Schooldays in U.C.0079 作:碗古田わん
ドロワの撃沈を確認した
「戦況はどうなってる?」
周りをきょろきょろと見渡しながら、戦場の様子を確認する。
”あっち!”
すると匠の膝の上のシートにちょこんと乗っかていた
見ると、連邦のモビルスーツ編隊とジオンのモビルスーツ編隊が一進一退を繰り返していた。
「ビットを出して」
匠は言いながらサイコミュを起動させた。
こくっと頷いた結愛は、6機のビットを操作して膠着した戦線に送り込む。
突入したビットは、次々にジオンのモビルスーツを破壊していった。
それには連邦のモビルスーツ編隊も驚いている様子だった。
だが、それも一瞬で、穴の空いた防衛線へと一気になだれ込む。
ビットはそれ支援しつつ、向かってくる
遅れて到着した
”お兄ちゃん・・・・・・”
不意に結愛が
”どうしたの?”
匠も
”ビットが上手く動かせない”
「えっ?」
結愛の言葉に匠は思わず声を上げてしまった。
”ビットの調子が悪い?”
匠の問いに、結愛はぷるぷると首を横に振った。
”近くで誰かがビットを使ってる”
「混線してる!?」
匠はまたもや声を上げてしまった。
サイコミュとビットはもともとジオンの技術だ。当然、サイコミュ搭載型のモビルスーツが実戦投入されていることもあり得る。
そのことを匠は完全に失念していた。
”ビットは回収できる?”
”じゃあ、回収して”
それにもこくっと頷く。
すこし操作に手間取ったが、無事、6機のビットは
それを確認してから、匠はサイコミュを切った。
(誰が、ビットを使ってるんだ?)
匠は感覚を研ぎ澄まして、ビットを操っているパイロットの気配を探ろうとした。
”あそこ・・・・・・”
それより先に結愛が発見する。
見ると、足のない大型モビルスーツが、両腕を飛ばしてサラミス級を撃破していた。
「なんだ、あれは!?」
驚いた匠は、コンソールを操作した。
直ぐに
「MSN-02、ジオング・・・・・・?」
データーを読み取った匠は思案した。
「叩くべきか?」
だが、今の
”白いモビルスーツが倒してくれる”
すると結愛の思考が流れ込んでくる。
「見えたの?」
匠の問いに、結愛はこくっと頷いた。
恐らくニュータイプの予知能力が働いたのだろう。
「なら、僕らはア・バオア・クーへ取りつこう」
結愛は、それにもこくっと頷いた。
連邦の第1艦隊に所属するモビルスーツ編隊は、
遅れて匠も、
そこはちょうど、
匠はそこからア・バオア・クー内部へと侵入を試みようとした。
「いる・・・・・・」
しかし、そこには
「ビットはまだ使えないよね?」
結愛は済まなそうにこくっと頷いた。
「別に結愛のせいじゃないよ」
その気持ちが流れ込んできたから、匠は優しく語りかけた。
「さて、どうする?」
匠は思案した。
リックドム編隊は1個中隊で、飛び出しても
(手榴弾でも持ってくるんだった)
そんなことを考えていた時、
「あっ、馬鹿!」
思わず、匠は悪態をついた。
「ちっ!」
舌打ちをしてから、匠は
無数に飛んでくるロケット弾を紙一重で避けながら、
メガ粒子の矢は確実に
あっという間に
「ふー」
なんとか敵を倒せて匠は、息を吐いた。
『ありがとうございます』
見知らぬパイロットが、無線でお礼を言ってきた。ミノフスキー粒子が濃いので、
「その状態じゃ、ここから先は無理だから、後退しろ」
ただ、
『はい』
見知らぬパイロットは僚機と互いに肩を借りあって
「僕たちは進もう」
匠の言葉に結愛はこくっと頷いた。
(今の僕らなら、本当の敵がわかる)
”上だよ!”
