Schooldays in U.C.0079   作:碗古田わん

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#4 補給部隊救出作戦

 宇宙空間の闇に3隻のサラミス級巡洋艦が漂っていた。

 第27独立部隊(クリムゾン)の艦艇である。

 前回の戦闘で三番艦トワイライトを失い、撃沈しなかった3隻も艦隊戦でダメージを受けたため、今はそれぞれの艦の周りにはメカマンたちが取りつき、応急処置を行っていた。

 それはモビルスーツも同様で、エイプリルスターのハンガーでは、4機のRGM-79A(ジム)にやはりメカマンたちが取りつき、破損箇所を修理していた。

 4機のうち2機は元からエイプリルスター所属のRGM-79A6番機(ジム06)RGM-79A7番機(ジム07)、残りの2機は轟沈したトワイライトを母艦にしていたRGM-79A3番機(ジム03)RGM-79A4番機(ジム04)だ。

「そこは一端装甲を外して、中にダメージが及んでないか確認して」

 鮒子田(ふしだ)(しょう)は、メカマンに交じってモビルスーとの修理に奔走していた。

「オレたちも手伝った方がいいのかな?」

 その様子をキャットウォークで見ていたクワサ・アラーは、隣のデレック・イージスに聞いた。

「いや・・・・・・整備の経験が無いからって断られた」

 それに対してデレックは、肩をすくめる。

「ショウのやつ、戻ってきたら直ぐに整備の手伝いに入って、全然休んでいないんだろう?」

 同じく、キャットウォークから眺めていたテル・ヘンドリックが心配そうに言った。

「やっぱ、ミッキー隊長の戦死がショックだったのかなぁ」

 そして、独りごちる。

 そうしているうちに、メカマンたちが甲板に集まった。

 それから、簡単な打ち合わせをしたのち、解散になった。

 甲板を蹴って匠はキャットウォークへと飛ぶ。

「終わったのか?」

 そこで待ち構えていたデレックが声を掛けた。

「取り敢えず、ね」

 匠は意図的に笑みを零して答える。

「もう部品が無くてね・・・・・・これ以上はやりようが無い」

 それから、両手を開いてお手上げのポーズをとる。

「それなら、しゃーなしだな」

 おどけて見せたから、デレックは匠の肩を手を回した。

「なら、あとはゆっくり休もうぜ」

「今は、動いてたい気分なんだけど・・・・・・」

 その提案に匠は困ったような顔をする。

「まぁ、そう言うなって」

 クワサが、白い歯を見せてにっとわらった。

「そうだよ。休むのもパイロットの仕事って言うだろう」

 テルも笑みを作って援護する。

「うん・・・・・・」

 3人が気を遣ってるのをわかっているから、匠は一応、頷いたが、その返事はどこか上の空だった。

 

「補給を受けられる?」

 エイプリールスターのブリッジでキャプテンシートに座っていたロッド・ジョーンズは思わず腰を浮かした。

『ルナツーからたった今、通信が入った』

 補助(サブ)モニターに映っていたのは、第27独立部隊(クリムゾン)司令のラリー・フォードだった。

「了解しました。メカマンたちも喜びます」

 表に出てしまった驚きを引っ込めてから、ロッドは敬礼で答えた。

『モビルスーツも1/3が稼働不能状態に陥っているからな・・・・・・このままでは次の作戦に支障が出るところだった』

「そうですね」

 ほとんど期待していなかった補給が受けられことになって、ロッドは内心、ほっとした。

 

 エイプリールスターのガンルーム内は消灯され、真っ暗な状態だった。

 そこをデレック、クワサ、テルが宙に漂いながら眠りについていた。

 匠も横にこそなっていたものの、目は寝ていなかった。

 目を閉じても思い浮かぶのは、RGM-79A5番機(ジム05)が撃墜されるシーンだった。

「畜生・・・・・・」

 そのたびに、匠は口の中で詰った。

 また目を閉じる。

 すると今度は碧いモビルスーツが浮かんできた。

「次に会ったら、必ず墜とす!」

 匠は決意を新たにした。

 

「ショウ、ショウ」

 そのまま寝てしまった匠は、6時間後、デレックの声で目を覚ました。

「ん・・・・・・?」

 目を開くと眩しい光が飛び込んできた。

 いつの間に、ガンルームの明かりが点灯していたのだ。

「どうしたの・・・・・・?」

 まだ、覚醒していない脳で取り敢えず聞いてみる。

「補給部隊が来ることになったって」

「・・・・・・どこの部隊?」

 寝ぼけ眼で匠は、特に何も考えずに疑問に思ったことを口にした。

「第235補給部隊とか言ってたなぁ」

 それにはテルが答える。

(第235補給部隊・・・・・・?)

