フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」   作:アンディライリーのうさぎ

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週1だとメンタルがじわじわと殺されていくことに気づいてしまったので、やはり連日投稿に戻します…。


18話 世界はそれヲォ、鬼畜と呼ぶんだぜェーーーー!!

 10も歳の離れた弟が生まれた。オレと同じ白い髪で、白い肌をした弟だ。ただし目の色は違った。オレの目はカラスのような、真っ黒な色をしている。

 

 触れたい自分と、躊躇する自分とでウロウロするオレに見かねた母が、「はい」と赤ん坊を抱かせた。全体的には白いが、頬は真っ赤だ。突いてみると、妹の時のように柔らかかった。

 

 小さな命だった。だからこそ、生命に満ちている。

 

「……オレ、お前を守れるようにもっと強くなるよ」

 

 

 

 家族のためにできることは何か、オレは悩んだ。

 病気は治せないが、傷などは自他含めて治すことができる。最近は欠損させても綺麗にくっつけることができるようになった。

 これが「癒しの力」と広まれば、大枚を叩いてでも治してほしいと頼む者が出てくるだろう。

 

「でも、やはりなぁ…」

 

 心のオレが、それはやめておけ、と言っている。

 

 この勘には従っておいた方がよいと思った。なら別の方法を探さなければならない。

 

 理想は自分の「癒しの力」以外の『気』を活かした力を身につけ、家族が今よりも裕福に過ごせるようになることだ。しかし、そんな都合のいい話はないだろう。

 

 

「うわぁぁぁん!!」

 

 

 ただ、オレという人間は心底阿呆者なのか、ケガをして泣いている子どもを見るとつい助けてしまう。噂が広まれば、この力を狙う不埒な輩が現れるかもしれないというのに。わかっている。わかってはいるんだ。それでも子どもの泣き声を聞くと、オレの中の理性が溶けて治してしまう。

 

「裏松兄ちゃんすごい! どうやったの!?」

 

「……みんなには、秘密にしてくれないか?」

 

「ヒミツ? うーん…わかった!」

 

 と、その場その場で約束をしていた。

 

 

 当然ちびっ子たちが隠しきれるはずもなく──だんだんとオレの治癒の噂は、村の中に広まっていった。

 

 頭を抱えるオレに、赤ん坊を抱いた母は「お人好しのあなたが、人を助けずにいられないわけがないでしょう?」と脇腹を小突いてくる。

 

 次第に、家族以外の大人の傷も治すようになった。「嫁さんに引っかかれたんだ…!」と自分の顔を見せてきた者など、原因が自業自得な(しょうもない)者にはお帰りいただいた。

 

 やがてオレの話は村中の人間が知ることになり、この村を管轄する者にまで届いてしまった。何かこれが大事になったようで、あれよあれよという間に連れて行かれることになった。無理やり、というわけじゃない。ただ、相手があからさまにお貴族の香りしかしないのだ。断ったらオレの首どころか、家族全員の首が飛ぶかもしれない。

 

「不安でしたら、『縛り』を結びましょう。【裏松殿に付いて来ていただく代わりに、我々は貴殿とそのご家族に危害を与えず、お守りする】──という内容で」

 

「……縛り?」

 

『縛り』とは、利害による「縛り」を設けて、破ることのできない約束を決めたり、自分の能力を強化することにも役立つらしい。これを破ると、破った側が相応の報いを受けるそうだ。

 

 オレの知らない内容が次々と出てくる。そのこともおいおいは教えてくれるらしい。

 

「……わかりました」

 

 完全に信用したわけではないが、一旦は話を受けることにした。

 

 

 

 数日にもわたる道中、自責ばかりで物が喉を通らなかった。彼らが『呪術師』という人間であることは聞かされた。オレの力が『反転術式』という希少な力であることも知った。他人に使える者は彼ら(オレを連れて行っている呪術師の間)の中ではいないらしい。

 

 そうこうしているうちに、オレは人生初のお貴族様に謁見することになった。身だしなみも整えられ出会ったソイツは、オレと似た髪の色をしていた。

 

 

「俺は『菅原』と申す!」

 

 

 ()()、菅原道真の子孫であるぞ? ──と言われても、菅原道真なんて知っ………らなくもないような…? 

