Schooldays in U.C.0079   作:碗古田わん

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#3 敵敗走艦隊を迎え撃て

 青い地球を背景に、第27独立部隊(クリムゾン)の艦艇は宇宙に漂っていた。

 密集陣形を取った艦隊は、よく見ると、それぞれが太いワイヤーのような通信用ケーブルで繋がれているのがわかった。

 エイプリールスターのブリーフィング室には、ブリッチ要員をはじめ、主要クルーが席につき、正面スクリーンに注目していた。

『・・・・・・幸いなことに、このカルフォルニア基地奪還作戦は今のところ順調に進んでいる』

 そこには、第27独立部隊(クリムゾン)の司令官であるラリー・フォードの姿が写し出されていた。

『すでにジオン側は、こちらの予想どうり、残存兵力をHLVへ積み込み、撤退の準備を進めているとの連絡が入った』

 ミッキー・サムソンやデレック・イージスと一番後ろの席に陣取った鮒子田(ふしだ)(しょう)は、真剣な面持ちでスクリーンをみつめていた。

『そこで、我々の出番ということになる』

 ラリーは、旗艦ジプシークインのブリーフィング室で、これから行われようとしている作戦の概要を説明していた。その画像は通信ケーブルを通して、全ての艦へと配信されている。

「我々は現時の位置で待機し、HLVが上がってきた時点でそれを待ち伏せ、一気に殲滅する!」

 力強くそう言ってから、ラリーはひと呼吸おいた。

 その間にスクリーンに窓が切られ、そこに作戦図が写し出された。

『HLV護衛のため、現在、グラナダより2個戦隊がこちらへと急行しているが、そちらのほうは、第7独立部隊と第16独立部隊が足止めしてくれるはずだ』

 作戦宙域と各艦隊の位置を示した作戦図に、矢印がリアルタイムで書き込まれる。

『HLVに武装はなく、護衛につくはずのコムサイもそれほど強力な火器は有していない』

 さらに別の窓が切られ、今度はHLVの3面図が表示された。

 集まったクルーたちは、みな真剣な表情でスクリーンに映し出された情報に見入っていた。

「さらには、敗争してくる地球制圧軍は陸戦型のモビルスーツしか保有しておらず、恐らくはほとんど抵抗を受けずに、作戦を遂行できるはずだ」

 ラリーはそこまで言って、白い歯を見せた。

「なので、モビルスーツ部隊の諸君は、気楽にやってもらっていい」

 それを聞いたミッキーとデレックもおもわず口元に笑みを浮かべる。

『作戦の詳しい内容については、追って各艦の作戦担当士官に・・・・・・』

 しかし、匠だけは、その言葉には笑えず、ひとり神妙な顔をした。

 

