フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」   作:アンディライリーのうさぎ

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続きました。反響が思った以上に多くびっくりしました。お気に入りや評価、感想などありがとうございます。筆がのっているうちに書き溜めときます。


2話 柱間様

 ある日、賊に襲われた者たちは炎に包まれながら己の死を悟った。そんな中、母に抱かれ泣き叫んでいた一人の幼子は目にした。自分を含め、村の人間たちを囲むように突如として出現した大木を。

 

「何が、起こって…」

 

 子を抱きしめていた母親は呆然とした。不思議と温もりを感じるその木は、まるで彼らを守っているかのようだった。

 

「ぐあああっ!!」

 

 一方で馬にまたがり弓を射ていた面々は、先の尖った木に串刺しにされ、絶命する。

 やがて一瞬にして現れた森が消えていき、あたりは静寂に包まれた。生き残った者たちがポツポツと集まる中、その人物は現れた。

 

「あれは……柱間か?」

 

 この村を守っていた男の嫡男である少年、柱間。

 

 彼は父親に憧れ、よく謎の鍛錬に励んでいた。人々はその姿を見て、「またあの柱間が奇行に走っている」と呆れることもあった。

 

 人々の前では寡黙で、威厳のある父親とは違う。表情豊かで、尚且つ思いやりがあり、村一番の元気な子どもだった。彼の天真爛漫で、夢をまっすぐに追う姿は不思議と、人々の目を引きつけた。

 

 

「皆の者、聞いてくれ」

 

 

 そんな子どもが今、いつもの笑顔を消して言葉を発する。誰もが息を呑んだ。収まらぬ激情に揺れ動く彼の呪力が、周囲の空気を重々しく圧迫する。

 

「これまでこの村を守っていた、オレの父が死んだ」

 

 柱間は強く自分の拳を握る。目を閉じれば死んだ家族の姿が走馬灯のように過ぎる。今にも泣き声をあげ、叫びたい。

 

「オレの母も……そして、妹も死んだ…!!」

 

 だが、それはできなかった。ショックから気を取り戻し、父と妹の骸を前にして心が粉々に砕けてしまいそうになった時、彼の脳内に浮かんだのは村の人間の姿だった。

 

 

『────いつかお前が儂の背を追い越す時を、楽しみにしているぞ』

 

 

 そして同時に、家族の前では威厳に満ちた仮面を取る、優しい父の言葉を思い出した。

 

 

「賊はオレが殺した。我が父亡き今、オレが今日からこの村を守る。……いや、守る()

 

 

 少年の立っていた地面から木々が生まれる。その木々はまさしく、村の人々を守った力だった。

 

「あぁ……」

 

 頭上から日の光を浴び逆光に包まれたその姿は、天から遣わされた神子のようだった。

 人々は頭を下げ、彼に敬意を示す。

 

 それに柱間は、「な、何でみんな土下座をするんぞ…!?」とたじろぐことになった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 村が賊に襲われてから数年が経った。

 オレは父に代わり、村の守護を務めている。

 

 まず村が襲われてから行ったのは、家を建てることだった。オレの力は木々を生み出し、それを自由に操ることができる。これを利用して、簡易的な小屋を作った。そこにケガ人を運び、治療を行った。治療とは言ってもオレの知る現代医学にはほど遠い。その過程で受けたやけどに苦しみ、息を引き取った者もいた。

 

 無傷な者や、動く分には差し支えない者たちは遺体を集め、埋葬した。オレの家族が埋められた墓は、親父のこれまでの功績を讃え、見晴らしのいい場所に建てられた。

 

 寝ずに村の復興に奔走する日々を過ごしたオレは、そのあと溜まった疲労でぶっ倒れてしまった。起きた後は、誰もいないことをいいことに泣いた。泣いて泣いて、溜まっていた分の涙を流した。

 

 

 それからしばらくして、村を襲った連中が賊ではなく、賊に扮した別の村人だったと知った。「奴らに報復を!!」と、オレに向かって叫ぶ者たちもいた。

 

「オレに、血で血を洗えと言うのか?」

 

 確かに多くの血が流れた。その血はオレの記憶にも鮮明に残っている。

 

 だからといって、関係のない女子どもを巻き込むのは間違っている。村を襲ってきたのは全員男だった。働き手の男を失っている時点で、すでに大きな痛手を負っているだろう。

 

(……しかし、連中が私怨でこの村を襲ったというなら、また襲ってくる可能性もある…)

 

 もしそうなった時、男がいないとなれば、女や子どもが駆り出されるのだろうか? 

