【完結】わたしのかんがえたかっこいいるいずさま   作:Leni

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88.不死鳥飛行隊発足!

 国王夫妻の結婚式が終わり、トリステイン魔法学院に戻ったルイズと才人。

 学院では新学期を前にして、春期休暇を切り上げた生徒達が集まってきた。

 

 まだ入学式も行なわれていない春の学院。そこで、王政府からある発表がなされた。

 

 新設の部隊、不死鳥(フェニックス)飛行隊の隊員募集が始まったのである。

 隊員には『フェニックス』号が国より貸し出され、飛行訓練を魔法学院の近場にあるド・オルニエール領で行なう。

 また、隊員は地上での戦闘訓練も課されることになる。

 飛行隊は王政府直属の部隊となるため、国から俸給が支払われる。

 

 現在内定している隊員は、以下の通り。

 

隊長:ギーシュ・シュヴァリエ・ド・グラモン

教導官:サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ

技術主任:ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール

 

 その公示を見て、才人は首をかしげた。

 ギーシュが隊長なのは、グラモン元帥の子息という立場から分かるが、教導官の欄に軍杖術を教える師匠の名がない。

 不思議に思って、才人が自身の師匠のところに尋ねにいくと……。

 

「それだがな。サイトもそろそろ人に教える立場になるべきだな!」

 

「えっ!?」

 

「お前は筋が良い。おそらくは『ガンダールヴ』なる力のおかげなんだろうが……人に教えることで得られるものもあるのだ。やってみろ」

 

「ええー……」

 

「オレはしばらく、この学院で筋の良さそうな新入生を探すとする。もしいたら、飛行隊に推薦してやるぞ!」

 

 そんなことを師匠に言われて、才人はしぶしぶ、飛行隊の軍杖術の教導も受け持つことを了承した。

 そして、師匠のところから退出するところで、不意に師匠は言った。

 

「そうだ、飛行隊にオレの息子をねじ込んでおいたから、しっかりと鍛えておいてくれ」

 

「息子さんですか?」

 

「ああ、マリコルヌっていうんだが、知っているか?」

 

「ええっ、彼、息子さんだったんですか!?」

 

 才人は、筋骨隆々の師匠からは想像も付かない小太りの少年の姿を思い出して、驚愕の声を上げた。

 言われてみると、髪色や髪型に面影があるような気もしないでもない。

 

 そうして剣の師匠にマリコルヌを任された才人。

 やがて、入学式の前日になって飛行隊の入隊希望者は集まった。今回、一年生はまだ入隊することにはなっていない。新兵器を操るよりもまずは、基本的な魔法の学習を優先すべしとの、魔法学院側からの意向が挟まれたからだ。

 ただし、才人の師匠は一年生からも見込みがある者は、入隊させる気が満々であったが。

 

 そして、隊長ギーシュが音頭を取り、学院の広場に入隊希望を出して、認められたメンバーが集められた。

 

 マリコルヌ、ギムリ、レイナール、エイドリアン、アルセーヌ、ガストン、ヴァランタン、ヴィクトル、ポール、エルネスト、オスカル、カジミール……。いずれも空と騎士に憧れる若き男子である。

 彼らと、すでにド・オルニエール領入りしている元護衛飛行隊のメンバー十人を足した者達が、不死鳥飛行隊の初期メンバーとなる。

 

「いやあ、戦争では結局『フェニックス』号には乗れなかったからな。今から楽しみだ」

 

 ワクワクを隠せない様子でそう言ったのは、眼鏡男子のレイナールだ。以前、『ゼロ・フェニックス』号の製造中に足繁(あししげ)く様子を見に(かよ)っていた、野次馬の一人だ。

 そんな空への想いでいっぱいなレイナールに、才人は冷たく言う。

 

「飛行訓練だけでなく、軍杖術の訓練もたっぷりやるからな。覚悟しておけよ」

 

 すると、それを聞いた大柄のギムリが、ニヤリと笑って言った。

 

「伝説の『ガンダールヴ』に軍杖術を習えるとは、楽しみだ!」

 

 ギムリは、才人の師匠が担当していた軍杖術の特別授業に付いてこられていた、数少ないメンバーの一人だ。飛行隊に入隊したのも、その師匠からの推薦である。

 

「おう、空でも陸でも厳しくいくぞ!」

 

 そう言い放つ才人に、小太りの少年マリコルヌが嫌そうな顔をする。

 そして、その表情のままマリコルヌは才人に向けて言った。

 

