篠澤広が髪を伸ばしている理由について考えた結果できた「こうだったらいいな」のSSです。
プロデューサーが篠澤広のヘアケアを手伝って髪を乾かす話。
NIA中盤くらいの時系列感。

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主題はプロデューサーが篠澤広の髪の手入れを手伝うところなのでそれ以上のことは起きません。あしからず


象牙の塔は熱と踊る

 アイドル科の廊下を、背の高い男性がかすかに焦りを感じさせる早足で歩いていた。

 陽はとっぷりと暮れて、人通りはほとんど無く。大半の生徒は寮に戻っている時間帯だった。

 

(篠澤さん、自主レッスンをすると言っていたが……大丈夫だろうか)

 

 思考を占めるのは、担当中のアイドルであり運命共同体―――『篠澤広』のこと。

 『N.I.A』が始まり、彼女のプロデューサーである彼は営業の打ち合わせやアイドルを送り出すオーディションの選定、他校のアイドルの敵情視察にと忙殺されていた。必然、これまでのようにアイドルのレッスンにつきっきりとは行かない。彼女の自主性に任せざるを得ない部分はどうしても出ていた。

 その点、篠澤広というアイドルはやる気に関しては全く心配ないが、体力面は(気持ち改善されはしたものの)依然として底辺を彷徨う有様。

 本人に自覚はある以上過度な無茶はしないとは思うが、うっかりは誰にでも起こり得るモノ。ともすれば自主レッスン中に体力を使い果たして気絶、なんて事も考えられてしまう。

 

 不安を抱えたままレッスン室の前まで向かうと、扉の窓から明かりが漏れていた。

 

「……まさか」

 

 募る焦燥にプロデューサーは乱暴に扉を開け放つ。

 

「………あ、プロデューサー」

 

 レッスン室のど真ん中でうつぶせになっていた担当アイドルが、首だけを動かしてプロデューサーを見ていた。

 

「……篠澤さん、返事する前に身体を起こしませんか」

「ふふ、むり。もう指一本も動かせない」

 

 血の気の失せた顔で誇らしげな表情を浮かべる彼女を見ても、プロデューサーは『やれやれ』と思いつつも慌てはしない。この程度はもう見慣れた光景になってしまっていた。

 

「首を動かす元気があるなら、指一本くらいは動くでしょう」

「小粋なジョークに辛辣な揚げ足取り……プロデューサー、ひどい、冷酷」

 

 広は床にぺたりと手を付け上体を起こそうとする。だがぷるぷると震えるばかりの腕はまるで力が入っているようには見えず、すぐにぱたりと投げ出された。

 プロデューサーはため息をつきながら広の腕を取り、自分の肩にかけさせる。細すぎる腿を抱えて背負い上げた。

 

(相変わらず、華奢というより頼りないというべき身体だ)

 

 レッスン用の短パン越しの足は、太さだけなら第二次性徴期前の小学生と張り合えそうだ。高校生とは思えない細さの脚はガラス細工のような脆さすら感じさせる。

 

「このまま寮まで運びます。なるべくしっかりと掴まって――」

「あ、待って。プロデューサー」

「……どうしました?」

 

 すぐそばから聞こえた消え入りそうな細い声が耳をくすぐる。これまでの付き合いによる経験が、プロデューサーの背筋に嫌な予感を走らせる。

 

「今のわたし、いつも以上にくたくた。寮に戻ったら、そのままベッドに向かって倒れちゃうと思う」

「ベッドまで歩く余力が戻るだけ成長を感じますね」

「ありがとう。でも、それじゃ足りない」

「何がですか?」

「ぼでぃーけあ」

 

 わざとなのか疲労ゆえか、たどたどしい発音で広は呟く。

 

「汗でべとべとの身体も、髪も。洗わないまま朝までぐっすり眠っちゃう。頑張ってお風呂に入っても、ちゃんと乾かさないと髪も痛むし、とても……よくない」

「……それは、そうですね」

 

