Schooldays in U.C.0079 作:碗古田わん
湖畔から冷たい風が吹いてきた。
遊歩道を歩く
「2月じゃまだ寒いね」
と匠は隣を歩く咲耶《さくや》結愛《ゆめ》に言った。
結愛はこくっと頷いたが、さほど寒そうにはしていなかった。
子供のほうが体温が高いのだ。
北米ジョージア州とサウスカロライナ州の境目に位置するオーガスタでは、この時期でも最低気温は2℃程度まで下がる。日が落ちてきた夕方なら、寒くて当然なのだ。
その代償としてクラークスヒル湖は美しい風景を見せる。
終戦後、匠は軍に除隊を申請した。
もう戦争はこりごりだったので、結愛を引き取りどこか静かな場所で暮らそうと思っていた。
しかし、軍は除隊を認めなかった。
ニュータイプの貴重なサンプルである匠を手放したくなかったからだ。
それには、ニュータイプを軍の管理下に置いておきたいという思惑もあった。
そして、それは結愛にも及んだ。
まだ10歳の少女ながら、ア・バオア・クー戦で驚異的戦果を上げた少女をオーガスタ究所は貴重なサンプルとして欲したのだ。
結愛が人体実験に使われることを恐れた匠は、除隊しない代わりに条件をつけた。
自分が実験体になるから、結愛に手を出さないこと。
それが確約できない場合は、ニュータイプのことをネットで全世界に公開すること。
この条件については、軍とオーガスタ研究所の間で一悶着遭ったというが、結局は条件を呑み、匠はオーガスタ基地勤務になった。
結愛については最初、グラナダに返す案もあったが、結愛が嫌がったのと匠自身が目の届く場所に置いておきたいという思いもあって、一緒に地球に降りてきた。
そして、ふたりは養子縁組を結び、本当の兄妹になった。
「学校はどう?」
「楽し・・・・・・い」
匠の問いに、結愛は言葉少なげに答えた。
だが、一緒に本当に楽しそうな気持ちが伝わってきたので、匠はほっとした。
「友達もできた?」
続く問いにもこくっと頷く。
「空気が読める子って、言われて・・・・・・る」
(まぁ、本当に心が読めるからなぁ)
匠は内心、冷や汗笑いした。
それを感じた結愛もくすっと笑う。
「ニュータイプだってことは、バレてないよね?」
ちょっと心配になった匠は、聞いてみた。
終戦から1ヶ月ちょっとだが、ニュータイプについての噂話は既に世界中に回っていた。
もし、結愛がニュータイプであることが知られれば、大変なことになる。
「うん。大丈・・・・・・夫」
そんな匠の心の内をわかったから、結愛は意識して言葉に出した。
「これからはニュータイプとしての力を制御する方法も見つけないとね」
結愛はこくっと頷いた。
「まぁ、それは追々考えていこう」
実際、ニュータイプ能力の制御はオーガスタ研究所の課題の1つなので、自分が真面目に研究に協力すればある程度の道筋はつけられるのではないかと思っていた。
「今は、この平和を満喫しよう」
それが匠の心からの願いだと感じたから、結愛は笑顔で頷いた。