Schooldays in U.C.0079 作:碗古田わん
宇宙空間の闇に3隻のサラミス級巡洋艦が漂っていた。
前回の戦闘で三番艦トワイライトを失い、撃沈しなかった3隻も艦隊戦でダメージを受けたため、今はそれぞれの艦の周りにはメカマンたちが取りつき、応急処置を行っていた。
それはモビルスーツも同様で、エイプリルスターのハンガーでは、4機の
4機のうち2機は元からエイプリルスター所属の
「そこは一端装甲を外して、中にダメージが及んでないか確認して」
「オレたちも手伝った方がいいのかな?」
その様子をキャットウォークで見ていたクワサ・アラーは、隣のデレック・イージスに聞いた。
「いや・・・・・・整備の経験が無いからって断られた」
それに対してデレックは、肩をすくめる。
「ショウのやつ、戻ってきたら直ぐに整備の手伝いに入って、全然休んでいないんだろう?」
同じく、キャットウォークから眺めていたテル・ヘンドリックが心配そうに言った。
「やっぱ、ミッキー隊長の戦死がショックだったのかなぁ」
そして、独りごちる。
そうしているうちに、メカマンたちが甲板に集まった。
それから、簡単な打ち合わせをしたのち、解散になった。
甲板を蹴って匠はキャットウォークへと飛ぶ。
「終わったのか?」
そこで待ち構えていたデレックが声を掛けた。
「取り敢えず、ね」
匠は意図的に笑みを零して答える。
「もう部品が無くてね・・・・・・これ以上はやりようが無い」
それから、両手を開いてお手上げのポーズをとる。
「それなら、しゃーなしだな」
おどけて見せたから、デレックは匠の肩を手を回した。
「なら、あとはゆっくり休もうぜ」
「今は、動いてたい気分なんだけど・・・・・・」
その提案に匠は困ったような顔をする。
「まぁ、そう言うなって」
クワサが、白い歯を見せてにっとわらった。
「そうだよ。休むのもパイロットの仕事って言うだろう」
テルも笑みを作って援護する。
「うん・・・・・・」
3人が気を遣ってるのをわかっているから、匠は一応、頷いたが、その返事はどこか上の空だった。
「補給を受けられる?」
エイプリールスターのブリッジでキャプテンシートに座っていたロッド・ジョーンズは思わず腰を浮かした。
『ルナツーからたった今、通信が入った』
「了解しました。メカマンたちも喜びます」
表に出てしまった驚きを引っ込めてから、ロッドは敬礼で答えた。
『モビルスーツも1/3が稼働不能状態に陥っているからな・・・・・・このままでは次の作戦に支障が出るところだった』
「そうですね」
ほとんど期待していなかった補給が受けられことになって、ロッドは内心、ほっとした。
エイプリールスターのガンルーム内は消灯され、真っ暗な状態だった。
そこをデレック、クワサ、テルが宙に漂いながら眠りについていた。
匠も横にこそなっていたものの、目は寝ていなかった。
目を閉じても思い浮かぶのは、
「畜生・・・・・・」
そのたびに、匠は口の中で詰った。
また目を閉じる。
すると今度は碧いモビルスーツが浮かんできた。
「次に会ったら、必ず墜とす!」
匠は決意を新たにした。
「ショウ、ショウ」
そのまま寝てしまった匠は、6時間後、デレックの声で目を覚ました。
「ん・・・・・・?」
目を開くと眩しい光が飛び込んできた。
いつの間に、ガンルームの明かりが点灯していたのだ。
「どうしたの・・・・・・?」
まだ、覚醒していない脳で取り敢えず聞いてみる。
「補給部隊が来ることになったって」
「・・・・・・どこの部隊?」
寝ぼけ眼で匠は、特に何も考えずに疑問に思ったことを口にした。
「第235補給部隊とか言ってたなぁ」
それにはテルが答える。
(第235補給部隊・・・・・・?)
聞き覚えのある部隊名に、匠は自問した。
「って、フーコの部隊じゃん!」
それで意識が一気に覚醒する。
「誰?」
「さぁ?」
首を傾げたクワサに、デレック肩をすくめた。
「誰なの?」
テルの問いに匠は言葉を詰まらせた。
「あ・・・・・・いや・・・・・・」
しどろもどろになる匠に、3人はなにかあると悟った。
「なんか、怪しいぞ」
クワサがニマニマと聞いた。
「吐いちゃえ」
デレックはネックロックする。
「わかった! あの時の
テルはテルで、利かせなくても良い勘を働かせる。
「あの時って?」
「ルナツーを出港する前に、合ってた
「ほれ、ほれ、ネタは上がってるんだぞ。吐いちまいなよ」
さらに匠の首を絞めながら、デレックが迫る。
「・・・・・・・・・・・・初恋の
それで観念した匠は、照れくさそうにぼそっと言った。
「ほーっ」
その告白に、デレック、クワサ、テルは意地の悪い笑みを浮かべた。
「その話、詳しく」
「補給が来るなら、パーツの整理しとかないと!」
これ以上追求されることを恐れた匠は、強引にデレックを振り払うとガンルームを飛び出した。
(フーコに会えるかもしれない・・・・・・)
リフトグリップで移動しながら匠は、心躍らせた。
寝る前の憂鬱さは晴れていた。
第235補給部隊はコロンブス級1隻とサラミス級1隻で構成されていた。サラミスは艦底にモビルスーツデッキを持った改装型だ。
しかし・・・・・・、
「レーザーセンサーに反応。ムサイ級3隻です」