 それに……。

 

(どんな理由があったにせよ、彼らの家族を殺したのは、オレだ………)

 

 奴らへ抱くオレの恨みと、同情心と呼ぶべき哀れみ。今この時、腹が減ったと泣き、あるいは帰って来ぬ父を待つ子どもがいるかもしれない。

 

 オレの選択は正しかったのだろうか? これは、前世の時もよく考えていた。弟にも「偽善者ニキ乙」と言われていた。

 

 

「………話し合いの場を設けてみるのはどうだろうか?」

 

 

 当然オレの考えは反対された。それでも説得を続け、他の村にも足を運んだ。どの村々もどんよりとした空気が沈滞しており、小さい異形が人間たちにまとわりついていた。スリを自転車で追いかけて、勢いあまって顔から突っ込んだドブ川の感覚と酷似している。

 

「出て行け! この人殺しッ!!」

 

「う゛っ」

 

 オレの噂が広まっていたのか、同じ年ほどの子どもに石を投げられた。「人殺し」のワードで体が固まってしまい、石が頭にクリーンヒットする。

 

「おとうちゃんを、おとうちゃんを返っ…もご!」

 

「やめなさい!!」

 

 罵声を浴びせた子どもの口が、その母親の手で塞がれる。

 とうてい話し合える雰囲気ではなかった。オレにできるのはその異形たちを滅することだけだ。

 

 小さな個体ばかりだったため、少し悩んで蚊取り線香のイメージを考えた。

 

 村の各所に木を生やし、その木に花を咲かせる。その花の花粉が異形の毒となり、死に至らしめる。そのついでに近くの畑の地中をドリルの要領で耕して、フカフカにしておいた。

 

「オレはこれで…失礼する」

 

 村を出る頃にはドブの気配が消え、澄んだものに変わっていた。生やしていた木を戻し、別の村に向かう。

 

「……あれ、もう傷が塞がってる」

 

 結構流れていたはずの血が止まっている。手で触った感じ、傷もない。

 

 元々ケガの治りは早い方だったが、どうも特別な力に目覚めた時からその速度が上がっている。もしかしたら、植物の再生する力がオレにも付与されたのか? いや、そう考えると、元からケガの治りが早かった理由にはならないよな…。

 

「でも仮に再生の力が使えたら、役立つな……」

 

 村を守護するのと並行して、自分の力を研鑽する必要もある。

 

 親父の背はまだまだ、遠いように感じられた。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 再生の力はまず自分で試してみた。

 この再生は、自分の中にある『気』を負傷部位に集中させることで、より効率的に行うことができる。

 

 小指を失うくらいだったらまぁ今後の生活にも問題ないだろうと、口に布を詰めて刃物で切った。

 その指を拾って、癒着させることに成功した。ならば──と、一から生やすことも可能なのかも試してみた。すると失った部分に、新しい小指が生えてきた。

 

 次に動物で試した。彼らには申し訳ないが、こちらも村を守る大義がある。

 

 種類の違う動物を捕まえ、小さな傷をつけてから試した。

 その結果、オレの『気』を流した動物が爆発した。

 

「えっ?」

 

 ビチャッと、顔にその動物の臓物や血がかかる。今のオレの顔は多分、真っ青になっている。

 

「つ、つつ、次も試さなきゃいかんのか……!?」

 

 しかしやるしかない。腹を決めてもう一度試し────やはり爆発した。

 

「な、何でだ……!!」

 