 プロデューサーは首肯する。ただでさえフィジカルに多大なハンデを抱えているのだ。これ以上マイナス要素を増やしてしまうのは、『N.I.A』を勝ち抜く上で無視できない支障となりうる。

 

「シャワー室、ちょっと前に閉まってる。寮に戻らないと浴びれない」

「すみません。俺がもう少し早く戻れていれば」

「プロデューサーを責めたいわけじゃない、よ」

 

 それに、彼女のファンは篠澤広を神格化するほどに熱狂的。ボサついた髪なんて見せた日には幻滅されても文句は言えない。

 

「だから、プロデューサー」

 

 まるで、勇気を絞り出すような。わずかな、間を置いて。

 

「わたしの部屋で、髪の手入れを手伝ってほしい」

「ダメです」

 

 プロデューサーはにべもなく切り捨てた。

 

「……ここは、普通乗るところ」

「どこがですか」

 

 ドライヤーを当てるだけならば、まだ疚しい行いではないと言えよう。だが、それはどこで行われる?

 

 夜、アイドルの部屋にプロデューサーが入る。そのうえ異性と来たものだ。『N.I.A』の影響でアイドル科全体に対するメディアからの注目度が上がっている最中においては自殺行為もいいところ。

 

「体力不足を盾に俺を働かせるのは百歩譲るとしても、この大事な時期に炎上必至の行為に及ぶなんて正気じゃありません」

「わかった。プロデューサーの部屋でもいい、よ」

「譲歩したつもりでアウトの段階を一つ上げないでください。尚の事ダメですよ」

「じゃあ、どうする?」

「…………どうすると、言われましても」

 

 プロデューサーは考える。結局、誰かが手入れをしなければならないのだ。それも今夜中に。

 明日は朝から生放送の仕事がある。呑気に髪を乾かしている時間はない。

 そして本人にそれができないならば。

 

「……友達とかに、頼めませんか」

「千奈は寮に住んでないし、佑芽は、もう寝てる頃。美鈴もたぶんそう。それに……みんな友達だけど、ライバルでもある、から。私の都合で、迷惑は……かけられない」

「俺は?」

「ふふ。プロデューサーは、運命共同体。とくべつ」

「絶妙に嬉しくない特別扱いですね」

 

 ならばやはり、自分しかいない。考えれば考えるほどに選択肢が狭まっていく。悪い冗談だと吐き捨てたい気分だった。

 

「だから……選んで、プロデューサー」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………………」

 

(篠澤さんの部屋……もといアイドル科の寮は、目撃される可能性が高い。プロデューサー科の寮は比較的目は少ないものの発覚時のリスクが大きい………ああ、まったく)

 

 きっと、彼女は最初からそのつもりだったのだろう。今日が自主レッスンの日だから、泊まり込む為に計画を立てた。その上で、わざと体力の限界まで自分を追い込んだのだ。彼がこの二択を迫られたとき、どちらを選ぶかまで読んで。

 本気の趣味(アイドル)に反することなく、やりたいことをやるために。

 

 『仕方がない』なんて、思いたくもない。そんな言葉で済ませてしまえないほど、篠澤広というアイドルは世間の中で大きくなって、これからしでかす行為の危険性は高いのだから。

 

「俺の部屋に女性用の洗髪料なんてありません。ヘアケアをする上では良い環境じゃない」

「普段使ってるやつの1DAYを持ってきてる。こんなこともあろうかと」

 

 それでも抗うプロデューサー。だが、内心では既に諦め始めていた。

 

「着替えが無いじゃないですか。明日の服はどうする気です」

「知ってるくせに。わたしがレッスンの日は、いつも着替えを持ってきてること。汗だくのまま帰ったら、風邪引いちゃうから、ね」

 

 一大学生にすぎない己が、本物の天才相手に知恵比べで勝てるはずがない。

 

「いえ、そもそも外泊許可が」

「もう取ってる、よ」

 

 篠澤広が、本気なら。

 

「……全部計画してましたね?」

「ふふ。どうだろう、ね」

 

