フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」   作:アンディライリーのうさぎ

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今話を含め、あと7話で一章は終わります。


11話 柱間ファイアトルネード

 天元との攻防の副産物で、オレも結界術を扱えるようになった。と言っても、あやつには遠く及ばない。

 

 この知識を利用して、屋敷に結界を張っている。防犯センサーのようなもので、誰か侵入してくると気づくことができる。天元はなぜかこのセンサーに引っかからない。

 

(この子どもには悪いが、外に出すわけにはいかんからな…)

 

 任務地で出会した、サイコパスの少女。そんな少女を連れ帰ってきた。上に事情は説明して、当分は自分の家に置いておくことになった。万が一があっても、オレだったら反転術式で自分の傷を治せる。

 

 ひとまず結界を少しいじって、少女が外へ出られぬように設定した。

 

「よし、メシの前に風呂に入るぞ!」

 

「……フロ?」

 

 この時代は一応蒸し風呂がある。サウナみたいなものだ。この風呂は一般人だと滅多に入ることができない。

 現代っ子のオレは、やはり肩まで熱い湯に浸かりたかった。

 

 その点でいうと、オレの『木遁操術』は浴槽をいつ何処でも作ることができる。オレのこの力は、浴槽を作るために目覚めたのかもしれないとさえ思う。

 

 ただし外的な要因で、例えば物質を【木→(燃焼)→炭】のように変えようとした場合、この「燃焼」の段階で木が崩壊してしまう。そのため薪などは別途で用意する必要がある。

 ちなみにオレの術式と火は相性が悪いが、呪力で補強すれば何の問題もない。薪用の実験として出した木は逆に、燃えやすいよう手を加えていた。

 

 

 さて。まず木の浴槽を用意して、次にどでかい窯に水を貯める。その水をあらかじめ用意しておいた薪を燃やして熱し、お湯の完成だ。

 

 水は毎日新しいものに変えるのは難しい。そこら辺は割り切るしかない。また石鹸やシャンプー等もない。代替品のようなものはあるが。

 

 オレは面倒なので、炭を利用している。現代でも炭でできた石鹸や、消臭剤があった。炭は万能素材なんじゃなかろうか? 

 

 

(風呂だ…! 風呂をよこせェ…!! オレは早く風呂に入りてぇんだ…!!)

 

 

 禁断症状が出てきたところで、ようやく風呂である。

 

 使用人たちには、少女が食べやすい料理を作ってもらうようにお願いした。

 風呂は竹垣で囲った場所に用意している。そう、露天風呂だ。星を眺めながらひとっ風呂もできる。

 

「………」

 

 ちびっ子は浴槽のヘリをつかみ、ジッと湯を見つめている。ついで、炭を砕いたものを手にし、まじまじと見つめた。

 

「風呂の前に体を洗おうか。髪を洗ってやろう」

 

「……見たことのないものばかりだ」

 

「そうだろうともさ。世の中は広いのだ」

 

「面白いよ」

 

「…そうか。人の中身なんぞより、きっと面白いものがこの世にはたくさんある」

 

 この子どもは知的好奇心の塊だ。接するうちに気づいた。そして気になったものを調べる際に、選んだ手段が良いか悪いのかを判断する倫理観(ブレーキ)がない。

 サイコパスは確か、先天性のものなんだよな? だったら、この子どもが気になったもの次第で、更なる被害が生まれるかもしれない。

 

「……なぁ、親を手にかけた時、お前は何を思った?」

 

「何を思ったか?」

 

「あぁ。罪悪感はあるのか?」

 

「ザイアクカン?」

 

「自分が両親に、「すまなかった」と思う心だ」

 

「んー……なかったかな」

 

「そう、か……」

 

 本当なら、この少女は死ぬはずだった。しかしオレが拾ってきてしまった。

 人を殺したとしても、まだ子どもだからと。改心の余地があると思った。しかし話を聞いて、これは無理そうだと分かってしまった。

 

(──オレの責任だな)

 

 ならば、何が何でも改心させるしかない。この子どもが将来、大罪を犯さないように。

 

「なぁ、オレの養子にならないか?」

 

「いいよ」

 

「三食昼寝つ────即答かッ!!」

 

「だって、面白そうだから」

 

 養子をいつか取りたいと思っていた願いが、ひょんなことで叶った。その養子がとんだサイコパスなのはまぁ、仕方ないとして……。

 

「一つ、約束してくれ。お前の好奇心で、人を殺すようなことはしてくれるな」

 

「どうして?」

 

「それが常識というものなんだ。お前が生きていくには、その常識を守る必要がある」

 

