【完結】わたしのかんがえたかっこいいるいずさま   作:Leni

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17.はうまっち

 ルイズ、キュルケ、タバサの三人は、休日である虚無の曜日に街へ繰り出すことが多い。

 

 これは、放っておけば自室や図書館に籠もって出てこない二人、ルイズとタバサを週に一度くらいは太陽の下に連れ出そうと、キュルケが努力を続けた結果である。

 

 魔法学院から一番近い街は、トリステインの中でも一番の都市。首都であり王城の城下町でもあるトリスタニアだ。虚無の休日にそこへ遊びに行くためには、学院から馬を借りて三時間ばかりの道のりを走らなければならない。

 だが、本日、トリスタニアへと繰り出そうとするルイズ達は、馬を借りることはなかった。

 

 いつもの三人に、才人と、キュルケの使い魔フレイムを加えた一行は、先日、決闘が行われた『ヴェストリの広場』に集まった。

 広場には、一匹の体長六メイルほどの幼い風竜が座りこんでいた。タバサの使い魔であるシルフィードだ。

 

「人が四人、サラマンダーが一匹。帰りは荷物も増えるわ。シルフィード、いけるかしら」

 

 シルフィードの大きな頭を撫でながら言うルイズ。その返答として、シルフィードは「きゅい!」と強く肯定するようにひと鳴きした。

 その鳴き声を聞いて、ニッコリと笑ったルイズは、(かたわ)らのタバサへと向き直る。

 

「はい、これ。道中で読むと良いわ」

 

 ルイズは背に負ったリュックの中から、五枚ほどの紙を取りだした。才人が地球から持ち込んだ鞄は、いつの間にかルイズの物として扱われていた。

 

「何?」

 

「使い魔に、人語をしゃべらせるための理論についての走り書きよ」

 

 紙をタバサに手渡すルイズ。その横では、シルフィードとフレイムがきゅいきゅいきゅるきゅると、はじめましての挨拶を交わしていた。

 召喚と契約の効果で知能が上がった使い魔は、この獣の言葉で意思疎通が可能なのである。もちろん、知能が上がった使い魔達は、主人がしゃべる人語も解している。

 

「人語……?」

 

「そ。タバサなら、小説の『緑の街の黒猫たち』を読んだことがあるわよね?」

 

「ん……」

 

『緑の街の黒猫たち』。貴族ではない平民のメイジの使い魔が、人語を話して街中を大冒険するという、トリステインで近頃人気の児童文学だ。

 

「使い魔召喚の儀式の恩恵で、あの黒猫みたいに、使い魔が人の言葉を話すようになることはまれにあるの。それも、使い魔になったときにいきなり話せるようになるだけじゃなくて、使い魔になって十年も経ってから話せるようになった例もあるわ」

 

 タバサは、ルイズの話を聞きながら、紙の一枚目を眺める。

 

 走り書きとはいうものの、綺麗な文字でビッチリと紙が埋め尽くされていた。

 筆跡はインクと羽ペンを用いたものではなく、才人が地球から持ち込んだボールペンの文字。

 つまり、これはサイトがやってきてからの四日間のうちに書かれたということだ。

 

「使い魔が人語を話すために必要な要素は、彼らが人間という生き物を理解しているかなの。だから、元飼い猫の使い魔はしゃべるし、元野良猫の使い魔はしゃべらない。そういうことね」

 

 ルイズの主張に、タバサは今までの読書経験で思い当たることがあったのか、コクリとうなずいた。

 

「シルフィードは大きいから、『昼』にでもこの『広場』で訓練すると良いわね」

 

 昼、と言う言葉と、広場、という言葉を特に強調してルイズは言った。

 

「読み終わったら、その紙は他の人にも貸してあげて。自分も試してみたいって人、きっといると思うから。ああ、学院だけじゃなくて、ガリアの知り合いにも見せてあげて良いわよ」

 

「…………」

 

「あれ、ルイズ、タバサ、何を話しているの?」

 