匠の思考に結愛が反応する。
「そうだね」
その感覚は結愛と同じだったので、匠は上に向かう通路を探してガンダムNT5を前進させた。
しばらく進むと曲がり角があった。
(いる・・・・・・)
匠は、その先に
(どうする?)
(ビットが使えればいいんだけど・・・・・・)
思案した時、
”使えるよ”
と結愛が
”さっきのモビルスーツの気配はもう感じない”
(撃墜されたのか?)
匠は自問したが、直ぐに次の一手を結愛に指示した。
「なら、ビットを使おう」
こくっと結愛は頷いた。
サイコミュを起動する。
肩から放たれた6機のビットが角を曲がり、
見たこともない兵器に戸惑いながら、四散する
そのままビットを先行させて、迷路のようなア・バオア・クー内を上を目指して進んでいく。
途中、幾度かジオンのモビルスーツ編隊と遭遇するが、ビットで蹴散らしてさらに先に進む。
すると上に伸びる通路にたどり着いた。
後ろを向いた結愛と目と目で合図して、ビットを先行させて通路を上る。
(いる・・・・・・)
通路の先に
しかし、それより先に結愛がビットを飛ばす。
3機の
爆風をシールドで避けながら、
すると、横穴を見つける。
覗き込むと、広い空間が広がっていた。
そこでは未完成品の
ア・バオア・クー内の
未だに稼働しているようで、製作途中のゲルググから溶接の火花が上がっていた。
(ブリーフィングで、重要拠点だったはず・・・・・・)
星一号作戦のブリーフィングでは、いくつかの占拠すべき拠点が示されていた。
ここもそのひとつだった。
(どうしようか)
匠は思案した。
ラインが稼働中ということは、まだ多くの民間人が従事しているということだ。
なので、うかつには攻撃できない。
もっとも、攻撃すればラインを破壊することになるので初めからできないのだが。
仕方なく匠は外部スピーカーをオンした。
『5分後のここを破壊します。民間人の方は逃げてください』
結局、ここははったりをかますことにした。
それを聞いた民間人作業者が、一斉に持ち場を離れて逃げ出す。
監督するジオン軍人も同様だった。
製造ライン内はあっという間にもぬけの殻になった。
(さて・・・・・・ここからだけど・・・・・・)
(近くに空間騎兵がいるといいんだけど・・・・・・)
試しに、感覚を研ぎ澄ませてみる。
すると、何ブロックか先に連邦軍の空間騎兵が小隊単位でいるのが感じられた。
”こちら第272機動兵小隊所属
匠は届いてくれよ、と祈りながら、
”
しかし、案の定、空間騎兵は突然の天の声に戸惑いを見せた。
”これは幻聴ではありませんよ。道順を教えるのでその通りに来てください”
空間騎兵たちは疑心暗鬼だったが、それでも匠の指示に従い移動を始める。
いくつかの角を曲がり、空間騎兵たちは目的地にたどり着いた。
そこでは
『お疲れ様です』
オンにしっぱなしだった外部スピーカーを通して、匠は言った。
「これはいったい、どういう魔法なんだい?」
と空間騎兵の小隊長らしき人物が、聞いてきた。
「すみません。守秘義務があるのでお答えできません」
これは嘘ではなかった。
ニュータイプの存在やそれを使った兵器の開発は、連邦でも極秘扱いされているのだ。
「まぁ、いいか」
ヘルメット越しに頭をかいた小隊長は、部下に命令した。
「確保にかかれ!」
それを聞いた匠は、
「それでは後をお願いします」
と言ってからさらに上を目指そうとした。
その時、匠は不思議な感覚に襲われた。
見ると結愛もビットの制御を忘れて呆然としている。
「結愛・・・・・・今の」
”敵の気配が消えた・・・・・・!”
匠が半信半疑で問うと、結愛はこくっと頷いた。
「とりあえず、外に出よう」
それにも結愛はこくっと頷く。
外で戦う気配を頼りに、匠は外を目指す。
そこで匠は不思議な声を聞いた。
”撤退命令を出さないと全滅します”
声の主は言った。
”脱出用のランチを用意してください”
(誰かが
でも、誰が?
