Schooldays in U.C.0079   作:碗古田わん

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#13 終戦

 ドロワの撃沈を確認した鮒子田(ふしだ)(しょう)は、RX-78NT5(ガンダムNT5)の進路をア・バオア・クーに向けた。

「戦況はどうなってる?」

 周りをきょろきょろと見渡しながら、戦場の様子を確認する。

”あっち!”

 すると匠の膝の上のシートにちょこんと乗っかていた咲耶(さくや)結愛(ゆめ)が左方向を指さした。

 見ると、連邦のモビルスーツ編隊とジオンのモビルスーツ編隊が一進一退を繰り返していた。

「ビットを出して」

 匠は言いながらサイコミュを起動させた。

 こくっと頷いた結愛は、6機のビットを操作して膠着した戦線に送り込む。

 突入したビットは、次々にジオンのモビルスーツを破壊していった。

 それには連邦のモビルスーツ編隊も驚いている様子だった。

 だが、それも一瞬で、穴の空いた防衛線へと一気になだれ込む。

 ビットはそれ支援しつつ、向かってくるMS-09R(リックドム)MS-06F(ザクⅡ)MS-14A(ゲルググ)を撃破していく。

 遅れて到着したRX-78NT5(ガンダムNT5)も、周りのモビルスーツ編隊をメガ粒子小銃(ビームライフル)で撃ち落としていった。

”お兄ちゃん・・・・・・”

 不意に結愛が念波(テレパシー)で話しかけてきた。

”どうしたの?”

 匠も念波(テレパシー)で聞く。

”ビットが上手く動かせない”

「えっ?」

 結愛の言葉に匠は思わず声を上げてしまった。

”ビットの調子が悪い?”

 匠の問いに、結愛はぷるぷると首を横に振った。

”近くで誰かがビットを使ってる”

「混線してる!?」

 匠はまたもや声を上げてしまった。

 サイコミュとビットはもともとジオンの技術だ。当然、サイコミュ搭載型のモビルスーツが実戦投入されていることもあり得る。

 そのことを匠は完全に失念していた。

”ビットは回収できる?”

 念波(テレパシー)で聞く匠に、結愛はこくっと頷いた。

”じゃあ、回収して”

 それにもこくっと頷く。

 すこし操作に手間取ったが、無事、6機のビットはRX-78NT5(ガンダムNT5)の両肩に回収された。

 それを確認してから、匠はサイコミュを切った。

(誰が、ビットを使ってるんだ?)

 匠は感覚を研ぎ澄まして、ビットを操っているパイロットの気配を探ろうとした。

”あそこ・・・・・・”

 それより先に結愛が発見する。

 見ると、足のない大型モビルスーツが、両腕を飛ばしてサラミス級を撃破していた。

「なんだ、あれは!?」

 驚いた匠は、コンソールを操作した。

 直ぐに大型多機能表示装置(マルチモニター)に三面図と機体名が表示される。

「MSN-02、ジオング・・・・・・?」

 データーを読み取った匠は思案した。

「叩くべきか?」

 だが、今のRX-78NT5(ガンダムNT5)はビットが使えない。その状態でジオングに戦いを挑むのは危険だと感じた。

”白いモビルスーツが倒してくれる”

 すると結愛の思考が流れ込んでくる。

「見えたの?」

 匠の問いに、結愛はこくっと頷いた。

 恐らくニュータイプの予知能力が働いたのだろう。

「なら、僕らはア・バオア・クーへ取りつこう」

 結愛は、それにもこくっと頷いた。

 

 連邦の第1艦隊に所属するモビルスーツ編隊は、RX-78-2(ガンダム)を先陣に最終防衛ラインを突破してア・バオア・クーへと次々に取りついていった。

 遅れて匠も、RX-78NT5(ガンダムNT5)をア・バオア・クーへ取りつかせる。

 そこはちょうど、宇宙港(スペースポート)の横だった。

 匠はそこからア・バオア・クー内部へと侵入を試みようとした。

「いる・・・・・・」

 しかし、そこにはMS-09R(リックドム)編隊が待ち構えているのを感じていた。

「ビットはまだ使えないよね?」

 結愛は済まなそうにこくっと頷いた。

「別に結愛のせいじゃないよ」

 その気持ちが流れ込んできたから、匠は優しく語りかけた。

「さて、どうする?」

 匠は思案した。

 リックドム編隊は1個中隊で、飛び出しても()()でいられる保証はない。

(手榴弾でも持ってくるんだった)