 いつまでもシルフィードの上に乗らずに話し込んでいるルイズ達に、フレイムとシルフィードのやり取りを眺めていたキュルケが割ってはいってくる。

 

「使い魔が、人の言葉を話すようになるための方法よ。キュルケ、あなたのフレイムも、もしかしたら、しゃべれるようになるかもしれない」

 

「本当!?」

 

「ええ、タバサの使い魔もね。この『風竜』も、もしかすると言葉をしゃべれるようになるかもしれないわね?」

 

 ルイズはそう言ってタバサに向けてウィンクをし、シルフィードに乗り込むためにタバサの元から離れていった。

 

「……ありがとう」

 

 タバサはルイズの背に向けて、小さく感謝の言葉を言った。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 城下町トリスタニアは、大通りで馬が行き交う大都市だが、その衛生環境は非常に良好であった。

 水を象徴とするトリステイン王国。その名の通り、優れた水のメイジを多く抱える魔法王国である。

 

 水は汚れを洗い流す。汚れとは毒であると、水のメイジ達の研究によって広く知られている。そのため、王宮の傍らに広がる城下町は日々清掃が行われ、さらに水道や治水といった事業も長い時間をかけて押し進められていた。

 

 虚無の曜日は人も多数行き交う。それに交じって、白い石造りの街のあちらこちらに、清掃を担当する水のメイジやゴミ拾いの清掃夫の姿が見受けられた。

 

 その城下町の大通りに面した、ブルドンネ街をルイズ達は歩いていく。

 四人の他に、フレイムも巨体をゆすって人の波を割りながら前へと進む。

 

 道を通るにはあまりにも大きすぎるシルフィードは、流石に町中に入れるわけには行かなかった。そのため、街の外に放している。ちなみに彼女は今、一人置いていかれたことに拗ねて、近くの草原でふて寝をしていた。

 

「とりあえずルイズ、今日はサイトの買い物をするのでしょう? どこからいくの? やっぱり服?」

 

「武具店」

 

「は? 武具?」

 

「剣をサイトに持たせるの。サイトは、武器の鑑定士だって説明したでしょう」

 

 連続してかけられたキュルケの問いに、ルイズが歩きながら順番に答える。

 彼女達の後ろを歩く才人も、ルイズに同意するように言った。

 

「おう、その通りだ」

 

 その才人の言葉を聞いて、華のない話にキュルケは思わずため息を吐いてしまった。

 

「はあ……。でも一日歩き回るのに、いきなりそんな重たい物を買うの?」

 

「さすがに持って歩かないわよ。学院まで送ってもらうの。たくさん買うつもりだしね」

 

 ルイズはそう言って、マントの上に背負った背中のリュックを右手で叩いた。

 才人が地球から持ち込んだリュックだ。一目でこの鞄の構造を見極められるものはいないだろうと、スリ対策に背負ってきていたのだ。

 中には、金貨や銀貨が百枚単位でぎっしりと詰まっている。武具を買うとなると百枚単位の金貨が必要になって当然だ。

 なお、貨幣はその性質上、数が増えると非常に重たくなる。金貨ならなおさらである。しかしルイズは、それを感じさせない様子で歩いていた。

 

「さすが公爵家の三女は、言うことが違うわねぇ」

 

 キュルケが呆れているのか、揶揄(やゆ)しているのか、そんなことをぼやく。

 

「別に、親からもらったおこづかいばかりじゃないわ。自分で稼いだお金もあるわよ。ちょっとばかり、盗賊やオーク鬼の返り血がかかっているかもしれないけどね」

 

 ルイズはそんなことをさらりと言って、大通りをそれて路地裏へと入っていく。狭い道を奥へ奥へと進む。

 貴族や衛士も行き交う大通りとは違い、ごろつきのたまり場となっている裏道は清掃員が足を運ぶことも少ない。

 ゴミや汚物が道端に転がり、悪臭を放っていた。

 

「きゅるきゅる」

 

