キヴォトス日常的女子高生   作:亜侠人

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 なんか調子こいて書いてたらミカがとんでもなく重い女の子になってました。
 こんなこと書くつもりじゃなかったけどいっか!重い子の方がかわいいこともある!


#出会い #後輩 #捜し物

 「え、え、やばいやばいやばい! ど~しよ!! ないないなーい~!!」

 

 放課後、ティーパーティーのお茶会に向かおうとしていた私は失せ物に気が付いた。

 部屋の鍵が見当たらない。ポケットに入れたと思ってたけど落としたみたい! やばいやばいどーしよどーしよ。このままじゃ会議に身が入らないよ。

 あまりの焦りに口に手を当てつつ来た道をよく見ようと探していると、こっちにパタパタ誰かが走ってきた。

 

 「あの、何か探してるんですか?」

 

 ロングヘアの綺麗な子が心配そうな目でこちらを見ている。パテル分派の子かな? 最近は取り入ろうとしてる子たちがいるからこの子もそうなのかなぁと思うとちょっと残念。

 適当に返事して帰らせちゃおうかな。

 

 「この辺に落とし物しちゃったかもしれないから見てただけ。ありがとね、気にしないで」

 「気にしないでって、そういう訳にも行きませんよ。落とし物してるなら大変じゃないですか! 何を落としたんですか? 一緒に探しましょうよ」

 

 思いのほか食い下がる。今は急いでてそれどころじゃないのに。あっちいっててほしいなぁ...。

 

 「ううん、大丈夫だから。ほっといて!」

 

 「...いやです。そんな困った顔してる人見過ごせません。邪魔にならないようにしますから、何落としたのかだけ教えてください」

 

 ついつい、毒が出そうになる。ほっといてって言ってるのに、ちょっとウザい。もういいや、こうなったら無理そうなこと言って追っ払おう。

 

 「うん...じゃあ教えるね。自室の鍵落としちゃったからさ、そっちの側溝の方全部見てきてくれる? 私はこっち探すからさ」

 

 「か、鍵って大変じゃないですかちょっと! わ、わかりました。こっち側よく探しますね!!」

 

 「そうだよね、あっちいってて。...ってえ? 探すの?」

 

 「探しますよそりゃ! もし悪い人がとってたら大変じゃないですか! え、違うんですか?」

 

 「ち、違わないよ。じゃあ、よろしくね」

 

 「はい、わかりました! この辺にあるといいんですけどね~」

 

 なんだかよく分からないけど手伝ってくれるらしい。無駄に話しかけてはこなさそうだから結果的にはまぁいいのかな? 

 そんなこんなでこっちはこっちで探しているがなかなか見当たらない。お気にのストラップだってついてるけど、会議に遅れちゃ話にならないから本当に仕方ないけど落とし物として届けが出るまで待とう。寮長さんに言ってスペアキーを貰えばいいし。

 あの子の方を見ると、スカートだっていうのに凄い姿勢になりながら低い場所を探している。あって間もない人のものだっていうのに必死になってて少しだけ見直した。

 今日はその必死さに免じてこの辺で帰してしまおう。あんまり時間とっちゃうと悪いし。

 

 「なかなか見つからないね。今日はちょっとこれから予定あるからさ、帰っちゃってもいいよ」

 「あ、用事あるんですね! じゃあちょっと待ってください」

 

 彼女はいそいそとスマホを出すと、

 

 「思い当たる場所だけ言ってくれれば探しとくのでちょっとだけお願いします!」

 

 言われるがままに場所を粗方伝えるとまた捜索に戻った。膝が汚れるのもいとわず屈んでは膝をついて探してる。

 まあ飽きたら帰るだろうと思い、礼だけ言ってその場を後にした。

 

 ⌚

 

 「ミカさん、どうしたんですか。ソワソワして、何かありましたか?」

 

 「トイレならさっき行ったばかりだろうに、溢れないうちに早く行った方がいいんじゃないかな」

 

 「セイアちゃんげひーん! なんでそんなこと言うのかな! 別にそういう訳じゃないから、ちょっと気になってることがあるだけ!」

 

 「冗談だよ、にしても落ち着かないね。悩みがあるなら早いうちに言った方がいいこともあるよ」

 

 「ううん、そんな大した悩みじゃないからいいや。ありがとね」

 

 失礼しちゃうよセイアちゃん。最近予知夢を見てあたふたしてたのは自分の方だってのにさ! にしても、あの子帰ったのかな。見つけたにしてもモモトークも交換してないんじゃ連絡も何もないじゃんね。

