フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」 作:アンディライリーのうさぎ
ばさらな種から下剋上が発芽し、世はレッツパーリィーしていた。
そんなパーリィータイムの裏で天元が拉致されたことを受け、『呪術
樹神教の者たちは否定したが、千手家は聞く耳を持たなかった。そもそも二者には時を遡ると深い因縁がある。
樹神教には『神』を殺したのが、天元派の人間だと言い伝えられている。
一方で天元を信奉する者たちは、偽りの神を崇める樹神教の者たちを、「
これまで睨み合っていた関係の導火線に火がついたことで、たちまち大きな争いへと発展して行った。(天元はあくまで中立者として、この件に関わらなかった)
戦いはそれぞれ、術師と非術師が交じっていた。
結果として二者の力は多くの死者を出しながら、どっち付かずの勝敗になった。
この一件で千手家は勢力を大きく削がれ、呪術四大家の地位から陥落することになる。
◆◆◆
真っ白に燃え尽きてしまった柱間は、木のように動かなくなっていた。一応、羂索が調べた範囲で、肉体の組成は人間である。
魂は壊れ──てはいない。壊れてはいないが、少しでも触れるとアライグマの手に渡った綿飴のように、あっけなく消えかねない。
「………」
柱間の精神は深海の底に沈んでいるような状態だった。真っ暗な中で、背中に底を感じたまま漂っている。
死にたいと望みながらも、死ぬことができない。
犠牲の上で生きながらえてしまったこの命に、“自死”など許されるわけがない──と。
だからこそどこにも逃げる術がなく、希死念慮を内側に飼い殺している。
「柱間、おはよう」
そう柱間に声をかけたのは羂索だった。彼女は最近肉体をリニューアルしたばかりで、妙齢の女に変わっている。淑やかな外見だった。
「さあ、共に朝餉を食べようか」
羂索は柱間の腕を引っ張り、立ち上がらせた。そこから向き合う形で背中に手を回し、引きずっていく。柱間はされるがままだ。
朝食の席には思念体な天元もいた。あくまでこの姿は思念体であるので、天元が変えようと思えば若い姿にできる。
傍目から見れば、毛色の違う美女二人に挟まれた光景だ。その二人に挟まれている柱間は、不意に格子の外を見た。
「………雨」
雨はあまり好きではない。彼の母の機嫌がいつも悪くなる日だからだ。────母親?
「あの女は、オレの母親?」
いや、違う。柱間の母親は、よく無茶をする自分を叱っていたあの女性だった。香水の匂いが強いあの女ではない。
ただ同時に、裏松やその他の自分にも母がいた。父もいた。自分を人身御供に差し出したあの男と女は────、
『今は飯の時間だぞ』
徐に柱間の顔が天元の両手に挟まれた。容姿が大きく変わっていたはずの天元が、柱間のよく知る姿に戻っている。「はて、どういうことだ?」──と、彼は首を傾げる。
「…アレ、何でお前の飯の分がないんだ? ………こら、羂索」
『今の私は食事を取れる状態ではないのだ…と、昨日も言ったばかりだよ』
「あぁ、昨日は晴天だったな」
『………』
柱間と天元&羂索間の会話は成り立つこともあれば、成り立たないこともある。
かつての穏やかだった日常が戻ってきたようで──実際は、そう上手くはいかない。柱間の精神が常にジェットコースターをしているせいだ。時によって、
「そういえば、天元は勝手にオレの体とまぐわっていたようだが──」
『ゲホッッッ!!!!!』
「面白いね。遺体とまぐわっていた心境をお聞かせ願おうか」
『小娘ェ……!!!』
羂索もしれっと話にノってきた。違う、違うんだ……と天元は弁明を図る。しかし、何も違わなくはない。
『そっ、その………し、子孫たちに誘導されて、私は致していたのであって…』
「ヘェー、じゃあ一度も自分の意思でまぐわったことはないんだぁ。ヘェ〜〜〜?」
『は、柱間の体がないと眠ることもできなくなっていたんだ!! そ、それで………その………あのっ、一緒に寝ているうちに、いかがわしい気持ちになってしまったというか…』
「………」
『ま、真顔で私を見つめないでくれ、柱間…!! やるなら一思いに介錯してくれ……!!』
「友情同盟を破棄するか否か、これについては要審議中だ」
『柱間ァン……!!』
今日は柱間の精神の体調が良かったためか、朝から賑やかな場となった。
しかし彼は午後から庭で石になってしまい、羂索に回収され床につくことになった。