 彼が思いつく程度の反論の余地など―――全て潰してから来るに決まっている。

 

「……………騒がないように。あと他人の善意を意識的に当てにするのは褒められた行為ではないので以後控えるように」

「うん、わかってる。この手は今回限りにする、ね」

 

 釘は刺したが、彼女のことだ。抜け道などいくらでも見つけてくるのだろう。

 

「はあ……………」

 

 口の中に滲む敗北感を噛み潰し、プロデューサーはアイドルを背負って来た時より長く感じる廊下を歩いた。

 



 

 ぶおおおお、ドライヤーの吹く温風が広の後ろ髪を左右にたなびかせる。

 二人はカーペットの上に腰を下ろし、プロデューサーは広の後ろ髪を持ち上げて少し離した斜め上からドライヤーを当てていた。

 

「さっき動画を見た程度なので、間違ってたら言ってくださいね」

「大丈夫、わたしも似たようなもの」

 

 右手でドライヤーを左右に振りながら、左手で髪を軽く揺らす。風呂上がりゆえかしっとりと艶めく象牙色の糸が風に靡く様は、見るものの視線を吸い寄せる魔力を秘めていた。

 

(やはり、篠澤さんの長髪は重要なチャームポイントだ。素人仕事だからと言い訳はできない。多少時間をかけてでも丁寧にやらなければ)

 

 腹をくくった以上は中途半端にはできない。今の自分は彼女の髪を乾かすだけの存在と規定して、プロデューサーはざわつく心をむりやり型に押し込んだ。

 

「…ふふ、お姫様になったみたい」

「俺は召使いですか」

 

 彼女はご機嫌なようだ。ゆらゆらと頭を揺らしてこの時間に浸っている。

 

「千奈が使用人にやってもらってるとこを見て、羨ましいなって思ってた。今、とても満足してる」

「良かったですね。……しかし、その時に言えばやってもらえたのでは?」

「それは、ちょっと違う」

「違う……とは?」

「誰でもいい訳じゃ、なくて」

 

 広は、両手をそっと胸の前で重ね合わせる。

 

「プロデューサーに、してほしかった」

「…………そう、ですか」

 

 返答に詰まり、つい口数が減る。

 しばらく、ドライヤーの駆動音だけが寮の一室に響き続ける。会話が減ると、自然と思索に脳のリソースが偏っていく。プロデューサーの脳内にはいつしか、一つの疑問が生まれていた。

 

(なぜ、篠澤さんは髪を伸ばしているのだろう)

 

 今日、初めてやった彼でもわかる。この長髪を美しく保つのはかなりの重労働だ。彼女の体力を鑑みれば、ショートヘアにしたほうがずっと手間はかからないだろう。

 とはいえ、彼女の性格からすれば『ショートは手間がかからない。だからロングヘア』で理由が成立してしまう。それで納得してしまっても良かったかもしれないが、彼の直感はそれだけではないはずだと告げていた。

 

「……ねえ、プロデューサー」

 

 数分ぶりの声に、プロデューサーの意識は思考の海から引き上げられる。

 

「どうしました?」

「……あのね」

 

 かすかに頭を俯けて、彼女は。

 

()()()()()……()()?」

 

 ほんの僅かに、不安の滲む声色で、尋ねてきた。

 

(――そういう、ことか)

 

 瞬間、彼は浮かんだ疑問の答えに気付いた。

 少し、頭の中で言葉をまとめて。

 

「……プロデューサーとしての、意見ですが」

 

 一度ドライヤーの電源を切って、息を吸い込んだ。

 

「篠澤さんの独特な色合いの長い髪は、篠澤広というアイドルの持つ明確な武器の一つです。篠澤広の特徴であるミステリアスな魅力を演出する上では切っても切れない一部だと思います」

「髪だけに?」

「言葉の綾です」

 

「「……」」

 

 僅かに流れる沈黙に、彼女が口火を切る。

 

「……それ、だけ?」

「……さっきのでは足りませんか」

「私は、プロデューサーの気持ちが知りたい。客観的な評価はそれはそれでうれしい、けど」

「…………わかりました」

 

