撃を受けないよう、倒れたらすぐに立ち上がる。剣の師匠から、何度も言われてきたことだった。

 

「な、なんだぁ、今の!?」

 

 まさかの出来事に、困惑する才人。そんな彼に、手もとのデルフリンガーが金具を鳴らして助言を述べた。

 

「エルフの先住魔法、『反射(カウンター)』だ!」

 

「聞き覚えがあるけど、どんな効果だ!?」

 

「簡単に言うと、あらゆる攻撃を跳ね返す反則技だ!」

 

「反則すぎんだろ!?」

 

 才人が思わず叫ぶ。

 そんなもの、どう攻略すればいいというのだ。タイガー戦車でも持ってこないとなすすべがない。才人は焦った。

 すると、『反射』に守られた老エルフのテュリュークはニヤリと笑って、才人に言った。

 

「この地の精霊は、事前にわしが掌握させてもらった」

 

 テュリュークはエルフの統領だ。当然、その先住魔法、精霊力の行使の腕は超一流であった。

 それに対し、才人は(ののし)りの言葉を口にする。

 

「ちくしょう、()めやがったな!」

 

 エルフの先住魔法、精霊の力は、その地に存在する精霊と契約を結ぶことでより強力になる。そして、テュリュークは今日この日を迎える以前から、ここ『竜の巣』の精霊と契約を結んでいた。

 どうやら相手側は、才人達がルイズを救出してからこの数日の間に、決闘の準備をひっそりと整えていたようだった。

 

 この決闘は出来レース。才人は、自身が教皇の罠に嵌まったことを悟った。

 しかし才人は、そこで諦めずに、どう戦えばいいのか考え続ける。すると、そこでデルフリンガーの助言が飛ぶ。その対象は、才人ではなく、彼の背後のルイズにだ。

 

「娘ッ子、『ディスペル・マジック』だ! あの『虚無』の魔法なら『反射』を突破できる!」

 

 使うべき魔法を見極めようとしていたのか、様子見に徹していたルイズが、デルフリンガーの言葉に素直に従い、ルーンの詠唱を開始した。

 

 ウル・スリサーズ・アンスール・ケン……。

 

 そうか! 才人は気付いた。

 ルイズの『ディスペル・マジック』は、水の精霊の秘宝である『アンドバリ』の指輪で仮初めの死を与えられたアルビオン王をその支配から解放した。

 それはつまり、魔法だけでなく先住魔法も解除可能ということであり。強力無比な『反射』の魔法と言えども、その『虚無』の前ではあってないかのごとしだ。

 

 ギョーフー・ニィド・ナウシズ……。

 

 そうして、主の詠唱時間を稼ぐため、才人はルイズの前で奮闘した。

 どうやら、エルフの使う先住魔法は、ハルケギニアのメイジが使う魔法と違って同時に複数行使が可能であるようだった。

『反射』で身を守りながら、風の刃を才人に飛ばしてくる。

 この地は『大いなる意思』である巨大な『精霊石』の塊が地下に存在し、教皇の祈祷でそのうちの『風石』が活性化している状態だ。風の精霊の力が強く、それをテュリュークは巧みに操った。

 

 エイワズ・ヤラ……。

 

 しかし、精霊の力による攻撃も、デルフリンガーは吸収することが可能だ。

 才人は、見えない風の刃を『ガンダールヴ』の感覚で見切り、すべて切り落としていった。

 

 詠唱を続ける主人を背に、才人は戦う。『ガンダールヴ』の存在意義は、まさにこの時のためにある。

 だからか、才人の心の奥底からは無限の勇気が湧いてきた。

 才人は、負ける気がしなかった。ルイズと自分がいれば、熟練の先住魔法の術者相手でも、勝利を収めることができる。才人はそう確信した。

 そして。

 

 ユル・エオー・イース!

 

 ルイズの詠唱が、完成する。

 そこで、デルフリンガーが叫ぶように言った。

 

「今だ! 俺に『ディスペル・マジック』を放て!」

 

 その声に従い、ルイズは才人が握る魔剣に向けて手の平を向けた。

 すると、デルフリンガーの刃に、『虚無』の魔法が宿る。それにより、デルフリンガーはあらゆる魔法と精霊の力を消し去る、消滅の刃となった。

 

「よし、相棒、行けぇ!」

 

 デルフリンガーの声に背を押されるようにして、才人はテュリュークに斬り込んだ。

『反射』によるわずかな抵抗を感じながら、才人はテュリュークに向けてデルフリンガーの刃を振るう。

 まるで、バターにナイフを通すかのような勢いで、刃が進む。

 無敵であるはずの『反射』が、ここに破られた。

 

 だがしかし、テュリュークは、その刃を一歩後ろに下がることで回避した。

『ガンダールヴ』の身体能力は恐ろしいが、それでも『反射』を破壊しながらだと勢いが弱まってしまうようだ。

 そして、テュリュークは精霊に対して再び『反射』を構築するよう念じた。

 

『大いなる意思』と繋がった彼に、再び守りの力が宿る。

 すると、そこでルイズが才人に対して叫ぶ。

 

「サイト、突きなさい! 真っ直ぐ、突進よ!」

 

 その言葉に、才人は素直に従った。道理であったためだ。

 強力無比な『反射』の力。

 それを一点突破するため、才人は斬撃ではなく突きを打ち込んだ。

 

 ネットリとした動きでデルフリンガーの刃が『反射』の膜を突き進み、テュリュークへと迫る。

 まるでドリルで岩盤を掘り進めるかのごとく、反射の透明な層に穴が穿たれていく。

 才人は、テュリュークを殺してしまわないよう気を付けながら、それでいて全力で突きを放った。

 

 その瞬間。

 

 一人離れた場所でルーンを唱えていた教皇の呪文が、完成する。

 それは、遠くの場所へ移動するための空間の穴を開く魔法。

 直接的な攻撃性のある魔法ではないため、そのルーンの効果を知っていたデルフリンガーもあえて無視をしていた。

 

 だが、その考えは甘かった。

 空間の穴が開いた場所は、テュリュークのすぐ目の前。

 

 サイトが放った突きが、教皇が開けた空間の穴に飲みこまれる。

 どういうわけか、デルフリンガーに宿った『ディスペル・マジック』は、その穴を破壊しなかった。

 開いたのはあくまで穴であり、鏡面のゲートではない。ゆえに、その穴を素通りしてしまったのだ。

 

 そして、空間の穴の行き先は……『ディスペル・マジック』を唱え終わり無防備となっていたルイズの背後。

 やがて、空間に開いた穴を通じて、刃が勢いよく突き進み。

 

「……え?」

 

 その呆けた声を発したのは、誰であろうか。

 デルフリンガーの鋭い切っ先が、ルイズの背に突き立てられた。

 

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