「辞退していいかい?」

 

「駄目だ。師匠からは、マリコルヌは絶対に逃がすなと言われている」

 

 逃げの体勢を見せたマリコルヌの肩を才人はガッチリとつかんだ。

 才人はこの一年で、スッカリ肉体改造が済んでいる。その圧倒的筋力に、運動不足のマリコルヌは抗えなかった。

 

「ぬうう、父上めぇ!」

 

「というか、飛行隊の訓練で痩せろよ。ルイズが、昔のお前はそれなりに美形だったって言っていたぞ」

 

「なにっ!? 愛しのフランソワーズがそんなことを!?」

 

「おう、言ってた言ってた」

 

 才人は、以前ルイズが雑談の中で漏らした一言を思い出しながら、マリコルヌにそう吹き込んだ。

 すると、マリコルヌはやる気になり、才人に向けて言った。

 

「ぼくが痩せたら、ルイズは振り向いてくれると思うかい?」

 

「寝言は寝て言え」

 

 ルイズが普段、マリコルヌに拒絶反応を示しているのは、相手が太っているからではなく彼が変態的行動を取るからだ。

 だから、才人は彼の望みを絶つためにバッサリと言った。

 

 すると、マリコルヌは「おうふ!」と言ってぬるんとした動きでその場に倒れた。

 そういう動作をするところがモテないんだぞ、と才人は言おうとしたがやめておいた。同じ彼女がいない者同士として、彼にもそれなりの優しさがあった。

 

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 

 そうして発足した不死鳥飛行隊。

 ド・オルニエールの領地にて、学院の隊員と元護衛飛行隊のメンバーで顔見せが行なわれた。

 

 そこで、才人は両者の仲立ちをして隊の方針を決めることとなった。

 隊長は、王政府からの指示通りギーシュだ。軍の名門グラモン家の子息ということで、護衛飛行隊の面々からも文句は上がらなかった。

 ただし、ギーシュは『フェニックス』号の操縦に関しては素人である。なので、護衛飛行隊のリーダーであったルネ・フォンクを副隊長に()えた。

 ギーシュはその家柄と騎士の身分で以て、皆を率いる立場。ルネは実働部隊の長として訓練を主導する立場。才人は、そう役割を分けた。

 

 そうして、さっそくとばかりに、『フェニックス』号の操縦訓練が始まった。

 だが、いきなり空を飛ぶわけではない。ここでルイズが、まさかの大発明を投入したのだ。

 

 それは、『虚無』の魔法を使った訓練用マジックアイテム。『イリュージョン』の魔法を込めたシミュレーターであった。

 コックピットを模した筐体に入ると、『イリュージョン』の魔法が発動する。すると、操縦者はまるで本物の『フェニックス』号に乗っているかのような光景を見ることとなるのだ。

 

 そして、操縦者の目には、文字と記号でもって操縦指示がなされる。その指示に従って特定の操作をしないと、『イリュージョン』の魔法が解かれるという仕組みである。

 才人の出身地にあった本物のシミュレーターのように、自由な操縦で画面が動くというものではないが、所定の操作に従うと風景が流れ、空を飛ぶ疑似体験はしっかりとできる。

 

 このシミュレーターは、コルベールが完成させた発電機で充電を終えたノートパソコンに残されていたゲームを参考に、ルイズが作った大型マジックアイテムだ。

 ほとんどがルイズの手製なので、開発資金はルイズに支払われる工数分の給金程度。飛行隊に与えられた予算には、ほとんど手を着けていない。

 

 なお、現在、このシミュレーターを参考にして、『イリュージョン』を使わない発展版をアカデミーの実践魔法研究室が作成している。アカデミーでは映像を録画する専用のマジックアイテムがすでに実用化しているため、実現の可能性は十分あった。

 

「うおおお! すごい! これはすごい!」

 

 初めて体感するシミュレーターに、学生達は沸いた。体感型ゲーム機というものが、そもそも存在しない世界だ。彼らはこのシミュレーターにドハマリした。

 だが、元護衛飛行隊の面々はそれを見てニヤニヤと笑った。この程度のマジックアイテムで驚いては、本物の『フェニックス』号を乗りこなせたときの快感に耐えられないぞ。と、そういう目を向けたのだ。

 そう、元護衛飛行隊のメンバーは、スッカリ空に魅了されていたのだ。

 