 なーんて思っていたらぽつりぽたりと濡れる感触。

 

 「あ、雨だ」

 

 「あら、急ですね。予報では降らないと言っていたはずですが」

 

 「今日はお開きだね、さすがにテラスではこの雨模様でお茶会を続けることはできない」 

 

 お茶会はお開きになっちゃった。まだお気に入りのケーキを食べてないけど、帰りが遅くなりそうだししょうがない。

 てか、帰り最悪じゃん。やだなぁ...さすがにあの子も探してたって帰ってるよね。後でもっかい探しながらかえろーっと。

 片付けを終えて、帰路につくと。さっきの場所とは違う側溝の近くにもそもそと人影が見えた。

 

 「うーーーーーーーん、と、とれないぃぃぃぃ.....」

 

 それはあの子だった。まださがしてたんだ! ずぶぬれで側溝に手を突っ込んで何かを取ろうとしてるみたい、もしかして。

 

 「ね、ねぇ! まだ探してたの?! 風邪ひいちゃうから早く帰りなよ!」

 

 「い、いや、それがちょっと前に見つけちゃったんですけどこの側溝に入ってて! 雨が降り出しちゃったから早くとらないと流されちゃうと思って側溝ちょっとだけ開けて腕突っ込んだら挟まって取れなくなっちゃったんです~!!」

 

 目をグルグル回してどうしよどうしよと慌てる姿は少しだけ笑えちゃう。キヴォトスに住んでる子なら大抵力が強く少し長めの側溝でも簡単に持ち上がるはずだけど、この子はすっごく力が弱いみたい。

 

 「えい☆」

 「ワッ! えっあっとれた! とれました! うわーーーんありがとうございます~! 助かりました~~!」

 

 左腕の挟まってたところをさすりながらぺこぺこと謝り倒された。

 ひとしきり謝ると彼女は雨宿りできるところまで来ると鍵を渡そうとしてきた。

 ありがとね~! と、受け取ろうとすると。

 

 「あ、これじゃ汚れちゃいますね」

 

 と言ってハンカチを取り出して拭いてから渡してきた。ストラップも少し汚れちゃったけど無事だった。

 ストラップもきゅっきゅと拭くと満面の笑みでこちらに渡してくる。ぼろっぼろじゃんね。

 なんて言うか...。

 

 「ふふ、おバカさんだね。なんでこんなにボロボロになってまで探しちゃうの。帰ったって誰も責めやしないし、見返りなんて期待できないのに」

 

 「あはは、よく言われるんですよそれ。何の得にもならないのにって、見捨てたって責めやしないのにって」

 

 「なら、どうして助けようと思ったの? 私が、ティーパーティーの役員だから?」

 

 「え、そ、そうだったんですか!? やっばどうしよう~! 気安く話しかけちゃったよ~!? 

 

 「あー、なんでもないよ! なんだ違うのかぁ、なら猶更どうして?」

 

 政治的な目的もない、何か特別な礼も食い下がって要求するわけでもない。わからない。

 曲がりなりにもこのトリニティのトップに立つ立場の私だし、見返りもないところでがんばろうなんて人の事はちょっとまだ良く分からない。

 どうして、どうしてそんなに得もないのに満足そうなの? 

 

 「困ってる人を見過ごしちゃったりして、その人がずっと困ったまんまだったら。あの時助けてればなって思っちゃうんです」

 

 整った眉毛をハの字にして気まずそうに言う。

 

 「別に自分が関われば絶対解決できるなんてそんなことはないんですけど、そんなことは分かってるんですけど。助けようとしたなら、最後までやり通そうとしたなら。やりたいと思えたことから逃げようとしなければ。

 

 小さく呟いた言葉は、はっきりと聞こえた。きっとこの言葉はこの子のおまじないなんだ。何かへ対する贖いなんだ。

 

 「私は、私を責めようとしない筈なんです。胸を張って、生きられる気がするんです。痛みを気にせず、寝られる気がするんです。だから、だから、この目に映るすべてに手を伸ばそうとするのは、厚かましいことでしょうか...?」

 

 呪いにも似たその姿勢。満面の笑みも、初対面でも分かるくらい少しだけ無理しているように見えた。

 

 「…あなたは欲張りさんなんだね」

 

 彼女の顔が少し曇る、紛れもない事実だから。自分の慰めのために他人を助けるあなたは間違いなく傲慢で強欲だ。

 でも、でもね。

 

 「"神はあなたがた一人一人に賜物を与える。それぞれに与えられた賜物によって互いに助け合い、神からのさまざまな恵みを他の人と分かち合いなさい。"」

 