◆◆◆
暇だな、と柱間が呟いたのをきっかけに、羂索と天元がそれぞれ“遊び”を提案した。
天元は連歌を。羂索は闘茶を持ち出した。
「ハッ! 覚えていないのか、天元? この男は歌詠みが苦手だったことを」
『小娘ェ……貴様こそ、私が茶を飲めない状況だと知りながら、闘茶など提案しおって…!』
「オレだって歌くらい詠めるぞ」
「ホォ?」
「この世をば、我が世とぞ思────イテッ」
「思いっきり盗作だろうが」
一応と、長連歌の形で試してはみた。ちなみに長連歌とは、上の句(「五七五からなる長句」)と下の句(「七七」からなる短句)を交互に詠み連ねていく連歌のことを言う。
しかしやはり壊滅的…というわけではないが、平々凡々な腕前だった。
何というか、格好よく取りつくろうとするほど、中・高生的な痛さが露わになっていく。
一方で羂索はさすが風流人。平均点の男でも、「おぉ…!」と感嘆する雅さがある。天元もまた中々の腕前だった。
闘茶もまた別の日に行うことになった。『闘茶』とはそもそも、飲んだ茶の香りや味からその産地を推測して、勝敗を競う遊びである。
「闘茶にも色々やり方はあるが…今回は『
この『四種十服茶』は、「種茶」と呼ばれる三種類と、「客茶」と呼ばれる一種類を合わせた計四種類の茶を使って行う。
最初に種茶をたてた三つを、「一ノ茶」「二ノ茶」「三ノ茶」と命名する。
それから参加者にこの三つの茶を試飲させ、味と香りを確認させる。
その次に三種類の種茶から、それぞれ三つの茶袋と、試飲させていない客茶の一袋の合計10袋の茶袋を作る。そして、たてた10服分(一袋が一服分)の茶を順不同で参加者に飲ませていく。
その10服の茶が「一ノ茶」「二ノ茶」「三ノ茶」のどれと同じなのか。または、それ以外の客茶なのか。参加者は回答していき、その正解数が多いものが勝者となる。
ちなみにこの闘茶は、賭け事として行われることもあった。
「茶の種類なんて分からないんだが…」
『だそうだぞ、小娘』
「別に茶葉の名前を回答しろと言っているわけじゃない。1、2、3の茶の中でどれが同じだったか、味覚と嗅覚を使って当てればいいんだ」
まぁ、天元はできないけれどね──と、年長者への煽りを欠かさない羂索である。
「しかし茶は誰がたてるんだ? オレと羂索で飲み比べるというならば」
「ここにいるだろう、柱間。茶は飲めなくとも、物体には干渉できる女が」
『貴様を八つ裂きにしてくれるわ…!』
「天元の茶か…懐かしいな。お前の茶は美味かった」
『この天元に任せるがよい!!』
手のひらクルーッを決めた天元は、早速茶をたて始めた。
別室で待つことになった二人は、羂索の発案で賭けをすることになった。
「オレが負けたらまた右腕をくれっていうのか? ……いや、右腕どころか四肢を持って行く気なのか……?」
「それは誕プレでもらうとして」
「だから「やらん」と言ったはずだ」
仔細は不明であるが、羂索は柱間の右腕を使っていろいろと仕出かしている。
ひとえにそれは自分が死んでしまい、この娘を放逐してしまったからだ──と、柱間の心が沈んでいった。
「だからといって、オレにお前を見殺しにする選択肢はなかった……」
「おい、せっかくの勝負事の前に鬱スイッチを入れないでくれ」
「………」
「あぁ、可哀想な柱間。そんなお前にやる気を出させてやろう」
羂索は倒れるその肢体を抱きしめ、自分の方に引き寄せた。ちょうど柱間の頭が羂索の胸元に埋もれる。しなやかな指が毛繕いでもするように、長い髪を撫でる。
「もし私が勝ったら、君の妻になってあげよう」
10分ほど経ってから頭を持ち上げた柱間は、「ツナ…?」と呟く。それに、ふふ、と羂索は笑う。
「妻だよ、妻。君が私の旦那様だ」
「…………? お前はオレの娘で…」
「あぁ、娘だね。その上で妻にもなる、ということだ。ついでに母親になってあげてもいいよ」
「何を言っ──」
「お前のすべてを、ちょうだい」
状況が飲み込めない柱間の体は、羂索が押すと簡単に倒れた。柱間の瞳は、何度も瞬きが繰り返される。娘のはずの羂索が、娘とは不釣り合いな艶めいた微笑みを浮かべている。倒れたその肢体にまたがるようにして、羂索は柱間の顔に自身の顔を近づけた。
「私の好奇心が君の心を傷つけて、君の愛情が私を狂わせる」
羂索に『愛』を教えてしまったこの男には、自分の好奇心のツケがちょうどいいくらいだ──と、彼女は思っている。