 少なくとも、オレ自身は聞いたことがない。しかし聞き覚えがある気がする。これも前世の知識というやつなんだろうか? 

 

「その顔は、聞いたことがある顔だな」

 

「ハァ……」

 

「分かるぞ分かるぞ。俺に他にも聞いたいことがあるんだろう?」

 

 髪が雪のようですね──と言うと、「お前も似たようなものだろ」と言われる。では身長だろうか? オレの父よりも二回りはでかい。いや、それは貴族だから栄養が十分に行き届いているのか。

 色々と聞いていき、最後に「あぁ…まさか目ですか?」と言うと、笏を向けられた。

 

 

「なぜ一番最初に指摘しないッ!?」

 

 

 だってコンプレックスかと思ったんだよ。その、コンプレックスが何かはさておき。言ったらまずいかな…と思ったんだよ。

 

 まぁ、これがオレと────『六眼』なる目を持つ菅原殿との出会いだった。

 

 とりあえず話してみてわかったのは、この男は絶対に悪人ではないということだった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 オレは菅原殿に仕えることになった。話をすっ飛ばして申し訳ないが、オレも理解が追いついていない。

 

 菅原殿は菅原家が抱える筆頭呪術師のようで、『無下限呪術師』と『六眼』を合わせ持つ人間なのだと言う。──あぁ、『呪術』の力はすでに知っている。

 

 呪術界の中でも指折りの力を持つらしいこの男がオレに興味を持ったのは、やはり『反転術式』を使えるからだった。

 

「俺はまだ反転術式が使えなくてな。どう力を扱っているのか、()たいというのが一点」

 

 まず自分の体で実践して見せると、感心した様子だった。そして、「ハァ〜……わっかんね」と言われた。六眼で呪力の流れを精密に見ても、自分で模倣するとなると話がまた違うらしい。オレの感覚を教えると、生温かい目で返された。何が、「参考にならんな」だ。オレは感覚派なんだよ。仕方ないだろ。反転術式を使う時の呪力操作だって、まさしく何度も身を削って調整したんだ。

 

「では、次は俺で試してみせよ」

 

 菅原殿は刀で躊躇なく腕を斬った。血がボタボタと垂れる。その刀傷を治してみせると、菅原殿はまた感嘆の声を漏らした。

 

「ただでさえ他人に反転術式を使える者は、ごく稀であるというのに…その歳でここまで身につけているのか」

 

「……その代わり、他の呪力操作はろくに練習できていなくて…」

 

「お前には師がいなかったのだ。それは仕方なかろう」

 

「その…それで、菅原殿は先ほど「一点」とおっしゃられましたが、他にもあるのですか?」

 

「あぁ、あるぞ。お前が“面白い男”だと思ったのだ」

 

 自分の力が悪用される可能性を知りながらも、目の前にいる人間を見過ごすことができない。なんと愉快な阿呆者なのだろうかと、この男は思ったらしい。

 

「俺はな、この目でその阿呆者の男を見とうなったのだ」

 

 菅原殿はヒゲのない顎を触りながら、口角を上げる。

 

 

「────そして、()()()()()ぞ。俺に仕えろ、裏松。その代わり、この菅原家筆頭呪術師である俺がお前の指南役になってやる」

 

 

 オレに「NO」と言える選択肢なんてなかったんだ。給与がいいとなったら断れないだろ。

 

 それに、面倒くさそうな男だと思いつつ、俺もこの男が「気に入って」しまったらしい。

 

 部下と主君。それがオレと菅原殿に関係になった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 一旦帰り、両親に事にあらましを伝えてから、荷繕いをして菅原殿の元に向かった。菅原殿は御家の筆頭呪術師らしいが、仕事を放って一人でフラフラすることが多いらしい。臣下たちが「勘弁してくれ…」な顔をしている。

