ゼンレスブレイクアウト 作:エイジャックス
一年前、ゼロ号ホロウ内部
「ロバート課長、
部下が指を刺す方向には六芒星の中に目が描かれた絵があった。新世界同盟、突如として現れたカルト教団、エーテリアス化こそが人類の進化だと提唱し、信者に対してエーテル物質を投入してエーテリアス化させる異常者たちだ。俺達は奴らを追っていた。
「マルコ、警戒を怠るなよ。エーテリアスがいるかもしれない」
「わかりました、課長!」
マルコは四課の中で一番若い隊員だ。なにごとにも必死に取り組む姿は俺を含めた他の隊員に勇気を与えてくれていた。
『課長、女を発見しました。治安官を名乗っています、どうしますか?』
別の方を捜査させていたレミズから通信が入る。どうやら、人を発見したようだ。
「わかった、その場で待機しろ。女が怪しい動きをしたら即時拘束してくれ」
『了解しました』
「おい、マルコ移動するぞ!」
マルコはなぜかニコニコしながら俺についてくる。
「どうしてそんなに嬉しそうなんだ?マルコ」
マルコはしまったと言った表情をした後に顔を引き締めた。しかし、すぐに彼の顔は和らぐ。
「それは課長と任務を共にできているからであります」
そう言ってマルコはわざとらしく敬礼をした。
「俺は課長のような隊員になりたいです!」
俺は思わず笑ってしまう。
「なにかおかしいですか!?」
マルコは小さな子供のように目を輝かせて俺の方を見る。その姿はかつての自分を見ているような気分だ。
「本当に俺みたいな隊員で良いのか?六課長とかじゃないのか?」
すると、彼はムッとした表情になる。
「課長は自己評価が低すぎますよ、俺の中では六課長よりロバート課長のほうがすごいんですよ!」
「そうか、わかったよ。ありがとうマルコ」
俺もわざとらしく笑い、マルコも笑顔になる。
軽く話しながらレミズが送ってきた座標の位置についた。
「課長、あの女です」
レミズは俺を見ると女がいる方向を指差す。
「君が部下が言う治安官か。なにかそれを証明する方法はあるかね」
女はネズミのシリオンのようで堂々と佇んでいる。武装した俺たちが前にいても恐怖といった感情を前に出さない。
「あたいの名前はジェーンドゥ。治安局の特務捜査班所属の治安官よ、いま手帳をそっちに投げるわ」
ジェーンと名乗った女は俺に手帳を投げてよこす。治安官の手帳だ。
「…どうやら偽物ではなさそうだな。レミズ、ソンギュ、武器をおろせ、この女は味方だ」
「「了解」」
部下が武装を解除するとジェーンは安心したように自身の胸をなでる。
「上司のあなたが賢明な人で安心したわ。あなた、名前は?」
「ロバートだ、よろしく」
俺はジェーンに握手を求める。彼女は差し出された手を見て微かに笑みを浮かべて俺の手をつかむ。
「良い名前ね、こちらこそよろしく」
俺は彼女の手を離して質問する。
「どうしてホロウ内部にいるんだ?」
ジェーンは少し考えるような仕草をしてから答えた。
「あんた達が追ってる新世界同盟に潜入してたの、この先に連中のアジトがあるわ。もう捨てられてるけどね」
潜入、治安局には潜入捜査する治安官がいると聞いたことがある。つまり、彼女がそれだろう。どうやら、治安局も新世界同盟を追っているらしい。そして、捨てられてるとはいえ連中のアジトだ見る価値はある。
「俺たちをそのアジトとやらに案内してくれないか?」
「ええ、もちろんいいわよ」
ジェーンは背中を向けて歩き出した。ついてこいと言う意味だろう。
ジェーンの歩く方についていくと捨てられた研究所があった。
「こっちに来て」
彼女は研究所の扉を開ける。鍵はかかってないようだ。
「こいつは酷いな」
研究所のなかは激しい腐臭が漂っており、注射器や実験の資料であろうものが散乱していた。
「イカれてやがる…」
ソンギュがそう漏らす。はっきり言ってこの空間は異常だ。気味が悪い。旧文明のホラー映画さながらの不気味さだ。
「これは…人間か?」
目を疑うような光景だった。そこには椅子に縛り付けられて半分エーテリアス化した遺体があった。エーテリアス化するとき暴れても良いように拘束されていたのだろう。
「ここにあるのはエーテリアスになり損ねた死体だけよ」
ジェーンはこのような異常な光景を目にしても冷静でいる。その冷静さの奥には言い表せない不安があった。彼女を本当に信頼しても良いのだろうか。小声でレミズに警戒するように伝える。
「あの治安官から目を離すな、きな臭いぞ」
レミズは無言で頷いた。
「課長、これを見てください」
マルコが小走りで俺の元に駆け寄り一枚の書類を差し出した。
高濃度濃縮液体エーテル
このエーテルは皮膚から吸収させることが可能であり、被験者を二十秒ほどの時間でエーテリアスに変化させた。また、エーテル耐性を持つ者でも三十秒以内にエーテリアス化することを確認、我々の計画にとって非常に有用だ。
「なんだ…これは」
とても、恐ろしいものを連中は生み出したらしい。これは急いで本部に報告しなくてはならない。もし、これが市街地で散布されたりでもしたら…。ハッとして、レミズに話しかける。
「おい、あの治安官はどこだ!」
ジェーンの姿がない、消えている。もしや、奴は…。最悪の考えが頭をよぎる。
「あそこです!課長」
ソンギュが叫びながら指を指す。
「追え、追うんだ!絶対に逃すなよ!」
俺は直ちに命令をする。それを聞いたソンギュ達はジェーンのいる方へ全力で走る。
「あら、バレちゃったのかい?」
レミズは抜刀してジェーンに斬りかかった。しかし、ジェーンは紙一重で避ける。次の瞬間、警報器がなり天井から強化アクリルガラスが降りてきてソンギュ達三人は閉じ込められてしまった。
「ここまでついて来てくれたお礼よ、楽しんでちょうだい」
ジェーンはすぐ隣にあるレバーを引く。すると、霧化されたなにかがアクリルの檻のなかに撒き散らかされた。そして、それの正体は…。
「クソ!クソッ」
俺は抜刀してアクリルガラスを切り付ける。けれど、それは無意味だった。
「今出してやる!こんな終わり方…!」
あの日から、一瞬たりとも憎しみを忘れることはなかった。自ら特殊選抜隊に志願した理由はただ一つだけだ。
「ジェーン・ドゥ…。俺が貴様を必ず…、この手で!」
俺は拳を握りしめた。
投稿がまたしても遅れてしまい申し訳ありません。
公開可能情報
ジェーン・ドゥ(?)
対ホロウ特別行動部四課を壊滅に追いやった張本人、その存在はロバートだけが知っている。