「でも、人間は増えるよ? 私が一人二人、減らしたところで」

 

「………守れぬというなら、オレはオレの責任を取る」

 

「へぇ、私を殺すんだ? 養子にすると言い出したのは、柱間なのに」

 

「そうだ。オレが、娘のお前を殺す」

 

「…………まぁ、分かったよ。柱間の目が届いているうちは、人を殺すのはしないよ」

 

「約束だぞ」

 

 小指を差し出すと、向こうは不思議そうに首を傾げた。約束をする時の、(まじな)いのようなものだと教え、指を切った。オレの知る限りで、この時代にはまだ指きりがない。

 

「じゃあ、よろしくな。────あっ、名前聞いてなかった」

 

「今更か」

 

 サイコパスのパンチが強すぎて、うっかり忘れていた。

 名前を改めて尋ねると、少女は名乗った。

 

 

「私は『羂索』だよ」

 

 

 こうして、オレに養子ができたのだった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 毎日三食(普通は二食だが)食べてきっちり睡眠をとっている羂索は、すっかり健康体になった。知的好奇心が服を着て歩いているようなこの子どもは、さまざまなものに興味を示している。「外に出たい」とも言われた。

 

「オレと共に出かけるなら構わん」

 

「じゃあ、それでいいよ」

 

 羂索はオレの術式にも興味を持ったらしく、色々と質問を受けた。本があったら、もっとよかったかもしれない。紙はあるにはあるが、とんでもなく貴重だ。

 

 それと、オレが羂索に蹴鞠を教えていた時のこと、天元がやってきた。

 

 

「こうしてな、屋敷の上まで蹴り上げて、そこから跳んで……」

 

「やあ、柱間」

 

 

 ちょうどオレがジャンプして、オーバーヘッドを決めた瞬間だった。蹴った鞠が木に勢いよくぶつかって止まる。

 

「おぉ、久しぶりだな、天元」

 

「私に何か言うことは?」

 

「…何か、とは?」

 

「言うことがあるはずだ」

 

 蹴鞠を回収してきた羂索が、オレの後ろに隠れた。腰のあたりをギュッとつかんでくる。こういうところは普通の子供なんだよな…。

 

「ええと……もしや養子の件か?」

 

「それ以外にあると思うかい?」

 

「…では、紹介しておこう。娘の羂索だ」

 

「………」

 

 羂索を前に出そうと試みるが、オレの周囲を回るように逃げられる。次第に目が回ってきたオレは、膝をついた。

 

「弄ばれているじゃないか、君。笑われてるぞ」

 

「じゃじゃ馬なんぞ、こやつは…」

 

「ねぇ、三人で蹴鞠しよ」

 

 羂索の一言で、天元を交えた蹴鞠が始まった。オレはなるべく加減して鞠を蹴る。うっかり暴れ鞠になった時は、術式を使って二人を守る。

 

 順番は、【オレ→羂索→天元】の順だ。元の蹴鞠のルールは完全に無視している。天元に渡ったら、次はオレに渡り、最初からだ。

 

「ほれ、羂索」

 

「よっ」

 

 胸部で鞠を受け止めた羂索は、上に鞠を蹴り上げ、それを足で蹴り飛ばした。

 その鞠は天元の顔目がけて一直線に飛ぶ。直撃する前に天元ごと木で覆った。

 

「おっと、足が滑った」

 

「柱間ァ! この小娘性格が悪いぞ!!」

 

「……順番を逆にしようか」

 

 しかし、オレが蹴った鞠を天元が受け止め、そこから羂索に向かって蹴ることができない。鞠があさっての方向に飛ぶ。

 

「……実は、蹴鞠は久しぶりなのだ」

 

 天元がもじもじとそう言った。

 

「もっと距離を詰めて行おうか」

 

 サッカー感覚で距離を空けてしまったオレも悪かった。それから距離を詰めて蹴り始めると、上手く続いた。たどたどしかった天元の動きも、次第にかつての感覚を取り戻したようで、生き生きとしていく。

 

 時間はあっという間に過ぎていった。天元が「また来るな」と手を振る。オレも振り返した。ついでに、座って羂索の肩に手を置く。

 

「お前も手を振ってあげなさい」

 

「……仕方ないね」

 

 羂索も天元に手を振った。夕日の色で世界が赤く彩られる。天元を見送り屋敷に戻る途中、着物の裾が引っ張られた。

 

 

「………蹴鞠楽しかったよ、柱間」

 

 

 オレは思わず羂索を抱きしめた。それに羂索は鬱陶しそうな顔を浮かべる。

 

 オレもな、今日はうんと楽しかったよ。お前や天元と遊べたからな。

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