 聞き覚えのある部隊名に、匠は自問した。

「って、フーコの部隊じゃん!」

 それで意識が一気に覚醒する。

「誰?」

「さぁ?」

 首を傾げたクワサに、デレック肩をすくめた。

「誰なの?」

 テルの問いに匠は言葉を詰まらせた。

「あ・・・・・・いや・・・・・・」

 しどろもどろになる匠に、3人はなにかあると悟った。

「なんか、怪しいぞ」

 クワサがニマニマと聞いた。

「吐いちゃえ」

 デレックはネックロックする。

「わかった! あの時の()だ!」

 テルはテルで、利かせなくても良い勘を働かせる。

「あの時って?」

「ルナツーを出港する前に、合ってた()!」

「ほれ、ほれ、ネタは上がってるんだぞ。吐いちまいなよ」

 さらに匠の首を絞めながら、デレックが迫る。

「・・・・・・・・・・・・初恋の()だよ」

 それで観念した匠は、照れくさそうにぼそっと言った。

「ほーっ」

 その告白に、デレック、クワサ、テルは意地の悪い笑みを浮かべた。

「その話、詳しく」

「補給が来るなら、パーツの整理しとかないと!」

 これ以上追求されることを恐れた匠は、強引にデレックを振り払うとガンルームを飛び出した。

(フーコに会えるかもしれない・・・・・・)

 リフトグリップで移動しながら匠は、心躍らせた。

 寝る前の憂鬱さは晴れていた。

 

 第235補給部隊はコロンブス級1隻とサラミス級1隻で構成されていた。サラミスは艦底にモビルスーツデッキを持った改装型だ。

 第272独立部隊(クリムゾン)に補給物資を届けるべく、宇宙空間を疾走していた。

 しかし・・・・・・、

「レーザーセンサーに反応。ムサイ級3隻です」

 サラミス級巡洋艦、ソネットのブリッジでレーダー管制を担当するキャミー・本郷(ほんごう)はレーダードームを覗きながら、報告した。

「やり過ごせそうか?」

 キャプテンシートに座ったルーベンス・アルヌは、レーダー管制席を見ながら聞いた。

「いえ・・・・・・補足された模様・・・・・・モビルスーツが射出されました」

 キャミーの声に緊張が走った。

「第1戦闘配置! モビルスーツ隊を出せ!」

 シートから立ち上がったルーベンスは、手で宙を切りながら命じた。

「総員、第1戦闘配置。モビルスーツ隊は出撃してください」

 通信席に座った朝倉(あさくら)風子(ふーこ)は、マイクをオンにすると艦長の命令を全艦に伝えた。

 ソネットの艦底が開き、RGM-79A(ジム)が次々に発進していく。

「敵のモビルスーツは何機なんだ?」

 第457機動兵小隊(M-457)RGM-79A2番機(ジム02)で、アドルフ・ラウダは部下がついてきていることを確認しつつ、ブリッジに聞いた。

『確認されているだけで13機・・・・・・1個中隊です』

 風子はやや躊躇しながら答える。

 敵は1個中隊。それに対してこちらは1個小隊しかいないのだ。

 コロンブス級にもモビルスーツは積んでいるが、パイロットはいない。

 現状、この戦力でやるしかない。

「さすがに辛いぞ」

 アドルフは愚痴った。

「今、第27独立部隊に応援を要請しています。それまで持ちこたえてください」

 その気持ちをくんで風子は、できるだけ安心させるような口調を心がけた。

「了解・・・・・・」

 気を遣われてるのはわかっていたので、アドルフはそれだけ言って通信を部下に切り替えた。

「聞いたとおりだ。時間を稼ぐぞ!」

「はい!」

 その命令に、RGM-79A3番機(ジム03)のグンナー・ニコルとRGM-79A4番機(ジム04)のジャン・ニルソンは力強く返事をした。

 