 ブリーフィングが終わり、各員は部屋を出るとそれぞれの持ち場へと散っていった。

「今回は、楽勝そうだなぁ、ショウ」

 自分たちの普段の待機場所であるガンルームに帰る途中で、デレックは大きく延びをしながら、上機嫌で言った。

「うん・・・・・・」

 しかし匠は、うつむいたまま、生返事で答える。

「ん? どうした?」

 それに気づいてデレックは、

「なにか、気になるところでもあるのか?」

 と浮かぬ顔をしている匠の表情をうかがった。

「いや・・・・・・そういうわけじゃないんだけど・・・・・・・・・・・・」

 匠は顔をあげて、デレックを見た。その瞳には、明らかに戸惑いが見られた。

「相手は非武装のシャトルだろ? ・・・・・・だから、なんていうか・・・・・・無抵抗の相手に・・・・・・その・・・・・・」

 口ごもる匠に、デレックは納得したような顔をする。

「なんとなく、言いたいことはわかるけどさ・・・・・・」

 デレックは、諭すように言った。

「でも、まぁ、戦争だからしゃあないさ」

 そして、シビアさを隠すようにわざを明るく振る舞う。こういう話題が出るときには必ずするポーズだ。

 それでも、匠は憂鬱そうな顔を崩さなかった。

「それは、そうなんだろうけど・・・・・・なんか、ちょっと気が引けてね・・・・・・」

 そう言ったとき、

「オレは、そんな風には思わない」

 その声に匠とデレックは振り返った。

 そこには、ミッキーが立っていた。険しい顔をしたミッキーは、ジーッと鋭い視線で匠をみつめる。

「隊長・・・・・・」

 それに圧倒された匠は、とりあえずそれだけ言うのが、精一杯だった。

「1週間戦争の時・・・・・・」

 しかし、そのつぶやきはミッキーには届いてないようだった。遠い目をしたミッキーは、まるで独り言のように静かに言った。

「オレは、サイド1(ザーン)空間騎兵として、コロニーの守備をしていた・・・・・・」

 ミッキーの脳裏に、あの時の光景が蘇る。

「奴らは、コロニーに毒ガスを注入して、一瞬にして、コロニーに住んでいた人達の命をうばいやがった・・・・・・」

 それはミッキーと同じ任務に就いていた兵にとっては、忘れようにも忘れられない光景だった。

「1500万だ・・・・・・」

 ミッキーの口調は、穏やかなものだったが、その語尾には静かな怒りが感じられた。

「1500万の人達が、訳もわからにまま、あの忌々しいG3ガスを吸って、もがき苦しみ死んでいったんだ・・・・・・」

 そこまで言ったからミッキーは、呆然と話を聞く匠を再びみつめる。

「それに比べれば、オレたちがこれからしようとしていることなど、屁でもない」

 そしてシビアな口調で言い放った。

「だからオレは、遠慮なんかは絶対にしない」

 その顔から強い決意が読みとれた。

「奴らのHLVはすべてたたき落とす」

 言いたいことを言い終えたミッキーは、たたずむ匠を足早に追い越すと、リフトグリップを掴み、廊下の奥へと流れていった。

 匠はなにも言えないまま、その姿を見送る。

「隊長の言うとおりだぜ」

 そんな様子を察して、デレックはなだめるように言った。

「奴らに情けは不要さ。おまえだって、ルウム戦役でサイド5(ルウム)を無くしてるんだから、そのぐらい、わかってるだろ?」

「うん・・・・・・」

 匠はとりあえずうなずいては見せたが、その表情にはまだ戸惑いがあった。

 

 それから6時間後、カルフォルニア基地陥落を受けて、第27独立部隊(クリムゾン)は作戦行動を開始した。

「もう一度、作戦内容を確認しておく」

 第72独立機動兵中隊(MFC-72)ハリソン・イェーガは、RGM-79A1番機(ジム01)のコクピットの中でそう言った。

 中隊はそれぞれの艦から発艦すると、小隊ごとに矢尻編隊を組んで目標地点へと向かっていた。

『今回の作戦は、モビルスーツ隊のみで行う。艦艇は参加しない』

 RGM-79A5番機(ジム05)のコクピットでミッキーは真剣な面持ちでそれを聞いていた。

『我々は、二手に分かれて、一方が敵の護衛を殲滅し』

 同じく、RGM-79A6番機(ジム06)のコクピットではデレックがいつものひょうひょうとした顔を隠して中隊長の言葉に聞き入っていた。

 既にミノフスキー粒子は戦闘濃度に散布されているので、通信はノイズ混じりだ。

『もう片方が、HLVを沈める』

 だが、RGM-79A7番機(ジム07)のコクピットで匠は、それを聞き流しながら考え事をしていた。

(・・・・・・・・・・・・僕は・・・・・・)

 その表情には困惑が浮かんでいた。

(少なくとも、親父や母さんのために、戦ってるわけじゃない・・・・・・)

 その時、警告音とともにコクピットの光学式センサーが敵影を捉えた。

(・・・・・・かと言って・・・・・・)

 それでも匠は思考を止めなかった。

『目標捕捉。方位11-1』

(お国のため、っていうのも。多分、嘘だな・・・・・・)

『よし、アラン、ニック、あとは頼んだぞ』

 なので、通信も耳に入ってこない。

散開(ブレイク)

 そのため、各RGM-79A(ジム)が一斉に散ったのについていけなかった。

(・・・・・・じゃあ、僕は・・・・・・なぜ、戦ってるんだ・・・・・・?)

