フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」   作:アンディライリーのうさぎ

14 / 47
間話も同時投稿です。


14話 相談しましょ、そうしましょ

 天元の結界は、外部から侵入してくるすべての呪霊から都を守れるわけではない。一定以上の力を持つ個体は侵入することができる。

 

 また、都内部で発生した呪霊はその是非に入らない。天元は呪霊発生の抑制効果を結界内に組み込みたい──とも語っていた。

 

 オレたち呪術師は普段、お巡りさんのように都をパトロールしている。

 この際、オレ以外は複数人で行動している。連携して戦った方が周囲や呪術師の被害を抑えられるからだ。

 

 制服の意図で、黒い羽織を着物の上から身につけるようにもしていた。基本的に呪術師は“都の守備”を上から任せられているため、外の呪霊には関与しない(外から結界内へ侵入してきた場合は異なる)。ただし、場合によっては退治に向かう。例えば呪霊による被害があまりにも多い場合などだ。

 

 スマホのような通信機器が無いのはやはり不便である。呪霊の討伐する呪術師を見た民間人に、恐怖を与えてしまうこともある。それでトラブルが起こってしまうこともあった。

 

 非術師には呪霊が見えない。その違いが、非術師の中で認知の歪みを生む。マスメディアの風刺画のように。

 

「ハァー…」

 

 今日もトラブルに遭った後輩が落ち込んでいた。呪霊を倒せたはいいものの、その後に人々から白い目で見られたらしい。

 

「柱間様も、人々に恐れられることがあるのですか?」

 

「オレの場合遠隔で処理できてしまうから、あまりないな」

 

「そうですか…」

 

「それでも完全にない、というわけではない。守ったのにも関わらず罵声を浴びせられたり、石を投げられることもあった」

 

 そうした現状に耐えきれず、辞めていった呪術師もいる。殉職した者もいた。

 仕事の危険性や精神面の辛さ。それを踏まえて続けられる者は、それなりの理由がある。例えば呪術師になると、それなりの身分と生活が保証される。功績を上げれば高い身分になることも可能だ。

 

「またはオレのように、自分の命よりも人の命を救わんとするような、酔狂なやつだけさ」

 

 実際にそれで前世は死んだからな。

 

「……私は、柱間様のようになれる気がしません」

 

「それでよい。人を助けて死ぬような阿呆者は、オレくらいでいい」

 

 背を叩くと、後輩は「…わかりました!」と、先ほどより曇りの晴れた表情で大声を上げた。

 思わず、若いなぁと思った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

「この世には、『術師』という特殊な力を持った人間たちがいる」

 

 

 天元は、非術師の傍聴者が増えるにつれて語る内容を少し変えた。

 

 術師たちの道徳話は変わっていない。そこにまず、この世には『術師』という者たちがおり──と付け加え、『呪術師』と『呪詛師』について語る。呪術師は呪霊を倒し、呪詛師は人にあだなす者たちだと。

 

 そこから術師の道徳というものを語っていく。そして、そんな特別な力を持つ者に対してどう非術師たちが接していくべきなのか、彼らに問いかける。

 

 天元の“問い”に人々がどんな“答え”を見出すのか。その答えは千差万別だった。

 

(偏った問いかけは、偏った考えを生む………ゆえに問いかける側の私は、中立で在らなければならない)

 

 天元は超常とした雰囲気や語る内容から、人々に魅入られやすい。現に今も呪師ではなく、『神使』のように扱われている。さらに不死の噂がより神聖さに磨きをかける。彼らからすると「不死」は、術師たちの力より超然としたものだった。人間では、絶対に()()()()()ものであると。

 

 たしかに彼女は歳の功と、壮絶な人生経験から得た達観した部分がある。

 だがそんな天元もまた、一人の人間だった。

 

「結界に呪霊の発生を抑圧する方法を組みこむことはできなくないが、そうすると都を覆う大規模な結界の生成は難しくなる。……いや、それよりも先に、呪術師が呪霊を退治する際に、周囲に見られぬよう簡易的な結界を制作する方法を見出さねば………」

 

「仮に天元が認知阻害の結界を作るのだとしたら、結界内部の事象をこと細かく把握できなければならないね」

 

「そうだ。小規模ならまだしも大規模の結界となると難し………おい小娘、いつからそこにいた」

 

「それを言うなら、ここは私の家だよ」

 

「お前の家じゃない、柱間の家だ」

 

「……ッハ!」

 

 ブツブツと考え込んでいた天元の隣には、羂索がいた。第二次性徴も終盤な羂索は、すっかり天元に並ぶ大きさになった。

 

「面白そうなことを考えていると思ってね。私も混ざってあげよう。貴様が「お願いします」と申すなら」

 

「いらん! 小娘の力などなくとも、私一人で……」

 

 しかし羂索が出したアイディアのいくつかに、天元はぐぬぬ…と唸った。

 羂索の発想には新しさがある。さらにその発想の根底には、結界術の才能と、努力を惜しまない精神も付随している。

 これも世の太平と、柱間のため。天元は頭を下げた。

 

「頼む、小娘…」

 

「だが断る」

 

 羂索は殺気のこもった天元を見て、笑いながら走って行った。残された天元は羂索のヘイトゲージを一気に溜めた。しかし、ふと気づく。先ほどのポツポツと聞いたアイディアが、どれも今天元が考えている結界の構想に役立つかもしれないことに。

 

「………気に食わん」

 

 天元はポツリとそう呟いた。

 

 

 一方で羂索も「やはりあの女とは気が合わないな」と思った。

 

 しかしこれも養父のためになるならと考えれば、存外悪くない。

 さっさと仕事を減らして、早く帰ってきてもらいたい。

 

 あの男がいない屋敷の中は、ひどく殺風景だからだ。

 

「退屈なのは、嫌いなんだよ」

 

 それに仮にも『父親』なら、何よりも一番大切にすべきなのは『家族(むすめ)』だろう。市井を周り人間を観察していく中で、羂索はそう思うようになった。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 呪術師は非術師の人々をたやすく殺せる力を持つ。

 少しずつ、人々の呪術師に対する恐怖は溜まっていった。

 

 この状況に目をつけたのが呪詛師である。

 

 呪詛師と言っても、一部の者たちだ。彼らは『現代の最強』と謳われる男に不満を募らせていた。柱間が抑止力になっているせいで、自由に動くことができないのだ。あの木の力は柱間の呪力量も相まって、より凶悪さを増す。

 

「奴を殺すのだ」

 

 それが結集した呪詛師たちの目論見であった。

 

 

 彼らは打倒・柱間を名目にし、裏で力を募った。都外からも呪詛師を集め、戦力を増員していく。

 

 そんな彼らの動きに、気づいた者たちがいた。呪詛師と同じく暗い巣を拠点とするもの。呪術師を政治的な力として利用したい、一部のお上の者だった。

 

 柱間の抑止力によって動きにくくなっていたのは、呪詛師だけではない。一部のお上の人間も同じだった。この二者の共通点により、彼らは柱間が『現代の最強』として名を馳せるようになってから、徐々に距離を縮めて行った。だからこそ、このお上の者たちは、呪詛師たちの動きに気づけたのだ。

 

「我らも協力しよう」

 

 目的は同じだった。最強の男を殺すという目的だ。

 

 募った呪詛師たちは「現代の最強である『樹神』をあがめ、術師を非術師から救わんとする」と銘打ち、人々を殺害し出した。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。