 

 一応オレは菅原家に所属する呪術師ということになっている。他者へ『反転術式』を行使できるというだけで、それなりの地位もいただいてしまった。改めて、この力を磨いて良かったと思った。

 

 ちなみに両親については、「まだ幼い赤ん坊もいるし、慣れ親しんだこの村で過ごしたい」ということで、離れて暮らすことになった。

 不安を残すオレに、菅原殿は家の手の者をオレの家族につけ、守ってくださるとおっしゃった。

 

「なに、俺の力を使えば家族の顔を見に行くのも簡単────!」

 

「仕事を逃げ出すための口実にオレの家族を利用するのはやめろ」

 

「………わ、悪い」

 

 圧が子どものそれじゃねぇよ、とぼやかれる。オレは子どもだ。まだ元服していないピチピチの11歳だ。

 

 

 ひとまず菅原殿から呪力の基本的な扱い方を教わった。呪力を体に纏わせるのは、反転術式で散々と呪力コントロールを行っていたおかげでスムーズにできた。

 

 また、自分の術式についても知れた。菅原殿曰く、オレの術式は『自分の呪力を溜める』ものらしい。その溜められる限度がどれほどかは、試してみなければわからない──とのこと。

 

 ちなみに現状はまったく溜まっていない。オレが熱心に呪力を消費し続けていたせいである。指摘されなければ、オレは自分の術式に気付かないままだった。

 

 それと、術式を反転させて使用するのはやめるように言われた。この場合、『外部の呪力を吸収する』ことができるらしい。

 これは一見すると強力な力に見えるが、呪力はそもそも負の感情から成り立つもの。

 他人のその負の感情を、少量ならともかく大量に取り込めば、精神と肉体に大きな負荷がかかる…ということだそうだ。一家に一台は欲しい六眼だった。

 

 

「反転術式と相性は抜群の術式のようだな」

 

 

 ただし戦闘に特化した力ではない。オレの呪力量は術式で貯蓄できる分を見積もっても、菅原殿を超えるだろうと言われた。

 

「戦闘面でも活躍したいと申すならば、呪具をいくつか見繕ってやろう。それに呪力を纏わせればよい」

 

「感謝いたします」

 

「そう畏まらなくともよい。臣下と主君ではあれ、俺は弟のようにも感じている。何なら「お兄ちゃん」と呼んでくれてもいいぞ?」

 

「オレは貴様の弟ではない!! オレは裏梅のお兄ちゃんだッッッ!!!」

 

「ハハ、コイツゥ。冗談が通じねぇ」

 

 オレと菅原殿の様子を見ていた呪術師の反応はさまざまだった。

 

 菅原家に属する術師は菅原殿のように家の出身もいれば、オレのように勧誘されて所属することになった者もいる。彼らは内部でその力を研鑽しあう。そんな彼らの中で、六眼と無下限呪術を持つ『強者』の菅原殿は、憧憬と畏怖──その両方を引き寄せる。

 

 少し手合わせしてボコボコにされた感想としては、この男より強い術師がいるとか信じたくねぇ、だった。

 

「なぁに、反転術式が使えるようになれば、俺にはさらに新しい可能性が見えてくる」

 

「そうですか。()()使えないんですね」

 

「………よぉし、決めた! 今日はとことんお前の鍛錬に付き合ってやろう!!」

 

「えっ?」

 

 その後、オレは血反吐を吐くまでしごかれることになった。

 ボロ雑巾のようになったオレを哀れに思ってか、ほかの術師が「大丈夫か!?」と声をかけてくる。菅原殿は小憎たらしい(とてもイイ)笑顔を浮かべて言った。

 

 

()()()()だなぁ、裏松よ」

 

 

 父さん母さん、そして裏梅──。オレな、絶対いつかコイツの顔面を殴るよ。

 

 

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