私の気分次第で曇ります。
表記が読みにくい等あったら文の間隔を調整させてもらうので遠慮なくどうぞ。
トリニティ総合学園、数々の名家の連なる自治区における最大のマンモス校。「パテル」「フィリウス」「サンクトゥス」を主要分派としている連合校であります。
私はそんなトリニティにおけるトップ3、生徒会「ティーパーティー」の一員です。心労のかかる仕事で、トリニティを運営する上で政治的手腕を問われる立場なのです。
策謀渦巻くトリニティではありますが、であればこそ無邪気な生徒や気持ちの良い生徒を見かけると私のやってきたことは間違ってはいなかったんですね、と思いを馳せることが日常です。
前置きが長くなりましたが、これは、そんな私たちティーパーティーが二年生のときに目をかけたある友人について綴ったおはなしです。
「ナギちゃ~ん! 聞いてよ聞いてよ!!」
「なんですか、ミカさん。お菓子のおかわりはもうありませんからね。」
「ナギちゃんは私をなんだと思ってるの??? そんな食いしん坊じゃないんだから!」
「やはり食べることがその馬鹿力の秘訣なのか。君は私と違って随分と食べてるのになかなか牛にならないからね。」
「ならないってば!! なんでそんな私を太らせたいのかな?!? セイアちゃんはもっと食べなよ貧相な胸してるんだから!!」
「君もだいぶと貧相な脳をしてるけどね」
「はいはい、その辺にしておきましょう...それよりも用事とは?」
「む~、適当にあしらわれた...。ま、いいや! それよりも聞いてほしいことなんだけどさ。」
ティーパーティーの会議ではお茶会の後にミカさんが話したいことを話す。それを私が受けて、セイアさんが茶化す。ごく平和的で日常的な一幕だ。
今日のミカさんはやけにそわそわして落ち着きがなかったように見えますが(そわそわ、というよりむふむふしていたような気もする)、それの聞いてほしいこととやらが原因なのでしょうか。
「先月さ、友達ができたんだけどね~! その子がとってもかわいくって!!」
さっきまでの不満顔が一転し、上機嫌にスマホを取り出し見せてくる。件の少女がウインクしている写真です。
青みがかった黒の綺麗なロングヘアは前髪がぱつりと切りそろえられており、少し昏い印象を抱く切れ長な藍色の瞳は一つぱちりと開いていて、もう片方を閉じている。少し恥ずかし気にピースしてますね、どうやら喫茶店で撮られたものみたいです。
「友達とは珍しいじゃないかミカ。普段は派閥争いをきらって人を寄せ付けない君が、会って一月くらいの人間を気に入るなんて。...でも、確かに君は先月からいつにもましてお花畑を咲かせていたけど、もしやそれが原因なのかな?」
「お花畑って何?! 私そんな変な風に見えてたの??!! 珍しいなんてそんなことないよ...って言いたいけどそうかもね。私も不思議なくらいなんだけどね、すっごくいい子なんだよ。一気に仲良くなっちゃった!」
茶化すもののセイアさんも写真を興味深げにマジマジとみている。それを見てミカさんは自分の事のようにふんすふんすと鼻息を荒くし、仲良くなったんだ~、こういう子なんだ~と紹介している。
「そういえばこの方のお名前は何というのでしょうか、ミカさんが気に入っているのは充分に分かりましたが肝心の名前を一言も聞いていません。」
「え~...言わなきゃダメ~?」
「どうしてそう渋るのですか、何か特別な理由でも?」
「う~、ないけどぉ...」
「では、どうして?」
「うーーーん、からかわない?」
「ええ」「ほんと?」「ほんとです」「ほんとにほんと!?」「くどいですよ、ロールケーキをぶち込まれたいですか?」「ひどい!!」
少し悩んだ末にミカさんはめいっぱい恥ずかしがってぼそりと言いました。
「だってこんな子みんな絶対気に入るし、せっかくならもうちょっと独占しておきたかったの...! でもみんなに自慢したいし...う~~!!」
ご執心過ぎませんか???? セイアさんが普段の快活なミカさんからはありえないくらいのしおらしい乙女ミカさんを見て宇宙狐状態になっている...この一月でミカさんに何があったんでしょうか。
これは調査してみる必要がありますね、いつもお騒がせされてる仕返しにもなりますし!