 その後何度か試しても、結局一度も成功しなかった。

 自分の体ではスムーズに行えるのに、他の動物ではまったく上手くいかない。はじめから他人で試そうと考えなくて本当によかった。

 

「うぅ……」

 

 凄惨な現場になった部屋を前にして、オレはうずくまり泣いた。本当にすまない、小さい命たち。

 

 脳裏には悪夢を見るときに毎回出てくる、「フルフルニィ…」の顔がよぎった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 オレは15歳になった。誕生日は親から聞いた季節の様子と、「月が綺麗だった」というのに基づき選んでいる。それを言ったらまぁ、歳ももしかしたら15歳じゃないかもしれないが、そこはいいだろう。

 

 村はすっかり元どおりになり、紆余曲折を経て和解した他の村たちが、今の村長につき従う形で傘下に入った。

 争いが生まれかねない部分も多々あった。

 

 それでも、耐え忍ぶことを選んでくれた者たちがいたおかげで、血を見ずに済んだ。オレも抑止力に置かれつつ、村を回って外から紛れ込んだ異形の退治に勤しんだ。

 

 一応小さい異形は、オレが自ら倒さずとも、前に試した花粉用法で駆除できている。これはオレの『気』を使っていたのを、木々に外部──すなわち自然の『気』を吸わせることで、自生させることに成功した。

 

 これを応用して村々の周囲に木を生やし、異形を感知するセンサー代わりにもしている。そこそこ力を持つ個体は、花粉にもめげず侵入してくるが。

 

 かといって、花粉を強くし過ぎると、自然から吸い取る『気』が間に合わず、樹木が腐ってしまう。難しい部分(バランス)だった。

 

 ちなみに今の村長は、オレの父親が仕えていた男の息子だ。前の村長は歳で亡くなってしまった。歳と言っても、オレからしたら、まだまだ若い年齢だった。

 

 また、子どもが病気にかかり、亡くなってしまうことも多い。平均寿命はおそらく、30前後だ。

 寿命と同様に、身長も低めだ。いや、低く感じるのはオレがすくすく育ち過ぎたせいか? 基本的に、男でも頭ひとつ分は低い。

 

 

「柱間様〜!!」

 

「おぉ! 今日も元気だな!」

 

 

 畑仕事をしている大人に混ざっていた子どもたちが、体当たりしてきた。オレの服もその拍子に泥だらけになる。

 

「コラッ! 柱間様の服を汚すんでねえ!」

 

「あっ……ごめんなさい、柱間様…」

 

「いや、全く気にしとらんぞ」

 

 というか、なぜオレは「様」を付けられるようになったんだろうか? 最初は「様」づけをやめるようお願いしていたのに、何度断っても「柱間様」と呼ばれるから諦めてしまった。

 

「よし! オレも畑仕事を手伝うぞ!」

 

「本当か!?」

 

「あぁ。すまないが、鍬を借りるぞ」

 

 普段はあちらこちらと動き回っているため、畑仕事を手伝える時間がない。木の力で耕すのを手伝うこともできるが、アレは人の“労働”という仕事を奪うことにも繋がる。働いて、食べて、寝て────。それが一番、人の生の実感に結びつくのだと、彼らの様子を見ていて感じることだった。

 ゆえに木の耕作用法は、滅多なことでは使わないことに決めている。オレも汗水垂らして働くのは好きな方だしな。

 

「よっこら、しょ!」

 

 瞬間、バキッと音を立てて鍬が折れた。正確には、折れた部分は持ち手のところだ。

 吹っ飛んだ刃先が呆けているおっちゃんにぶつかりそうになったので、慌てて木を生やして守る。

 

「……その」

 

「す、スゲェ────!! 柱間様が力を入れたら、持ち手が簡単に折れたぞォ──!!!」

 

「………」

 

 落ち込んでしまったオレに、おっちゃんが「まぁ…そんなこともあるさ」と声をかけてくれた。




みんなフルフルニィ…や卑劣様が好きだよな。ワイも好きや。
でももっと、柱間にフォーカスした話が増えてもいいと思うんだ……。
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