「第235補給部隊より緊急入電!」

 その良美(よしみ)・イェンスキーの声に、エイプリルスターのブリッジに緊張が走った。

「現在、敵モビルスーツ部隊と交戦中。応援を求むとのことです!」

「ちっ!」

 その報告にロッドは舌打ちをした。

「総員第1戦闘配備! モビルスーツ隊出撃せよ!」

 それから、命を下す。

 ハンガーでメカマンと打ち合わせをしていた匠は、艦内放送に甲板を蹴るとRGM-79A7番機(ジム07)に飛び乗った。

「状況は?」

 ハーネスを締めながら。匠は補助(サブ)モニターに映る良美に聞いた。

『第235部隊が敵モビルスーツ部隊の攻撃を受けてます。至急応援に向かってください!』

「なんだって!?」

 良美の言葉に、匠は目を見開いた。

(フーコが、危ない!)

 焦りながらも、初期点検を済ませる。

 その間に甲板がスライドして、射出準備を整えようとしていた。

 しかし、今の匠にはその時間さえ惜しかった。

RGM-79A7番機(ジム07)、出ます」

 結局、射出口が完全に開く前に匠は、愛機を発進させてしまった。

「間に合ってくれよ」

 スロットルレバーを全開に叩き込んだ匠は、祈るように呟いた。

 

 第457機動兵小隊(M-457)は、MS-09R(リックドム)1個中隊に対して健闘していた。

 しかし、シールドは既にボロボロになり、RGM-79A4番機(ジム04)は片腕を失っていた。

 RGM-79A(ジム)の防衛線の隙を突いて、MS-09R(リックドム)が1機、艦底の方へ向かおうとする。

「行かせるかよ!」

 アドルフは、メガ粒子銃(ビームスプレイガン)を連射して、その行く手を防ごうとした。

 MS-09R(リックドム)はそれを回避すると、ロケット砲(ジャイアントバズ)を放つ。

「当たるかよ!」

 ロケット弾を回避したRGM-79A2番機(ジム02)は、さらにメガ粒子銃(ビームスプレイガン)を連射する。

 メガ粒子の矢が、MS-09R(リックドム)の腹を貫く。

”ズギャーーーーン!!”

 MS-09R(リックドム)は、宇宙(そら)に輝きを残して四散した。

「これで3機目か・・・・・・」

 肩で息をしながらアドルフは呟いた。

『た、隊長!』

 グンナーの悲壮そうな声に、アドルフは周りを見回した。

 そして、右舷に3機のMS-09R(リックドム)が球状にRGM-79A3番機(ジム03)を囲んでいるのを発見した。

 四方八方からロケット弾を受けて、RGM-79A3番機(ジム03)はボロボロになっていく。

「グンナー!」

 アドルフは方向転換してRGM-79A3番機(ジム03)を救出に向かおうとした。

 しかし、別のMS-09R(リックドム)が行く手を阻む。

「ちっ!」

 舌打ちをしたアドルフは、既に使い物にならなくなっていたシールドを捨てるとビームサーベルを抜いた。

 それに合わせるようにMS-09R(リックドム)ロケット砲(ジャイアントバズ)を捨てると、背中に手を回してヒートサーベルを抜く。

 サーベルの刃同士が接触して火花が散る。

 しかし、威力はビームサーベルの方が上だった。

 ヒートサーベルを切り裂いたメガ粒子の刃は、そのままMS-09R(リックドム)を真っ二つに切り裂く。

「グンナーは!?」

 粉々になったするMS-09R(リックドム)の爆煙を抜けてアドルフが見ると、ちょうどRGM-79A3番機(ジム03)の動力炉にロケット弾が命中したところだった。

『わぁー!!』

 グンナーの絶叫とともにRGM-79A3番機(ジム03)はまばゆい光を放って大爆発した。

「グンナー!!」

 目標を破壊したMS-09R(リックドム)3機はそのまま艦隊へと向かった。

「くそったれが!」

 悪態をつきながらもアドルフはそれを追おうとした。

 しかし、またもや別のMS-09R(リックドム)が行く手を阻む。

「このままだと・・・・・・」

 アドルフは焦った。

 その時、

”ビィキュウゥゥゥン!”