 息を整える。この先を口にするのには、少々勇気が必要だった。

 

「――俺は好きですよ。篠澤さんの髪」

「―――。」

 

 僅かに、息を呑む気配。彼女のことだ、これがおためごかしでないことくらいは―――嘘偽らざる本音であることくらいは見抜いているだろう。

 

(今日は、ずっと篠澤さんのペースだったな)

 

 眼鏡の位置を正し、再度ドライヤーの電源を入れて仕上げに移りながら、彼は考えた。

 氷解した疑問の答えを。

 

(アイドルになろうとする前の篠澤さんの世界には、おそらく学業と研究しかなかったはずだ。モデルが勧めるファッションも、流行の髪型も知らなかっただろう)

 

 そんな彼女が、アイドルを志して。自分の何がアイドルとしての武器になるのかすら知り得ない一人の女の子が、それでも今の自分にできることを考えて。

 そうして踏み出した―――()()()

 それこそが、きっと。

 

(思い入れも、あるはずだ)

 

 胸の内に熱を滲ませながら、プロデューサーはドライヤーのスイッチを切る。

 

「終わりましたよ、篠澤さん」

「ありがとう。……ふふ。プロデューサーは、やっぱり私の欲しい言葉をくれる」

 

 彼女はカーペットに手をついて身体をくるりと回し、プロデューサーに向き直る。

 それまで見えなかった担当アイドルの顔が、プロデューサーの視界に飛び込んでくる。

 

 上気して赤らんだ頬も。

 

(きっと風呂で暖まったお陰だろう)

 

 浮かれたかのように緩んだ表情も。

 

(おそらく眠いからだ)

 

「そういうところが、すき」

 

 普段以上に喜びの混じったその声も。

 

 プロデューサーは認めるわけにはいかなかった。

 

 少なくとも……今は、まだ。

 



 

 翌朝―――の正午手前のころ。

 

「はふう」

「生出演、お疲れ様です。篠澤さん」

 

 初星学園内の一室――プロデューサーとアイドルに与えられた個室である――に帰り着いた広は、椅子に座って溜め込んだ疲労をため息に変えた。

 

 プロデューサーがペットボトル飲料を渡すと、震える手で受け取った広は好戦的な表情を浮かべる。

 

「ふふ。私……まだまだやれる、よ」

「青ざめた顔で言っても説得力に欠けますね。今日はもうゆっくり休んでください」

「プロデューサーの部屋で?」

「訂正します。今日は『自分の部屋で』ゆっくり休んでください」

「一回も二回も変わらないって、言う」

「一回すらあってはならないんですよ」

「ねえ、プロデューサー。本当に佑芽と千奈に自慢しちゃ、だめ?」

「ダメに決まっているでしょう。スキャンダルを自分からバラすアイドルがどこにいるんですか」

 

 二人が話しているところへ、元気いっぱいな駆け足の音が廊下から響いてくる。

 プロデューサーは来訪者を察した。

 

「広ちゃん! お疲れ様ーっ!」

「篠澤さん、お疲れ様ですわ!」

 

 大きな音とともに勢いよく扉を開け放った花海 佑芽と、倉本 千奈が部屋に飛び込んできた。

 

「あ、広ちゃんのプロデューサーさん! おはようございます!!」

「花海さん、おはようございます。あと廊下を走ると危ないですよ」

「あ。ご、ごめんなさい! でも、広ちゃんにお疲れ様って言いたくて!」

「篠澤さんのプロデューサーさん、おはようございます」

「倉本さんも、おはようございます」

 

 丁寧に挨拶を返す一方、青年の内心は穏やかではなかった。

 

(昨晩の件、二人には感づかれやしないか……?)