これは明らかに連邦兵だ。
だが、匠は自分達以外にニュータイプが投入されているとは聞かされてなかった。
”僕の大好きなフラウ・ボゥ・・・・・・”
その
(どこのどいつだ?)
戦場でそんなお花畑みたいなことを言ってるのは。
”どうしたの?”
怒りの感情が乗りすぎたので、ビットの制御に集中していた結愛にまで言葉が届いてしまう。
”なんでもないよ”
なので、匠は自分の負の感情を頭から蹴り出して、冷静に応えた。
結愛は頭に
そのまま
(次の角を曲がれば・・・・・・)
そこで、匠は機体を急停止させた。
一方、
「いける?」
匠の問いに結愛はこくっと頷いた。
ビットが角を曲がって、
後方からの攻撃を想定していなかった
それを確認してから、匠は
『支援、感謝します』
「いえ・・・・・・この先にはもう敵はいません」
階級は当然上なので、匠は敬語で報告した。
『なら、他を当たります』
それからスロットルレバーを微速にして、
「まだ、戦っているのか・・・・・・」
匠が呟いた時、不意に背中に敵意を感じた。
慌てて、コントロールレバーとペダルを操作して回避運動に入る。
すると、今いたところに5本のメガ粒子の矢が通り過ぎていった。
「敵!?」
だが、モビルスーツの姿は見えない。
”そこ!”
結愛が指さす方を見ると、モビルスーツの腕らしきものが宙を漂っていた。
「さっきの大型モビルスーツか!?」
匠は腕についたコードをたどって本体を見つけようとした。
「あれか」
そこには、
直ぐにコンソールを叩いて、機体を判別する。
「MSN-01、高機動型ザク・・・・・・?」
「なんでそんな機体が、ビットを持ってるんだよ!」
続けざまに来る
(こっちもビットで攻撃したいけど・・・・・・)
この状況だと、混線の可能性がある。
試しに結愛に聞いてみた。
”ビットは正常に使える?”
結愛はこくっと頷いた。
”念波テレパシーの周波数帯がわかれば、それぞれをビットに紐づけて混線を防ぐこともできるのですが・・・・・・”
匠はジェフの言葉を思い出した。
(つまりジオンは、混戦対策をしっかりやってるってことか)
この分野ではジオンが1歩も2歩も進んでいることを目の当たりにして、匠は唇を噛み締めた。
”こっちもビットで反撃だ!”
そのテンションのまま、匠は結愛に指示した。
結愛が、こくっと頷く。
6機のビットが、
しかし、それよりも速く、
右に左に飛んでくるメガ粒子の矢を避けつつ、
匠は既に気づいていた。
(ビットを使えるぐらいだから、相手も当然、ニュータイプだよな)
ニュータイプ同士の戦い。
想定してなかった訳ではないが、実際に起こるとかなり厄介だ。
「さて、どうする?」
その時、突然、眩い光が
「信号弾!?」
それはどの艦が放ったのかわからないが、間違いなく信号弾の輝きだった。
「あの色は・・・・・・」
匠は座学で習った記憶を掘り起こして、意味を確認しようとした。
「停戦命令!?」
記憶が一致した時、匠は思わず声を上げた。
それを見た
「終わったんだ・・・・・・」
息を吐いた匠は、脱力するとシートの背もたれに身体を預けた。
”結愛、もういいよ”
こくっと頷く結愛は、ビットを回収にかかる。
ビットが全て戻ったことを確認してから、匠はサイコミュを切った。
「サラブレッドは、健在か?」
それから
”あっち”
先に見つけたのは、やはり結愛だった。気配のするほうを指さす。
「よし、帰ろう。僕らの艦に」
匠の言葉に結愛はこくっと頷いた。
『この日、宇宙世紀0080。この戦いのあと、地球連邦政府とジオン共和国の間に終戦協定が結ばれた』