「ああ、フレイムごめんね。ここを這って歩くのは辛いわよね。今、『レビテーション』使うわ」

 

 ゴミを前に足を止めていたフレイムに、キュルケはルーンを唱え浮遊の魔法をかけて浮かび上がらせた。

 

 ルイズ達は、汚物を避けて前へと歩いていく。

 

「きたねえなあ……」

 

 東京のアスファルトの風景を見慣れていた才人は、初めて見るような汚い裏道に素直な感想を述べた。

 

「こんな場所まで清掃の手を行き届かせるほど、国は財政に余裕はないのでしょう。……雨が降ったら表にも汚れが流れるから、わたしとしては、ここも綺麗にした方が良いと思うのだけれどね」

 

「そもそも、こんなゴミを道に放り捨ててるって精神が、俺には良く分からん」

 

「同意するわ」

 

 ルイズと才人でそんな会話を繰り広げながらも、彼女達は歩き続ける。やがて、剣の形をした看板の店の前で足を止めた。

 

 店の入り口の石段を上がり、羽扉を開ける。少女達が一列に並んで、ぞろぞろと薄暗い店の中に入っていった。

 

「おやおや、貴族の奥様方。こんな集団で、ちんけなこの店に何用ですかね。ピエモンの秘薬屋は一本道が違いますぜ」

 

 その様子を店の奥のカウンターから見ていた、五十歳ほどの男性店主が警戒したような声で言った。

 

「客よ。武器を見せて頂戴」

 

「ははっ、おったまげた! 貴族様が刃物をご入り用ですかい!」

 

「貴族が剣を振らないなんて常識に凝り固まるくらいなら、刃のついた軍杖を一本でも多く、貴族の軍人に売りつけることを考えなさいな、おじさま」

 

「ふははは、なかなか言うじゃないですか若奥様」

 

 ルイズの言葉に、店主はくわえていたパイプを唇から離し、煙草の煙を吹き出しながら笑いこけた。

 今日は休日だというのに客が来なくて困っていたところだ。丁度良い、この小生意気な貴族から金を巻き上げてやろう。店主はそう考え、ルイズをぼったくりの標的として見据えた。

 

「この店の剣の質が知りたいわ。『ごく普通の』剣をまず見せて。そうね、大剣あたりで」

 

「おうよ」

 

『普通の』と言われて、店主はどれほどの質の剣を出したものかと悩んだ。

 相手は貴族。それなりに立派な剣を用意した方が良いだろうか。

 いや、質の悪い剣を見せてこれが平民の中では普通なのだと言って、高く売りつけるか?

 

 三十秒ほど店の奥にある倉庫で悩んだ店主は、素直に店で多く扱っている『普通の』大剣をカウンターへと運んだ。

 

「いかがですかね、奥様」

 

「サイト、見て」

 

 ルイズに促されて才人は、両手で目の前の大剣を握った。

 

「すげぇ! 本物の剣だ!」

 

「良いから、心を落ち着かせて『鑑定』してみせて。得意なんでしょう?」

 

 ルイズの言葉に、そうだ、自分は武器の鑑定士だったんだと、才人は真面目そうな表情をつくろってみせた。

 

「……鋼でできた大剣。重心が先端に寄りすぎているから、振るう際は剣の勢いに身体を引っ張られないように気を付ける必要があるな。切れ味は悪いから、引くよりも叩きつけるようにして、重さで相手を潰す感じで使う」

 

「ほう」

 

 才人の評価に、店主は素直に感嘆した。

 まだ若いように見えるが、この赤みがかった金髪の貴族令嬢に仕えている護衛だろうか。店主は才人を値踏みする。

 そんなぶしつけな視線を自身の使い魔に向けてくる無礼な彼に、ルイズは笑顔で尋ねる。

 

「なるほどね。おじさま、この剣おいくらかしら」

 

「はあ、ごく普通の大剣ですからね。新金貨で二百ってところですぜ」

 

 店主のその言葉に、ルイズは無言でカウンターを蹴りつけた。

 