 そんなことを考えていた時、RGM-79A(ジム)の1個中隊が宇宙港(スペースポート)に飛び込んだ。

「あっ、馬鹿!」

 思わず、匠は悪態をついた。

 MS-09R(リックドム)の待ち伏せを受けて、RGM-79A(ジム)編隊は次々に大破していく。

「ちっ!」

 舌打ちをしてから、匠は宇宙港(スペースポート)へと飛び込んだ。

 無数に飛んでくるロケット弾を紙一重で避けながら、RX-78NT5(ガンダムNT5)メガ粒子小銃(ビームライフル)で反撃した。

 メガ粒子の矢は確実にMS-09R(リックドム)のコクピットを捉えて、撃破していく。

 あっという間にMS-09R(リックドム)中隊は全滅した。

「ふー」

 なんとか敵を倒せて匠は、息を吐いた。

 RGM-79A(ジム)編隊を見ると生き残ったのは2機のみで、しかもどちらも中破していた。

『ありがとうございます』

 見知らぬパイロットが、無線でお礼を言ってきた。ミノフスキー粒子が濃いので、補助(サブ)モニターの映像はほとんど映らず、音声も酷いノイズ混じりだ。

「その状態じゃ、ここから先は無理だから、後退しろ」

 ただ、念波(テレパシー)で相手の階級が下なのはわかっていたので、匠は命令口調で告げた。

『はい』

 見知らぬパイロットは僚機と互いに肩を借りあって宇宙港(スペースポート)を後にした。

「僕たちは進もう」

 匠の言葉に結愛はこくっと頷いた。

(今の僕らなら、本当の敵がわかる)

”上だよ!”

 匠の思考に結愛が反応する。

「そうだね」

 その感覚は結愛と同じだったので、匠は上に向かう通路を探してガンダムNT5を前進させた。

 

 しばらく進むと曲がり角があった。

(いる・・・・・・)

 匠は、その先にMS-14A(ゲルググ)の気配を感じた。

(どうする?)

 MS-14A(ゲルググ)メガ粒子小銃(ビームライフル)を持っている。障害物のない狭い通路内では、1発勝負になる可能性が高い。それはとてもリスキーだった。

(ビットが使えればいいんだけど・・・・・・)

 思案した時、

”使えるよ”

 と結愛が念波(テレパシー)で伝えた。

”さっきのモビルスーツの気配はもう感じない”

(撃墜されたのか?)

 匠は自問したが、直ぐに次の一手を結愛に指示した。

「なら、ビットを使おう」

 こくっと結愛は頷いた。

 サイコミュを起動する。

 肩から放たれた6機のビットが角を曲がり、MS-14A(ゲルググ)に向かってメガ粒子砲を放つ。

 見たこともない兵器に戸惑いながら、四散するMS-14A(ゲルググ)の気配が匠にも感じられた。

 そのままビットを先行させて、迷路のようなア・バオア・クー内を上を目指して進んでいく。

 途中、幾度かジオンのモビルスーツ編隊と遭遇するが、ビットで蹴散らしてさらに先に進む。

 すると上に伸びる通路にたどり着いた。

 後ろを向いた結愛と目と目で合図して、ビットを先行させて通路を上る。

(いる・・・・・・)

 通路の先にMS-14A(ゲルググ)の気配を感じて、匠はメガ粒子小銃(ビームライフル)を構えた。

 しかし、それより先に結愛がビットを飛ばす。

 3機のMS-14A(ゲルググ)が瞬殺される。

 爆風をシールドで避けながら、RX-78NT5(ガンダムNT5)は前へと進んだ。

 すると、横穴を見つける。

 覗き込むと、広い空間が広がっていた。

 そこでは未完成品のMS-14A(ゲルググ)が多数、置かれていた。

 ア・バオア・クー内のMS-14A(ゲルググ)製造ラインだ。

 未だに稼働しているようで、製作途中のゲルググから溶接の火花が上がっていた。

(ブリーフィングで、重要拠点だったはず・・・・・・)

 星一号作戦のブリーフィングでは、いくつかの占拠すべき拠点が示されていた。

 ここもそのひとつだった。

(どうしようか)