『なにやってるんだ! ショウ!!」

「!?」

 ミッキーの怒鳴り声で匠は我に返った。

『作戦は、始まってるんだぞ!』

 補助(サブ)モニターに映るミッキーは、ノイズ混じりだが眉をつり上げてるのがわかった。

「はいっ! すみません!」

 匠はレバーを握り直すとスロットを吹かした。

(とりあえず、今は集中しなきゃ・・・・・・)

 RGM-79A7番機(ジム07)推進器(スラスター)を吹かして、先行する僚友機に追いつこうと加速を始めた。

 RGM-79A(ジム)の編隊が近付いてくることを捉えたコムサイは、一斉に艦底のハッチを開くと、MS-06C(ザクⅡ)を射出した。

「誰だよ。あちらさんはモビルスーツを持ってないなんて言ったのは」

 それを補助(サブ)モニターで確認したデレックは思わず苦笑いした。

 MS-06C(ザクⅡ)は3機編隊を組むと急速に接近してくる。

「雑魚には構うな!」

 RGM-79A1番機(ジム01)のコクピットでハリソンは命じた。

 120㎜機関銃(マシンガン)を乱射するMS-06C(ザクⅡ)をシールドで避けながら、第272機動兵小隊(M-272)第534機動兵小隊(M-534)はそれをパスする。

 慌てたMS-06C(ザクⅡ)編隊は、反転追尾しようとする。

「おーっと! 貴様らの相手はこっちだぜ!」

 その背後からアラン・スミスの指揮する第782機動兵小隊(M-782)が攻撃を仕掛ける。

 メガ粒子と機関銃(マシンガン)の炎が飛び交う宇宙(そら)をバックに残ったハリソンが指揮するRGM-79A(ジム)編隊はHLV艦隊に迫る。

 匠はヘッドレストの右側からターゲットスコープを引っ張り出した。

(・・・・・・これも・・・・・・)

 ターゲットスコープにHLVが映る。

(・・・任務・・・)

 ロックオンシーカーがHLVと重なった。

(・・・・・・なんだ・・・・・・・・・・・・)

 トリガーボタンに指を掛ける。

 その時、

『わぁー!』

 テル・ヘンドリックの悲鳴が聞こえた。

 RGM-79A(ジム)編隊とHLVの間に、コムサイが機関砲(マシンガン)を乱射しながら割って入ったのだ。

「ちっ! アランのやつ、ミスりやがったな!」

 RGM-79A一番機(ジム01)のコクピットで、ハリソンは回避運動しながら舌打ちをした。

『仕方ない。ミッキー、やつを頼む』

「了解」

 ハリソンの命を受けて、ミッキーは檄を飛ばした。

「聞いたとおりだ!」

『オレたちはコムサイを墜とすぞ!』

(よかった・・・・・・)

 それを聞いた匠は、内心、ほっとした。

 第272機動兵小隊(M-272)はコムサイを阻止しようとメガ粒子銃(ビームスプレイガン)を放った。

 しかし、コムサイは補助推進器(サブスラスター)をこまめに吹かして、それを巧みに回避する。

「なに!? これがコムサイの機動か!」

 ミッキーは脅威した。

 ターゲットスコープのロックオンシーカーがコムサイを捉えようとするが、ついていけないのだ。

「くそっ!」

 デレックがメガ粒子銃(ビームスプレーガン)を2発、3発と撃つが、コムサイはメガ粒子の矢をすり抜け、旋回する。

「本当かよぉ!」

 ディレックは焦った。

『あれじゃ、まるでモビルスーツだぜ』

(・・・・・・それなら!)

 それを聞いた匠は閃いた。コンソールを手早く操作する。

 大型多機能表示装置(マルチモニター)自己学習型(LLM)コンピューターが、目標をコムサイからモビルスーツに変更したことが表示された。

 とたんに、ロックオンシーカーが、コムサイを正確に捉えた。

「いけるっ!」

 してやったりの顔で匠は、トリガーボタンを押した。

 RGM-79A7番機(ジム07)からメガ粒子銃(ビームスプレーガン)が放たれる。

 メガ粒子の矢がコムサイの垂直尾翼をかすめて、破片を散らしながらボロボロになる。

 衝撃でコムサイがバランスを崩す。

「もらった!」

 匠がトドメの一撃を放とうとした時、

”ビィー!”