「ひっ!」

 

 小さな体から放たれた蹴りは、しかしかなりの威力があったようで。激しい音と共に、床にくくりつけられたカウンターをかたむけさせ、店内を揺さぶった。

 

「馬鹿にしているのかしら? わたしは別に、金属鎧を買いに来たのではないのだけれど」

 

 新金貨二百枚。それは、ごく普通の平民が、一年間真っ当な暮らしをして生きるために必要となる金額に匹敵する。

 いくら命を売る高給取りの傭兵でも、その価格で平凡な剣を買おうとするものは少ないだろう。

 

「貴族の皆が皆、物の価値を知らない愚者ばかりと思わないことね。お金の価値を知らなければ、領民に正しい税もかけられないのよ?」

 

「へ、へへっ……これは、とんだご無礼を。その剣は、新金貨で八十ってところでさあ」

 

 ヘコヘコと頭を下げながら店主は平謝りする。どうやら目の前の貴族には、ぼったくりは通用しないようだと悟った店主。

 貴族相手にぼったくりをするのは、バレた場合、非常に危険なことになる。店主は素直に、剣の正しい値段を言った。

 

 今回、店主にそこまで非はない。そもそも平民の間では、売る側が最初に高値を提示して、買う側が値切っていくことなどよくあることなのだ。だが、貴族相手にそれをすることは命がけになると、店主は身をもって体験した。

 

 一方のルイズは、そうした平民の買い物の作法にも明るい。この店主が、初めからまともな値段を提示しないであろうと、十分に予想していた。

 店内に並べられた武具には、どれも値札がつけられていない。しかし、近頃は平民の識字率も上がっている。つまり、商品の値段は端から決まっていない、そういう店なのだ。

 

 だが、一々値段交渉に付き合っては、時間の無駄となる。だからルイズは、平民向けの店に貴族の権力を持ち込んだ。もちろん、権力を使うと言っても、適正価格での取引をするつもりではあるが。

 貴族であっても、武力で平民から商品を脅し取ると、王都の衛士とご対面して、詰め所送りになることには変わりがない。

 

「とりあえず一通り目を通すから、順に持ってきて。大丈夫、冷やかしのつもりで来たわけじゃないから、何本か買っていくわよ」

 

 この貴族は自分より一枚上手だ。長年、商売人として(つちか)った直感でそう悟った店主。それならば真っ当な手段で稼ぐため良い剣をたくさん買っていってもらおうと、彼は一品物の武器を取りに、店の奥へと引っ込んでいった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

「なに? タバサ、剣に興味あるの?」

 

 ルイズと店主のやり取りを横目に、キュルケとタバサは店の棚に飾られた剣や鎧を眺めていた。

 金物に興味はなかったキュルケだが、意外と真面目に剣を眺めているタバサに驚いて横から声をかけた。

 

「昨日、メイジ殺しの剣技を初めて見た。鉄の鉈で青銅のゴーレムを討ち取る。興味深い」

 

「ああ、昨日のサイトの決闘ね。確かにすごかったわね」

 

 キュルケは、昨日サイトが振るっていた鉈に似た無骨な剣を手に取りながら、タバサの答えに声を返した。

 

「でも、メイジなら、剣なんかじゃなくて『ブレイド』の魔法とか、『エア・ニードル』の魔法とかを使えば良いじゃない?」

 

「魔法は二つ同時には使えない。片手に剣。片手に杖。それが理想」

 

「タバサみたいな身体のちっちゃい子が、二本同時に武器を持つなんてできるわけがないわよ。騎士の使う、軍杖にしておきなさい」

 

「……そう。でも今の杖は気に入っている」

 

「まあ、そうよね。……ま、こんな場末の武具店に、騎士仕様の軍杖なんて物、置いてあると思わないけどね」

 

 と、そこまでキュルケは言ったところで、ふと数日前に見たルイズの論文を思い出した。

 

「タバサ、小さなあなたでも、剣を持ちながら杖を持てるわよ」

 