 匠は思案した。

 ラインが稼働中ということは、まだ多くの民間人が従事しているということだ。

 なので、うかつには攻撃できない。

 もっとも、攻撃すればラインを破壊することになるので初めからできないのだが。

 仕方なく匠は外部スピーカーをオンした。

『5分後のここを破壊します。民間人の方は逃げてください』

 結局、ここははったりをかますことにした。

 それを聞いた民間人作業者が、一斉に持ち場を離れて逃げ出す。

 監督するジオン軍人も同様だった。

 製造ライン内はあっという間にもぬけの殻になった。

(さて・・・・・・ここからだけど・・・・・・)

 RX-78NT5(ガンダムNT5)1機では、とてもじゃないが、この広いラインを制圧できない。

(近くに空間騎兵がいるといいんだけど・・・・・・)

 試しに、感覚を研ぎ澄ませてみる。

 すると、何ブロックか先に連邦軍の空間騎兵が小隊単位でいるのが感じられた。

”こちら第272機動兵小隊所属RX-78NT5(ガンダムNT5)

 匠は届いてくれよ、と祈りながら、念波(テレパシー)で話しかけた。

MS-14A(ゲルググ)の生産ラインを発見しました。直ぐに確保に来てください”

 しかし、案の定、空間騎兵は突然の天の声に戸惑いを見せた。

”これは幻聴ではありませんよ。道順を教えるのでその通りに来てください”

 空間騎兵たちは疑心暗鬼だったが、それでも匠の指示に従い移動を始める。

 いくつかの角を曲がり、空間騎兵たちは目的地にたどり着いた。

 そこではRX-78NT5(ガンダムNT5)が待っていた。

『お疲れ様です』

 オンにしっぱなしだった外部スピーカーを通して、匠は言った。

「これはいったい、どういう魔法なんだい?」

 と空間騎兵の小隊長らしき人物が、聞いてきた。

「すみません。守秘義務があるのでお答えできません」

 これは嘘ではなかった。

 ニュータイプの存在やそれを使った兵器の開発は、連邦でも極秘扱いされているのだ。

「まぁ、いいか」

 ヘルメット越しに頭をかいた小隊長は、部下に命令した。

「確保にかかれ!」

 それを聞いた匠は、

「それでは後をお願いします」

 と言ってからさらに上を目指そうとした。

 その時、匠は不思議な感覚に襲われた。

 見ると結愛もビットの制御を忘れて呆然としている。

「結愛・・・・・・今の」

”敵の気配が消えた・・・・・・!”

 匠が半信半疑で問うと、結愛はこくっと頷いた。

「とりあえず、外に出よう」

 それにも結愛はこくっと頷く。

 外で戦う気配を頼りに、匠は外を目指す。

 そこで匠は不思議な声を聞いた。

”撤退命令を出さないと全滅します”

 声の主は言った。

”脱出用のランチを用意してください”

(誰かが念波(テレパシー)で会話してる・・・・・・?)

 でも、誰が?

 これは明らかに連邦兵だ。

 だが、匠は自分達以外にニュータイプが投入されているとは聞かされてなかった。

”僕の大好きなフラウ・ボゥ・・・・・・”

 その台詞(ことば)に匠はイラッとした。

(どこのどいつだ?)

 戦場でそんなお花畑みたいなことを言ってるのは。

”どうしたの?”

 怒りの感情が乗りすぎたので、ビットの制御に集中していた結愛にまで言葉が届いてしまう。

”なんでもないよ”

 なので、匠は自分の負の感情を頭から蹴り出して、冷静に応えた。

 結愛は頭に(クエッションマーク)を浮かべたが、直ぐにビットの制御に集中する。

 そのままRX-78NT5(ガンダムNT5)は出口を目指した。

(次の角を曲がれば・・・・・・)