 「今日あったばっかりであなたのことなんてなーんにもしらない。あなたになにがあってそう望むのかは知らない」

 

 「けどね」

 

 「あなたがすることは自分の為であっても他者や友人に喜びを与えてくれる。あなたが今日に安心して眠れるように、あなたの献身に、祈るね」

 

 少し羽根で包んであげると、強張った顔が少しだけ緩む。雨脚が弱まると、急に自分のしてることを自覚してちょっと恥ずかしくなる。

 

 「...ていうか!! ......こ、こんなところで話してる場合じゃないね。早く帰ってお風呂にでも入らないと! ほらほら帰るよ! 寮はどこ?」

 

 「そ、そうですね。私は〇×〇棟です」

 

 「え、おんなじ棟じゃん。何号室?」

 

 「△△×号室です」

 

 「え、えぇぇぇそんなことあるの??」

 

 「???」

 

 困惑してるところ悪いけど、私の方が困惑してる。

 

 だ、だって...

 

 「それって隣の部屋じゃんね!!」

 

 「えうえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ??!」

 

 「じゃああなたが藍園ちゃんなんだね!」

 

 「そ、そうです。藍園ココロって言います。そっ、それじゃもしかして...」

 

 「私がパテル分派代表。聖園ミカ先輩だぞ~!」

 

 「」

 

 なーんで気づかなかったんだろ! 時々見かける子じゃんこの子! 

 

 「...一緒に帰ろっか...?」

 

 「あ、はい」

 

 ココロちゃんとの邂逅はこんな感じ、なんだかおかしな出会いだよね。

 

 「あ」

 

 「どしたのココロちゃん」

 

 「鍵忘れてきちゃいました」

 

 「...わーお、ミイラ取りがミイラになっちゃったね☆」

 

 「どどどどうしよう...学校はもうしまっちゃったし..」

 

 「...ウチ、泊まる?」

 

 「え、え、いいんですか?」

 

 「いいよ~、寮監の人にも怒られちゃうし早く帰ろ~」

 

 「はい! ありがとうございます!」

 

 ホントは寮監さんに言えばスペアで開けられるしマスターキーだってあるんだけど...いっか! 話したくなっちゃったし。

 最近買った新しいお菓子もあるし、今日はゆっくり話しちゃおうかな☆

 


 

 それからというもの、私はココロちゃんと一緒に遊ぶようになった。ココロちゃんは何と言うか、あぶなっかしい。

 困っている子を見かけると一目散に駆け寄っていって助けようとする。危険なことにも突っ込んでくけど、いかんせん弱い。

 ヘルメット団なんかに巻き込まれてる子を助けたりするときもあったけど、10人程度の集団にも勝てない。正実が呼ばれてても大体先に交戦してぼこぼこにされてる。

 なんで距離もないのにSRを使うのか分からないけどこの銃の精度だけは褒められてるから使ってるらしい。

 確かに精度は良いかも、大抵一人は先制して落とせてるし。そのあと人数差でぼっこぼこだけど。

 戦い方的に私が持ってるようなSMGとか正面切って戦えるSGと盾をもって戦った方が向いてそうなんだけどね*1

 でもいいや、ココロちゃんは手助けを拒まない。私が助太刀しちゃえばあっという間に解決するし「さすがセンパイですね!」って褒められるもん。

 そんなこんなであっという間に一か月、いつの間にか私はココロちゃんのいない日が退屈になっちゃった。我ながらちょろいな~と思う。

 でも、この一か月この子のことをずっと見てた。笑った顔、怒った顔も見た。センパイセンパイと頼りにされたことも、困りごとを解決して喜んでるとこも解決できなくて無力感をかみしめていたところも。

 とっても眩しかった。地位もないし力もない、それでも大きく手を広げて自分の見える世界を少しでも自分に誇れるものにしていく。

 私もなにかしてあげたい、抱えた悩みを全部受け止めてあげたい。その伸ばしてボロボロになった手をもっと大きくしてあげたい。出来ればあなたに、楽園を

 

 「せんぱーい...せんぱーい?どうしたんですか、置いてっちゃいますよ?」

 「...ごめんごめん!なんでもなーい☆すぐ行くよ!」

 

 今は私もまだ手一杯、あなたの手をただとって一緒に遊ぶだけ。

 私が何もかもを持ち上げられる力を持ったその時は─────あなたの手を取って連れ去ってしまおう

 

 

*1
盾なんか持ったら際限なく突っ込むが




特殊タグとやらを今回も試験的に導入しました。
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