 メガ粒子の矢が別方向から飛んできた。

 直撃を受けたMS-09R(リックドム)の1機が四散する。

「間に合ったのか!?」

 アドルフが見ると、1機のRGM-79A(ジム)が単機で突進してきていた。

 その遙か後方には、RGM-79A(ジム)の編隊も見える。

「フーコは!?」

 RGM-79A7番機(ジム07)のコクピットで、匠は首を左右に振って護衛艦を探した。

「いた!」

 ソネットが健在だったのに、匠は胸を撫で下ろした。

「これ以上、やらせるかよ!」

 そして、あらためてMS-09R(リックドム)に敵意を剥き出しにした。

 

「味方です!」

 ソネットのブリッジでキャミーは、歓喜の声を上げた。

「こちら護衛艦ソネット、援軍感謝します」

 風子も安堵して、誰だかわからない相手に感謝を伝える。

「フーコ・・・・・・」

 補助(サブ)モニターにノイズ混じり映った風子に、匠はあらためて安堵しながら、目の前の相手に集中した。

 援軍の到着にもMS-09R(リックドム)はひるむ様子は見せなかった。

 目標をRGM-79A7番機(ジム07)に変更して、攻撃を開始した。

 匠は、ターゲットスコープをのぞき込み、照準を合わせた。

 しかし、MS-09R(リックドム)の動きは速く、ロックオンシーカーが定まらない。

「ここ!」

 だが、お構いなしで匠はトリガーボタンを押した。

 メガ粒子銃(ビームスプレイガン)からメガ粒子が放たれ、MS-09R(リックドム)にヒットする。

「次!」

 その爆発を確認する間もの無く匠は次の目標を探した。

 MS-09R(リックドム)3機がRGM-79A7番機(ジム07)を囲んで攻撃しようとする。

「そこ!」

 しかし、匠はそれが完成する前にMS-09R(リックドム)を捉えると、メガ粒子銃(ビームスプレイガン)を撃った。

 土手っ腹にメガ粒子の矢を受けたMS-09R(リックドム)は四散する。

「まだだ!」

 続けて匠はMS-09R(リックドム)に狙いをつける。

(今日は敵の動きがよくわかる・・・・・・)

 3機目のMS-09R(リックドム)を撃破してから匠はそんなことを思った。

 その時、不意に嫌な予感に捕らわれた。

「フーコ!?」

 ソネットの方を見ると、1機のMS-09R(リックドム)が急速接近していた。

 慌てて狙いを定める。

 が、それよりもMS-09R(リックドム)の動きが速かった。

 ロケット砲(ジャイアントバズ)を構えるとブリッジを狙ってロケット弾を発射した。

 風子を始めとするクルー全員が席を離れて逃げようとした。

 無駄な抵抗だった。

 ロケット弾の爆発でブリッジは粉々に吹き飛んだ。

「フーコぉぉぉぉっ!」

 その光景に匠は絶叫した。

 RGM-79A7番機(ジム07)は呆然と立ちすくんだ。

 その隙を突いて、今、ソネットを攻撃したMS-09R(リックドム)が、攻撃しようとした。

『なにやってるんだよ!』

 デレックの声で匠は我に返った。

 コントロールレバーとペダルを適当に操作して、回避運動に入る。

 やっと戦場に到着した第72独立機動兵中隊(MFC-72)が戦闘に加わる。

 それで形勢不利と感じたのか、MS-09R(リックドム)編隊は撤退を開始した。

『まちあがれ、この野郎!』

『深追いは不要だ、デレック』

『へい』

 そんな声が響くコクピットで、匠はヘルメットの中を涙の粒でいっぱいにして、泣きじゃくった。

「フーコ・・・・・・フーコ・・・・・・・・・・・・」

 戦争は、まだ、続いている。

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