 側面警告モニターが、赤く点灯した。

「えっ!?」

 あわてて回避運動しながら、側面を見る。

 そこには、MS-09R-2(リックドムⅡ)の編隊が映っていた。

 

「新手です!」

 レーダー管制席についていたマリー・ソネットが、慌てて顔を上げ、キャプテンシートを見た。

「敵、1個モビルスーツ中隊、急速に味方部隊に接近しています」

「なんだと!?」

 キャプテンシートにつくロッド・ジョーンは、驚きながらマリーを見返す。

「増援か? 早すぎるぞ!」

「いえ・・・・・・グラナダ方面からではありません」

 再びレーダードームを覗き込んだマリーは、データーを読む。

「敵艦隊確認・・・・・・ムサイ級3隻と・・・・・・・・・・・・」

 そして、驚愕した。

「ザンジバル級!?」

「ジプシークインより緊急入電!」

 すると今度は、通信席の良美(よしみ)・イェンスキーが焦りの混じった声でロッドに報告した。

「全艦、直ちに発進せよとのことです!」

 ロッドは手で空を払った。

「エイプリルスター、直ちに発進せよ!」

「了解」

 それを受けて操舵席のルネ・ジャブイユはスロットルを開けた。

 

 戦場は乱戦になっていた。

 既にMS-06C(ザクⅡ)3機を撃破した第782機動兵小隊(M-782)第308機動兵小隊(M-308)、それにHLV攻撃部隊の第534機動兵小隊(M-534)も加わり、モビルスーツ中隊同士の争いになっていた。

 戦力的にはメガ粒子砲を持つRGM-79A(ジム)の方が有利のハズだった。

 しかし、MS-09R-2(リックドムⅡ)は威力はあるが命中率が悪いロケット砲(ジャイアントバズ)ではなく、威力はないが命中率の高い90㎜機関銃(マシンガン)を使っていた。

 そのため、被弾率はRGM-79A(ジム)の方が上という事態を招いていた。

「さっきのコムサイは?」

 そんな中で匠は、先ほどのコムサイを探していた。

「いた!」

 見るとコムサイは、ザンジバルへと向かっていた。

「逃がすか!」

 RGM-79A7番機(ジム07)はコムサイにメガ粒子銃(ビームスプレーガン)を向けた。

 だが、それを阻もうとするようにMS-09R-2(リックドムⅡ)が90㎜機関銃(マシンガン)を放ちながら割り込んでくる。

「ちぃぃっ!」

 舌打ちしながら、匠はコントロールレバーを操作して回避運動に入る。

 RGM-79A7番機(ジム07)は、シールドで弾を受けながら左に回避する。

 そうしながら匠はメガ粒子銃(ビームスプレーガン)を二連射した。

 しかし、MS-09R-2(リックドムⅡ)はあらかじめそれを予想していたようで、紙一重で回避する。

「早い!」

 匠は驚嘆した。

「こいつら、相当の手慣れだぞ!」

『止まるな!』

 それが聞こえていたのか、ミッキーから檄が飛ぶ。

「動いてないと、いい的になるぞ!」

「そんなこと言われても・・・・・・」

 デレックは額に汗を浮かべながら愚痴った。

 そうしている間にもMS-09R-2(リックドムⅡ)の攻勢は続いていた。

 90㎜機関銃(マシンガン)が火を噴く。

 デレックはそれをシールドで受けつつ、メガ粒子銃(ビームスプレーガン)で応戦する。

 既にシールドは直撃を受けすぎてボロボロになっていた。

 そうしている間にもHLV艦隊は戦線を離脱しようとしていた。

「このままだと・・・・・・」

 焦りの色を見せながらも匠は、なんとかHLV艦隊を追撃できないか考えていた。

 その時、メガ粒子の矢が一斉に放たれた。

 そのうち一発がHLVを直撃した。

「エイプリルスターか!?」

 メガ粒子の放たれた方をみると、4隻のサラミス級が接近していた。

「命中! 敵HLV1隻大破!」

 レーダードームを覗きながら、マリーが戦果を報告した。

「このまま、押し切るぞ!」

 それを受けてロットが叫んだ。

「ムサイ級、まもなく射程圏に入ります」

 緊張した声でマリーが続ける。

「回避運動しつつ、射撃は継続」

「了解。回避運動に入ります」

 ルネが操縦桿を操作する。

 射程圏に入ったムサイ3隻が一斉にメガ粒子砲を放った。

 エイプリルスターは、回避運動を取りつつ、反撃する。

 それはジプシークイン。トワイライト、リフレインでも同じで、いまや宇宙(そら)は、艦隊戦へと突入していた。

「艦の射撃の邪魔になる! 全機後退!」

 ハリソンの命令で第72独立機動兵中隊(MFC-72)は、艦隊の射線から外れるように後退を始めた。

 それはジオンも同様で、MS-09R-2(リックドムⅡ)も同様に後退を始めた。

「ふーっ・・・・・・」

 戦闘はまだ続いていたが、それでも匠は一息入れた。

 すると、

”ビィー!”