 

 昨晩はドライヤー含めその後もヘアケア諸々を手伝った後は何もなく、担当アイドルにベッドを使わせて椅子で夜を明かしたプロデューサー。身体の節々の一時的不調を感じつつも、今のところ周囲にバレているようなそぶりはなかったことに安堵していた。

 

「千奈、佑芽。おはよう。見ててくれたんだ」

「もっちろん! 広ちゃんが出演する番組は、テレビもラジオもぜんぶチェックしてるよ!」

「わたくし達、篠澤さんの大ファンですもの!」

 

 しかし広と親しいこの二名は危険だ。佑芽の五感の鋭さは侮れないし、千奈は千奈で底知れないなにかを感じる。

 

「広ちゃんにはお姉ちゃん直伝のお疲れ様のハグをあげる! ぎゅーっ!!」

「ふふ、佑芽。嬉しい……けど、苦し………、…ぃ」

「花海さん! 篠澤さんの顔が青を越えて白くなってますわ!」

 

 だが、こういう状況に対応してこそのプロデューサー。もしもに備えた言いくるめの手札は一通り考えてある。この二人が感づきそうなポイントについても、事前に想定問答をシミュレーション済みであった。

 

(問題ない、はず。だが……)

 

 不意に、プロデューサーの背筋に走る悪寒。

 それと同時に、広を抱き締める力を緩めた佑芽がすんすんと鼻を鳴らす。

 

「……あれ?」

「どうしましたの? 花海さん」

 

 プロデューサーは気づくべきだった。

 眠気に苛まれた昨夜の自分と、質の低い睡眠で思考の柔軟性を欠いていた今朝の自分。

 

()()()()()()()()()―――」

 

 その二人が共に見落とした。

 

「―――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

「……え?」

 

 前提の崩壊があったことに。

 

 ぎゅるん。佑芽が凄まじい勢いでプロデューサーに頭ごと目を向けたことで、バッチリと見られてしまった。

 驚き、狼狽えた己の表情を。

 

(――しまった)

 

 せめてここで鉄面皮を崩さなければ、言い逃れの余地があったかもしれないのに。『はわわわわ』とでも言いたげな顔で、みるみる内に佑芽の頬が赤く染まっていく。

 

「ひ、広ちゃん! プロデューサーさん!! ひょっとして、ひょっとして……!」

 

(だ、だが、なぜ。篠澤さんはシャンプー類を持っていたは、ず―――!)

 

 瞬間、脳裏に閃く最悪の可能性。

 

「しの、さわ。さん……?」

 

 古めいたブリキ人形のような軋みと共に、担当アイドルに首を巡らせるプロデューサー。身体を起こした広は、青ざめた顔で勝ち誇った表情を浮かべていた。

 

「私は。1DAYのシャンプーを持ってるって言った」

 

 彼女は床に落としたカバンに手を差し込み。

 

「そして、それをお風呂場にも持ち込んだ。でも―――」

 

 何かを探り、ゆっくりと引き出す。

 白魚のような細い指につままれて引き出されたのは。

 

「―――使ったなんて、一言も言ってない、よ」

 

 ()()()の、1DAYシャンプーとトリートメントのセットだった。

 

「………」

 

 めまいを覚えたプロデューサーは数歩後退り、片手で顔を覆う。

 色々と言いたいことを考えては引っ込め、最終的に口から溢れたのは。

 

「……そんなの、どうしろっていうんですか」

「プロデューサーも一緒にお風呂入れば防げた、よ」

「冤罪が真実になるだけじゃないですか……っ!」

 

「どどど、どういうことっどういうことですの!? 篠澤さんとプロデューサーさんは何のお話をなされてるんですのっ!?」

「ひゃ、ひゃわ~~~っ! 広ちゃん、もしかして昨日の夜!!」

「ふふ。私とプロデューサーは同じ部屋で一夜を明かした。髪が好きって言われた」

「「わ~~~~~~~っ!!!」」

 

 『バレたようなものだし構うまい』とばかりに誤解を招く言い方しかしない担当アイドルと、その思惑通りにテンションを青天井に引き上げる彼女の親友二名。

 コントロール可能な段階をとうに過ぎたことをプロデューサーは悟り。

 

 そっと、天を仰いだ。


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