と、いう訳で。ミカさんのお友達の動向を探るべくフィリウス分派のツテ、ではなく。自然な交友を見たいのでヒフミさんを頼ることにしました。
ヒフミさんは気が付いたらそこかしこで気の置けない友人を作っているので*1すぐに辿れると思いますし。
ミカさんから昨日の話は忘れて! とモモトークで散々念を押して言われましたが絶対に忘れてやりません、浮いた話は気になるのが女子高生というものです。三日も待つと早速ヒフミさんから情報が上がってきました。
名前は「藍園ココロ」さん。高等部一年生ですね、早速友人関係を築けたようで遊ぶ約束を取りつけたようです。後日私のことも紹介してくれるらしく、会うまでは秒読みと言ったところですね。ミカさんがあれほどまでに夢中になる生徒...いったいどんな方なのでしょうか。
「ナギサさま、ココロちゃんをここにお呼びしたらいいんですよね?」
「ええ、何か確認したいことでも?」
「大したことではないんですけど、ココロちゃん萎縮しちゃってるみたいで何を着て行けばいいのかって迷ってるみたいなんです。制服で来るんだったら別に粗相も何もないんですけどね。」
「ふふ、そういうことですか。私は制服でも構いません、と伝えてください。幾分か悩みの種が晴れるでしょうから。」
「あはは、気を遣わせちゃったってまた悩みそうですね! でも、伝えておきます!」
⌚
長机に様々なお菓子を用意し、お湯を沸かしておく。柄にもなく少し楽しみにしている自分がいる。最近は落ち着けなかったのだ。
ティーパーティーの任を継いだばかりでえっちらおっちらやっているのに周りは分派がどうだ、政治がどうだ。私だって女子高生なんです。たまには気の置けない友人と普通に過ごしてみたい。
これは、その一歩になりえる。期待外れだったらどうしようと思わなくもないのですが、今はただ友人を作りたくてたまらない気分です。
こん...こんこんこん...と、遠慮がちに四回ノックの音が鳴る。「どうぞ」と声をかけると、「は、はぃ...しつれいします~」と緊張で上擦った声が返ってくる。
かちゃりと丁寧にドアが開かれ、姿が見えた。写真で見た格好とは違い、制服を着ていてロングヘアは後ろで綺麗に纏められている。
「ようこそ、急にお呼びだてして申し訳ありません。ティーパーティーの桐藤ナギサです。」
「い、いえいえ滅相もない! ナギサさま! 丁寧にありがとう...ございます! 藍園ココロです! ...あの、その...今日はどうしてお呼びになったんでしょうか?」
「ふふ、かしこまらなくても、普段通りで構いませんよ。ミカさんがどうにもお世話になっているとかで、興味が出てしまって一目会ってみたいなと思ったんですよ。」
「う、うーん。そういう訳にも...ってミカ先輩が私の事を話したんですか! 何か失礼なことでも言っちゃったかなぁ...怒られちゃう? 」
「ふふふふ、ミカさんはそれはそれは楽しそうにあなたの事を紹介していましたよ。失礼だったなんてことはなにも、怒られるなんてもってのほかですよ。」
「...? ...!? 声に出てましたか!!?」
「えぇ、バッチリと。」
「バッチリかぁ...もう、思ったことが口に出ちゃうの直さないと!」
確信しました、この方は政争などという腐ったやり取りを全くしなくていい。ただのトリニティ総合学園における後輩であると。守るべき友人であるとはっきりとわかりました。
だんだんと打ち解けてきたようで、緊張がほぐれて会話しやすくなってきた。少しリラックスするとなんだかほわほわとした雰囲気が出てきました。こんな感じの雰囲気がココロさんの本来の在り方なのでしょうね。
「ねぇ、ココロさんとお呼びしてもよろしいですか?」
「ぜ、全然構いませんよ!」
それからも話が続き、どこでミカさんと出会った。ヒフミさんと友達になれて趣味が増えた*2とか、ここに来るまでかなり緊張してしまい周りから笑われてしまったなどなど他愛もない話をした。
たったそれだけですが、ひどく楽しい時間でした。いつもは心労で紅茶の減りが早かったのに、いまは二人で映画や小説、お菓子の作り方などを話しながらお菓子をゆっくりと摘まんでいる。
次第にお菓子が減り、紅茶が切れかけたころ。ふと、思い出しました。連絡先を交換していない。
「モモトーク、交換しません?」
「モモトーク、はい! 問題ないでってえええぇぇぇえ!?? モモ、モモモモトークですか?!」
「はい、モモモモトークです。」
「い、いいんですか? 私、なんにもお役に立てませんよ...?」
「ココロさんがよろしいなら、ですけれど。...私は役に立つ立たないで連絡先を交換したりしませんよ?」