サラミス級巡洋艦、ソネットのブリッジでレーダー管制を担当するキャミー・
「やり過ごせそうか?」
キャプテンシートに座ったルーベンス・アルヌは、レーダー管制席を見ながら聞いた。
「いえ・・・・・・補足された模様・・・・・・モビルスーツが射出されました」
キャミーの声に緊張が走った。
「第1戦闘配置! モビルスーツ隊を出せ!」
シートから立ち上がったルーベンスは、手で宙を切りながら命じた。
「総員、第1戦闘配置。モビルスーツ隊は出撃してください」
通信席に座った
ソネットの艦底が開き、
「敵のモビルスーツは何機なんだ?」
『確認されているだけで13機・・・・・・1個中隊です』
風子はやや躊躇しながら答える。
敵は1個中隊。それに対してこちらは1個小隊しかいないのだ。
コロンブス級にもモビルスーツは積んでいるが、パイロットはいない。
現状、この戦力でやるしかない。
「さすがに辛いぞ」
アドルフは愚痴った。
「今、第27独立部隊に応援を要請しています。それまで持ちこたえてください」
その気持ちをくんで風子は、できるだけ安心させるような口調を心がけた。
「了解・・・・・・」
気を遣われてるのはわかっていたので、アドルフはそれだけ言って通信を部下に切り替えた。
「聞いたとおりだ。時間を稼ぐぞ!」
「はい!」
その命令に、
「第235補給部隊より緊急入電!」
その
「現在、敵モビルスーツ部隊と交戦中。応援を求むとのことです!」
「ちっ!」
その報告にロッドは舌打ちをした。
「総員第1戦闘配備! モビルスーツ隊出撃せよ!」
それから、命を下す。
ハンガーでメカマンと打ち合わせをしていた匠は、艦内放送に甲板を蹴ると
「状況は?」
ハーネスを締めながら。匠は
『第235部隊が敵モビルスーツ部隊の攻撃を受けてます。至急応援に向かってください!』
「なんだって!?」
良美の言葉に、匠は目を見開いた。
(フーコが、危ない!)
焦りながらも、初期点検を済ませる。
その間に甲板がスライドして、射出準備を整えようとしていた。
しかし、今の匠にはその時間さえ惜しかった。
「
結局、射出口が完全に開く前に匠は、愛機を発進させてしまった。
「間に合ってくれよ」
スロットルレバーを全開に叩き込んだ匠は、祈るように呟いた。
しかし、シールドは既にボロボロになり、
「行かせるかよ!」
アドルフは、
「当たるかよ!」
ロケット弾を回避した
メガ粒子の矢が、
”ズギャーーーーン!!”
「これで3機目か・・・・・・」
肩で息をしながらアドルフは呟いた。
『た、隊長!』
グンナーの悲壮そうな声に、アドルフは周りを見回した。
そして、右舷に3機の
四方八方からロケット弾を受けて、
「グンナー!」
アドルフは方向転換して
しかし、別の
「ちっ!」
舌打ちをしたアドルフは、既に使い物にならなくなっていたシールドを捨てるとビームサーベルを抜いた。
それに合わせるように
サーベルの刃同士が接触して火花が散る。
しかし、威力はビームサーベルの方が上だった。
ヒートサーベルを切り裂いたメガ粒子の刃は、そのまま
「グンナーは!?」
粉々になったする
『わぁー!!』
グンナーの絶叫とともに
「グンナー!!」
目標を破壊した
「くそったれが!」
悪態をつきながらもアドルフはそれを追おうとした。
しかし、またもや別の
「このままだと・・・・・・」
アドルフは焦った。
その時、
”ビィキュウゥゥゥン!”
メガ粒子の矢が別方向から飛んできた。
直撃を受けた
「間に合ったのか!?」
アドルフが見ると、1機の
その遙か後方には、
「フーコは!?」
「いた!」
ソネットが健在だったのに、匠は胸を撫で下ろした。
「これ以上、やらせるかよ!」
そして、あらためて
「味方です!」
ソネットのブリッジでキャミーは、歓喜の声を上げた。
「こちら護衛艦ソネット、援軍感謝します」
風子も安堵して、誰だかわからない相手に感謝を伝える。
「フーコ・・・・・・」
援軍の到着にも
目標を
匠は、ターゲットスコープをのぞき込み、照準を合わせた。
しかし、
「ここ!」
だが、お構いなしで匠はトリガーボタンを押した。
「次!」
その爆発を確認する間もの無く匠は次の目標を探した。
「そこ!」
しかし、匠はそれが完成する前に
土手っ腹にメガ粒子の矢を受けた
「まだだ!」
続けて匠は
(今日は敵の動きがよくわかる・・・・・・)
3機目の
その時、不意に嫌な予感に捕らわれた。
「フーコ!?」
ソネットの方を見ると、1機の
慌てて狙いを定める。
が、それよりも
風子を始めとするクルー全員が席を離れて逃げようとした。
無駄な抵抗だった。
ロケット弾の爆発でブリッジは粉々に吹き飛んだ。
「フーコぉぉぉぉっ!」
その光景に匠は絶叫した。
その隙を突いて、今、ソネットを攻撃した
『なにやってるんだよ!』
デレックの声で匠は我に返った。
コントロールレバーとペダルを適当に操作して、回避運動に入る。
やっと戦場に到着した
それで形勢不利と感じたのか、
『まちあがれ、この野郎!』
『深追いは不要だ、デレック』
『へい』
そんな声が響くコクピットで、匠はヘルメットの中を涙の粒でいっぱいにして、泣きじゃくった。
「フーコ・・・・・・フーコ・・・・・・・・・・・・」
戦争は、まだ、続いている。