フルフルニィ………「誰!?柱間って誰なのォ!!?」   作:アンディライリーのうさぎ

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あ……ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は『転生』タグを入れていたとこれまで思っていた。しかしよくよく見たら……入っていなかった。
教えてくださった方ありがとうございます。


6話 お友もち

 先日の一件で、主人殿に呼び出された。やらかした記憶が走馬灯のように過ぎる。弟が語っていた、「『ロリ』は少女のことで、ロリはノータッチなんだよ!!!」という言葉を思い出す。オレ、お縄になるんかな……。

 

「まずは荒くれ者を捕まえた件、よくやった。あとで褒美を授けよう」

 

 初手はお礼の言葉だった。

 

「それで……幾人もの証言から、その荒くれ者に突如木が巻きついたと聞いた。あれはもしや、お前がやったのか?」

 

 別のやらかしの件について言及された。ここで否定しても仕方ない。「左様でございます」と頷くと、「やはりか…」と主人殿は唸った。

 

「お前は何か訳アリな人間だとは思っておったが、『呪術』を扱えたわけか…」

 

「………『呪術』、とは?」

 

「何だ、知らなかったのか? …あぁいや、知っている人間の方が少数なのは当たり前か」

 

 面妖な力を使う者のことを、『術師』と言うらしい。『呪術』とは、術師が扱う力を言うようだ。

 

「私も詳しくは知らんのだ。しかし、お前の様子を見るに興味があるとみた。そこで……どうだ。一つお前におあつらえの話がある」

 

 主人殿曰く、オレのような少数派の人間に道徳を説いている人物がいるらしい。その人物に一度会ってみてはどうか、と言われた。

 

「お前の人柄を考えれば、その力を悪用してきたとは思わん。『術師』はおそらく、今後重要な役割を担ってくると思っておる。()()()()()()というものは、おるからな。そやつらに対する抑止力にお前のような人間がなるはずだ。そして術師は、それなりの“地位”を得ることになるであろう」

 

 術師という者たちの先を見据えての、主人殿からの発言。貴族の用心棒とはいえ、浮浪の身のオレを慮ってくれているのだと、痛切に感じる。

 

「身分を手に入れれば、私の娘と…………くぅ! やはり許せん!!」

 

 主人殿がボソボソと呟いたと思ったら、笏を投げつかんばかりの勢いで立ち上がった。

 

「とりあえず行って来い!!」

 

「う、承った!」

 

 こうしてオレは、術師に道徳を説いているという人物がいる場所へ向かうことになった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 オレが異形(バケモノ)と呼んでいたやつらは、『呪霊』と言うらしい。呪霊は、人間の負の感情が集まり生まれるのだそうだ。

 

 そしてオレが『気』と呼んでいた『呪力』というものは、人間の誰しもが持っているらしい。術師に向くのは当然、その呪力量が多い人間となる。またこの呪力量が、呪霊が見えるか否かにも関わってくる。

 

 さらに、『術式』。これがオレの木を操る力の正体だった。術式は呪力を通して扱う。この力は生まれながらに肉体に刻まれているそうだ。ゆえに術式を持たない者は呪力が多くとも、大した力を発揮できない。その逆もまた然り。

 

(オレの呪力量はどうなんだろうか?)

 

 感覚的な話になるが、父親よりは多いと思う。

 

 あとは『残穢』なども知った。他の術師から話を聞き、知見を深めることができた。

 

 オレの再生させるアレは自分の術式によるものだと思っていたが、呪力をメインに操っていたものだから違う。これを調べると、『反転術式』というものだと知れた。これは生まれ持った術式とは関係なく、呪力を操る技術を必要とする力とのこと。使える者は本当に稀だそうだ。反転術式を他人に使うのも理論上は可能らしい。しかし、他人に使える術師がいるという話はまだ聞いたことがない、と言われた。

 

(やはり他人に反転術式を使うのは難しいのか)

 

 よかった。オレが下手すぎるあまり爆発させてたんじゃなかったんだ。そもそも、他人に使うのが難しかったのだ。

 

 前に立った女────『天元』の道徳話よりも、正直その後の術師たちから聞いた話の方が得になった。

 

 術式をどう生かすかは、結局それを持った人間次第だろう。人を守る者もいれば、悪用して命を奪う者もいる。

 

(であるなら、術師に諭すのではなく、導かなければ意味がないのではないか?)

 

 少なくとも、オレはそう思った。

 

「其処な君」

 

 帰ろうとした矢先、後ろから声をかけられた。

 

 

「私と少し、お茶でもしていかないか?」

 

 

 オレに話しかけてきたのは、天元だった。

 

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

「変に畏まらず、自然体で話すといい」

 

 天元の入れた茶は美味かった。

 

「それで、オレに何の用だ?」

 

「その前に名前を伺ってもいいかな?」

 

「あぁ、そうだった…。オレは柱間だ」

 

「柱間……柱間か」

 

 天元は「本当にただ話してみたかっただけだよ」と言う。なら茶だけいただいて帰るとしよう。飲み終わり立ちあがろうとすると、すぐに新しい茶を注がれた。それを飲み立ちあが──る前に、即座に注がれる。わんこ蕎麦か? 