少しあざとく頬を膨らませてそう言うと、やはりわたわたして「すみません~!」と弱弱しく謝罪をしておずおずとスマホを差し出してきました。
受け取ってモモトークの連絡先を交換する。そのまま渡してきましたがココロさんに警戒心というものは存在するのでしょうか...? 悪い人にもこんな感じで差し出すのではなかろうか...まぁ、この辺はまた"次"に教えてあげましょう。
「はい、交換できました。また、お茶会を開いてお話しましょ? 今度はあなたの好きなお菓子をご用意させてもらいますから。」
「あ、ありがとうございます! ...えへへ、正直嬉しいです。ナギサさまとこうしてお話しできて、とっても優しい方なんだってわかりましたから。」
「...! 私も、あなたとこうしてお話できてとても嬉しいですよ。それと、さまなんて堅苦しい呼び方はよしてくださいな。そうですね、ナギサちゃんとかどうでしょうか?」
「ま、まだそんな風に呼べませんって! あったばかりでしかも先輩でティーパーティーのお方なんですから! 私より周りの方がびっくりしそう...うーん、ナギサ先輩。とかじゃダメですか?」
「先輩...良い響きですね! では、そのようにしましょう。」
先輩だなんてなかなか言われたことがない響きです。今までは様付けされることが多く、ティーパーティーになる以前も後輩とは然程の交友もなく、家系のこともありやはり様付けしかされていないのだ。
ともすると、ヒフミさんを除いて初めての後輩らしい後輩と言えるだろうか。
こうして先輩と後輩、二人のお茶会はあっという間に時間が過ぎて、気づけば二時間近くも話してしまいました。
「そういえば気になっていたんですが、ミカさんとはどこで知り合ったんでしょうか。」
「ミカ先輩とですか?」
「はい、確かに身内には明るいミカさんですが。ミカさんは身内にも、ましてはただ知り合っただけの人にはあんなデレデレとした姿は見せません。どういう交友なのでしょうか。」
「で、デレデレって...うーん、大丈夫なのかな話しちゃっても。」
そんな質問を投げかけてみるとしばし間が空き、回答が返ってきそうです。はしたなくも少しだけ前のめりになって聞こうとしましたが...。
パタパタパタパタパタ
失念していました。確か大体この時間は...。
「あーーーーーーーーーー!! 居たぁ!!」
少し過ぎていますが、ミカさんがテラスに来る時間でした。ズカズカ歩いてきてココロさんを横から両手で抱き寄せて私から守るような姿勢を取る。なにやら膨れ顔。
「ナギちゃん! ひどいよ!! 今日の執務ちょっと多めにしたでしょ! たーいへんだったんだから!!」
「多めにした...? 私はミカさんが残していた書類を全部見えるところにおいて期限を早めに書いておいただけなのですが。」
「うーーー、そうとも言うけど!」
「そうとしか言いません。」
「ともかく酷いよ! ココロちゃんと黙って会うなんて! ねぇね、ココロちゃん変なことされてない? 分派変えるように言われてない??」
「わわわわたしは大丈夫なんで離してくださいせんぱいがくがくされるとはなせなぁぁ~」
「落ち着いてくださいミカさん。私とココロさんはお茶をしていただけですよ。」
ココロさんを抱き寄せてがくがく揺らすミカさんを宥める。ミカさんの力で肩を揺すられたらまぁまぁシャレにならなさそうです。
目を回したココロさんを見てようやく気が付いたらしく、揺するのをやめてごめんねモードに入っている。
「ミカさん」
「...な~に、ナギちゃん。」
「良い方を友達に選びましたね。」
「...うん、私にはもったいないくらいだよ。」
優し気にココロさんを抱き寄せるミカさん、ココロさんは照れて顔が少しだけ赤くなっている。
「そういえば聞きそびれてしまったんですが、どのように出会ったんですか?」
「うーん、おしえてあげない!」
「どうしてですか?」
「出会いは劇的で、と・く・べ・つ! だからだよ! ね? ココロちゃん~。」
「...........」
「...胸の中で気絶してません?」
「わーお、やっちゃった☆」
「ミーカーさーん~??」
「わーーー!! ごめんなさーーーい! おきて~~ココロちゃーーん!!」
お茶会は急転直下に終わりを迎えましたが、これからこの関係はまだまだ緩やかにつづいていきそうです。
また一緒にお話ししましょう、ココロさん。
展開が急すぎるか...?補足や訂正は編集やら別の話とかで補完、蛇足としてお出しします。
誤字脱字報告などあればどうぞお気軽に。