 補助(サブ)モニターが警告を発した。

 慌てて正面モニターを見ると、後退するMS-09-2(リックドムⅡ)をパスして、1機の碧いモビルスーツが突進してきていた。

 背筋をただした匠は、コンソールを操作した。

 素早く大型多機能表示装置(マルチモニター)に碧いモビルスーツの三面図が表示される。

「MS-17B・・・・・・ガルバルディ・・・・・・?」

 その機体は、MS-17の専用機仕様、MS-17M(ガルバルディM)だった。

 MS-17M(ガルバルディM)は見慣れないライフルを構えると照準を合わせる。

「あれは・・・・・・メガ粒子砲!?」

 匠は慌てた。

「避けてっ!」

”ビキュュュューーーーン!”

 ソニックとともにメガ粒子小銃(ビームライフル)からメガ粒子が放たれた。

 だが、メガ粒子の矢はモビルスーツ編隊の上を通り過ぎる。

 外れたわけではなかった。その先にはサラミス級2番艦、トワイライトがいたのだ。

”ドッカーーン!”

 機関部に直撃を受けたトワイライトはそのまま轟沈した。

「ああっ・・・・・・」

 匠はそれを呆然と見てるしかできなかった。

 そうしている間にも、MS-17M(ガルバルディM)は、次の攻撃に移ろうとしていた。

「やつを止めろ!」

 怒りの表情で、ハリソンは命じた。

「了解!」

 匠も眉をつり上げてMS-17M(ガルバルディM)の迎撃に入った。

 それでも機体をこまめに揺らして照準を合わせづらくことは忘れていなかった。

 突進しながらMS-17M(ガルバルディM)メガ粒子小銃(ビームライフル)を放つ。

 RGM-79A7番機(ジム07)はそれを紙一重で回避する。

 自分でも会心の出来だと思った。

 だが、

『わぁー!』

 ノイズ混じりの通信機からエディ・ハウンドの悲鳴が飛び込んできた。

 補助(サブ)モニターで後方を写すと、RGM-79A9番機(ジム09)が左腕をシールドごと吹き飛ばされていた。

「最初から、エディが標的だったのか!?」

 匠はかーっとなった。

 そうしている間にもMS-17M(ガルバルディM)メガ粒子小銃(ビームライフル)を連射して、RGM-79A11番機(ジム11)は右足を、RGM-79A8番機(ジム08)は頭部を吹き飛ばされる。

「やったな!」

 吠えた匠は、ターゲットスコープを覗いてMS-17M(ガルバルディM)を捉えようとする。

 しかし、相手の動きが速すぎてロックオンシーカーがついていかないのだ。

「ん・・・・・・?」

 その時になって匠は、MS-17M(ガルバルディM)の左肩のパーソナルマークに気づいた。

「あれって確か・・・・・・」

 軍報に乗っていた。

碧き魔女(セイレーン)・・・・・・?」

 ジオン地球制圧軍のスーパーエースだ。

「くそーーーーーーっ!」

 匠が躊躇していると、その横をミッキーのRGM-79A5番機(ジム05)が突っ切っていった。

「駄目です! 隊長! やつは!」

 警告する匠を無視して、RGM-79A5番機(ジム05)メガ粒子銃(ビームスプレイガン)を連射する。

 MS-17M(ガルバルディM)はそれをいとも簡単にかわすと、お返しとばかりにメガ粒子小銃(ビームライフル)を撃つ。

 それはRGM-79A5番機(ジム05)の腹部に直撃した。

「隊長ぉぉぉぉっ!」

 絶叫する匠の目の前でRGM-79A5番機(ジム05)は四散した。

 それを見届けずに、MS-17M(ガルバルディM)は不意に方向転回した。

 そして、急加速すると戦線を離脱しようとする。

「逃がすか!」

 怒り心頭の匠は、スロットルを最大戦速へ叩き込もうとした。

『ショウ!』

 だが、それをハリソンの声が止めた。

『追撃は不要だ』

 補助(サブ)モニターに映るハリソンは、ノイズ混じりだが悲痛な顔をしていた。

『作戦は、失敗だ・・・・・・』

 正面モニターを見るとHLV艦隊はムサイに後衛を守られて遠ざかっていた。

「畜生め!!」

 激怒した匠は、怒りのままにコンソールに力一杯拳を叩きつけた。

 戦争は、まだ、続いている。

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