 

「確固たる考えを持っている人間は、目を見ていると何となくだがわかるんだ。君は私の話に対し、「自分には別の意見がありますよ」という顔をしていた」

 

「まぁ、そうだな」

 

「その意見を聞いてみたいと思った」

 

 術師の在り方はまだまだ不安定だと、天元は語る。彼女が彼らに道徳を語るのは、幼い子どもに「これをしてはいけませんよ」と教えるのに似ている。そこには少なからず教えを通し、平和へ導きたいという意思は感じる。

 

「お前の話を聞かない者もいるだろう」

 

「それは当然のことだろうね」

 

「その者たちが悪事に手を染めた時、お前はどうするんだ?」

 

「基本的には、私は何もしない。私の話を聞いた上で悪に手を染めるなら、それがその者の在り方だったというだけの話だ」

 

「……そうか」

 

 この女がオレを見て何か思うところがあったなら、オレもまた思うものがあった。

 達観した目をしていた。話す内容に対して、その心はどこか遠い。寄り添うでもない。教えて、その子どもが正解に行き着くよう待っているような、そんな視線。

 

「オレだったら、ちゃんと話を聞くように言うだろう」

 

「寄り添うのだね」

 

「あぁ。だからこそ、オレはお前とは違うと思った」

 

 泣いている子どもがいたとして、天元はその子どもが立ち上がるのを待つだろう。そして向こうが縋りついてきたなら、目線を合わせて「()()()走ると危ないのだよ」と言うのかもしれない。

 

 俯瞰的に教えて、諭すのだ。

 

 やはりオレとは違う。

 

「しかし考え方が違うからといって、否定するわけではないぞ? 人にはそれぞれ信条とするものがあるだろうからな」

 

「ハッキリと私に意見してくる者は珍しいよ」

 

「そうなのか?」

 

「そうだ。中には私の話に過剰なまでに影響を受ける者もいる。そんな彼らは私を神であるかのように見る」

 

「神なのか…?」

 

「いや、どう見ても人間だろう」

 

 天元はおどけるように言ってみせた。髪の色をとってもどこか超常とした雰囲気は確かにある。

 

「まぁ……ある意味で、将来は人間でなくなるかもしれないがね」

 

「信奉された結果、神に祀り上げられるということか?」

 

「違う。私の存在が今後どうなるのか、それは今の私にはまだわからないことだ」

 

 不可解なことを言う天元だった。その目にはどこか諦観もある。最初は人間離れした人物だと思ったが、話すとわかる。少し奇妙な言い方だが、『人間』をしている。

 

「そう悩んでも仕方ないだろう。人間でないかどうかでいえば、オレも似たようなものだ」

 

「………ホォ? それは、具体的に言えば何だい?」

 

「木になれる」

 

「…………何だって?」

 

「一度酔っぱらった後に木になったことがあってな。それで──」

 

「ちょ、ちょっ、待ちたまえ」

 

 天元は頭を押さえ、「ハー」とため息をつく。今まで見た中で一番人間らしいリアクションだ。

 

「『少しの話』で済む話じゃないのはわかったよ」

 

「そうか? 木になった、で終わりの話だと思うんだが」

 

「終わりじゃない。このまま帰らせると、私はその「木になった」の話が気になって夜も眠れなくなるかもしれない」

 

「木になっただけに、()()()()()ということか!」

 

「……………柱間」

 

 今度機会を設けて話をしないか、と言われた。オレの『木になった』話を聞きたいらしい。後にすると、今日眠れなくなるんじゃないか? そんなにも気になっているというなら。

 

「私も色々と、やることがあるのだ…」

 

「大変だな、天元は」

 

「後日、必ずその「木になった」話をしてくれ」

 

「わかった。いいだろう」

 

 互いの思想は合わないが、こうして雑談する分にはいいかもしれない。

 そう思い、話に乗った。立場のある天元と友好関係を深めていくのも良いだろう。オレがもし解雇された時を考えて…。

 

 それに、やたらと達観視するこの女の、『人間』の部分を引き出してやるのが、必要だと思ってしまったからには。

 

 

「せっかくだ。オレと友人にならないか?」

 

「……ゆう、じん?」

 

 

 天元は不思議そうにオレを見つめる。差し出された手の意味が分からない、という反応だった。

 

「こうして茶を飲み、瑣末なことを語り合う。昨日食べたものでも、愚痴でもいい」

 

「………」

 

「オレはどうでもいいことを話し合っている時が楽しいと感じるぞ」

 

「そうか? ……いや、()()()()()のか?」

 

 天元のその、「そうだったのか?」は、オレに言ったわけではなさそうだ。

 しばらく口を開けていた彼女の手が、オレの手を握る。

 

「決まりだな。よろしく頼むぞ、天元」

 

「………あぁ、よろしく、柱間」

 

 こうしてオレに、若干人間離れしている思考の友ができた。




天元は老化がゆるめになっている設定。
ただし肉体のリセット期間は同じ。どこかに肉体をリセットしないで済む方法はないかね。
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