 そこで、匠は機体を急停止させた。

 宇宙港(スペースポート)内で、MS-14A(ゲルググ)RGM-79A(ジム)が激しい銃撃戦を繰り広げているのを感じたからだ。

 MS-14A(ゲルググ)中隊は宇宙港(スペースポート)なに座礁したムサイを盾にビームライフルで攻撃していた。

 一方、RGM-79A(ジム)中隊は、宇宙港(スペースポート)の入口の陰から時折機体を出して、メガ粒子銃(ビームスプレイガン)で攻撃している。

「いける?」

 匠の問いに結愛はこくっと頷いた。

 ビットが角を曲がって、MS-14A(ゲルググ)編隊に襲いかかった。

 後方からの攻撃を想定していなかったMS-14A(ゲルググ)編隊は、あっという間に全滅した。

 それを確認してから、匠はRX-78NT5(ガンダムNT5)宇宙港(スペースポート)へ入れた。

『支援、感謝します』

 RGM-79A(ジム)中隊の隊長らしき人から通信が入る。

「いえ・・・・・・この先にはもう敵はいません」

 階級は当然上なので、匠は敬語で報告した。

『なら、他を当たります』

 補助(サブ)モニターの中隊長が敬礼したので、匠も敬礼で返した。

 それからスロットルレバーを微速にして、宇宙港(スペースポート)を出る。

 宇宙(そら)はまだ、あっちこっちで光の矢の応酬と時折爆発が起こっていた。

「まだ、戦っているのか・・・・・・」

 匠が呟いた時、不意に背中に敵意を感じた。

 慌てて、コントロールレバーとペダルを操作して回避運動に入る。

 すると、今いたところに5本のメガ粒子の矢が通り過ぎていった。

「敵!?」

 だが、モビルスーツの姿は見えない。

”そこ!”

 結愛が指さす方を見ると、モビルスーツの腕らしきものが宙を漂っていた。

「さっきの大型モビルスーツか!?」

 匠は腕についたコードをたどって本体を見つけようとした。

「あれか」

 そこには、MSN-02(ジオング)ではなく、ザクの顔をした不細工なモビルスーツがいた。

 直ぐにコンソールを叩いて、機体を判別する。

「MSN-01、高機動型ザク・・・・・・?」

 大型多機能表示装置(マルチモニター)のデータを読んだ匠は、頭に(クエッションマーク)を浮かべた。

「なんでそんな機体が、ビットを持ってるんだよ!」

 続けざまに来るMSN-01(高機動型ザク)からの攻撃を紙一重で避けながら、匠は叫んだ。

(こっちもビットで攻撃したいけど・・・・・・)

 この状況だと、混線の可能性がある。

 試しに結愛に聞いてみた。

”ビットは正常に使える?”

 結愛はこくっと頷いた。

”念波テレパシーの周波数帯がわかれば、それぞれをビットに紐づけて混線を防ぐこともできるのですが・・・・・・”

 匠はジェフの言葉を思い出した。

(つまりジオンは、混戦対策をしっかりやってるってことか)

 この分野ではジオンが1歩も2歩も進んでいることを目の当たりにして、匠は唇を噛み締めた。

”こっちもビットで反撃だ!”

 そのテンションのまま、匠は結愛に指示した。

 結愛が、こくっと頷く。

 6機のビットが、MSN-01(高機動型ザク)を取り囲もうとする。

 しかし、それよりも速く、MSN-01(高機動型ザク)はその名の通り、高い機動力で移動し、取り囲ませてくれない。

 右に左に飛んでくるメガ粒子の矢を避けつつ、MSN-01(高機動型ザク)は左右の腕をRX-78NT5(ガンダムNT5)の死角に飛ばして攻撃してくる。

 匠は既に気づいていた。

 MSN-01(高機動型ザク)が、こちらの攻撃を予測して回避運動をしているのを。

(ビットを使えるぐらいだから、相手も当然、ニュータイプだよな)

 ニュータイプ同士の戦い。

 想定してなかった訳ではないが、実際に起こるとかなり厄介だ。

「さて、どうする?」

 その時、突然、眩い光が宇宙(そら)を覆った。

「信号弾!?」

 それはどの艦が放ったのかわからないが、間違いなく信号弾の輝きだった。

「あの色は・・・・・・」

 匠は座学で習った記憶を掘り起こして、意味を確認しようとした。

「停戦命令!?」

 記憶が一致した時、匠は思わず声を上げた。

 それを見たMSN-01(高機動型ザク)は、攻撃を中止すると高速で戦線を離脱した。

「終わったんだ・・・・・・」

 息を吐いた匠は、脱力するとシートの背もたれに身体を預けた。

”結愛、もういいよ”

 こくっと頷く結愛は、ビットを回収にかかる。

 ビットが全て戻ったことを確認してから、匠はサイコミュを切った。

「サラブレッドは、健在か?」

 それから念波(テレパシー)で母艦を探す。

”あっち”

 先に見つけたのは、やはり結愛だった。気配のするほうを指さす。

「よし、帰ろう。僕らの艦に」

 匠の言葉に結愛はこくっと頷いた。

 RX-78NT5(ガンダムNT5)はサラブレッドへ帰投する進路をとった。

 

『この日、宇宙世紀0080。この戦いのあと、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた』

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