 そうして学生達はシミュレーターで数日間みっちり練習した後に、実際に空を飛ぶことになった。

 まずは、元護衛飛行隊の操縦する、複座式の『フェニックス』号の後部座席で空に慣れることから始めた。

 シミュレーターでは味わえないその衝撃に、学生達は興奮と恐怖で頭の中がごちゃ混ぜにされた感覚を味わった。

 

 そうしてひたすら空を飛び、慣れてくる頃にようやく機体の操作を体験することになる。三機ある教導用の専用『フェニックス』号で、教導官役と一緒に空を飛ぶのだ。

 教導用『フェニックス』号はこれまた複座式で、才人の故郷である日本の教習車のように、二つの操縦席から同時に操縦が可能となっている機体だ。

 教官席からは生徒席の操縦を停止させることもできる、非常に高度な操縦系となっている。

 

 そうして、ようやく出番が来た才人は、まずは隊長であるギーシュを乗せて空を飛んだ。

 

「うわあああ! 死ぬ! 死ぬ!」

 

 パニックになって操縦桿をめちゃくちゃに操作しようとするギーシュ。才人は苦笑しながらギーシュの操縦を停止させ、冷静に自分の操縦桿を操った。

 

「おい、ギーシュ。落ち着け。大丈夫だ、冷静になって今までの練習通りにやれば、ちゃんと飛べるぞ」

 

「しかしだね! 僕は土のメイジで『フライ』がそこまで得意じゃないんだ! 落ちたらどうする!」

 

「この機体は俺も操縦できるようになっているから、落ちねえって」

 

 開発段階で、操縦系が可能な限り簡略化されている『フェニックス』号。だが、焦ってしまっては操縦の難易度以前の話になってしまう。

 しかし、才人は戦争前に何人ものパイロット候補生相手に、教導官を務めた猛者。この程度の事態には慣れっこだ。元護衛飛行隊のメンバーにも操縦を教えたその経験が、今も生きている。

 むしろ、事前にシミュレーターを経験している分だけ、ギーシュの困惑ぶりは戦争前の訓練時よりもマシな状況だと言える。

 

 そうして、才人はなんとかギーシュに操縦を覚えさせることに成功した。

 しばらくは教導用『フェニックス』号はフル稼働することになるだろう。太鼓判を押して一人で操縦させられるとなれば、いよいよ学生達にも一人一機ずつ、専用の『フェニックス』号が貸し与えられることになる。

 そのことを話して、才人は皆を奮起させようと試みた。

 すると、学生達はさらにやる気を出して訓練に取り組み始めた。学院でも彼らは日頃から集まって、『フェニックス』号をどうカスタムするかで盛り上がるようになった。

 

 なお、空の訓練と並行して、陸での軍杖術の訓練もしっかりと行なわれている。

 彼らには、王室から一人一本ずつ王室ブランドの剣杖が下賜(かし)され、魔法の契約を済ませた彼らはそれを常に携帯するようになった。

 

 学院の男子生徒達は、当然、それをうらやましがった。だが、飛行隊から語られる才人による鬼の訓練を聞いて、新規の入隊希望者は出ることがなかった。

 トリステイン魔法学院に入学する男子生徒は、親に甘やかされて育ったボンボンであることが多い。そのため、貴族の中でもハングリー精神が薄い方なのだ。

 

 そうして、濃密な日々を過ごしていく飛行隊の少年達。もちろん、飛行隊のメンバーの半数は学生であり、学院での生活も並行して行なわれる。

 そんな学院にて、とある事件に飛行隊の学生達は巻き込まれることとなる。

 

 きっかけは、四月(フェオの月)、第一週の半ばに行なわれた入学式で、ある人物が学院に入学したことであった。

 ハーフエルフの少女、ティファニアが新入生として学院にやってきたのだ。

 彼女は堂々と、エルフ特有の耳を晒していた。それには多くの者が驚いたが、少年達にとってはそれ以上に驚愕するものがあった。

 ハーフエルフの胸部に備え付けられた、暴力的なまでの量の脂肪の(かたまり)

 

 不死鳥飛行隊の面々は、初めて空を飛んだとき以上の衝撃を受けた。

 新入生ティファニアは、他ではありえないほどの爆乳であった。

 そして、その爆乳と常人離れした美貌によって、一つの事件が新学期早々起こるのだった。

 




・入学式
原作においてルイズ達が入学した年の入学式は四月(フェオの月)の第二週の半ば。一方、ルイズ達が三年次の入学式は四月の第一週に行なわれています。新入生歓迎の舞踏会も、一年時と三年時では内容と日時がかなり異なっていますね。
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