「?」

 

 キュルケの言葉に、タバサは首をかしげた。

 まさか両手を使って細身の杖と剣を束ねて握れとでも言うつもりなのだろうか。そんなことをすれば、握力の弱い自分では握りが甘くて手から剣がすっぽぬけてしまう。タバサは間抜けな自分の姿を想像して眉をひそめた。

 

「ルイズよ、ルイズ。あの子、杖を持たずに魔法使っているでしょう」

 

 そんなキュルケの言葉を聞いたタバサは、心底嫌そうな顔をキュルケに向けた。

 ルイズが杖を持たずに魔法を使えている理由は、腕の肉の下に魔法の杖の素材を水のメイジの外科手術で埋め込んでいるからだ。

 確かにあれはすごい技術だと思うタバサだが、実際自分の腕に仕込みたいかというと、否だ。

 

「悪趣味」

 

「あはは! まあ、そうよね。でもね、ルイズはあれの他に、指輪型の杖とかも作っているのよ。それなら両手で剣を握りながら魔法を使えるでしょう?」

 

「それ、本当?」

 

「本当よ。確認してみましょうか。ねえ、ルイズ……って、それ!」

 

 カウンターのルイズの方へと顔を向けたキュルケだが、目に飛び込んできたものを見て驚きの声をあげた。

 宝石がはめ込まれ金の細工が施された、豪奢な大剣がカウンターの上に載っている。

 

「す、すごい剣じゃない!」

 

 キュルケは剣やメイスといった金物に興味はないが、貴金属や宝石には興味が大ありだった。

 剣に施された見事な装飾に釣られるように、ふらふらとカウンターへと近づいていく。

 

「おや、若奥様お目が高い。これはかの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿が鍛えた大剣でさあ」

 

「シュペー卿! さすがに偽物じゃないの!? いえ、この銘は確かに……よく、こんな稀少な品を仕入れられたわね」

 

「へへっ、まあ長年、武具屋をやっていれば、こういうのを手に入れられる伝手がございましてね」

 

 店主は、この大剣をまるで自分が作った物だと言わんばかりに胸を反らして誇った。

 キュルケは剣を両手に持って、散りばめられた宝石を眺める。

 

 だが、ルイズはというと興味なさそうな顔で、ただ一言、「サイト」と鑑定士の名前を呼んだだけだった。

 

「キュルケ、ちょっとそれ貸してくれ……うん、ありがとう。よし……」

 

 大剣の柄を握り、才人は薄目できらびやかな諸刃の刀身を眺めた。

 二十秒ほどそうしてから、才人はゆっくりシュペー卿の大剣をカウンターに広げられた柔布の上に置いた。

 

「これ、なまくらだ。丁寧に扱わないと簡単に折れちまう」

 

 その才人の声を聞いて、胸を反らしていた店主は慌て始めた。

 

「そ、そんなはずが……! 刀身には魔法もかけられていて、鉄すら一刀両断のはずですぜ、旦那ぁ」

 

「キュルケ、『ディテクトマジック』」

 

「あ、うん、分かったわ」

 

 店主と一緒に驚きの顔を浮かべていたキュルケは、淡々と放たれたルイズの言葉に促され、腰に差した杖を引き抜いて詠唱をした。

 杖の先から光る魔法の粉が、金細工の施された刀身に降り注ぐ。

 

「ええと……、施されている魔法は『固定化』ね。強度を増すというよりは、装飾を守るために経年劣化を防ぐ目的で使う魔法よ。切れ味は、ほとんど上がっていないでしょうね」

 

「そ、そんな……」

 

 才人とキュルケの鑑定結果に、店主はガックリと肩を落としカウンターの上に突っ伏した。

 




使い魔が人語をしゃべる仕組みについては、原作『ゼロの使い魔外伝 タバサの冒険』の二巻に記述されています。ただし、使い魔になってから後年に人語をしゃべるようになるかどうかについては、原作設定を考察したうえで用意したオリジナル設定です。
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