「君も悪いし、私も悪い。反対に君だけが悪いわけではないし、私だけが悪いわけではない」
「………」
「君の痛みは私の痛みにもなる。そして私の痛みは、君の痛みになる」
「羂索…」
「私に愛されるということは、仏を怒らせることよりも恐ろしいことかもしれないね」
羂索の爪が柱間の喉仏に食い込み、横にスッと線を引く。
「貴様にとって己の命に価値が無かろうと、私やあの女にとっては世界を滅ぼすだけの価値があるのだよ」
「ほ…ろぼすなよ」
「君が本当に死んだら、世界が滅ぼうが関係ないだろ?」
「ンな、自論を持ち込まれてもなあ…」
「……結局は、価値観の違いなのだろうね」
その価値観の違いは、この世に争いが絶えない理由でもある。
「そんな恐ろしい女の愛を一身に受けている自分に、少しは自信を持ったらどうだい?」
「………」
「──柱間。天元があの身な以上、世界滅亡へのカウントダウンはすでに始まっているからね」
天元曰く、本来なら
この『因果』のねじれの原因は、特級呪物よりもヤバい細胞にある。その細胞が天元の肉体に起こした変化については、羂索が調べ済みである。
「ねじれた『因果』が
「……? 菅原殿はすでに死っ」
「今のお前は『柱間』だ」
柱間の口を手で塞いだ羂索は、話を続ける。
「もしお前が天元を救いたいと願った場合、方法は二つだ。天元をその器と同化させるか────もしくは、お前があの女を抱くか」
「〜〜……」
「おっと、何だい?」
「プハッ! ────えっ、誰が誰を?」
「だから、柱間があの女に細胞を注ぐってことだよ。その細胞が奴の胎から吸収されて、老化を止めていたわけだ。むしろ若返っていたまである。まぁ、あの女の肉体も特殊だらかな。特殊と
「…………細胞を注ぐ?」
「あぁ、そうだ。お前の子種を、天元に注ぐ」
つまり、
これは仮に柱間のメンヘラ精神が回復したとしても、発生する選択肢だった。
「もちろん器と同化しないなら、定期的にお前があの女と性交する必要がある。カラの器で勝手にあの女が自分を慰めてるだけならともかく………この場合ッ、貴様の意思が反映されるわけだ……!! 腹立たしい…」
「……だから羂索は、「妻になる」などと突飛なことを宣ってきたのか?」
「君の妻にも母にもなりたいのは本当だ。そうすれば、“
「………ちょいと、情報量が多すぎて…どう、すればいいやら…」
「お前はお優しいから絶対にあの女とまぐわう選択を選ぶに決まっているたとえ情交や血のつながった子どもがお前の地雷だったとしても!!」
早口な羂索の剣幕に、柱間は顔を引きつらせた。
羂索も天元も、二人とも愛が重い。重すぎて、彼の自己を踏みつぶしてくる。すると何だか、「死にたい」と願う気持ちも、自己を嫌う感情も、わずかにだが馬鹿馬鹿しいと感じてくる。
その
「……なぁ、羂索」
「何かな?」
「………もしオレが勝ったら、裏松が死んだ後の裏梅について、教えてくれないか? オレが聞いても、まったく教えてくれないだろ? だから……」
「……………」
「そう、ブスくれた顔をするな。裏松も小指のオレも結局全員……オレなんだよ」
それでも、『柱間』として復活した彼の内心の一番に愛する者たちは決まっていた。
それは養い子と、不死な友人だった。
「…分かったよ。もちろん私が勝つだろうがね」
「フッ……オレの細胞を甘く見てもらっちゃ困るぞ」
それから行われた闘茶。
その勝負の末に、柱間は裏梅と────その彼の手を取った、一人の男の話を聞くことになった。
同じく手を差し出した羂索は、その男に袖に振られてしまったらしい。その結果、「これだから愛ってやつは…」と、頭を悩ませたそうだ。
「まぁ、わざわざ術師を集めなくとも、計画に君の細胞を利用すれば…と思い至ってからは、すぐに立ち直ったよ」
「イイ話を聞いていたはずなのに、お前の最後の言葉ですべてが台無しだよ」
「ふふふ…」
羂索は頭を抱える柱間を見て、イタズラっ子のように笑った。
・裏梅
このイかれた女め…ッ!! ええいっ、宿儺様に寄るな! 寄るなったら寄るなッ!!
それよりも宿儺様の筋肉は今日も素晴らしいですね!!!
・万
何、あの女………?(ギリイッ)
羂索の持つ愛をすっくんへのモノだと歪んで解釈。物理的なバトルが勃発。
・羂索
裏梅ガードは固いし、途中から現れた女のガードもえぐかった。
万に弁明しても全く話を聞いてくれない。何でや、
・宿儺